売上増でもEC化率は低下?15.8兆円の物販EC市場をカテゴリー別に読み解く

経済産業省が2026年10月に公表した「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2025年の国内物販系BtoC-EC市場は15兆8,233億円となり、前年比3.97%増加しました。一方、EC化率は9.80%と、前年の9.78%からほぼ横ばいでした。
カテゴリー別に見ると、EC売上が増えてもEC化率が下がる分野がある一方、EC化率が上がっても売上が減る分野があります。市場規模とEC化率を合わせて読むと、食品、家電、アパレルなど、それぞれの成長の背景や課題が見えてきます。
物販ECは6,039億円拡大、EC化率の上昇は0.02ポイント
物販系BtoC-EC市場は、2024年の15兆2,194億円から6,039億円拡大しました。EC化率は、その商品分野の商取引全体に占めるEC取引額の割合です。ECを利用する人や、ECサイトを持つ企業の割合を示すものではありません。
2025年のカテゴリー別の市場規模と伸び率、EC化率は次の通りです。なお、ここで扱うEC化率は物販系分野の指標であり、旅行などのサービスやデジタルコンテンツを含むBtoC-EC全体の比率ではありません。
カテゴリー | 2025年市場規模 | 前年比 | EC化率 |
|---|---|---|---|
食品、飲料、酒類 | 3兆3,332億円 | 6.96%増 | 4.66% |
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 | 2兆8,829億円 | 5.05%増 | 43.08% |
書籍、映像・音楽ソフト | 1兆8,495億円 | 1.14%減 | 57.93% |
化粧品、医薬品 | 1兆647億円 | 4.90%増 | 9.11% |
生活雑貨、家具、インテリア | 2兆6,258億円 | 2.51%増 | 31.73% |
衣類、服装雑貨等 | 2兆8,941億円 | 3.43%増 | 24.08% |
自動車、自動二輪車、パーツ等 | 3,742億円 | 12.18%増 | 3.89% |
その他 | 7,989億円 | 2.47%増 | 2.08% |
物販系合計 | 15兆8,233億円 | 3.97%増 | 9.80% |
伸び率が最も高いのは自動車関連の12.18%増でした。ただし、同分野のEC化率は前年の4.16%から3.89%へ低下しています。EC取引額の増加だけで、販売全体のオンライン化が進んだとは判断できないことがわかります。
食品ECは3兆円超、利用の定着に加えて値上げも影響
最大の市場は「食品、飲料、酒類」で、3兆3,332億円、前年比6.96%増でした。報告書は、コロナ禍を契機に広がった食品・飲料のEC購入が定着し、ネットスーパーの拡大が寄与したと推察しています。
また、オーガニックやヴィーガンといったニーズに対し、近隣のスーパーでは見つからない商品をECが補う動きも挙げています。日常の買い物の利便性と、専門的な品ぞろえの両方が、食品ECの利用理由になっています。
一方、市場規模は金額ベースです。報告書は物価上昇の影響にも触れており、売上増のすべてを購入者や購入数量の増加と捉えることはできません。自社の成長を検証する際は、客単価とともに注文数、購入点数、継続購入率を確認すると、値上げと利用拡大の影響を分けて把握しやすくなります。
家電とアパレルでは、購入前に解消すべき不安が異なる
家電・AV機器・PC関連の市場規模は2兆8,829億円、前年比5.05%増。EC化率は43.08%と高い水準でした。報告書は、仕様が明確で、事前の比較によって特徴を理解しやすい商品であることに加え、配送網や物流拠点の整備が市場拡大を支えてきたとしています。
対して、衣類・服装雑貨等は2兆8,941億円、前年比3.43%増、EC化率24.08%でした。サイズ感、色味、質感を購入前に確かめにくいという課題に対し、体型データを使ったサイズ提案や、購入後のサイズ・色交換の無料化といった取り組みが広がっていると紹介されています。
商品ページを改善する場合も、両分野では優先順位が変わります。家電なら比較しやすい仕様表と配送・設置条件、アパレルなら着用者の体型情報、実寸、交換条件などが検討対象です。どの情報が不足しているかを問い合わせや返品理由から拾うことで、自社の商品に合った改善策を選べます。
生活雑貨・家具は売上増でもEC化率が低下
「生活雑貨、家具、インテリア」の市場規模は2兆6,258億円で、前年比2.51%増でした。一方、EC化率は32.58%から31.73%へ、0.85ポイント低下しています。
報告書は、生活雑貨や日用品について、コロナ禍のストック需要が落ち着いた後も、まとめ買いや定期購入との相性がよいと指摘しています。家具・インテリアでは、実店舗で商品を確認し、ECで購入する行動や、店舗とECの在庫情報をつなぐ取り組みを取り上げています。
このカテゴリーは、購入頻度も検討期間も異なる商品を含みます。日用品では再注文のしやすさやまとめ買い時の送料、家具では店舗で見た商品をECで探せるか、在庫や納期を確認できるかが具体的な点検項目になります。カテゴリー全体の伸び率をそのまま自社の目標にするより、商品特性に合わせて購入過程を見直すほうが施策につながります。
書籍・映像ソフトはEC化率が上昇しても市場縮小
逆の動きを示したのが、オンラインコンテンツを除く「書籍、映像・音楽ソフト」です。EC化率は56.45%から57.93%へ上昇した一方、市場規模は1兆8,495億円と、前年比1.14%減少しました。
報告書は紙の出版市場や、DVD・ブルーレイなどの物理メディア市場の縮小を取り上げています。この数字は、電子書籍や動画配信を含めたコンテンツ消費全体の縮小を意味しません。商品そのものへの需要と、店舗からECへの販売チャネルの移行を分けて読む必要があります。
化粧品・医薬品は9.11%、店頭の役割も踏まえた設計を
化粧品・医薬品の市場規模は1兆647億円、前年比4.90%増、EC化率9.11%でした。この区分には美容・健康関連器具も含まれています。
報告書は、化粧品ではドラッグストアなどの店頭販売が充実していることや、カウンセリングを伴う対面販売が適する商品があることを、EC化率が比較的低い背景として挙げています。化粧品事業者にとっては、初回購入時の相談と、使い慣れた商品の再購入を分けて設計する余地があります。店舗で商品を知った顧客が、ECで迷わず同じ商品を購入できる導線も検討できます。
市場の数字を、自社の改善項目に落とし込む
今回の調査を自社の計画に使う際は、市場規模、成長率、EC化率をセットで確認すると、売上の伸びと販売チャネルの変化を切り分けられます。さらに、売上を客数・購入頻度・単価に分解すれば、市場の伸びに対して自社のどこが強く、どこに課題があるかを検討できます。
報告書で示された成長要因は、各社にそのまま当てはまるとは限りません。食品なら継続購入、家電なら比較と納期、アパレルならサイズの不安など、扱う商品の購入を妨げている要因を特定し、問い合わせ、注文、返品のデータを使って改善の優先順位を決めたいところです。
参考情報
経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」掲載ページ
参照箇所:17~25ページ。調査対象年は2025年。
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