
2022年、アンファーのロングセラー商品「スカルプD薬用スカルプシャンプー」が14回目のリニューアルを行いました。前回の記事では、市場の変化やニーズの多様化など、リニューアルに至る背景を紹介しました。今回は、「詰め替え」ではなく「付け替え」という企画がどのように生まれ、商品として実現するためにどのように開発を進めていったのかを、お伝えします。
この記事の目次
歴代のスカルプDに共通する想い
アンファーでは日々、新しい技術や成分を研究しています。そこには、今、このタイミングに合った新しいものをアップデートし続けたい想いがあります。世の中の状況に応じた新しいものを提供することが、お客様のためになると考えているからです。
そうやって生まれてきた新しい発想を反映して、リニューアルを行ってきました。毎年のようにリニューアルを行っていた時期もあります。
前回紹介した通り、スカルプDは防腐剤を使っていない特性上、これまでは詰め替え用を出していませんでした。アンファーとしては、いつどんなときに使っても良い状態の商品を提供したいという強い想いを持っています。しかし、詰め替えをすると、どうしても空気や汚れに触れたり、菌が入ったりするリスクがあります。また、同じボトルを使い続けることも、防腐剤フリーのスカルプDとの相性が良くありませんでした。
ただ、これはスカルプDの特性上の話であり、世の中の詰め替え用の商品が良くないわけではありません。実際、詰め替え用の商品は世の中に浸透していて、当たり前のものとなっています。昨今では、SDGsやエコを推奨する流れから、詰め替え用のニーズはより高まっています。
スカルプDのレビューやお問い合わせでも、詰め替え用を求めるご要望は多くなっていました。そういったなかで、これまで出していなかった詰め替え用の開発に、いよいよ着手すべきタイミングだと考えました。
ただ、詰め替え用の商品はすでに広く流通し、多くの方に受け入れられているものです。単に詰め替え用を出すだけでは、お客さまのご要望には応えられますが、新しい価値の提供ではありません。だからこそ、「詰め替え」ではなく「付け替え」という発想に至りました。
試作品は400個以上!「付け替え」を実現するためのトライ&エラー
商品開発には、大きく2つの軸があります。
ひとつは、商品の機能、中身の開発です。今回のリニューアルでは、新たな皮脂吸着成分を配合しました。頭皮の毛穴詰まりの原因は油分で、それが最終的に抜け毛などの頭皮トラブルにつながります。今回配合した成分には、悪性の油分を吸着して流すものが含まれています。
そしてもうひとつの軸が、プロダクトデザインです。今回、詰め替え用にチャレンジすることは決まっていて、そこからどのように世の中にアプローチして何を提供できるか、担当デザイナーに考えてもらいました。
「付け替え」というアイデアは、企画の比較的初期の段階で出てきました。よくある詰め替え用のような形も良いのですが、スカルプDのプロダクトとしての認知、そして使いやすさを維持しながら、ユーザービリティも意識して生み出された提案が、付け替えです。
最初に担当デザイナーから付け替えのアイデアを聞いたとき、おもしろいと思う一方で、それが世の中にフィットするかどうかと考えると、懸念もありました。社内でも、良いと思う人もいれば、言葉でこそ賛成していますが不安に感じている人もいたかもしれません。
その原因として、最初に提案された試作品は元のサイズと比べてかなり大きく、さらに当初は簡単に付け替えができる構造ではなく、組み立て式で時間がかかることも懸念点でした。
そこから、おおよそ三段階に分けてブレイクスルーがありました。一つ目は、付け替えの方法を簡単にすること。二つ目は、サイズ感をより小さくすること。三つ目は、より安定できる状態にすることです。落下テストなど各種テストも繰り返し行っています。
リニューアルにより新しいものを提供すると同時に、安定性・安全性もとても大事です。いくら良いものであっても、毎日使い続けていくなかで、安定性や安全性、機能性が担保できなくては意味がありません。
15代目が完成するまでには、400個以上の試作品が作られました。開発を進めるなかで、何かを直すと、別の箇所が悪くなることがあるのが、難しいところです。
たとえば、サイズを小さくすると安定性・安全性が弱くなり、反対に安定性・安全性を強めると使いづらくなる、といった具合です。そういったせめぎあいで、1~2ミリ単位のサイズ調整や、素材の調整などを行っていきました。
商品開発において大切なのは、ブレない軸を作ること
開発にあたっては、基本的に私はユーザーになりきることを意識して、安定性や安全性に加え、使っていてどう思うかをデザイナーに伝えるようにしました。作り手の目線だと、どうしても気づかないことがでてきます。
また、商品の品質管理などを担う管理系部門のメンバーにも一緒に動いてもらいました。自分たちだけだとバイアスがかかってしまうことがあるので、第三者の視点を入れることが大切です。
そんな中でもっとも難しかったのが、容器の安定性・安全性です。お客様が商品をどのように使うかは、ある程度は想定できますが、すべてを網羅するのは非常に難しいことです。新しいものを提供するにあたり、どのような判断軸を持つべきか基準値を作ることに苦労しました。
それでも、お客様の期待を超えること、そのためにチャレンジが必要という軸を、ずっと持ち続けていたのです。簡単ではないけれど、前を向いて新しいほうに行く選択を取り、難しい状況でも、元に戻ることを考えはせず、「付け替え」を完成させるために何をすれば良いか終始考え続けました。
15代目ならではのメリットと、さらなる改善の可能性
さまざまなリニューアルを続けてきたスカルプDですが、15代目も、これが完成だとは思っていません。これからも世の中の状況に合わせて、常にアップデートをしていきたいと考えています。
そのために、いろいろなご要望を頂きたいです。たとえネガティブな声でも、それは改善のチャンスであり、改善できればより喜んでもらえると考え、日々研究を続けています。
今回のリニューアルで良かった声としては、「毎回ボトル捨てなくて済む」「最後まで使いきりやすい」といった声がとても多かったです。
詰め替え用へのご要望で、多かった「毎回ボトルを捨てたくない」というお声は、今回のリニューアルで応えられたと思います。また、15代目は、「エアレスポンプ」を採用しており、中身が減るにつれて容器が収縮する構造のため、底に中身がたまらず、最後まで使い切りやすくなっています。
今回のリニューアルにより、まずはこれまでは対応できていなかった「詰め替え用がない」といったお客様のお声に応えることができたかと思います。「付け替え」はまだ新たなスタートラインに立ったばかりです。今後お客様の意見を聞きながら、さらに改善を続けていきますので、ご期待いただけますと幸いです。
「スカルプDリニューアルの道③:リニューアルは伝えるまでリニューアル」へ続く
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