
Meta Platforms(以下、Meta)は、2026年第2四半期の決算を発表しました。売上高は前年同期比28%増、主力の広告収益は27%増となり、広告表示回数と広告単価がともに伸びています。
成長を支えているのが、AIを活用したコンテンツ推薦や広告配信の高度化です。生成AIによる広告クリエイティブの制作も広がっているほか、WhatsAppやMessengerでは、AIが問い合わせ対応や商品提案、予約、支払いまでを担う「Meta Business Agent」の展開が進んでいます。
本記事では、Metaの決算を踏まえ、AIの活用が広告から接客・販売へどのように広がっているのかを紹介します。
広告収益は27%増、表示回数と単価がともに伸長
Metaの2026年第2四半期の売上高は608億100万ドルで、前年同期比28%増となりました。為替の影響を除いた場合でも27%増えています。
売上高の大半を占める広告収益は593億6,300万ドルで、前年同期比27%増でした。FacebookやInstagramなどを含むFamily of Appsにおいて、広告表示回数が14%増加し、広告1件当たりの平均価格も12%上昇しています。
Facebook、Instagram、Messenger、WhatsAppのいずれかを1日に利用した人数を示す「Family daily active people」は、2026年6月時点で平均36億人となり、前年同期から3%増加しました。
AIで広告配信とクリエイティブ制作を高度化
LLMで広告とユーザーの関心をまとめて分析
Metaは、広告配信におけるAIの活用をさらに進めています。2026年第2四半期には、「Meta Generative Recommender」と呼ばれる新たな仕組みを広告システムに導入しました。従来のように広告を一つずつ評価するのではなく、大規模言語モデル(LLM)を使って広告の内容とユーザーの関心をまとめて分析し、それぞれのユーザーに適した広告を予測します。
LLMを使ってユーザーの関心をより深く理解する初期検証では、Instagramにおけるアプリ内イベントのコンバージョンが1%向上しました。
また、広告と通常の投稿に対するユーザーの行動を分析するモデルや、広告の表示順位を決める「GEM」などの改善を組み合わせた結果、Facebookでは広告クリックが8.3%、コンバージョンが15.7%向上したといいます。
Metaはコンテンツ推薦にもLLMを活用しています。Instagramでは、公開されるすべてのリール動画とフィード投稿をLLMで処理し、投稿のテーマやトーンなどを分析。その情報をコンテンツや広告の推薦に利用しています。
ユーザーが過去にどのような投稿を閲覧したかだけでなく、投稿や広告の内容をAIが理解することで、より関心に合った情報を届けることを目指しています。
Advantage+の年間売上換算額が750億ドルを突破
AIを活用して広告運用を自動化する「Advantage+」も成長を続けています。Advantage+は、広告の配信対象や掲載場所、予算配分などをAIで最適化するソリューションです。Metaによると、Advantage+のエンド・ツー・エンド型ソリューションの年間売上換算額は、2026年第2四半期に750億ドルを超えました。
Metaが紹介した事例では、インドのオンラインアパレルブランド「Underneat」が、それまで手動で設定していたFacebookとInstagramの広告に、Advantage+の販売キャンペーン、オーディエンス、配置、予算最適化を導入。その結果、購入を13%押し上げ、カート追加のコンバージョンが16%増加したといいます。
AI広告制作ツールを900万社超が利用
広告クリエイティブの制作においても、生成AIの利用が拡大しています。MetaのAI広告クリエイティブ機能を一つ以上利用する中小企業は、900万社を超えました。既存の画像や動画をもとに、複数の広告素材を生成する機能も提供しています。
画像生成機能の利用は、2026年第2四半期に前四半期から2倍以上に増加しました。広告の実績データを次のクリエイティブ制作に反映しながら、企業ごとのブランドイメージや表現を維持できる仕組みも導入しています。
2026年7月には、Metaが開発した画像生成モデル「Muse Image」のAdvantage+への導入も始まりました。Metaは、広告主がブランドに合ったクリエイティブを、従来より少ない工数で制作できるようにする考えです。
商品を自宅に置いた様子をAIで可視化
Muse Imageは広告制作だけでなく、商品の検討体験にも活用されています。「Meta AI Shopping」では、カタログ商品を自分の空間に置いた様子をAIで可視化する機能を展開しています。
たとえば、販売されているソファを自宅のリビングに置いた場合、どのように見えるかを購入前に確認できます。
Meta Business Agentが接客・販売を支援
100万社超が毎週利用
MetaのAI活用は、広告による集客だけにとどまりません。2026年第2四半期には、企業向けのAIエージェント「Meta Business Agent」をWhatsAppとMessengerでグローバル展開しました。毎週100万社を超える企業が、顧客との会話や販売に利用しています。Instagramへの展開も始まっています。
