EC業界において成長し続けるための組織構築に必要なこと
この記事の執筆者

株式会社識学

識学は「意識構造学」からとった造語であり、人が物事を認識してから行動に至るまでの思考を構造的に理解し、体系化したメソッドです。
株式会社識学は、このメソッドを応用し、いかなる組織でも生産性向上を実現するための方法を追究しています。

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成功している経営者が陥りがちな組織状態

EC事業においては事業立ち上げ時から成長期にかけ、少ない人数で事業を展開できる点が特徴といえます。

サンプルは少ないながら、2021年9月7日から9月24日に公益財団法人流通経済研究所が実施した“大手総合ECサイト利用事業者の状況調査”において、EC事業者対するアンケートに回答のあった有効回答事業者数114社の内訳は下記となっており、5人以下の少人数で運営している事業者が大半というのが実状です。

一方、事業が成長するにつれ注文数が増えてくると少ない人数ではさばききれなくなるため、フロント業務とバックエンド業務のそれぞれに必要業務を細分化して分担し、各業務に人員を配置するような必要性が出てきます。

企業規模が小さい頃であれば、経営者と近しい仲間たちだけで運営することができますが、企業が少しずつ成長するにつれて、人材確保のために社員数が増加し、新しい社員が入ってくることで、それまでのようにメンバー同士の“あうんの呼吸”で運営を続けるのが困難になってきます。

しかし、優秀な経営者であったとしても人は「過去の成功体験」に引っ張られがちです。“これまで通り”を踏襲し、増えた社員一人一人とのコミュニケーションを密接に取ることで、経営者による属人的な経営と、社員一人ひとりに合わせた個別のマネジメントを成立させようとしてしまいます。

こうなってきますと、『個別調整』が横行し組織のルールがどんどん形骸化し、さらには「組織はいつでも個人に合わせてくれる」という錯覚を社員にも与えてしまいかねません。

また、経営目線は社内融合といった内向きな事象に向けられてしまいますので、気が付くと経営者が見据えるべき変化の激しい業界の変化に立ち遅れ、後手後手の経営にも陥りかねないという事になります。

だからこそ、少人数で経営されている経営者の方でも、将来の成長への絵が描けたときには、

『組織づくり』を始めなければならないということになるのです。

成長する組織づくりに必要な土台とは

成長する組織づくりの根幹は、組織の土台となる要素をしっかりと構築することにあります。ここではまず手始めとして取り掛かるべき要素を2つお示しいたします。

円滑なコミュニケーションと風通しの良い環境作り

社員のエンゲージを高めるには上司と部下のコミュニケーションを活発化させ、風通しの良い環境を作ることが重要です。ですが、そのコミュニケーションに目的がなければそのコミュニケーションはロスタイムになってしまいます。また、コミュニケーションを取っただけでは目標達成に向けて迷っている社員を正しく目標に向かわせ、成長させていくことはできません。そのためには、まずは「誰が上司であるか」の明確化が必要になります。

組織図の整備

組織図を整え「誰が上司であるか」を明確にします。組織図は経営者が考える戦略的な布陣です。役職という「箱」を設置し、その下に「箱」を統率者とした組織を作り上げていきます。「誰が上司であるか」を明確にするには部下からみた上司は一人になっているかがおさえておくべき重要なポイントになります。そして経営者は上司という「箱」に対して明確な役割(目標)を与えていきます。

明確な目標設定

上司が明確になれば、次は上司が自身の「箱」に与えられた役割を果たすために部下に対して役割(目標)を与えていきます。

組織全体の目標と個々の従業員の目標を明確に設定し、進捗状況を定期的に評価することが重要です。この際に絶対的に必要となるのは「いつまでに+どのような状態」であるかを可能な限り数値化した上で示すことです。期限を迎えた際に〇✕が明確になる状態を作ることで、「頑張ったから評価してもらえるだろう」といった属人的な評価の排除と、自身で自身を自己評価して設定した水準と、経営者の求める水準とのズレが生じてしまうといったことを防げます。

