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WeChatとは?
WeChat(微信)とは、Tencent(騰訊)が提供するメッセンジャー機能を中心としたマルチサービスアプリで、中国版LINEとも言われています。メッセージだけでなく電子決済、ショッピング、チケット予約、公共料金の支払い、ミニプログラム(ミニアプリ)など、日常生活にリンクしたさまざまな機能が搭載されています。また、ここ数年で動画視聴、検索機能、ライブコマース機能などが強化されたことから、WeChat上ですべてのネットサービスが完結できるようになりました。このようなことから、今やWeChatは人々の生活とは切っても切り離せないアプリとなっています。
WeChatは月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を超えており、中国本土だけではなく、香港・台湾・シンガポールなど「中華圏」で利用されています。WeChatのタイムラインは、「モーメンツ」と呼ばれ、モーメンツ上で日々の体験や商品の紹介・販売が行われています。モーメンツには、「コメント」や「いいね」を残すことが可能です。
注目すべきはこのモーメンツの利用頻度です。弊社の調査データによると、モーメンツは非常に高い頻度で閲覧や投稿がされており、1日11回以上閲覧する方は全体の約7割、1週間に1回以上投稿する方は全体の約8割を占めています。LINEのタイムラインを想像すると、この頻度の高さを感じていただけると思います。


さらにWeChatは中国本土、日本国内問わず友人・知人・家族など自分と親しい近い間柄の人物とのコミュニケーションや情報収集に利用されていることから、クローズドで信頼性の高い情報の発信・拡散に向いていることがうかがえます。
WeChatを活用したマーケティング施策はどんな企業におすすめ?
WeChatは、「中国本土で実店舗を展開している企業」「インバウンド客の多い店舗を日本国内で運営している企業」のマーケティングにおいて有効です。前述した通り、WeChatはオープンなコミュニケーションというよりは、クローズドなコミュニケーションに向いており、主に既存顧客との接点の場・リピーターづくりに適したSNSです。そのため、マーケティング活用としても「自社商品やサービスが好きなファン」を囲い込み、ファンに向けて情報を発信しリピーターや紹介、口コミを獲得するというのが基本的な考え方です。
このような、企業が独自に持つ顧客向けのマーケティング手法を中国では「私域流量(プライベートトラフィック)」と呼んでいます。以前は中国の主要SNSやEC(Douyin(抖音)・RED(小紅書)・天猫・京東など)では、オープンなプラットフォームでマーケティングを行うことが重要視されていましたが、新規顧客獲得単価の向上などの影響から、ここ数年は既存顧客へのコミュニケーションやリピーターを獲得するためのマーケティング手法が注目されています。
最もシンプルなWeChat活用施策としては、公式WeChatアカウントを開設し、アカウントフォロワー限定の店頭クーポンを発行することで、公式WeChatアカウントをフォローするきっかけを作ることです。特にWeChatと相性の良い実店舗との連動を考える場合には、実店舗にWeChatアカウントやミニプログラムのQRコードを掲載し、来店・購入していただいた顧客に対して公式アカウントへのフォローを誘導します。公式アカウントをフォローしたユーザーに対して、記事配信、DM、WeChatグループでの日々のコミュニケーションを行うことによって、顧客のファン化やリピーターの獲得、友人への紹介、越境ECでの購入などに繋げていくことができます。
WeChatミニプログラムを活用することで各企業に合わせた機能を自由に開発・実装できますし、WeChat Payとの連動により商品購入との紐づけも行いやすいという企業側のメリットも多いです。中国人団体旅行の解禁によって注目度が高まっている訪日インバウンド需要の増加を受け、WeChatは中国本土、香港、台湾、シンガポールなどの「中華圏ユーザーとの接点の場」としてますます重要度が増していくでしょう。
WeChatを活用したマーケティングの3ステップとは?