Meta Business Agentは、顧客からの問い合わせへの回答、商品の提案、購入前後のサポート、販売などを行う仕組みです。
大企業向けには「Meta Business Agent Platform」も提供しています。APIなどを通じて、商品カタログ、CRM、在庫管理システムなどと接続し、企業ごとのルールやブランド表現に合わせてAIエージェントをカスタマイズできます。
顧客と会話するだけでなく、接続されたシステムを使って、企業に代わり具体的な処理を行うことも想定されています。
WhatsAppで予約から支払いまで完結
ブラジルで約400拠点を運営するレンタカー会社Movidaは、WhatsAppにMeta Business Agentを導入しました。WhatsApp上の一つの会話で、車種の選択、料金の確認、予約、支払いまでを完了できます。既存顧客の場合、最短3通のメッセージで予約を完了できるといいます。
Metaが紹介した1か月間の実績では、WhatsApp経由の1日当たりの予約件数が前年同時期から44%増加しました。また、WhatsApp上の会話の85%が、人による対応を必要とせず、AIエージェントだけで完結したと報告されています。
Meta Business Agentが目指しているのは、質問に回答するだけのチャットボットではありません。顧客の要望に合わせて商品やサービスを提案し、予約や支払いなどの手続きまで進める、AIによる接客・販売の仕組みです。
顧客との会話から事業改善まで支援
Metaは、Business Agentが顧客との会話から得た情報を整理し、企業に還元する機能も開発しています。
前日の顧客対応を要約し、顧客からどのような要望が寄せられているかを伝えるほか、将来的には事業を成長させる方法や競合情報、施策の成果などを提示する構想です。
Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは、最終的にBusiness Agentを、Metaのプラットフォームを使った事業の立ち上げや運営まで支援する「business-in-a-box」へ発展させたい考えを示しました。
Business Agentの収益化を開始へ
Metaは、2026年下半期からMeta Business Agentの利用企業への課金を始める計画です。MessengerとWhatsAppでは、Business Agentをサブスクリプションサービス「Meta One」の一部として提供します。企業は一定数のメッセージを無料で利用でき、利用上限を増やす場合にMeta Oneを契約するフリーミアムモデルを採用します。
これとは別に、利用量に応じたトークン単位の料金体系も導入します。Metaは2026年7月29日の決算説明会で、8月1日から、AIエージェントによる処理とメッセージ配信を合わせてトークン単位で課金する計画を示しました。
将来的には、サブスクリプションや利用量に応じた課金だけでなく、広告と同じように、Metaが企業に成果をもたらした場合に料金が発生する成果連動型の仕組みも想定しています。
WhatsAppの有料メッセージが新たな収益源に
FacebookやInstagramなどを含むFamily of Appsの「その他収益」は、初めて四半期で10億ドルを超え、前年同期比73%増となりました。
成長をけん引したのは、WhatsAppの有料メッセージとサブスクリプションです。有料メッセージのなかでは、企業が顧客に送る販促メッセージが最大の成長要因となっています。現在は、顧客がメッセージを読んだり反応したりする可能性を踏まえて配信先を選ぶ「最適化配信API」を経由した販促メッセージが過半数を占めています。
注文や配送などを知らせるユーティリティメッセージや、本人確認に使われる認証メッセージも増加しており、特にインドやブラジルで成長機会があるとMetaは説明しています。
MetaにとってWhatsAppは、広告を見た顧客を問い合わせへ誘導するためだけの接点ではなくなりつつあります。企業と顧客の継続的なコミュニケーションや、AIによる接客・販売そのものを収益化する基盤へと役割を広げています。
まとめ:Metaは広告の先にある購買体験を取り込めるか
Metaの2026年第2四半期は、広告表示回数と広告単価がともに伸び、広告収益が27%増加しました。その背景には、LLMによるコンテンツやユーザーの関心の理解、広告配信の精度向上、Advantage+による広告運用の自動化があります。
一方、今回の決算でコマースの観点から注目したいのは、AIの役割が広告の制作や配信にとどまらず、問い合わせ対応、商品提案、予約、支払いまで広がっていることです。
EC事業者にとってMetaは、FacebookやInstagramで顧客を集めるための広告媒体であるだけでなく、WhatsAppやMessengerを通じて接客や販売まで担うプラットフォームになろうとしています。
100万社を超える企業が毎週Meta Business Agentを利用し、収益化に向けた料金体系も具体化しました。Metaが広告の先にある「会話を通じた購買体験」を、次の成長領域として取り込もうとしていることがうかがえます。
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