楽天市場で人気のファッションブランド「Myu」が自社ECサイトに注力!ライブコマースとSNSを軸に展開
インタビューの概要

レディースファッションブランド「Myu」は、フリルやパール、リボンを取り入れた「大人可愛い」をコンセプトに商品を展開しています。楽天市場を中心に、特に30~50代の女性から支持を集める人気のプチプラブランドです。Instagramでの情報発信やライブコマースの取り組みが特徴的で、多くのコアなファンに支えられています。

Myuはこれまで自社ECサイトも運営していましたが、より注力するために2024年11月にサイトを刷新。その際、国内のECカートシステムから、世界で60万以上のブランドが利用するECサイト構築サービス「SHOPLINE」に移行しました。

なぜ今、自社ECサイトの強化に踏み切ったのか。そして、リニューアルを経てどのような戦略を描いているのか。Myuを運営する株式会社Mchicの代表取締役、岩科茜さんに伺いました。

ブログの読者とともに築くブランド「Myu」

――Myuは多くのコアなファンを抱えていますが、ブランドを立ち上げるまでの経緯を教えていただけないでしょうか?

岩科さん:ブランド立ち上げのきっかけはブログ運営でした。当時の読者が、現在ではMyuの熱心なファンとして、ブランドを支える存在になっています。

もともと私は一般の主婦でしたが、何か新しいことを始めたいと考えていました。そんなとき、アパレル店員として働いていた頃の先輩から、「日々のコーディネートやお洒落をテーマにブログで発信してみたら」と勧められたことが、ブログを始めたきっかけです。

ブログを通じて、お小遣い稼ぎも兼ねてアフィリエイトに取り組んだ結果、2~3年で売上が1,000万円を超えるようになりました。この成果をきっかけに、自分でECサイトを運営すればさらに事業を拡大できるのではないかと考え、ECカートシステムで自社ECサイトを立ち上げます。

楽天市場への出店も検討したのですが、実績がない状態では審査に通らないと思い、まずは自社ECサイトの基盤をしっかり確立することに注力しました。それが2011年のことです。

オープン初日には約30万円の売り上げを記録しましたが、これはブログの読者の方々の支持があったからこそです。その後の集客施策としては、SNSを中心に活用し、メルマガの運用にも力を入れました。一方で、広告は一切使用していません。楽天市場に出店した時点では、月商が約300万円に達しており、ブログの読者と一緒にブランドを大きく成長させていった感覚があります。

差別化とランキング活用が楽天市場での成功の鍵

楽天ショップオブザマンスと楽天ショップオブジエリアを受賞
楽天ショップオブザマンスと楽天ショップオブジエリアを受賞

――楽天市場は自社ECサイトと異なり、Myuを知らないお客様が多いと思います。加えて、さまざまなショップもあるなかで、どのように売上を増やしていったのでしょうか?

岩科さん:売上を拡大するための鍵は「差別化」と「ランキング活用」です。価格競争に巻き込まれないように、ブランドの特徴であるフリルやリボン、パールを取り入れた商品ラインナップを中心に展開し、他ブランドとの差別化を図っています。

また、ランキングへの掲載を重要視しています。新商品を投入する際、いかにランキングに掲載されるかを考え、そこから多くのお客様に商品を知ってもらう流れを構築しました。最近では、商品の開発段階からInstagramを活用し、例えば「どの色がいいと思いますか?」といった形でお客様の意見を取り入れながら商品への関心を高めています。そして、発売日にはライブ配信を行い、一気に注目を集めることでランキング入りを狙う戦略を取っているのです。

――お客様が自社ECサイトと楽天市場に分散されることはありませんか?

岩科さん:楽天市場は新規のお客様に購入いただくための重要なチャネルと位置づけています。それに対して、自社ECサイトではお客様とより密接な関係を築いて、ブランドのファンコミュニティを拡大することを目指しています。

特に楽天市場はROOMの影響力が非常に大きいです。ROOMでインフルエンサーさんが紹介した商品が話題を集め、一気に拡散されることも少なくありません。何か特別な施策を講じているわけではなく、商品のデザインや魅力がインフルエンサーさんの目に留まり、自然と取り上げてもらえるケースが多いです。インフルエンサーの友人から、「取り上げるかどうかは、商品のクオリティ次第」と話を聞く機会があり、商品力の重要性を改めて実感しています。

エンタメ性を重視したライブコマースで顧客と一緒に盛り上がる

――現在、MyuのInstagramのフォロワー数が5.4万人となっていますが、フォロワーを増やすためにどんなことを意識して運営してきましたか?

