【ゲストスピーカー】
三浦 卓也さん
健康食品メーカー「ミウラタクヤ商店」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
この記事の目次
ひとりECならではの距離感が生む双方向コミュニケーション
柳田さん:できるだけ早く成長するために「広告」は欠かせないと伺いましたが、今回は「接客」についてお聞かせいただければと思います。
三浦さん:お客様の声を商品や広告に反映すると、成功の確率が高まると実感しています。悩みを抱えている方は多いので、リアルなお客様の声を出せば出すほど共感してくださるのです。そのために、消費者とつながる努力が重要だと考えています。
ミウラタクヤ商店では、ECサイトへの来訪者への対応にとどまらず、LINEで1件ずつお客様からの問い合わせに返信しています。これによりECの売上だけでなく、他の面でも大きな効果を感じています。
柳田さん:お客様の声を聞くことで、さまざまな取り組みのヒントが得られるということでしょうか。
三浦さん:はい。企画販売を行う際に、事前にお客様の声を聞くこともできます。お客様と友人のような距離感でコミュニケーションをとれることが、ひとりECならではの強みです。
柳田さん:組織の場合は難しくなる取り組みですね。
三浦さん:そうなんです。ひとりECだからこそ可能なことです。例えば、物販だけでなくワークショップのような体験型イベントを企画する際、これまで深いやり取りをした約30名のお客様に連絡を取り、「パーソナルトレーナーのワークショップを受けたことはありますか?」と尋ねました。
実際に体験した方から企画の内容や感想などを詳しく伺うことができ、ネット検索では得られない貴重な情報が企画立案に役立ちました。
柳田さん:ネット上に個人ブログなどはあるかもしれませんが、探し当てるのは容易ではありません。SNSでも見つけにくいとなれば、直接お客様の声を聞けるのは大きな価値ですね。
三浦さん:広告やSNSなど、あらゆる場面で共通して言えるのは、言葉にリアリティを持たせるには一次情報が不可欠だということです。その一次情報を得るために、お客様の声を聞くのが一番の方法です。そして接客に注力し続けることで、お客様との関係性が積み重なっていくと感じています。
柳田さん:待っているだけではお客様からの連絡は来ないと思いますが、何か工夫をされているのでしょうか。
三浦さん:EC事業者にコンサルティングを行う際、「LINE公式アカウントをサイトのフッターに設置する」提案をすると、「問い合わせが増えると大変だ」という反応をよくいただきます。しかし、設置するだけではほとんど問い合わせは来ません。ミウラタクヤ商店では、あらゆる場所に問い合わせ導線を貼り、特に行動完了後のページに設置することを意識しています。
また、質問や相談は情報に触れたうえで初めて思い浮かぶものです。そのため、一番効果を感じているのはメルマガの最後に「何かあればお問い合わせください」と添えることです。例えばダイエット情報をあえて不完全に書き、「わからないことがあれば三浦に連絡してください」と促す形にします。
さらに、問い合わせ窓口のテーマを広めに設定しています。ECサイトの接客というと商品の情報や使い方に偏りがちですが、ミウラタクヤ商店のコンセプトは「社会の脂肪を減らす」ことです。そこで無料のダイエット相談も受け付けています。
SNSでもダイエットコンサルタントとして発信し、そこからLINEへリンクを設けて問い合わせを受け付けています。
柳田さん:確かに質問をもらうのは簡単ではありません。質問が来ないほうが楽だと考える事業者も多い印象ですが、質問がなければお客様が何に困っているのかが見えてきませんよね。
お客様の声を起点にしたコンテンツと商品開発
三浦さん:何かコンテンツを作る際、もし“すべって”しまったら全て無駄になってしまいます。そこで、その確率を下げるためにお客様の声を基にネタを作ったほうが良いと考えています。そうすれば、少なくとも質問してくださった方は必ず見てくれます。
柳田さん:コンテンツが“すべった”かどうかは、どのように判断されているのですか。
三浦さん:メルマガの開封率を基準にしています。タイトルによって開封率が2〜3%ほど変わるので、低いときは“すべった”と判断しています。
柳田さん:メルマガの会員数が多ければ、数%の違いでも大きな影響がありますね。三浦さんは問い合わせを得るために試行錯誤されていますが、それが商品開発につながることもあるのでしょうか。
三浦さん:もちろんです。お客様からいただいた声をもとに商品化した例もあります。ミウラタクヤ商店の売れ筋商品のひとつに「バターコーヒー」がありますが、「カフェインレスが欲しい」という声を受けて商品化しました。
他にも「ビタミンBサプリ」にはお客様の声を反映しています。健康志向の方の多くは、海外のサプリメント販売サイト「iHerb」でビタミンBを購入されています。アメリカメーカーのサプリは含有量が多い点は魅力的ですが、「粒が大きくて喉に引っかかる」という声が多く寄せられていました。