WeChatのマーケティング活用における基点は、「WeChat公式アカウント」です。アカウントの開設から始める、最も基本的で効果的なマーケティングを3ステップでご紹介します。
ステップ1:公式WeChatアカウントの開設
公式アカウントは、「日本企業」として申請を行うことができます。業種や業態によって必要な書類が異なりますので、自社で申請を行うか、社内に詳しい担当者がいない場合は、
SNS運営を得意としている企業に相談しましょう。また、中国SNSの”公式認証”取得の場合、基本的には運営担当者自身の情報提供も必要になります。日本国内で展開されているSNSとは必要になる書類や手順が異なりますので、その点は注意が必要です。
ステップ2:公式WeChatアカウントのメニューバー設定(クーポンページの制作)
公式アカウントを開設することができれば、次はメニューバー(タブ)の設定を行います。外部サイトやミニプログラムへのリンク、過去の記事への誘導など自由に設定することができるので、どのようなメニューバーにするかを決定しましょう。弊社としましては、クーポンページを制作してメニューバーに組み込むことをおすすめしています。アカウントをフォローしたユーザーに対してスムーズにクーポンページへ誘導することができ、来店や購入を促す効果が高いためです。メニューバーはWeChat公式アカウントの顔ともいえる注目される場所なので、目的に応じてより効果を発揮できるメニューを設置しましょう。
ステップ3:フォロワーに対しての情報発信
1か月に最大4回まで記事を配信することができます。記事を配信すると一定の割合でフォローを外すユーザーが出てきます。必ず4回配信する必要はなく、フォロワー数やユーザーの反応を考えた上で月の配信回数を決定しましょう。
ただし、公式アカウントで記事更新を行っているだけではフォロワー数は増えていかないため、フォロワーを増やす施策を並行して行うことが重要です。クーポン発行が難しい場合は、WeChat上でフォロー誘導を行う広告配信システムがありますので、そちらを活用して広告配信を行うことも有効です。
これだけは気を付けたい!効果的なポイントと企業事例
日本の企業においても、昔からWeChatのマーケティング活用が行われています。
WeChat単体事例1:ライトオン社
来店時に利用できるクーポンページを公式アカウント内に設置することで「旅ナカ」での来店を促進。さらに実店舗での積極的なアナウンスによる公式アカウントとクーポンページの認知度向上も加わったことで、アカウント開設からわずか4か月でファン数を大幅に拡大。訪日中国人を含む免税売上が前年を大きく上回るという成果に繋がりました。
引用:訪日中国人の来店を促す「WeChat(微信)インバウンドパッケージ」を提供開始「株式会社ライトオン」が先行導入、前年を大きく上回る免税売上を実現
WeChat単体事例2:名創優品産業社「MINISO名創優品」
店頭にあるQRコード、広告を通じてWeChatの公式アカウントへの誘導を行っています。WeChatを通じて1,400万人以上のユーザーと繋がりを持っており、ミニプログラムの月間利用者は600万人超え。店舗ごとに専用のWeChatグループが存在し、ユーザーの属性や趣味別などの複数のグループを運営しながら日々ユーザーとのコミュニケーションを行っています。WeChatグループがあることで、広告費用をかけることなく自社の多くのファンに効果的に情報を発信できるという大きな強みがあります。
実店舗をお持ちの企業様がこれから仕掛けていくマーケティング施策としてはずせないのは、やはりインバウンド向けのマーケティング施策でしょう。インバウンド施策を行うにあたっては、新規ユーザー向けの施策・既存ユーザー向けの施策(リピーター・紹介増加・越境ECでのリピート購入)を組み合わせて実施することが有効です。
新規ユーザー向けには、RED、大衆点評、クーポン施策などを組み合わせて、「認知向上」「SNSにおける検索対策」「販促施策」を同時に行うことがベストです。今回、ご紹介したWeChatは既存顧客との接点を強みとしたSNSであるため、顧客が一定数増えたタイミングで他のSNSや旅行アプリと組み合わせてマーケティングを行い、相乗効果を狙いましょう。
WeChat複合事例:Tastea Trustea Japan社「CoCo都可」
WeChat、RED、在日中国人来店プロモーションと実店舗を連動させた施策により、個人旅行解禁前後比で店舗売上120%を実現しました。オンラインとオフライン、複数のSNS、プロモーション施策を組み合わせることで、より効果がわかりやすく実証された事例です。

引用:人気タピオカドリンク店の店舗売上が個人旅行解禁前後比で120%に!インバウンド回復を見据えた長期的な中国SNS複合戦略が売上増加に寄与
中国人団体旅行の解禁もあり、今後訪日中国人の人数は大きく回復していくことが予測されます。WeChatに関してはまだまだ限定的な取り組みのみにとどまっている企業が多いですが、今回ご紹介した企業を参考としていただき、さまざまなSNSや旅行アプリなどとの複合的な活用を視野に入れながらマーケティングを行ってみてはいかがでしょうか?
■中国マーケティングラボ
https://www.cnmlab.jp/
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