社員の8割が子育て世代!働きやすさと事業成長の両方を叶えるには【ECのお仕事×子育て】
インタビューの概要

本連載「EC×働き方」では、EC業界における多様な働き方をテーマに、現場での取り組みや課題に向き合う声をお届けしています。今回はその中のシリーズ「ECのお仕事×子育て」の第2回。子育てと仕事の両立を軸に、働きやすい環境づくりや現場の工夫を紹介します。

本記事では、株式会社ロジレスの森本高大さんが聞き手となり、冷凍幼児食サービス「mogumo(モグモ)」を展開する株式会社Oxxx(オックス)の安田亜矢子さんにインタビュー。子育て世代が約8割を占める同社において、どのようにして働きやすさと事業成長を両立しているのか伺いました。

▼第1回はこちら
新企画「EC×働き方」スタート!子育て視点で見つけた現場の課題と可能性

当事者だからこそわかる、子育て世代の生活に届けたいゆとり

森本さん(ロジレス):はじめに、Oxxxさんの事業について教えてください。

安田さん(Oxxx):弊社では、EC支援のサービスと、冷凍幼児食「mogumo(以下、モグモ)」を提供しています。モグモは、1歳半から6歳までの、離乳食を終えたお子さんを対象とした冷凍幼児食のサービスです。管理栄養士監修のもと、栄養バランスにこだわり、ほとんどの商品が電子レンジで3分温めるだけで食べられる点が大きな特徴です。ブランドのコンセプトとして、お子さんとごはんの時間を楽しく過ごしてもらうことを大切にしています。

森本さん:お子さん向けにサービスを提供しているとのことですが、スタッフさんも子育て中の方が多いのでしょうか?

安田さん:はい。スタッフの8割くらいは子育て中です。モグモのコンセプトに共感して入社したメンバーが多く、必然的に子育て世代が多くなっていますね。

お客様と同じ立場のメンバーが多いことで、子育てに関する悩みや喜び、サービスに対する不安や不便に感じることなど、プラスマイナス両面の意見を吸い上げやすいと感じています。

森本さん:子育てしている方が8割だと社内からサービスに対して具体的なコメントがもらえて良さそうですね。日々の業務で、幼児食を扱うサービスならではの特徴はありますか?

安田さん:大きな特徴として、決裁者と消費者が異なる点が挙げられます。商品を購入するのは親御さんですが、実際に食べるのはお子さんです。そのため、良かれと思って買っても、お子さんがまったく食べてくれないということもあります。

そういった背景から、モグモでは多くのお子さんが好むメニューも用意しています。なかでも人気があるのは、から揚げやコロッケ、オムライスなどです。これらのメニューは、調理に手間がかかるものでもあります。その手間を省けることが、親御さんに非常に喜ばれており、商品選びの重要なポイントになっているのを感じます。

お子さんに好まれるメニューが豊富

森本さん:僕自身もそうですが、子どもの食事って子育て世代に共通の悩みですよね。朝ご飯を食べさせながら夜ご飯をどうしようって考える毎日で、ゆっくり買い物をする時間もない。そんななかでモグモのようなサービスはすごく助かる存在だと思います。一方で、「子どものご飯は手作りじゃないと」という使命感もありますよね。

安田さん:当事者の気持ちがわかるからこそ、安心して選んでいただけるよう、安全性や開発のこだわりはしっかり伝えるようにしています。ご飯を作るとなると、買い物から片づけまで含めて2時間近くはかかることもあります。それが電子レンジで3分になれば、忙しい平日でも子どもに本を読んであげたり、親御さんご自身が自分のための時間を持てたりします。そういう、「生活にゆとりを持てること」も、モグモを通じて届けていきたいです。

コミュニケーションツールを活用した、誰がリモートでも問題なく業務が進む体制づくり

森本さん:安田さんご自身も子育て中と伺いました。Oxxxさんに入社されたきっかけは何だったんでしょうか?

安田さん:入社のきっかけは、まさに仕事と育児の両立に悩んでいたタイミングでした。

子どもが2人いるんですが、当時は上の子が小学校2年生で学校に行きたがらないことがあり、下の子は2歳でイヤイヤ期真っ只中でした。そんな状況でも、前職はリモート勤務が難しい環境だったので、毎日出社しなければならず……。「もっと柔軟に働ける場所で、子どもとの時間を大事にしながら、自分のキャリアも築けたらいいのに」と思い、Oxxxに転職したのです。最初はCSのメール対応担当としてジョインしました。

Oxxxでは、どの部署もリモート勤務を柔軟に選べる体制が整っていて、本当に助かっています。CSチームでは、メンバー全員が出社する日はほとんどなく、誰かしらが常にリモートで働いている状態です。それでも運営できるのは、仕組みがきちんと設計されているからだと思います。ECという業態ならではの面もありますが、どこで働くかで成果が左右されないのは、ありがたいですね。

リモート勤務にあたって、Oxxxでは年間何日までという決まりがあるのですが、子育て中のスタッフについては、子どもに関するイレギュラーが発生しやすいことを想定して、回数制限は設けていません。

森本さん:常に誰かしらがリモートとのことですが、社内のコミュニケーションはどのようにとられているのでしょうか?