岩科さん:もともとブログを運営していたことがフォロワー増加の大きな要因だと思います。Instagramのフォロワーは比較的順調に増えていきました。

左:ショップのアカウント 右:岩科さん個人のアカウント
左:ショップのアカウント 右:岩科さん個人のアカウント

岩科さん:ショップのアカウントと私個人のアカウントをほぼ同時にスタートさせています。ショップのアカウントはビジネスライクな情報発信に特化しており、スタッフに運営を任せながら、定期的な投稿を意識してきました。

一方、個人アカウントはMyuのコアなファンに向けた、ブランドの裏側や世界観を共有する場として運営しています。制作中のサンプルや美容の話、おすすめ商品など、ファンにとって有益な情報を先行公開することで、ブランドへの共感を深めています。

――インスタライブでライブコマースを始められたのはいつ、どのようなきっかけでしたか?

岩科さん:ライブコマースを始めたきっかけは、京都伊勢丹でのポップアップストアの集客を目的にライブ配信を行ったことです。この配信がうまくいき、ライブコマースの可能性を感じました。その後、朝にライブ配信を実施する取り組みを始めたところ、その日の売り上げが顕著に伸びることに気づき、現在ではほぼ毎日ライブ配信を行っています。

ライブ配信中には、DMやコメントが多く寄せられ、視聴者と一緒にお買い物を楽しむコミュニティが形成されています。たとえば、10時発売の商品がある場合、9時半からライブを始めると、10時になったときに一時的に視聴者が減少します。これは、視聴者が商品を購入しに、サイトへアクセスしているからです。5分後には再び戻ってきて、購入した商品について共有したり、購入を迷っている方にアドバイスしたりする場面もあります。このように、ライブ配信がリアル店舗のような体験を提供し、顧客とのつながりを強化しているのです。

――ライブ配信の際、シナリオは作っていますか?

岩科さん:特にシナリオは用意せず、行き当たりばったりで進めています。それもライブ配信のエンターテイメント性の一部だと考えているからです。

ただし、これだけモノが溢れかえっている時代に選んでいただけるために、「どう売るか」ということは常に意識していまいます。「これかわいいでしょ?」とライブ配信で視聴者と一緒にお買い物を楽しむ雰囲気を作ることは、ブランドを立ち上げた当初から変わらずに心がけているスタンスです。

Myuというブランドやコミュニティは、私1人で作り上げたものではなく、視聴者やファンと一緒に育ててきたものだと実感しています。このつながりに、常に感謝の気持ちを持っています。

自社ECサイトをリニューアルした理由とは

ライブコマースを実現するSHOPLINE
ライブコマースを実現するSHOPLINE

――もともとあった自社ECサイトを、SHOPLINEを導入してリニューアルされたきっかけについてお聞かせください。

岩科さん:モールや以前の自社ECサイトは自由度が低く、たとえば会員ランクやアフィリエイト機能など、お客様に還元しつつ一緒に楽しめる仕組みを作りたいと考えていました。そんなときに、SHOPLINEの担当者さんからお声がけをいただき、やりたいことが実現できるとわかったことが導入を決めたきっかけです。

弊社は特にコアなファンが多く、百回以上購入いただいている方も少なくありません。利益率の観点から、ファンの方には自社ECサイトで購入いただきたいのですが、十分なメリットを提供できていないと感じたため、楽天市場を案内していました。

――自社ECサイトをリニューアルするにあたって、どんなことを意識されましたか?

岩科さん:楽天市場とは異なる雰囲気を意識して、シンプルで洗練されたデザインを目指しました。また、参加型の要素を取り入れ、コミュニティサイトのような感覚でお客様とつながれる仕組みを意識しています。

――SHOPLINEの機能で特に良かった点はどこですか?

岩科さん:SHOPLINEではさまざまなアプリを提供されているのですが、そのなかでも「ライブ販売」「アフィリエイトプログラム」「メンバーシステム」という3つのアプリが弊社のニーズに合っています。SHOPLINE自体に豊富な機能があるので、他のシステムと契約する必要がなく、手数料を抑えられる点も大きなメリットです。

SHOPLINEの導入で感じられる変化

――リニューアル後に感じる変化はありますか?

