花や植物をECでどう売る?──D2Cブランド「アンドプランツ」が挑む、みどりの購買体験の再設計
株式会社Domuz 小松泰彦さん
インタビューの概要

観葉植物や花といった“個体差のある商材”をECで販売し、花卉(かき)産業のDXを進めるスタートアップの株式会社Domuz(ドムズ)。D2Cブランド「アンドプランツ」とBtoB卸プラットフォーム「ハナイチ」を両輪に、「みどりのある暮らしをもっと身近に」する新しいコマース体験を作り出しています。

本記事では、株式会社Domuz アンドプランツ事業責任者の小松泰彦さんと、さまざまな新規事業やECの立ち上げを自身や支援として行ってきた経験を持つネクトラス株式会社の中島郁さんが対談。

「レガシーな産業」であるという花卉産業において、株式会社DomuzがどのようにITの力を使い、ブランドやECサイトを軌道に乗せることができたのか。また、市場全体を見たときに、今後どのように事業を展開して、同社のビジョンやコンセプトを実現していく構想なのかをお話しいただきました。

ロジカルなブランドコンセプトを熱量をもって徹底する

観葉植物・お花のD2Cブランド「AND PLANTS」

さんDomuzさんは、2018年の創業後、最初に行っていた事業を売却してから今の花卉領域の事業を始められたと聞いています。今の花卉領域の事業はどのような経緯で始まったものなんですか?

小松さん弊社の代表はもともとエンジニアで、受託開発などを手がけていました。そのなかで、「自社サービスを作りたい」と考えるようになり、代表自身が大の植物好きだったことから、2021年5月に花卉領域の事業が生まれました。

友人にも植物好きで知られていた代表は、コロナ禍において「在宅時間が増えたから植物を買いたいんだけど、何が良い?」という相談を受けることが多かったそうです。そこから、「初心者の人が植物を選びやすいECサイト」として「アンドプランツ」を立ち上げるに至りました。

中島さんこれまで事業立ち上げに多く携わってきた立場から見て、「アンドプランツ」は、いわゆる「綺麗ごと」を「ちゃんと考えてやっておられる」という印象を受けています。「綺麗ごと」というのは決して悪い意味ではなく、コンセプトや構想がしっかりあり、それを実現しようとしているという意味です。

私は「ECは最初の構想が大事だ」と言いつづけており、それをブレずに徹底することが事業成功の鍵だと考えています。「市場が成長しているからなんとなくECを始めました」という会社も少なくないなか、DomuzさんはECの構想をしっかりと持ち、その徹底を相当な熱量をもって実践されている印象です。

小松さん弊社は、代表がエンジニアということもあり、エンジニアやIT系スタートアップの経験者、ビジネス畑のメンバーが多く在籍しているのが特徴です。

一方、社内には花・植物の専門家も在籍しています。園芸店の店長経験があって書籍も多く出版している植物の専門家がいたり、花屋の店長経験者も含めてフローリスト(花を専門に仕事を行うプロの総称)が15名ほど在籍しています。

ビジネスのプロと花・植物のプロがお互いに意見を出し合い、細かくコミュニケーションを取りながらECサイトの制作や運営を行うことで、お客様視点を持ちながら事業を形にできている実感があります。

日々お客様と接するなかで気づいたことは、サービス内容に細かく反映するようにしていますね。

「あったら良いな」をITで迅速に実現する、自社開発の強み

ネクトラス株式会社の中島郁さん

中島さん「アンドプランツ」のバックエンドのシステムは自社で構築されているんですよね。

小松さんはい。受注管理システムなどを自社開発しています。花・植物に特化した特殊なシステムが必要だったので、少しずつ業務を固めながら自分たちで作り上げてきました。ECサイトの基盤にはShopifyを使っていますが、フロントのデザインやカスタマイズも内製です。その分、機動力があるのが、大きな強みですね。

中島さんシステム面は自前で作られているとのことですが、ECサイトのデザインや使い勝手などお客様から見える場所において、初心者向けに意識している点はありますか?

小松さん「あったほうが良いな」というサービスをITの力で実現することをつねに意識していますね。

たとえば、お客様のライフスタイルに合わせた植物・お花をおすすめする「植物診断・お花診断」や、発送前に樹形を選択できる「樹形選択サービス」などがそうです。

パーソナルお花診断

特に「樹形選択サービス」は、オペレーションの大変さから、他社さんにはなかなか手が出せないサービスだと思います。弊社の場合、発送現場と密に連携をとりながら、受注管理システムをカスタマイズして、一気通貫で対応できています。

地道なWebマーケティングと、高価格帯でも売れる「付加価値」が成長の要

中島さん集客はどのように行っていますか?

小松さん今は事業成長に向けて、アクセルを踏むフェーズにあり、集客施策としては、広告を主軸に、次いでSEO、SNSの順で注力しています。これまでは新規のお客様が多かったのですが、次第にリピート獲得の施策に注力するフェーズになってきました。

今後は動画の活用や、ブランディングも強化していきたいです。これまでのやり方も維持しつつ、UGCをベースに「このブランドだから買う」というコミュニケーションを広げていきたいですね。

中島さん街の花屋さんなどはBtoBの売上の上にBtoCの事業を行っているケースが多いように思います。Domuzさんが最初からBtoCで売上を作ることができた要因としては、何が大きいと思われますか?

