「令和4年度消費者意識基本調査」から考える、消費者のECサイトに対する本音
ニュースの概要

2023年(令和5年)6月13日、消費者庁が「令和4年度消費者意識基本調査」(以下「基本調査」)の結果を発表しました。基本調査では、消費者の日常の消費生活における意識や行動、消費者事故・トラブルの経験などの調査・分析が行われています。

本記事では、その調査項目のうち、『(2)「インターネットや SNS の利用」について』の「調査結果の概要」から、EC事業者にとって役立つ情報を抜粋して解説します。

参照情報:消費者庁HP「消費者意識基本調査」

調査の概要

本記事で参考にしている情報は、「基本調査」の調査項目のうち、『(2)「インターネットや SNS の利用」について』の「調査結果の概要」P23~P34です。

インターネット上で「商品・サービスの予約や購入」を利用したことがあると回答した人が対象の質問となっています。つまり、これまでにECを利用したことがある人に対して、その利用について質問した内容です。

消費者はどれくらいの頻度でECを利用しているのか?

インターネットでの商品・サービスの予約や購入をどの程度しているかという質問には、回答が多い順に以下のようになっています。

  1. 月に2~3回程度:32.2%
  2. 月に1回程度:24.0%
  3. 数か月に1回程度:22.4%

この結果は、一般的に消費者がどれくらいの頻度でECを利用しているのかを知るうえで参考になります。自店舗の顧客のデータと比較してみることで、自社の特徴を知ることもできるでしょう。

なお、上記は調査対象者すべての回答をもとにした割合ですが、基本調査には性別・年齢別のデータも記載されているので、自社のメインとなる顧客層の割合も確認してみるとよいのではないでしょうか。

消費者がECを利用するときに心配・不安に思うこととは?

購入前の心配

インターネットでの商品・サービスの予約や購入について心配なことへの回答は、多い順に以下のようになっています。

  1. 個人情報が漏えいや悪用されている:58.7%
  2. 商品・サービスが期待やイメージとは異なる:55.0%
  3. 粗悪品や不良品が届く:52.5%

この結果は、消費者がECを利用する際、価格や商品そのものの問題以外で、どのような点で購入をためらいやすいのかを知る参考になります。上記の心配を解消する説明やカスタマーサポートを行うことで、購入の後押しになる可能性があるでしょう。

ECサイトの信頼度を測る基準

口コミ・外部からの評価が重要

インターネットでの商品・サービスの予約や購入で気を付けていることについて、15項目の質問には、「当てはまる(『とても当てはまる』+『どちらかというと当てはまる』)」の割合が高い順に以下のようになりました。

  1. 口コミや評価を判断材料にする:84.6%
  2. 大幅に安く販売されている場合は注意する:82.0%
  3. 複数のサイトから情報を集め、信頼できるか確認する:79.0%

この結果は、前述の「購入前の心配」に対し、消費者がどのような方法でそのECサイトの信頼度を判断し、心配を解消しているのかという答えにもなります。

そして、消費者がECサイトの信頼度を測る基準として大きいのが、口コミや評価、外部サイトでの情報であることがわかるのではないでしょうか。そのため、ポジティブな口コミ・レビューを集めることは、ECサイトの信頼度を上げるために重要であるといえます。

良質な商品・サービスを提供することは大前提として、口コミ・レビューを書いてもらえるように働きかけをすることは、自社サイトの信頼度を上げるために効果的と考えられます。自社サイトだけでなく、SNSや自社サイト外での口コミ・評価も定期的にチェックするとよいでしょう。

ネガティブな口コミ・評価があった場合、それが正当なものであるならば、改善点と捉えましょう。口コミ・評価に対して返信ができる場合、ネガティブな意見に対してお詫びや今後の改善を伝えることで、印象が変わることもあります。

また、大幅に安く販売している商品がある場合、なぜ安いのか理由をきちんと説明することで、消費者の警戒感をやわらげるようにしましょう。

重要だが意外と読まれない情報

インターネットでの商品・サービスの予約や購入で気をつけていることについて、15項目の質問に対する回答は、「当てはまらない(『どちらかというと当てはまらない』+『全く当てはまらない』)」の割合が高い順に以下のようになりました。

  1. 個人情報や履歴データ等の取扱いについて確認する:46.8%
  2. 安全性に関する情報(対象年齢や認証マーク、使用方法、成分、消費期限等)を確認する:42.6%
  3. 取引条件や利用規約(解約や返品等)を確認する:41.7%

この結果から、ECを利用する際、「個人情報の漏えいや悪用」について心配する人は多いものの、その対策の根拠となる情報はあまり確認されないということが伺えます。だからといって、これらの情報を掲載しなくてよいというわけではありません。

ただ、多くの消費者が細かなところまで確認していないということを前提として、特に取引条件や利用規約(解約や返品など)で重要な点は、カートや決済ページのような購入者が必ず目にする場所にもわかりやすく提示するなどしたほうが、トラブルを防げるのではないでしょうか。

