「名前詩」の価値を高めるブランディング戦略と小さな市場で売上を伸ばすゆうひ堂の戦略
インタビューの概要

大阪府高槻市にある株式会社ゆうひ堂(以下、ゆうひ堂)は、大切な方の名前を詩の一部として織り込んだ「名前詩(なまえうた)」の制作をしており、ギフト品としてECで販売しています。名前詩は指名検索の際に想起されづらい中、ゆうひ堂はどのようにして市場のシェアを広げていったのか、代表の光山浩司さんに話を伺いました。

認知が低い頃にECで販売開始

――名前詩をECで販売しようと思ったきっかけは何でしょうか。

光山さん:名前詩との出会いは12年前のことです。名前を使って詩を作るというアイデアに感動し興味を持ちました。元々、私は言葉遊びやものづくりが得意だったので、もしかしたらうまくできるのではないかと思っていたところで、義父の還暦があり、プレゼントに自分で名前詩を作ってみました。初めて作った名前詩は義父に大変喜んでもらえて、贈った私自身も嬉しい気持ちになれたんです。

それから友人や知人から作って欲しいと依頼されるようになり、無償でプレゼントしていましたが、想像以上に反響が良かったので、副業として販売を始めてみることにしました。

名前詩は認知が低く、衝動買いするような商品でもないので、実店舗などのオフラインの販売よりも多くの人に訴求しやすいECの方が適しているだろうと考えました。また実店舗に比べECの方が先行投資を抑えられる点もオンラインでの販売を決める大きな理由です。

現在は楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、自社ECサイトを運営しています。1点1点違った商品をお贈りするため、完成品をお届け前に確認できる仕組みになっています。お客様にとって大事な贈り物なので、ご納得いただき、安心して購入いただきたいという気持ちから、始めた取り組みです。

「贈り物」として認知を広げる取り組みとは?

SNSで話題のキーワードで認知を拡大

――一般的に贈り物といえば、お花やお酒が選択肢としては多いと思います。その中で、名前詩は想起されづらいように思えますが、どのようにして市場を開拓してきたのでしょうか。

光山さん:名前詩は言葉自体の認知度がそこまで高くないので「名前詩そのものがどのようなものなのか」、そして「名前詩が贈り物として活用できること」を知ってもらうことを重視してきました。

名前詩を知ってもらうシンプルな方法として、作品見本を見せるということがありますが、例えば「山田太郎」さんのような見知らぬ誰かの名前詩ではイメージが湧きません。そこで「うんどうかい」や「ハロウィン」などのキーワードで名前詩を作り、SNSで発信していました。

コロナ禍の2020年春頃には「アマビエ」が注目されていたので、コロナの収束を願う気持ちと、ソーシャルディスタンスを啓発する2つの詩を作り、画像データで販売して売上金全額寄付のチャリティ企画を行いました。

この「アマビエ」の詩による取り組みは反響が大きく、学校の保健だよりに掲載されたり、楽天市場の「知って繋がる支援の輪」に特集されたりと、名前詩が広く認知されるきっかけとなりました。

大切な人の感動を伝える「お客様の声」

光山さん:名前詩は単なる言葉遊びではなく、大切な人を感動させる有効なプレゼントとなります。それを知ってもらうには「お客様の声」が何より重要だと考え、レビュー施策にも力を入れてきました。

フォローメールを送るタイミングや、文面に私たちの思いを伝えることで、ギフトとして活用した成功体験や感動体験をレビューしていただけるよう工夫をしてきました。長文のレビューをいただけているのは、ゆうひ堂の特徴です。また、レビューへの返信もレビュー施策として力を入れています。

小さな市場で戦わず間接競合に目を向ける

――商品自体の検索ボリュームが少ない場合、どのような考えを持って市場を伸ばしていけばよいかお考えをお聞かせください。

光山さん:取扱商品の市場が小さくお客様が少ない世界では、どうしても競合同士が少ないお客様を奪い合ってしまいます。名前詩の場合は楽天市場の5店舗ほどでお客様を取り合っており、サービス合戦、価格競争になってしまい双方にとってつらい状態でした。

名前詩は1作品1作品誠実に向き合って作っているため、安売りできるものではありません。名前詩アプリや、予め用意した50音カルタのようなものを使ったりすることで効率化を図っている会社もありますが、しっかりとした品質の作品を提供するためには、一定の時間がかかります。

そこで競合同士が手を取り合って、良いものを作って、自分たちが売値価格で販売できるようコミュニケーションを取り合ってきました。こうすることで、名前詩という小さな市場でお客様を取り合うのではなく、「ギフトといえば名前詩」という世界を目指して間接競合(注1)を意識することができます。

施策としては「還暦祝い」や「退職祝い」などギフトを使用するシーンで検索するお客様をターゲットとしています。実際にお客様からは「お花にするつもりだったけど名前詩を知って名前詩にしました」といったお声を沢山いただいております。

名前詩に限らず商品自体の検索ボリュームが少ない場合は、間接競合に目を向けてみるのも良いかもしれません。そして可能なら直接競合と協力できれば良いと思います。

(注1)間接競合・・・自社とは違う商品を同じお客様に販売している競合を指す。

名前詩の価値を高めるブランディング戦略

――名前詩のギフトとしての価値を高めるために、どんな取り組みをされていますか?