小松さんまず、地道なWebマーケティングの積み重ねによるところは大きいと思います。同時に、最初から「付加価値をつけて高く売る」という利益構造を組めたことも大きいですね。

ただ観葉植物を売るだけでなく、空間に馴染むおしゃれな鉢の選定から植え替え、自宅への配送までを一貫して提供する体験をつくり上げたことで、植物を「暮らしを彩るインテリア」として提案できたことが大きかったと思います。

当時は植物を「おしゃれなインテリア」として売る競合が少なく、結果として多くのお客様に支持していただけるポジションを築くことができました。

当初は高価格帯の大きな植物を中心に扱っていたのですが、途中からお客様の間口を広げる意味も込めてテーブルサイズの小さい植物も展開しています。

中島さんなるほど。高くてもクオリティが良いものから始めて、徐々に汎用的なものへと広げていくというやり方ですね。

手のひらサイズの「テーブルプランツ」

現場のオペレーションへの理解が、スムーズな施策進行につながる

中島さんどのようにして現在の体制でECの運営を行うようになったのでしょうか?

小松さん:弊社で扱う観葉植物は、株を仕入れて管理や植え替えを社内で行っています。私が働き始めた当時は植え替えから梱包、発送まですべて手がけていましたね。スモールスタートで現場の苦労を経験できたことは、振り返ると本当に良かったと思います。

中島さん現場の業務に対して「これくらい時間がかかる」という感覚や、現場の苦労を知っていると、施策の企画でもオペレーションが回るかどうかのイメージができますよね。

オペレーションのことを無視して、「これくらい簡単だろう」と一方的に施策を進めてしまうと、回らなくなるというのはありがちです。それで営業と現場が関係性が良くないというのもよく聞く話です。

小松さんいまだにバランスには日々悩んでいますが、私が両方の責任者として意見を聞きながら進めているので、今のところうまくやれているかなと思います。

花卉産業全体のDX化を進め、「花のある暮らし」を浸透させたい

中島さん既存の事業が軌道に乗るなか、今後の課題はどこにあると考えていますか?

小松さん花卉産業に特化した複数の新規事業をスピード感をもって生み出しながら、花卉産業全体のDX化を進めていきたいと考えています。

花卉業界の現状を見ると、本当にレガシーな産業だと感じます。花や植物は機能で語れるものではなく、「情緒の塊」といえる存在です。そこは大切にしつつ、ITやデータの活用により効率化できる部分は大きいと考えています。弊社の場合、代表以外にも社内に経験豊富なエンジニアがいることは非常に大きいですね。

直近の取り組みとしては、BtoCだけでなくBtoBにも注力していく予定です。スタンド花や胡蝶蘭などの法人需要はまだ拡大の余地がありますし、他社のギフトオプションとしてお花を提供する取り組みも進めています。

長期的には、仕入れからまで販売を一気通貫で行えるプラットフォームを実現したいという構想があります。全国の生産者さんとコミュニケーションをとるなかで、生産者さん支援をしないと市場が縮小してしまうと感じています。私たちのITを活用するノウハウや売る力で、そこを支えていきたいんです。

中島さん生産という川上から販売という川下まで、プラットフォームとしてシステムから押さえることができたら盤石ですね。

海外ではもっと気軽に花を買ったり贈ったりしているなと思います。そういうライフスタイルが日本でも浸透すると良いですよね。

小松さんそうですね。花卉産業はまだまだ伸びる余地があると思っています。

そのための取り組みのひとつとして、2025年10月に自宅用の花に特化した「アンドフラワー」というサービスをリリースしました。花の領域においてはこれまで主にギフト用の需要で事業を拡げてきたのですが、「アンドフラワー」は日常的に花を楽めるよう1種類から花材をお買い求めいただけるサービスです。

同時にこのサービスは、前段でお話したプラットフォームの構築も視野に入れたものでもあります。たとえば「アンドフラワー」で自宅用のバラ10本セットを1,000人のお客様にお買い求めいただけるようになると、生産者さんは一度に数千本の単位でバラを卸せるようになるんです。各花材で大きなロットの販路を作ることが今後の花卉産業の伸長に必要だと信じています。

中島さん自社での販売だけでなく、他の会社さんとも提携されて販売を支援されていると伺いました。

小松さん植物は家具屋さんのECサイトなどで、花はギフト需要のあるブランドさんのギフトオプションなどで販売していただき、発送などのオペレーションは弊社が担うという取り組みをしています。

そういった形で、他業種で植物・お花を購入したいというお客様のニーズはあるけれど、扱いが難しいために手を出せないという事業者さんを、弊社のオペレーションとITのノウハウで支援していきたいと考えています。

またECに限らず、植物・お花を扱ったことのないリアル店舗で植物を販売できるよう支援を行うなども想定しています。花屋さん、植物屋さん以外のいろいろな場所で花や観葉植物が買えるようになれば、産業全体が変わっていくはずです。

AND PLANTS
https://andplants.jp

​ネクトラス株式会社
https://www.nectoras.com/

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