そこで、半分の大きさにして2粒で同等の含有量を得られる「ビタミンBサプリ」を開発しました。こうした細かなニーズは、お客様からの問い合わせを通じて関係性を築く中で初めて気づけたものです。
柳田さん:お客様から積極的に声をいただけるように働きかける姿勢が大切ですね。三浦さんは顔出しでひとりECに取り組まれているため、人柄が伝わりやすく、お客様とも友人のような関係を築きやすいのだと思います。ただ、そのように取り組む方は意外と少ない印象です。中小企業や個人事業主であれば取り入れやすく、武器になるはずだと感じます。
三浦さん:そうなんです。やれば良いのに、やりたがらない方が多い印象ですね。語弊があるかもしれませんが、自分の印象に対して少し自意識過剰な方が多いのではと思います。「この見た目だから出てはいけない」とおっしゃる方もいますが、お客様はリアルな姿を知りたいだけです。美しくあろうがそうでなかろうが関係ありません。それでも「綺麗に整えなければ」と意識し過ぎる方が多いのかもしれません。
柳田さん:確かに、自分が出るのは恥ずかしいし、動画では話せないという方も多いですよね。
自分を素材にするひとりECの戦い方
柳田さん:三浦さんは、もともとお話が得意なほうだったのですか。
三浦さん:いえ、昨年さまざまなセミナーに登壇させていただく中で、少し話せるようになったかなと思います。新卒の頃は営業マンとして働いていましたが、コミュニケーションが取れず、成績も全く伸びませんでした。
柳田さん:ご自身で振り返って、どう変わったと感じていますか。
三浦さん:変わらなければいけないと思い、練習しました。接客を始めたのは、「外商をネットショップで実現できれば高単価の商品も売れるのでは」と考えたからです。そのためにはコミュニケーション力やスピーチ力が必要だと思いました。
柳田さん:とても共感します。私は前職で、当時伊勢丹の傘下にあった「BARNEYS NEW YORK」に勤めていました。20〜30万円のスーツは品質だけで売れるように思えますが、実際には「あなたが勧めるから」という理由で購入いただけることが多いのです。私がECを始めたのも、それを1対多の形で実現できないかと考えたのがきっかけでした。
だからこそ、接客に注力するというのは理にかなっていると思います。百貨店の外商でも、売れる理由は「伊勢丹だから」ではなく「担当者だから」という側面があります。三浦さんはまさにそれを具現化されているのですね。それを練習で身につけられたのは本当にすごいことだと思います。
三浦さん:練習できる環境を自分で作りました。昨年はオンラインセミナーやワークショップに50回ほど登壇しましたが、その半分は自分から主催者にお願いし、無料で登壇させてもらえないかと交渉しました。登壇を重ねるうちに評判が広がり、ほかのセミナーにも呼んでいただけるようになりました。そこで毎回、話し方や反応を振り返り、次に活かすことを繰り返しました。
柳田さん:セミナー登壇に活動を広げたことが、ECでの接客にもつながり、相乗効果が生まれているのですね。
三浦さん:知人の言葉ですが、「人生の経験すべてを仕事の素材にしたい」という考え方にとても共感しました。
柳田さん:ひとりECの運営は、誰しも1日24時間しかない中で、自分自身をリソースにするしかありません。ECの学校の運営や、お客様とのコミュニケーションもすべてネタになるということですね。
三浦さん:はい。すべて実験だと思っています。私の肩書きは「ミウラタクヤ商店 店主」であり、同時に「ひとりECの発信・啓蒙」も行っています。その裏には「ひとりECの運営者にミウラタクヤ商店の商品を知ってほしい」という狙いもあります。仕事の軸をあえてごちゃ混ぜにして、結果的にすべてを素材にできればいいと考えています。
柳田さん:一人で運営するなら、仕事と生活をきっちり切り分けるよりも、「どちらともわからないけれど楽しい」状態で続けられるほうがやりやすいかもしれませんね。自分が好きなことをとことんやり、自分を実験台にして素材化し、それを多くの人に伝えていく。三浦さんが昔は接客が苦手だったとは信じがたいですが、「やろうと思えばできる」ということを体現されていますね。
おわりに:顧客との距離を強みに変える、ひとりECの進化
三浦さんの取り組みには、ひとりECだからこそ実現できる「顧客との距離の近さ」を最大の武器にする工夫が詰まっていました。一次情報としての顧客の声を丁寧に集め、それを商品開発やコンテンツ作りに反映させることで、確かな共感と信頼を育んでいます。
さらに、接客力や発信力を磨くために挑戦を重ね、自分自身を素材にした柔軟な運営スタイルを確立されています。こうした姿勢は、限られたリソースで成果を上げたい個人や小規模のEC事業者にとって、大きな示唆を与えるのではないでしょうか。
EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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