岩科さん:お客様との距離が非常に近くなったと実感しています。最近、インスタライブ全体の傾向として閲覧数が減少しており、弊社でもその影響を感じていました。しかし、自社ECサイトをリニューアルしてからは閲覧数が上がり、コメント数も増えたのです。お客様が以前よりもっと楽しんでくださっている感覚があり、「ファミリー感」が強くなったように感じます。また、ありがたいことに、現在は自社ECサイトに多くのお客様が訪れてくださっています。

Instagramによるライブ配信の様子

ライブコマースで売上向上、キャッシュフローの改善も実現

――SHOPLINEの機能を使うことで、今後どのような変化がありそうですか?

岩科さん:「ライブ販売」により、配信中や配信後の売上がさらに向上するのではないかと期待しています。これまでのインスタライブでは、配信中に商品ページへ直接案内する手段がなく、ストーリーで案内したり、サイトトップから探してもらったりする必要がありました。

この方法だと、ライブ配信の途中で離脱することになるので、一時的にライブの閲覧数が減少しますし、中には戻ってこない人もいます。また、ライブを見ていたらほしい商品が完売してしまうという課題もありました。

SHOPLINEは、ライブ配信中にお客様が特定のキーワードをコメントすると、それに応じた商品URLがDMで送られる仕組みを提供しています。この機能により、ライブ配信を視聴しながらシームレスにショッピングができる環境が整うため、離脱率の低減につながり始めています。ECサイト運営において、いかに離脱を防ぎ顧客を引き止めるかが重要なポイントであるため、非常に効果的な機能だと感じています。

岩科さん:またライブ配信を通じた販売において、SHOPLINE導入前は、楽天市場で商品ページを作成していたのですが、ECモールである特性上、コアなファン以外の目につくことを考えると詳細でしっかりとした商品ページを作り込む必要があり、その作業にかなりの時間を要していました。

一方、SHOPLINEでは、スタッフが簡単に撮影した商品写真をアップロードするだけで、わずか5分程度で商品ページができます。商品の詳細な情報は、インスタライブで「先行販売」として紹介する形を取っており、お客様に直接伝えられるのも大きな利点です。

アパレル商材は季節性が高いから、季節に合う商品をいち早くお客様に提供することが重要です。他のブランドより先に弊社を選んでいただけるよう取り組むことで、機会損失の削減と売上機会の最大化を図れると考えています。

加えて、商品を迅速に販売できる仕組みが整ったことで、仕入れから売上が立つまでの期間を短縮できるようになりました。特に、商品が本納品される前に、サンプルが届いた段階で販売を開始できるため、キャッシュフローが大幅に改善しています。

決済にはSHOPLINEと連携しているKOMOJUを利用しているのですが、入金までの期間が約1週間と非常に短いので、工場に支払うよりも前に資金が手元に入る流れが実現しました。この迅速な資金回収サイクルは、事業運営において大きなメリットとなっています。

メンバーシステムとアフィリエイトプログラムを活用して、選ばれるブランドに

――メンバーシステム機能はどのように活用されていますか?

買えば買うほど翌月お得になるMyuのメンバー制度
買えば買うほど翌月お得になるMyuのメンバー制度

岩科さん:メンバー制度は以前から導入を検討していましたが、運営負担が大きいため実現できていませんでした。SHOPLINE導入により、メンバー制度をスムーズに構築することができ、お客様とのつながりをさらに強化しています。

具体的には、前月の購入金額に応じて「レギュラー」「シルバー」「ゴールド」のいずれかのランクを付与し、ランクに応じた特典(送料無料、割引、バースデー特典など)を提供しています。初期目標の登録者1,000人をわずか3日間で達成し、現在では4,000人以上の方に登録していただいており、期待以上の結果に驚きました。

さらに、アフィリエイトとメンバー制度を組み合わせた施策として、Myu独自のポイントを希望に応じて、アフィリエイターさんにも付与する仕組みを導入しました。この取り組みにより、コアなお客様のエンゲージメントが一層高まることを期待しています。

――今後、自社ECサイトや「Myu」というブランドをどう運営していきたいですか?

岩科さん:Myuのコミュニティに、より多くのお客様が参加いただけるブランドを目指したいと考えています。そのために、SHOPLINEの多様な機能をさらに活用し、お客様とのつながりを深めていきたいです。

最終的には、Myuが単なるショッピングの場ではなく、お客様の日常生活の一部として楽しんでいただける存在になることを目指しています。お客様にとって特別な体験を提供しながら、ともにブランドを育てていけるような運営を心掛けていきたいです。

▼Myu公式ショップ
https://myu2011.shop

▼Myu楽天市場店
https://www.rakuten.co.jp/myu-mie

▼ECサイト構築サービス「SHOPLINE」
https://jp.shopline.com

取材内容は動画でもご覧いただけます。

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