EC業界における外注先のマネジメント
この記事の執筆者

株式会社識学

識学は「意識構造学」からとった造語であり、人が物事を認識してから行動に至るまでの思考を構造的に理解し、体系化したメソッドです。
株式会社識学は、このメソッドを応用し、いかなる組織でも生産性向上を実現するための方法を追究しています。

識学について詳しく知りたい方はこちら
https://corp.shikigaku.jp/

EC業界で勝つには外注先のマネジメント力で勝つことが必須!

EC業界で勝ち抜くための最重要と言える要素に「外注先のマネジメント」があります。

なぜなら、ほぼ全てのEC事業者は業務の外注という手段を取っており、EC事業者の組織機能に外注の機能が複数組み込まれている場合がほとんどだからです。外注先をマネジメントして、チームの中の1機能として役割を果たさせることができなければ、それができている競合他社に大きく水をあけられることでしょう。

「外注先のマネジメント」とは、EC事業者側が主導権を握って外注先をコントロールすること。そのためにEC事業者側がいつまでのどのような状態を求めているかを明確に設定し、外注先にその状態を作らせるようコントロールしなくてはいけません。「外注先だから仕方ない」と割り切るのではなく、社内担当者(外注管理者)の明確な役割設定・進捗確認・行動修正などが必須です。

EC市場は成長の一途、競争も激化しています!

ECを利用して商品を購入することは当然のライフワークになっており、総務省が発表した「令和3年 情報通信白書」によれば、インターネットショッピング(オークション・フリマ含む)の利用率は全体で73.4%となっています。コロナ流行でECの普及はさらに加速しました。

BtoCの物販系ECの市場規模は、2014年~2023年にかけて、6.8兆円→14.5兆円と加速度的に成長しており、サービス系、デジタル系のBtoCのECも含めたEC全体の市場規模は、2014年~2023年にかけて、12.7兆円→24.8兆円と成長の一途をたどっています。(下図参照)

市場規模拡大に伴い、EC参入する事業者数も増加し、国内ECの事業者数は2万7,558事業者に上ります。(令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書

激化する競争に勝つには、外注の活用の成功がカギ

競争が激化していくEC市場において、EC事業者の皆様は、独自の商品力やサービス内容で競合他社に差をつけることが求められます。そして、良い商品があるだけではEC市場で勝ち続けることは難しいでしょう。なぜなら独自性のある良い商品・サービスを用意したとしても、その他に、

  • 商品ページの最適化(CVR向上)
  • 価格競争に巻き込まれない価値提供
  • SEO・広告戦略の強化
  • リピート購入を促進
  • 配送とカスタマーサポートの強化
  • 競合分析とデータ活用

などで、競合他社に後れを取ってしまうと、市場での力が弱まってしまうことになるからです。しかし、多くのEC事業者は、この全ての業務を自社で補完することはできません。ほぼ全てのEC事業者は何かしらの業務を外部企業に委託する、外注するという手段を使うことになります。この外注先をいかにしてEC事業者の機能と連動して機能させることができるかが、EC市場で勝ち続けるための大きな分かれ道になります。

では、組織の機能という観点で外注先を認識しましょう。

(図)EC事業者における体制例
(図)EC事業者における体制例

各セクションに社内担当者を設置します。もちろん兼任もあるでしょう。重要なのは、それぞれの担当部門・担当者に明確な結果設定(いつまでにどのような状態にするかの目標設定)をすることです。なぜならこの設定がないままに外注化を進めると、その業務の主導権を外注会社が握り、こちらが求める結果を追わない、もしくは結果が出なかったときの責任の所在があいまいになり、改善もされず成果の出ないまま外注のコストがかかり続ける状態になる可能性があるからです。

社内責任者と到達すべき結果設定

外注化する際には以下の3つの手順を踏む必要があります。

  • 業務ごとに社内の担当部署・担当者を決める。
  • 担当部署・担当者に期限と目標とする結果を設定する。
  • 担当者の外注先のマネジメント方法を定める。

========================

例:
【担当部署】EC事業者の営業部
【責任者】EC事業者の集客担当(営業部員)
【外注先】外注のリスティング広告代行業者
【結果設定】
2026年12月末までに
CV数(WEB検索経由の受注件数) 1,000件
CPA(受注1件あたりの広告予算) 2,500円
広告予算上限 3,000,000円

