
2023年3月30日、LINE株式会社によるEC事業者向けLINE広告セミナーが開催されました。このセミナーでは、LINE広告の基本を押さえた上で、実際にLINE広告に出稿して効果を出しているさくらフォレスト株式会社の事例について、売上につながるターゲティングやクリエイティブのポイントが紹介されました。本記事の前半ではLINE広告について、後半ではLINE広告を活用した具体的な事例について要点を紹介します。
【登壇者】
LINE株式会社
Demand Generationチーム マネージャー
須藤 悠祐さん
さくらフォレスト株式会社
企画部
吉田 健人さん
LINEとLINE広告の概況
LINEについて
須藤さん:LINEは、2022年12月末時点で国内月間アクティブユーザーが9,400万人となり、そのうち86%の方に毎日利用されています。9,400万人というと、日本の総人口の約75%が利用していることになり、日本国内の生活プラットフォームとして定着しているサービスといえるでしょう。

須藤さん:また、ユーザーの年代の偏りも少なく、総務省発表のデータによると、全世代で8割以上が利用しているサービスとなっています。こういったユーザーの規模の大きさやアクティブ率の高さ、年代の幅広さがLINEの強みです。
LINE広告の主な掲載面

須藤さん:LINE広告の主な掲載面は「トークリスト」の最上部、「LINE NEWS」、「LINE VOOM」です。また、LINE広告ネットワークへの配信を有効にすると、外部メディアにも簡単に配信できます。なお、配信先のメディアはLINEによる厳格な審査を行っています。
EC業界におけるLINE広告の活用状況
須藤さん:2022年12月末時点で、LINE広告の全利用業種のうち、34%程度がEC関連の業種です。特にコスメやファッション、健康食品などが多くなっています。
LINE広告の最新アップデート
須藤さん:LINE広告では、次の機能アップデートを行いました。
- 詳細ターゲティングの項目追加:趣味・関心 全38項目 / 購買意向 全51項目に
- アニメーション広告:トークリスト最上部にアニメーション形式の広告が出稿可能に
須藤さん:また、審査について次のアップデートを行っています。
- 14の商材カテゴリーを新規受け入れ
- システム/体制の強化によって、一部の広告において審査期間を短縮
- 同カテゴリーの商材は、1広告アカウントから出稿可能に
サポートのご案内

須藤さん:LINE広告では「LINE広告90日間スタートダッシュサポート」というサービスを提供しています。自社でLINE広告を運用されている企業さま、一定金額以上の月額で出稿をご検討中の企業さまにお役立ていただきたいサービスとなっています。
さくらフォレストに聞く、売上が爆増する広告の見つけ方
さくらフォレストの事業紹介

吉田さん:さくらフォレスト株式会社は、自社通販事業、宿泊事業などを主に展開している福岡の企業です。また、グループ会社で漢方特化の通販事業も行っています。
通販事業では、「さくらの森」という通販サイトを運営しています。『ともに豊かに』をコンセプトに、化粧品やサプリメントなどを中心に、約40商品を販売しています。今回、LINE広告の出稿を行ったのは、「めなり極」などのサプリメントです。
LINE広告導入の背景とさくらフォレストが考える媒体の強み
吉田さん:LINE広告を導入した背景として、まず、LINEは日本人のほぼ全員が使っていると言っても良いくらい生活の一部になっているアプリであることがあげられます。また、保有データ量*が多いため、学習精度の高さを期待しました。他社代理店から良い評判を聞いたことも、導入を後押しした理由です。
*データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。
須藤さん:実際に導入してみて感じられた、良いところや強みはいかがでしょうか?
吉田さん: 1日あたり200件~300件の獲得が可能で、期待していた獲得件数は達成できており、ボリュームのある媒体だと感じます。弊社がターゲットとしている50~60代に強く、他媒体よりもその層が厚いと感じています。また、弊社がこれまで蓄積してきた豊富な顧客リストを、類似配信で活用できる点も強みだと考えています。
須藤さん:LINE広告に出稿された後、売上などへの貢献度はいかがでしょうか?
吉田さん:売上は向上しています。また、他媒体と比較して1,000円ほどCPAが安いため、通販利益という視点でとても効果が出ていると考えています。
LINE広告の運用とその効果

須藤さん:安定的に運用いただいているなかでも、出稿を停止されていた期間もありました。
吉田さん:2022年2月にCPAが25,000円くらいに高騰して、一方で月に30件ほどしか獲得できない時期がありました。要因として、クリエイティブの変更や記事のPDCAを回していなかったことが考えられます。その際、他媒体に一度注力するためにLINE広告を一時停止しました。
須藤さん:その後、2022年9月に出稿を再開いただきましたが、その経緯はどのようなものだったのでしょうか?
吉田さん:他媒体で7~8月にめなり極の獲得が伸び、LINE広告にもう一度横展開して獲得を伸ばそうとしたのがきっかけです。LINE広告でも期待した通り件数が伸び、9月に1日あたり30件ほど獲得できるようになりました。
その後11月にアニメーション広告を開始したところ、獲得件数がさらに伸び、めなり極だけでも月3,000件ほどの獲得ができたのです。
さくらフォレストが考えるLINE広告運用のポイント
ターゲティング

