日本の消費者、買い物時のAI活用が全世代で増加 - Adyenの調査「リテールレポート 2025」が明らかに

決済プラットフォーム大手のAdyenが、消費者の決済体験と企業のテクノロジー投資に関する年次調査「リテールレポート 2025」を発表しました。この調査では、日本の消費者による買い物時のAI活用が全世代で増加していることや、小売業者のAI導入が売上拡大戦略の重要な要素となっていることが明らかになっています。

近年、変化する規制環境や多様化する決済方法、新たなテクノロジーの登場、そして新しいビジネスモデルの出現により、小売企業は効率性を確保しながら市場での差別化を維持するという課題に直面しています。Adyenが実施した今回の調査は、小売企業が顧客体験とビジネス効率のバランスをいかに見いだすかを目的として、世界28か国・地域の消費者41,089人と小売企業14,003社(うち日本からは消費者2,000人、企業300社)を対象に行われました。

調査結果によると、日本では全世代において買い物時にAIを活用する消費者が増加しており、小売業界におけるAI導入の重要性が高まっていることが示されています。一方で、オンラインと対面決済のチャネルをシームレスに連携させている日本の小売業者は28%にとどまっており、テクノロジー活用の面でさらなる発展の余地があることも明らかになっています。

日本の消費者、買い物時のAI活用が増加傾向

日本の消費者のうち、買い物の際にAIを活用している人の割合は前年比4ポイント増の12%となっています。このうち35%が今後もAIを活用した購買に前向きな意向を示しています。ただし、この数値はグローバル平均の37%と比較すると25ポイント下回っており、日本の消費者にはまだAI活用の価値が十分に伝わっていない可能性があることが指摘されています。

AIを活用している日本の消費者の中では、34%が「小売業者はAIを活用して興味のありそうな商品を提案してきている」と認識しており、また同じく34%が服や食事の選択においてAIからのヒントを得るなど、AIの活用に対して好意的な反応を示しています。さらに、35%の消費者が「AIを活用して、ユニークなブランドを発見したい」と回答していることから、ブランド側にとってはパートナーシップとクロスセル(顧客が購入しようとしている商品と別の商品を提案し、購入を検討してもらう手法)を組み合わせた販売戦略を展開するチャンスがあると言えるでしょう。

Adyenリテールレポート2025の調査結果を示すグラフ

X世代とZ世代、AI活用が顕著に拡大

日本では全世代において買い物の際のAI活用が増加していますが、特に顕著な増加が見られたのはX世代(44~59歳)とZ世代(16歳~27歳)です。X世代では過去1年間で59%増、Z世代では42%増となっています。

現在、買い物にAIを活用する割合が最も高いのはZ世代で27%、次いでミレニアル世代(28~43歳)が13%という結果になっています。これは、若年層だけでなく幅広い年齢層にAI活用が広がっていることを示しています。

Adyenの最高商務責任者(CCO)であるルーラント・プリンス氏は「消費者は、AI技術が買い物体験にもたらす変革を実感するにつれて、かつてないほどのスピードでAIを受け入れています。AIがパーソナルスタイリストになり、個人の好みに合わせてコーディネートしてくれる時代が到来しつつあると言えるでしょう。今回の調査では、高い年齢層がどのようにAIを購買行動に取り入れているかを見る上で、非常に興味深い結果を示しました」と述べています。

小売業者、成長戦略としてAI導入を推進

日本の小売事業者は、2025年の売上拡大戦略において「AIやテクノロジーの導入」を主要な施策の一つとして挙げています。24%の企業が「販売・マーケティング領域でのAI投資」を検討しており、同数の企業が商品開発にAIを活用する意向を示しています。しかしながら、グローバル平均(32%)やAPAC地域(34%)と比較すると、日本の小売事業者のAIへの投資意欲はやや消極的であることも明らかになっています。