安田さん:弊社では社内のコミュニケーションツールとしてSlackを使っています。特にハドルミーティングの機能(音声通話やビデオ通話)をよく活用しており、困ったことがあればすぐにメンバー間で相談したり、画面共有で操作説明をしたりしています。朝礼もハドルミーティングにて実施しているチームもあり、リモートであってもリアルタイムのつながりを保てる工夫が浸透しています。

ハドルミーティングの様子
(プライバシー保護のためぼかしています)

柔軟な労働環境を守りながら事業を成長させるには、効率化が必要

森本さん:モグモさんの会員数はかなりのペースで増えていて、サービスが急成長していますよね。問い合わせについてもECサイトだけでなくLINEなどのSNSから連絡が来たり、件数が増えたりしているかと思いますが、CSチームではどのように対応しているのでしょうか?

安田さん:自動対応できるものはなるべく自動化して、有人対応が必要な問い合わせにのみ人手を割く体制を、この1年ほどで整えてきました。

私が入社した当時は、CSは外注から少しずつ内製化していこうというタイミングでした。内製化を進めていた理由としては、お客様の声を直接すぐにキャッチアップできるようにしたかったからです。嬉しいお声も改善点が必要なお声も、社内に伝わりやすいのが内製化のメリットだと思います。

CSチームは最初私1人で、メール対応の内製化から進め、今年の3月にはコールセンター部門の内製化が完了しました。現在はメール部門が私以外に4名、コールセンター部門が4名の体制です。チャットとLINEでも問い合わせを受けています。

森本さん:対応件数やスタッフが増えるとミスも起きやすくなると思うのですが、ミスを防ぐ対策や、起きてしまったときの対応はどのようにしていますか?

安田さん:不安なことがあればすぐにチーム内で相談することを徹底しています。ただ、人間が対応する限りミスはつきものなので、ミスが起きた後にどれだけ誠実に対応するかが大事ということを大前提にしています。

顧客対応を効率化するために導入しているツール・システム

森本さん:効率化のためのツールやシステムはどのように使っていますか?

安田さん:メール対応は、外注していたときから今も同じメール共有ツール「Re:lation(リレーション)」を使っています。効率化のために、チームの皆でどういう文章をよく手打ちしているかを出し合って、テンプレ化やフレーズ登録を行うようにしています。また、定型文の見直しと整理も定期的に行っていますね。

コールセンターには、クラウド型コールセンターシステム「BIZTEL(ビズテル)」を導入しています。お客様の問い合わせ内容に合わせて、自動音声応答(IVR)で分岐し、オペレーターにつなぐものと、マイページ上での手続きに促すものに出し分けを行っています。内製化が完了したばかりなので、現在はブラッシュアップの最中ですが、最終的にはSMS送付での導線づくりも進めていきたいです。

森本さん:お問い合わせはどの経路から来ることが多いですか?

安田さん:子育て世帯の方は、日中は忙しく、なかなか時間が取れません。そのため、時間を気にせず、その場ですぐに質問や手続きできることは、子育て世帯のお客様にとって重要なポイントです。

そのような背景もあり、弊社ではチャットに誘導する方針をとっています。現在は、問い合わせの約3分の2がチャット経由です。解約や休止といった基本的な手続きは、お客様自身で完結できるようにしています。

受注業務を効率化するために導入しているツール・システム

森本さん:受注業務をCSチームが対応することも多いと聞きますが、Oxxxさんではどうでしょうか?

安田さん:受注は自動出荷システム「LOGILESS(ロジレス)」で管理しているため、CSチームが直接対応することはほとんどありません。在庫管理に関しても、商品管理チームが中心で対応しています。

ただ、LOGILESSの管理画面はCSチームでも毎日確認しています。例えば、お子さんにアレルギーがあるご家庭から、初回セットの中身を変更してほしいといった連絡があれば、LOGILESS上で該当商品を差し替える対応をしています。商品に関する具体的な問い合わせがあった場合は、社内にいる管理栄養士を通して回答することも多いです。

他にも、既存のお客様向けの機能として、LOGILESSのマクロ機能を活用しています。これにより、特定の購入回数を迎えたお客様に絞って指定の同梱物を入れられるようになりました。

また、マクロ機能を活用すれば、配達の時間指定がない場合に特定の時間を設定することができます。モグモは冷凍食品のため置き配ができず、確実に受け取っていただく必要があります。以前は時間指定がないことで再配達や返品が発生することがありました。現在は、時間指定のないお客様に対して、子育て世代の方が在宅していることが多い18時~20時に設定しています。この機能により再配達率を改善でき、非常に助かっています。

頑張るだけでは解決しない、続かない。大切なのは、子育て世代を想定した体制づくり

森本さん:僕自身もそうなのですが、子育て中はお子さんの体調不良などで、突発的に会社を休まないといけない場面が多いですよね。そういったときにどう対応されていますか?

安田さん:チーム内で意識しているのは、「いつ誰が休んでも困らない体制を作ること」です。私も含めて明日絶対に出社できるとは限らない、朝から業務に入れるとは限らないという前提で動くことを合言葉にしています。

だからこそ、日々の業務の引き継ぎをきちんとし、明日に持ち越さないことを意識しています。例えばお客様対応では、システム上のメモに対応履歴や留意点を残し、伝えたい内容を明記することで、担当が変わったとしてもスムーズに対応できるようにしています。

森本さん:大事な考え方、取り組みですね。最後に、EC業界で働く子育て世代の方々や、子育て世代を採用したいと考えている企業の方に向けてメッセージをお願いします。

安田さん:私自身のこれまでの子育て経験を振り返って思うのは、「頑張りすぎても続かない」ということです。もちろん、一時的に頑張らないといけないときもあるかもしれませんが、続けられる形で成長できる体制や仕組みを作ることが大切だと、伝えたいです。

あわせて読みたい

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