
2年連続で楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞したメンズファッション専門店「GENELESS」は日々の運営で、さまざまな工夫を細部に施しています。今回は、楽天市場のECコンサルタントから高い転換率(CVR)で驚かれることのある商品ページをどのようにして作成しているのか、代表取締役の矢田裕紀さんに伺いました。
この記事の目次
ページづくりは商品の仕入れから始まっている
――GENELESSがページを作る際、商品の魅力を整理するためにどういったことから始めているのでしょうか。
矢田さん:商品の買い付けや発注は私が担当しているのですが、その際、商品についてお客様に明確な情報をお伝えできるように、メーカーには事細かにヒアリングをしています。私はGENELESSを立ち上げる前まで、アパレル業界に長い間務めていました。その経験から、メーカーとお話する際は、商品の素材となる糸の種類や太さ、重さなど、発注段階で一般の小売業者が気にしないところまで商品について把握するようにしています。
商品を仕入れた後は、私自らがモデルとなって商品写真を撮影するのですが、着用することで他の商品との細かな違いや、長所や短所に気づけます。メーカーの持っている情報と私自身が感じられる商品の着用感などの情報を、コンテンツ化できるように整理することが商品ページを作成する上で最初におこなうことです。

他社が見つけていない商品の価値をページに加える
主戦場は検索結果の上位表示商品にあり
――メーカーの情報とご自身の情報を商品ページに入れるとのことですが、ランキングや他店舗の情報を参考にページの構成を考えることはありますか?
矢田さん:ランキングはあまり参考にしていません。ランキングに載っているのと同じような商品ばかりを取り扱ってしまうと、価格競争は避けられません。特に、景気が悪かったり、ファッション業界が低迷したりすると、メーカーも小売業者も売れている商品に寄せて販売する傾向があります。その最たるものがECモールなどの売り場であり、ランキングに色濃く出る点だと思います。
当店の役割は他店舗では販売していない商品の創出だと考えています。そういった理由から、取扱商品を決定する上でランキングを参考にしてはいないのです。他店舗の情報を参考にする際は、商品を仕入れるためではなく、商品ページ内に掲載する要素を決定する目的であることが多いです。検索結果でビッグワードを検索したときに、上位に表示されるトップ企業の商品情報を確認します。
取り扱う予定の商品と見比べて、同等かそれ以上の情報を出せているか、その情報に見合うバリュープライスがあるかどうかを販売段階で考えています。トップ企業が気づけていない、お客様にとって魅力や価値を感じられるプラスアルファの要素を商品ページに追加できるようこだわっているのです。
PBを伸ばす上での徹底的な価値追求の覚悟
――参考にするというよりは、他店舗の商品と比較し、足りない要素を追加するイメージが近いように思いました。
矢田さん:当店の商品を同じメーカーから仕入れて販売される店舗もいますが、他社と同じ商品を販売するには「在庫を積む」「価格を抑える」、「投資をする」といった覚悟を持たないと勝てません。
超人気商品や他社の価格をくぐれる型番商品であれば一定の売上を作れますが、PB(プライベートブランド)の世界でやるには、相当の費用をかけて戦う覚悟が必要です。仮に当店の商品に勝とうと思うのであれば、数万の在庫と数百万円の広告費を相手に戦う覚悟がないと難しいと思います。
――楽天市場内でのいわゆる有名店舗が継続的にランキングを取れているのはそういった価値追求と投資の結果の現れですね。
矢田さん:楽天市場のように定番商品が売れるマーケットでは、お客様にとって当たり前の商品を売り続けることが鍵です。1年だけ販売して続かないような商売では意味がないと思います。
やるからにはすべてが柱商材になって欲しいという想いが大切です。他店のランキングに出ている常連商品も私と同じようにそれくらい力を入れて販売しているのではないでしょうか。短期的に売上を立てるためではなく、工夫と知恵と資金を投下して覚悟してやっているのです。
顧客からの信頼を勝ち取る正確な情報提供
――安易に売れている商品を真似すれば売上が伸びるとはいえない理由がわかったような気がします。GENELESSが商品ページを作成する際に共通して意識しているのはどういった点でしょうか。
矢田さん:商品ページはとにかく情報を正確に伝えることに注力しています。商品の情報と私の体験を踏まえた、着用したときのメリットとデメリットを正確にお伝えすることは、お客様に誤解を与えないことにもなり、弊社としてもリスクヘッジになるでしょう。
デメリットも工夫でメリットへ
――正確に情報を伝える上でデメリットを表現するのは難しそうですね。
矢田さん:商品ページに掲載する情報をどのようにしてうまく伝えるかは最も工夫している点かもしれません。デメリットは誤解を生まないようにストレートに表現することもありますが、表現の仕方1つでメリットとして伝えることも可能です。
過去に成功した事例を1つ紹介いたします。生地が薄い洋服やズボンを夏に販売する際、その薄さを全面に出している商品は、当時私が調べた限りではありませんでした。薄さに言及することが低評価や買われない理由につながると考えたからでしょう。
当店では”りんご1個分の軽さです”と表現したことで、単に薄いというネガティブな印象ではなく、夏場に軽くて清涼感を持ってもらえるようなポジティブな印象を与えられることを意識しました。その表現が功を奏し、今では他の店舗の方にも使っていただいている表現となっています。