須藤さん:まずはターゲティングの観点から、顧客データを活かしてLINE広告で成果を出すために、どういった工夫をされましたか?
吉田さん:元リストを大量に入れて、類似1%で配信しました。それが一番効果的でCPAも抑えられると考えました。LINE広告はユーザーが多いため、リストが良くてもガチャ要素があり、工夫が必要です。具体的には、男女を分けたリストを約30パターンテストして、効果が良いものに寄せていきました。
須藤さん:リストの検証にあたり、1グループあたりのサイズや予算はどの程度を目安にされていますか?
吉田さん:元リストに関しては、1リストあたり3,000件ほどあれば効果が見えます。初動のリストの見極め方は、キャンペーンの予算を1日あたり3万円で効果を見ています。
須藤さん:効果の見極めはどういったところで判断しますか?
吉田さん:ツールを使い、5,000円を超過したあたりで止めるかどうかを決めます。記事遷移にかかる金額が1人あたり2,500円くらいで、初動でそれを上回っているリストは停止しています。
リストが悪いとCVが貯まってもCPAは戻らないので、初動で切っても大丈夫だと自分は考えています。
クリエイティブ

須藤さん:さくらフォレストさんには、LINE広告のうち「スクエア」「画像(小)」「アニメーション」をご活用いただいています。9月に再開いただいて、初動は「スクエア」が中心でしたが、その後、「画像(小)」「アニメーション」で効果をあげられています。
LINE広告の出面の4割がLINE NEWS、4~5割がトークリスト最上部、残りがその他で、トークリスト最上部のうち6割くらいが「画像(小)」「アニメーション」が表示される仕組みとなっており、ここの攻略が重要です。
これらのクリエイティブについて、制作時のポイントをお伺いできるでしょうか。
吉田さん:実績ベースの話になりますが、一番効果が出やすいクリエイティブが価格訴求です。初回購入割引の価格を赤字で目立つように記載しました。また、タイトルの頭に絵文字を入れるとCTRが高く出やすいのではないかと思います。あとは、商品に関連していて目を引くようなクリエイティブに関してはCTRおよびCVRが良かったです。
成果が出ているクリエイティブ めなり極 画像(小)

吉田さん:めなり極のLINE広告「画像(小)」の価格訴求では、定価に斜線を引いて、初回割引価格を赤文字で大きく目立つようにしています。運転免許風のクリエイティブは、テキストを変え、商品と関連性のある画像を作っています。また、季節性と価格訴求を掛け合わせ、12月に合わせプレゼントなどを想起させる画像を入れたクリエイティブなども作成しました。
成果が出ているクリエイティブ めなり極 画像(アニメーション)

吉田さん:アニメーションでは、画像(小)で当たった価格訴求の画像をそのまま展開したところ、CTRもCVRも高い効果が出ました。6枚の画像の組み合わせ作り、ループ数や表示回数などをテストしてもっとも効果が高いパターンを導き出しました。

吉田さん:このクリエイティブ(上画像)では、訴求を大きく目立つように、商品に関連するブルーベリーの画像が動くようにしています。聞いた話では、右から左に動かすほうが、CTRが高く効果が良いとのことです。

吉田さん:こちらのクリエイティブ(上画像)では、視力検査の画像が動くようになっています。白黒でCTRは高くはないのですが、その分、CVRが担保できています。
LP制作のポイント

吉田さん:LPは、ファーストビューのタイトルを大きく意識して作っています。このLP(上画像)では、「ブルーベリーの6倍」というワードを入れています。ブルーベリーは目に良いという印象がありますが、その常識をくずすようなところを意識しています。ファーストビューは週2回程度テストを行っています。

吉田さん:離脱防止のポップに関しては、自分たちは入れないようにしています。理由として、記事に入ってきてすぐ離脱する人に離脱ポップを出して商品ページに飛ぶと、リターゲティングの質が悪くなるためです。

吉田さん:また、LPの最後のほうにアンケートを入れて答えてもらうことで、購入アクションのハードルが下がり、CVRが上がるのではないかと考えています。アンケートの設問数は、テストの結果、4問の効果が高いと感じています。

吉田さん: 購入オファーはページ最下部にしか置いていません。理由としては、記事を最後まで読んでもらい購買意欲を高めた状態で飛ばし、リターゲティングの精度を上げるためです。遷移先のページではチャットボットを設置しているのですが、すぐ起動するとCVRは上がるもののLTVが下がりやすい傾向にあるので、タイミングをどうするかいろいろとテストしています。
アニメーション広告導入の結果
吉田さん:9月にLINE広告を再開したときは、スクエアで1日あたり30件くらいの獲得でした。その後、運用を本格化して、11月にアニメーション広告を始めたところ、前月比3倍くらいに獲得件数が伸びました。その後、当たったグループの予算を上げることで、月6,500件くらいの獲得になったのです。
CPAは、9月は12,000円前後だったのですが、アニメーション広告を始めてからは10,000円台に収まってきました。
今後の展望
吉田さん:個人的な目標では、獲得件数を1日あたり1,000件くらいまで伸ばし、CPAを9千円に下げたいです。また、大手さんがやっているようなブランディングで、サプリをプロテインのように格好良く売ったらどうなるか挑戦してみたいです。
セミナーに参加してみて
LINE広告で効果を出すためのターゲティングとクリエイティブについて、かなり具体的かつ細かく事例を知ることができました。
ターゲティングについては、ユーザー規模が大きいというLINEの強みを活かしつつ、いかに早く当たりのリストを見つけるかが重要なようです。
クリエイティブについては、LINE広告は他媒体に比べて画像が小さいため、よりわかりやすさが求められる印象です。さくらフォレストさんの事例ではアニメーション広告の効果がかなり大きくなっており、注目のクリエイティブといえます。
また、CPAやCVRだけでなく、リターゲティングやLTVを意識しているところも参考になるのではないでしょうか。 今回のセミナーでは、実践しやすいポイントが多く紹介されているので、それらを踏まえ、自社商材でうまく活用できれば、売上に結びつくことが期待できそうです。
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