
2023年もさまざまなEC関連のニュースがありましたが、特におさえておきたいトピックについてまとめました。今後のEC運営にも関わる内容を中心に取り上げていますので、戦略を立てるにあたって参考にしていただければ幸いです。ニュースは「生成AI」「SEO」「ステマ規制」「Xの動向」「2024年問題」の5つのトピックをご紹介します。
この記事の目次
生成AI
そもそも生成AIと従来のAIは何が違うのでしょうか?生成AIの一つであるGoogle Bardに「生成AIと従来のAIの違い」を聞いたところ下記の回答が返ってきました。
生成AI(Generative AI)と従来のAIの違いは、新しいコンテンツを生成できるかどうかと言われています。従来のAIは、学習済みのデータから適切な回答を探して提示する性質を持っている一方、生成AIは「0から1を生み出す」性質が特徴です。学習したデータを参考に予測した答えを返すのではなく、自ら学習し続け人間が与えていない情報やデータさえもインプットして、新たなアウトプットを人間に返すことができます。
生成AIは、会話、ストーリー、画像、動画、音楽などの新しいコンテンツやアイディアを作成することができます。本物にそっくりな画像やニュース、Webサイトまで作り出すことが可能なため、悪用されてしまうリスクもあるのです。

「ChatGPT」1年で0→3800件、「●●DX」は260種超で多様化
続いて、2023年に生成AIがどれほど流行したのかPR TIMESのデータから見ていきます。2022年にほぼ0件だったプレスリリースは2023年10月時点で、ChatGPTが3,863件となりました。その後、徐々にChatGPT以外の生成AIサービスが出てきて、10月には生成AIがChatGPTを上回るリリース数となっています。

同じく2023年10月の調査結果ですが、ChatGPTという言葉を聞いたことがある方が96.1%に対し、実際に利用したことがある方は42.8%となっており、利用者はまだまだ少ないことが調査の結果からわかります。

ECサイトにおいてはカートごとにChatGPTや生成AIを活用した新機能を搭載する事例が増えています。利用しているカートシステムの生成AI機能を活用しつつ、ChatGPTなどの生成AIを活用し、日々の業務の効率化を図る動きを取ってみてはいかがでしょうか。
コアアップデートが頻繁に行われたSEO

ECサイトの運営において、GoogleやYahoo!を経由した自然検索の流入を増やすのは非常に重要なことかと思います。ECサイトの数値をご覧いただくと、もしかしたら流入元のほとんどInstagramなどのSNSかもしれないですし、広告がほとんどだということもあるかもしれませんが、上記のグラフをご覧いただくと自然検索は重要な流入経路であることがわかります。
SEO施策を行う上で、
・内部施策
・コンテンツSEO
・外部施策
の3つの取り組みが必要ですが、今回はコンテンツSEOについて掘り下げてみていきましょう。
基本的なことのおさらいになりますが、コンテンツの作成においてE-E-A-Tの考え方は欠かせません。E-E-A-Tの4要素は経験(Experience)、専門性(Expertise)、権威性(Authoritativeness)、信頼性(Trustworthiness)に分かれており、要するに独自の専門性を持ったコンテンツを信頼性のあるサイトから発信することが重要なのです。

SEO対策をするうえで、コンテンツを複製するために生成AIを活用する事例も増えています。では、どのような良い点・悪い点があるでしょうか。下記にまとめました。
良い点
• 企画段階のアイディア出しが可能
• コンテンツ作成の工数を削減できる
• コンテンツの量産が可能に
悪い点
• ファクトチェックが必要
• オリジナリティに欠ける内容になりがち
• 独自性を出すために修正が必要
• 最新情報をキャッチできていないことも
上記の良い点を活かしつつ、悪い点を補うことが重要といえます。
ステマ規制
ステルスマーケティングは、大きく分けてなりすまし型と、利益提供型の2つに分かれており、いずれも消費者が投稿を見て、純粋なユーザー投稿ではないため誤認する投稿といえます。詳細は下記の記事でまとめています。

ステマ規制が行われるに至った背景に、インターネット広告がマスメディア4媒体を上回る中、インフルエンサーを含む消費者のステルスマーケティングの知識不足や規制などのルールがないことが要因の一つとして挙げられています。この状況から消費者が被害を受けるだけでなく、知らぬ間に加害者にもなりうる状況がリスクであるため対策が行われていきました。
ステマ規制の概要は下記のとおりです。
• 開始時期:2023年10月1日
• 規制事項:ステマに抵触する投稿
• 規制対象:過去の投稿を含むすべての投稿
• 罰則の対象者:事業者
• 罰則内容:2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれかまたは両方
過去の投稿すべてがステマ規制の対象になることは特に注意が必要です。インフルエンサーに依頼して、PRがついていない投稿や、アフィリエイト記事にPR表記がないなど、規制の対象となるため、過去に取り組んだ施策を網羅的に確認しなければいけません。
X(旧:Twitter)の動向
2022年10月にイーロン・マスクがTwitter社買収をしてから、さまざま取り組みが行われました。下記に、一部抜粋した取り組みを記載いたしますが、多くの取り組みが短期間に行われていることがわかります。
2022年
・11/01 | 公式認証システムをサブスクリプションモデルに転換。
・12/12 | Blue(旧 Twitter Blue)の正式提供を開始。
・12/22 | 表示回数機能の追加。
2023年
・1/24 | キーワード広告、ベータ版の提供開始。
・2/03 | クリエイター向け広告レベニューシェアプログラム開始。
・2/08 | Blue加入者は4000文字までの長文投稿が可能に。
・3/23 | Blue が世界中で利用可能に。
・7/13 | コンテンツ制作者への初の収益支払いを実施。
・7/24 | サービス名称をXに正式に変更。
・7/28 | クリエイターへの広告の収益シェアが世界中で開始。
引用:Xの未来
大きな変化がある一方、Xは消費者に情報収集の場として活用されています。