矢田さん:レディースファッションでは機能は値段よりもパッと見の可愛さが購入動機に繋がりやすいというデータがあります。メンズファッションは大きく形が異なる洋服が少ないこともあり、生地感や機能性、サイズ感など、その中にたとえデメリットが入っていたとしても商品のイメージが正確に伝わるページ作りのほうが好まれやすいようです。
代表が自らモデルを務める理由とは?
――メンズファッションならではの視点ではありますが、ガジェットなど男性の購入比が高い商品でも応用が効きそうですね。商品の着用モデルは矢田さんが務めていますが、これにも理由や利点があるのでしょうか。
矢田さん:私がモデルを務める理由の1つに身長の問題があります。世間一般にモデルは高身長の方が多く、同じパンツを履くとモデルの方はくるぶし丈であっても、一般の方が履いてみると丈が足りなくなることがあるのです。着用イメージを正確に伝えられるモデルが見つかるまでは私が務め続けるかと思います。

矢田さん:それ以外のメリットは商品の違いに気づけることです。同じ商品でも生産時期によって、生地が異なったり、コットンものだとサイズが若干変わったりと、メーカーからの仕様書上は同じままでも、実際に着用すると違和感に気づけます。他の店舗では昨年と同じと伝えられていることが、当店では差分を長所として打ち出すことができるのです。
さらに、外部のモデルに依頼していると商品が売れたかどうかの結果はわかりますが、その商品の細かな良い点には気づくことは難しいでしょう。
――何よりも商品への理解力が上がり、それが商品ページへと反映されていることがわかります。デメリットを挙げるとするとどういった点になりますか。
矢田さん:自分で着用すると時間が奪われてしまうことは避けられないデメリットだと思います。しかし、それを補えるだけの情報を得られるため私が着用しているわけです
メインの売り場が現在は楽天市場ですので、顧客層と合っていますが、他の売り場に展開することを考えると今のままではいけないかもしれません。ZOZOなどの若年層向けのマーケットで売る場合は、パッと見の格好良さや可愛さを入れる必要が出るため、この点は課題といえるでしょう。
レビューとの距離感で商品ページをブラッシュアップ
――レビューを商品ページに活かして改善を図るといった話を聞くことが多いですが、レビューとの距離感の取り方についてはどのようにお考えでしょうか。
矢田さん:いちばん大事なのでは自分の軸を定めることです。私自身、カジュアルウェアを取り扱っている長年の経験から、販売している商品の品質と価格のバランスを見極める感覚には自信があります。
商品ページ内に誤解を与えないように正確な情報を伝えても、ユニクロレベルの高コスパの商品を販売しても低評価が付くことはあります。なので、当店の提供できる軸から外れた評価をされる方に関してはお買い物いただかなくても良いと思っています。品質を改善できるかどうかは自分で判断するからです。
例えば、イージーパンツにジッパーが付いていないと低評価のレビューを頂いても、商品ページに書いていませんし、コストカットのためになくしたものですので、ご期待には応えられません。
また、商品レビューなどお客様が記載した情報をもとに購入いただいた結果、イメージと違ったとクレームの声が出た場合に、それは当店が提供した情報ではないため気にしていません。
一方で、自分が想定していなかったユースケースをレビューで頂く際は参考にしています。ゴルフをする方やバイクに乗っている方からのレビューは、どちらもやらない私には気づけない視点があります。また、ペットを飼っている方からのレビューで、洋服への毛のつきやすさに言及されていたのですが、こういった要素は、商品ページに入れる上での新しい視点になります。
商品ページづくりの肝は”情熱”
――何でもかんでも鵜呑みにしては軸がぶれて、声を上げない多数のお客さまにとって悪影響を与えてしまうことも考えられますね。最後に、思うように商品の魅力をページに表現しきれていない担当者に向けてメッセージを頂けますか。
矢田さん:作り手は商品に情熱を持ち、五感でしか感じられない部分をどれだけ正確に伝えるかが重要です。好きでもない商品はやはり売れません。取り扱っている商品が好きで、日常的に自分が利用してこそ、優れた点が見えてくるからです。昔、ハイブリッドカーが一世風靡している時代にトヨタのプリウス以外を販売する営業マンは自社の商品の優れている点を探したはずです。同様に自社の商品が他社の商品と比べてどこが優れているのか見つけて打ち出していく必要があります。
ネットショップの商品ページは対面の営業とは違い、一度作ったら何度も接客してくれます。お客様に商品が届いたときに満足していただけるために、仕入れから商品ページとして世に出すまでを気持ちを込めて想いを伝えられると良いと思います。
インタビューを通して:軸をぶらさず商品に情熱を注ぎ続ける
検索結果の上位に表示される商品は、その検索ワードで最も売れている商品群といえます。その商品と比較し、お客様が感じられる新たな価値を見つけることは容易なことではないはずです。その視点を作り出しているのは矢田さんが積み上げてきた経験がなせる技のように感じました。しかし、商品に情熱を持って自らもその商品のファンとして正確な商品情報や五感で感じたことを発信することはできるはずです。ぜひ、その視点でGENELESSの商品ページをご覧いただければと思います。

GENELESSでは、3月11日に最後に残った在庫を販売する場所としてアウトレット専門の実店舗をオープンしました。オンラインで販売すると送料がかかってしまうため、実店舗でしかできないアウトレット価格で販売しています。お近くにお住まいの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
■GENELESS 楽天市場店
https://www.rakuten.co.jp/geneless/
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