合わせて、モチベーションを高め、成果を正当に評価する制度を構築することで、社員のエンゲージメント向上につなげていきます。

会議体の整備

会議体とは目標の進捗を管理するための週次で実施する進捗会議をイメージしていただければOKです。

部下に目標を与えても、放っておくと目標達成に向けた工程に迷っていたり、いつの間にか上司の思惑とは全く違う方向に向かっていたりすることも起こりえます。

そういったロスタイムや認識のズレを防ぐためにも、上司と部下のコミュニケーションが重要になります。

部下が次への工程に迷っていれば、工程の途中に「結果点」を設定し、まずはそこに「一人で向かわせる」環境を作ります。この際、「結果点」に向かう工程を部下がイメージできているかの確認は必要です。確認には「次、どうする?」と問い、明確な答えが返ってくればOKです。

また、上記した「一人で向かわせる」ことが極めて重要です。例え距離は短くともまずは「一人で向かわせる」ことを心がけましょう。上司が協働することもあるでしょうが、部下が自身に与えられた責任を果たすためには部下主体で考えさせ、上司はあくまでもオブザーブ的役割に徹しましょう。

企業文化と価値観の共有

集団の目標や目的を共有している組織と共有していない組織ではどちらが良い成果を残すことができ、成長していけるでしょうか?当然共有している組織になります。

目標や目的を共有するには、組織の根底にある企業文化や価値観を明確にし、社員に浸透させることが必要になります。

まず企業文化の共有について考えてみます。

社内ルールの整備

企業文化というのは分解すると、「ありとあらゆる運営ルール」になります。ただしこれには明文化されていないものも含まれてきます。「終業後にみんなで飲みにいく店はあそこだよね」といったものまで含まれてくるということです。無論そういったものまで明文化する必要はありませんが、社内のさまざまな業務上のルールが伝聞式になっていると、新しい社員は「空気を読む」必要が出てきてしまいます。

そうならないためにも、社内におけるすべての業務手順を視覚化し、ルールとして整備していくことが重要です。具体的には、下記の順になります。

  • 現在の業務フローの棚卸
  • それぞれの業務フローについて「いつまでに+どのような状態」になるべきかを整理
  • それぞれの業務フローが完遂できるようになるためのマニュアルを整備

ここで、気をつけるべきは『ルールは時間の経過と共に陳腐化する』前提で考えておくことです。ルール、マニュアルを設定するには都度現場の事実情報を集約しながら、加除修正を繰り返す必要性があります。「ルール確認会」を月に1回は開催する会議体制を整備しておけばよいでしょう。あわせて、社内のルールを管理統括する責任者も定めておきましょう。

次に、価値観の浸透についてです。

企業理念の共有

企業としての価値観を明確にすることは、向かうべき方向性を一致させ、一体感を醸成できます。そのためにも「企業理念」の共有は極めて重要となります。

ですが、その「企業理念」は経営者の方のそれまでの多くの経験の中から紡ぎだされたものですので、社員が同じレベルで共有して理解することは不可能です。

経営者は「企業理念」を追い求めればいいのですが、社員が「企業理念」の実現に向かうと解釈がズレ、気が付けば誤った方向に向かってしまうことにも繋がりかねません。ではどうすればよいか。企業理念という遠い彼方にある目的に向かう線上に「目標」を設定し、社員に示します。先ほどから出てきている「目標」は企業理念に向かう途中経過という考え方になります。

そして社員一人一人が「目標」に対し全力で取り組んだことにより、「企業理念」の達成に向け進んでいるという「進行感」を、経営者が例えば半年ごとの全社会議の場などを用い全社員に対し示します。この「進行感」によって、与えられた「目標」に社員がさらに迷いなく取り組むことに繋がるのです。

まとめ

組織作りは「まぁ、もう少し規模が大きくなってから」と後回しにするよりも、『手が届く少ない人数のうちに』手がけ始めることが肝要です。少ない人数のうちに固めておけば、後から入ってきた社員はそれに合わせてもらうだけです。人数が増えて多くのマイルールが横行した後から整えるほうが大変な労力がかかってまいります。

また、ルールを設定する際に「100点満点」のルールをはじめから作ろうとするとなかなか決められず、スタートが遅れていきます。大事なことは、仮説を立て実行し、修正を繰りかえしていくことです。一度決めたルールは絶対に変えてはならないということはありません。決めた後に環境変化があれば柔軟に変えていく水のようなしなやかさがリーダーには求められます。まずは決めて実行していきましょう。

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