新技術への投資が進む一方で、オンラインと対面決済のチャネルをシームレスに連携させた購買体験を提供している日本の小売業者は全体の28%にとどまっています。さらに「今後12か月以内にこの機能を導入予定」と回答したビジネスリーダーはわずか13%でした。また「店舗限定の特別な体験を提供する計画がある」との回答も11%と低い水準にとどまっています。

Adyenリテールレポート2025の調査結果図表

Adyenのリテール部門バイスプレジデントであるホリー・ワースト氏は「AIはもはや将来への投資ではなく、小売業者と消費者の双方にとって必要不可欠な存在です。同社では今年初め、決済コンバージョン向上、不正管理の簡素化、決済コスト削減を支援するAI搭載の決済最適化スイート『Adyen Uplift』をリリースしました。AIを取り入れることで、小売業者はかつてない顧客体験を提供できるようになります。たとえば、正規の買い物客はスムーズに決済を完了でき、一方で、不正取引はAIによって検出されます。こうした背景から、AIが2025年における最も注目すべき顧客体験の成長促進要因として挙げられていることは明白です」と説明しています。

統合型コマースの重要性は依然として高い

今回の調査では、AIの活用だけでなく、統合型コマースの重要性も浮き彫りになりました。日本の消費者の21%がSNS、アプリ、オンラインストアなど複数のチャネルを通じて一貫した買い物体験を期待しており、18%はすでにSNSで買い物をしていると回答しています。これらの結果は、テクノロジーやオンライン体験が、ブランドと顧客との間に新たな接点を創出していることを示しています。

一方で、デジタル活用が進展しているにもかかわらず、日本の消費者の約半数(47%)は依然として実店舗での購買を好んでおり、オンラインでのショッピングを好む人は21%にとどまっています。実店舗を好む理由としては、「実際に商品を見て触れたい」(44%)、「試着したい」(25%)といった意見が多く、また24%の消費者が「商品をその場で持ち帰ることができることを好む」と回答するなど、即時性のメリットも重視されていることがわかりました。このことから、日本においてはAI活用と並行して、実店舗とオンラインを連携させた統合型コマースの戦略が依然として重要であることが示されています。

調査概要

消費者調査
調査期間:2025年2月26日~2025年3月12日
対象者: 28カ国・地域の41,089人(16歳以上)※日本:2,000人
対象国・地域(五十音順):アイルランド、アラブ首長国連邦、イタリア、インド、英国、エストニア、オーストラリア、オランダ、カナダ、シンガポール、スウェーデン、スペイン、チェコ、デンマーク、ドイツ、日本、ノルウェー、フランス、ブラジル、米国、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、香港、マレーシア、メキシコ、ラトビア、リトアニア

加盟店調査
調査期間:2025年2月10日~2025年3月12日
対象者:28カ国・地域の14,003の小売企業※日本:300社
対象国・地域(五十音順):アイルランド、アラブ首長国連邦、イタリア、英国、エストニア、オーストラリア、オランダ、カナダ、シンガポール、スウェーデン、スペイン、チェコ、中国、デンマーク、ドイツ、日本、ノルウェー、フランス、ブラジル、米国、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、香港、マレーシア、メキシコ、ラトビア、リトアニア

調査機関:Censuswide
CensuswideはMarket Research Societyの会員であり、その倫理規定およびESOMARの原則を遵守しています。また、British Polling Councilにも加盟しています。
増加率は、「過去12か月以内に初めて買い物にAIを使用した」と回答した人と、「AIを使ったことがある」と回答した人の割合を比較して算出されています。

Adyenについて

Adyen(AMS: ADYEN)は、大手企業に最適なフィンテックプラットフォームです。エンドツーエンドの決済機能、データに基づく洞察、金融商品を単一のグローバルソリューションとして提供することで、企業がより迅速に目標を達成できるよう支援しています。世界中にオフィスをもつAdyenは、LVMH、Meta、On Japan 、SHEIN、Uber、L'Oréal、adidasなどのお客様にサービスを提供しています。

出典元:Adyen Japan株式会社 プレスリリース

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