========================

これで責任者と、外注先に求める結果設定が明確になりました。

これがないと外注先のマネジメントはスタートできませんね。社内責任者は数字を外注先と約束することで、初めて達成に向けて外注先を管理することが可能になります。

では管理に入りましょう。

管理とは、進捗管理です。設定した期限までに達成したい目標を区切って設定し、区切った目標進捗を管理します。

=========================

区切った目標例:
2026年3月単月目標を設定
CV数(WEB検索経由の受注件数) 50件
CPA(受注1件あたりの広告予算) 3,000円
広告予算上限 150,000円

=========================

到達してほしい目標に対し、手前の目標設定をします。

この場合、3月は小さい目標設定と予算上限を設定し、CPAの最適化を図ります。

この手前の小さい目標に対し、外注先に実施報告の提出を求めます。

社内責任者~外注先間の報告の仕組み

=========================

外注先に求める報告例:

  • 2026年3月単月目標の達成状況
  • 目標達成の不足分を埋めるための施策
  • この施策を実施することでの次月の着地予測
  • 次月結果予測を踏まえた最終着地予測

=========================

社内責任者は提出された施策と結果予測に対し、不明点を確認・修正依頼などをし、施策実施し結果を出すことを外注先と約束します。

この約束がされたことで、次月における

  • 社内責任者の責任者としての責任
  • 外注先の企業の実働者としての責任

が明確になります。つまりそれぞれの責任の所在が明確になりました。

あとは、不足を埋める施策実施と結果設定の繰り返しです。繰り返し実施することで目標達成への精度を高めます。

定期的に進捗を管理する(上図)

進捗管理する上での注意点

約束した施策を確実に実施しているかどうか?

施策が正しく実施されていなければ、施策の良し悪しの判断ができません。場合によっては外注先が提案してきた施策のコストのみが発生し、良し悪しがわからないままに終わってしまいます。この繰り返しが組織の成長の阻害要因になってしまいます。

外注先からの報告が事実に基づいているか?

社内責任者は、正しい判断をするためには事実に基づいて判断することが必要です。そのためにも次の施策の妥当性を判断するために必要な事実情報が外注先から出てきているのかを確認してから吟味し、判断するようにしましょう。

こちらの要望事項を外注先に100%の解像度で理解してもらうこと

全ての場面において外注先と自社の利害が一致するとは限りません。また、こちらの要望を正しく認識していない外注先は、こちらの求めていることとズレた行動をとることがあります。そのためにも、こちらが求めた結果設定は必ず明確な結果として提示しましょう。こちらの要望と外注先の認識にズレた領域があれば、その領域の分だけロスが発生します。

コストの最適化を常に意識し実行する

EC事業全体の損益計算において、粗利と販管費のバランスが重要です。

複数の外注先を活用する事業形態においては、各外注先活用のコストパフォーマンスの改善が常に求められます。そして、例えば倉庫家賃、物流運賃値上げ、ショッピングモールの利用料の変更など、外注によるコストパフォーマンスの変動要因が毎年のように発生します。社内責任者は自身の部門の目標達成のためには、外注先のコスト最適化はもちろん、他の外注先の模索など、常にコスト最適化の動きを取っておく必要があります。

品質の改善を常に意識し結果設定する

コストと合わせて外注先への委託業務の品質も向上し続ける必要があります。SEO最適化、CPA、CV率、配達日数、在庫棚卸精度など、達成してできている項目についても、常に進化し続ける結果設定が必要です。責任者はその期の伸長目標を作成し、社内承認を得て、外注先との約束に進むのが正しい姿です。責任者が「目標を達成しているから」という現状維持思考になってしまうと、外注先はそれ以上に進化する意識が落ちてしまうといってよいでしょう。

複数の外注先を正しく機能させたEC事業者が間違いなく勝つ!

激化するEC市場での戦いにおいては、商品・サービスの質・価格設定のみで勝ち続けることは難しいことは皆様認識の通りです。そしてEC事業者を支える頼もしい外注先はあらゆる業務において数多くひしめき合っています。良いサービスを提供する会社は数多くあり、任せておけば安心できそう・・という場面も多いはず。

しかし、考えてみてください。彼らが良いサービスを提供してくれそうだからと発注して、そこで終わりではありません。むしろそれは始まりです。頼もしい外注先のパフォーマンスを最大限に発揮させるためには、そのサービスを活用して「どのような結果をいつまでに出すのか」をこちらが設定し、管理することで結果を出す役割を社内に設定し、管理を実施することが必須です。

EC事業者の皆様、貴社のご状況、今一度振り返ってみてください。責任者は決まっていますか?外注先は結果を約束して動いていますか?進捗管理はできていますか?組織の新たな伸びしろがはっきりと見えてくるはずです。

データ引用元:令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書

識学について詳しく知りたい方はこちら
https://corp.shikigaku.jp/

あわせて読みたい

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