光山さん:「名前詩」を単なる言葉遊びではなく、文学的な価値を伴う高貴な作品として認めてもらうことを意識しています。しかし名前詩は参入障壁が低いこともあり、稚拙なものや安直なもの、悪質なものが出回っています。特にキャラクターを無断で使用する版権侵害の作品や他の作品を模倣したものなどは、名前詩の文学的価値や業界の品位を低下させてしまう心配があります。

また、そもそも「名前詩」は、とある作家さんが保有する登録商標でしたが、多くの作家や企業が無断で使用している状況にありました。そこで、「稚拙、安直、悪質な作品」と「誠実に向き合っている作品」を線引きして、顧客に対しても違いが明確になるようにできないかと考えたのです。

そして私は2019年に権利者より商標権を譲受して「一般社団法人日本名前詩協会」という団体を設立しました。日本名前詩協会では、条件をクリアすれば名前詩協会に入会できて、無料で商標を商用可能です。「名前詩協会認定マーク」があれば無断使用ではないこと、本物の名前詩であることを証明しています。

条件は次の4項目です。

  • 詩に言葉重複がないこと
  • 誠実に作詩をしていること
  • 感動に繋がる作品であること
  • 他者の作品を模倣していないこと

この4つの条件は誠実に創作している者にとっては容易、そうでない者にとっては難しいものとなるように工夫しています。このような取り組みを通じて、本当に良い名前詩が評価される状況の構築を目指しています。

間接競合を見据えた広告戦略と運営の工夫

楽天市場ではRPP広告で注文、TDA広告でお気に入りを獲得

――自社のサービスを知ってもらうためにも広告施策も行っていると思いますが、楽天市場で効果的な広告とそうでない広告の違いがあれば、教えてください。

光山さん:2017年までは自然検索流入がメインで、広告の出稿はしていませんでしたが、ネット広告を使う人が増えるなか、売れ行きが悪くなり、広告出稿を拡大することで売上を再起できました。

あらゆる広告を試してみましたが、名前詩は知ったときに購入するような商品ではありません。そのため衝動買いを誘うニュース広告などは不向きでした。一方で目的買いに作用するRPP広告は効果がよくROASも安定しているため、「還暦」や「敬老の日」などのギフトのタイミングを狙って出稿しています。

また、TDA広告のようなディスプレイ広告はどうしてもROASが低くなりますが、「購入」ではなく「お気に入り登録」を目標として、長い目でみてのブランディングを目指すために利用しています。

オーダーメイド商品だけどキャンセルOK、あす楽対応

――店舗運営にあたって、工夫やこだわりなどがあれば教えていただけないでしょうか

光山さん:ゆうひ堂ではオーダーメイド商品でありながら、「作品を見てからキャンセルOK」と「あす楽対応」をしています。

名前詩はオーダーメイド商品ですから、完成するまで全容がわからず、お客様からすればどんなものかわからない商品を高額で購入することになります。この購入の敷居を下げるために「作品を見てからキャンセルOK」としました。

今でこそ多くの名前詩ショップで取り入れられていますが、当時はオーダーメイド商品を完成後にキャンセルできるというのは考えられないようなことでした。はじめはキャンセルが多数出たらどうしようという思いもありましたが、実際はほとんどキャンセルが出ることもなく、注文数を伸ばす結果になりました。

また、お花やお酒などの間接競合に対して、オーダーメイド商品の「納期」が、弱点になっていると考え、「あす楽」を導入しました。大切な人へのプレゼントほど、ギリギリまで迷い、悩み、「明日が誕生日!どうしよう!何も用意していない」そんなユーザーの需要こそが1番多いはずだと考えたのです。実現することは決して容易ではありませんでしたが、当店の受注の半分以上は「あす楽」。この発想は見事に的中しました。

――最後に今後の展望について教えて下さい。

光山さん:先日、お孫さんから名前詩のプレゼントを受け取ったという80歳のおばあちゃんから、お店へ感謝の手紙をいただきました。お孫さんだけでなくお店にまで感謝を示していただけるほどの感動を与えられるものです。

しかし、名前詩が与える感動や価値は、買った人にしかわからないものでもあります。今後はひとりでも多くの作家さんと協力して、ひとりでも多くの人に満足感と幸福感をご提供できますよう精進して参ります。

これをご覧になられた名前詩作家さんに置かれましてはご賛同いただけますと幸いです。

インタビューを通して:商品だけでなく、市場や利用シーンまで考慮した戦略を

取扱商品の市場が小さい商品を取り扱っていると、お客様からの認知を広げる方法や広告戦略などどのように売上を伸ばしていくべきなのか悩むこともあるでしょう。

しかし、商品だけに目を向けるのではなく、その商品が利用されるシーンや市場の状況にも目を向けることで広告出稿の仕方やブランディング戦略が見えてくることがわかりました。売上が停滞しているときや行き詰まっていると感じているときには、改めて自社の商品や置かれた市場、お客様の状況を見直してみると良いでしょう。

名前詩の価値を高めるために協会を立ち上げてまで真摯に挑む光山さんの運営方針は他の事業者様も参考になるのではないでしょうか。是非、自社の運営にご活用いただければと思います。

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