実際に経験したネガティブな購買体験

インターネットでの商品・サービスの予約や購入において実際に経験したことへの質問は、回答が多い順に以下のようになっています。

  1. 商品・サービスが期待やイメージとは異なる:52.1%
  2. 望まない広告メールが送られてくる:47.6%
  3. サイズや数量等を間違えて注文してしまう:31.8%

消費者がこれらの体験をしてしまうと、そのECサイトに対してネガティブな印象を持たれてしまい、リピートにつながらない要因になると考えられます。そうならために、次のような対策が考えられます。

  • 商品・サービスが期待やイメージとは異なる

→商品ページで過不足のない説明を行う。
→商品を複数の角度から撮影した写真、細部をアップで撮影した写真などを掲載する。
→商品の使用シーンの画像・動画を掲載する。

  • 望まない広告メールが送られてくる

→メール配信の登録をわかりやすく提示して、いつの間にか登録されていたという状況にならないように気をつける。
→登録の際に、どのようなメールが送られてくるのか、ユーザーにとってどんなメリットがあるのかを説明する。

  • サイズや数量等を間違えて注文してしまう

→商品ページで、サイズ・数量の選択をわかりやすく提示する。
→サイズを選ぶ際の参考となる表を掲載する。
→カートでサイズ・数量をわかりやすく確認できるようにする。

インターネットの広告・販促を消費者はどう感じているのか?

インターネットの広告や仕組みについて、便利だと感じるものへの質問では、回答の多い順に以下のようになっています。

  1. 決済アプリと連携したポイント付与やクーポン:60.9%
  2. ポイントやランクが上がっていくキャンペーン:55.0%
  3. 検索結果の上位におすすめ商品が表示される仕組み:48.5%

この結果から、上記のような販促施策は、消費者にポジティブに捉えられることがわかります。今後の施策の参考になるのではないでしょうか。

逆に、インターネットの広告や仕組みについて、不利益が生じるおそれがあると感じるものは何かという質問に対しては、回答の多い順に以下のようになっています。

  1. 年齢や性別、収入、居住地等に合わせて表示される広告(例:転職サイトやマッチングアプリ等):57.8%
  2. SNS上のつながりや関心を基に表示される広告:57.6%
  3. 入力を省略して、ワンクリック等で購入できる仕組み:51.6%

上記のような施策は、一般的によく行われるものですが、消費者にネガティブに捉えられる可能性があることを覚えておきましょう。特に、情報を勝手に使われることに対する警戒感が伺えます。

「入力を省略して、ワンクリック等で購入できる仕組み」は、消費者にとって便利なように思えますが、購入する気がなかったのに購入になってしまった、間違えて購入してしまったということも起こりやすく、説明や導線に注意が必要と考えられます。

購入につながる施策と敬遠される施策

インターネットでの商品・サービスの予約や購入において、これまでに実際に目にしたり、経験したりしたものに関する質問では、回答が多い順に以下のようになっています。

  1. 『残りわずか』等、売り切れ間近のような表示:78.7%
  2. 『●人が閲覧中』や『●人が購入済み』等、他人の動向の表示:72.0%
  3. 割引等の特典の有効期限をカウントダウンで表示するタイマー:61.7%

この結果から、上記のような表示は消費者の目にとまりやすいことがわかります。

また、インターネットでの商品・サービスの予約や購入において、実際に商品・サービスの予約や購入、会員登録などにつながったり、困ったりしたものに関する質問には、回答が多い順に以下のようになっています(※「特にない:35.9%」を除く)。

  1. 解約までの手続やページが分かりにくい:25.7%
  2. メールマガジンやセール情報の初期設定が『購読』や『通知』になっていた:20.7%
  3. 『残りわずか』等、売り切れ間近のような表示:17.0%

上位2つは、消費者にとってネガティブなイメージになります。たとえこれらの方法で一時的に解約を引き止めたり、メール登録がされたりしても、結果的にはそのECサイトの口コミ・評価を下げることにつながる可能性があります。消費者にとってわかりやすく、快適な購買体験ができるECサイトであることを心がけましょう。

一方、「『残りわずか』等、売り切れ間近のような表示」は、予約や購入につながりやすいと考えられます。もちろん、嘘の情報を表示してはいけませんが、在庫が少なく売り切りたい商品がある場合は、こういった表示が効果的といえます。

【まとめ】消費者・顧客の気持ち・行動に沿った施策を

基本調査は、一般的に消費者がECを利用するときの気持ちや、行動の理由を知る参考になります。EC事業者が良かれと思ってやっていたことが、実はあまり効果がなかった、逆に消費者にとってネガティブ経験になっている、あるいはEC事業者が気づいていなかった効果的な施策などに気づくきっかけにもなるのではないでしょうか。

また、基本調査と自社の顧客データを比較してみることで、自社のECサイトならではの特徴に気づくこともあるかもしれません。本記事と合わせて、ぜひ一度、消費者庁HPで確認できる基本調査の内容にも目を通してみてください。

参照情報:消費者庁HP「消費者意識基本調査」

合わせて読みたい

https://www.commercepick.com/archives/34644

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