SNSや動画サイトを情報収集に利用している人も
株式会社フォーイットの調査によると、商品を購入する前の情報収集先として、インターネット検索に次いでXが活用されていることが調査からわかります。

SNSや動画サイトを情報収集に利用している人も
性別に分けてみると男性はX・YouTube、女性はInstagramを参考にしている結果になりました。ユーザー層によって力を入れるSNSがこの調査からもわかるのではないでしょうか。

“ECデビュー年齢”平均はZ世代16歳、Y世代20歳!
また、お気に入りのショップやブランドからの公式情報の仕入れ先はInstagramやLINEなど複数ありますが、上のeBay Japan合同会社の調査から、SNSにおいてはXがどの世代においても1位であることがわかります。
Xと同じぐらい話題になったSNSとして、2023年7月にMeta社がローンチしたテキスト共有アプリ「Threads(スレッズ)」もおさえておきたいです。全体的な仕様はXに似ていますが、広告などの取り扱いは現時点では行っていません。Instagramと相互リンクが可能なため、Instagramのフォロワーにテキスト情報を気軽に共有する場としての活用が期待できます。
リリースから5日でユーザー数は1億人を突破し、2023年10月時点でMAU1億2,000万人、DAU約3,300万人となっています。XのMAUは5億5,000万人なので、ユーザー数で比較すると大きな差がありますが、今後Xの動向次第で大きくユーザーが流れる可能性もあるため、一定の頻度で更新をしても良いかもしれませんね。
(※)引用:メディアからはオワコン扱いされがちな「スレッズ」が、実はユーザー数を増やしはじめている模様。
2024年問題
トラック運転者の労働時間に関する基準「改善基準告示」の改正が2024年4月に適用されます。物流業界における輸送の需要に対してトラック運転者が不足して、需要すべてに対応しきれなくなるおそれがあり、需要に応えるためには設備投資などによる業務効率化と採用強化が必須になるのです。そのため、配送業者のコストが増加し、それに伴う送料増が不可避と言われています。
配送業者への負担を減らすべく、各事業者が取り組みを行っているため、その一部を紹介します。

「物流2024年問題」への対応のため、ファンケル負担で実施
株式会社ファンケルは2024年1月下旬から2月末までの期間限定で、通信販売の注文時に不在・在宅にかかわらず指定場所に届けるサービス(=置き配)を選択したお客様に、自社サイト内でのお買い物時に活用できるポイントを付与する施策を行います。

再配達率の低下で配送ドライバーの負担やCO2排出の低減を目指す
ZOZOTOWNでは、商品注文時にお客様が選択する「受け取り方法」の初期設定を、9月28日(木)より「あんしん置き配(玄関前)」に変更しました。これにより、初期設定を置き配に変更する前と比較し、置き配の選択が2倍以上となり、置き配指定可能な注文のうち、現在では約70%が置き配で配送されています。

初期設定時は注文内容の確認画面で置き配に関する注意喚起をポップアップ表示で行っており、置き配に抵抗のあるユーザーを配慮したUI設計となっています。
事業者ができる2024年問題への取り組みとして、下記を実施することができれば配送業者の負担を減らすことができるでしょう。
- 再配達を抑えること
• 配送時に置き配を選択可能に
• ポスト投函可能なメール便の利用 - 配達回数を減らすまとめ買いの促進
• セット販売の提案
• 送料ラインの引き上げ - (置き配やポスト投函が可能な場合)
「日時指定なし」の優先選択
最後に:時代の流れに対応すべく、何事もまずは触ってみるところから
生成AIやSEO、Xなど、新しい技術の台頭やそれに合わせたアルゴリズムの変化が当たり前のように起きています。さらに、消費者は小売店とECサイトどちらでも買い物をすることが常であるため、事業者においてもイチ消費者として買い物をしながら事業者視点を忘れずに言語化をすることが非常に重要です。
法規制や新サービスなど変化が激しいEC業界において、積極的に自分自身の手で触れてその良し悪しを決める動きを取っていただきたく思います。無料で試せるものや自社に導入しなくても顧客として利用することで、新たな可能性を感じることができるかもしれません。
「2023年EC関連ニュースまとめ」をご覧いただき、ありがとうございました。2024年もコマースピックをどうぞよろしくお願いいたします。
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