SHEINとは?世界220か国に展開する格安ファッションD2Cと徐々に拡大するマーケットプレイス事業を解説

SHEINとは?

中国発の「SHEIN」は、オンラインを中心に世界220か国以上で販売を行うファストファッションブランドとして自社の商品を販売しながら、マーケットプレイス事業により他企業の出店が可能である、越境EC企業です。Z世代やミレニアル世代を主なターゲットとし、手頃な価格でトレンド商品を提供することで急成長を遂げています。

日本での取り組み

日本市場においても、2022年に実店舗を活用したオムニチャネル戦略を導入し、認知度と利用率をさらに高める取り組みを行いました。

  • 2022年10月:大阪・心斎橋で「SHEIN POPUP OSAKA」を開催。期間限定で商品を展示し、多くの来場者で賑わいました。
  • 2022年11月:東京・原宿に常設ショールーム「SHEIN TOKYO」をオープン。試着や商品確認が可能で、購入はオンラインで行う形式を採用しています。

これらの取り組みにより、日本の顧客がSHEINの商品を直接体験できる機会を提供し、ブランド認知度をさらに高めています。

日本における認知度と利用率

2023年2月のLINEリサーチによると、日本全国の15歳から69歳の男女におけるSHEINの認知度は全体で約5割弱でした。特に10代から20代の女性では8割以上と非常に高い認知度を示しています。

また、マイナビの調査では、10代のアパレルEC利用率において、SHEINはZOZOTOWNを抜いて1位となりました。さらに、10代女性の約5割がSHEINでの購入経験があるとされています。

SHEINは引き続き、オフライン展開を強化しつつ、競合(ZOZOTOWNや楽天市場)との差別化を図る必要があります。また、日本市場特有の高品質志向や配送スピードへの対応が、今後の成長の鍵となるでしょう。

SHEINが急成長した理由

オンデマンド生産モデルで在庫リスクを削減

SHEINが急成長を遂げた理由の一つに、顧客の需要を正確に捉えたオンデマンド生産モデルがあります。これは、顧客の購買データや市場トレンドをリアルタイムで分析し、生産量を最適化する仕組みです。このモデルにより、以下のような成果が得られています。

  • 在庫リスクの削減:在庫を抱えすぎるリスクを最小限に抑え、無駄なコストを削減。
  • 短いリードタイム:新商品を最短で3~7日以内に市場投入可能。トレンドが移り変わりやすいファッション業界で、常に最新の商品を提供できる体制を構築。
  • 顧客満足度の向上:必要な量だけを生産するため、売り切れや在庫不足の問題を回避し、顧客体験を向上。

このオンデマンドモデルは、SHEINが持続可能性を意識しながらも利益を最大化できる鍵となっています。

グローバルマーケティングで若年層を獲得

SHEINは、SNSを駆使した革新的なマーケティング戦略で、Z世代やミレニアル世代をターゲットにしています。特に、InstagramやTikTokといったプラットフォームを活用し、視覚的に訴求力のある広告やプロモーションを展開しています。

  • インフルエンサーとの協業:SHEINは、各国のインフルエンサーを起用し、彼らのフォロワーに直接アプローチする形でブランド認知度を高めています。
  • キャンペーンイベント:「SHEIN Live」などのライブショッピングイベントを通じて、リアルタイムで顧客とつながり、購入意欲を喚起。
  • 口コミ効果:商品購入者がSNSでレビューやスタイリング写真を共有することで、自然な形でのマーケティングが拡大。

これらの取り組みは、特に若年層に強い影響力を持ち、SHEINのグローバルな人気を支える柱となっています。

幅広い商品ラインナップで多様なニーズに応える

SHEINは、ファッションカテゴリーだけでなく、美容、ホームインテリア、家電、ペット用品など、20以上のカテゴリーで商品を展開しています。この多様性が、顧客の幅広いニーズに対応する基盤となっています。

  • 特化したサブブランド:SHEINは、特定のカテゴリーに特化したサブブランドを立ち上げることで、ニッチな市場にもアプローチしています。たとえば、美容ライン「SHEGLAM」は高品質で手頃な価格のメイクアップ製品を提供しています。
  • トレンドアイテムの迅速な投入:季節ごとに異なるトレンド商品をラインナップに加え、顧客の購買意欲を引き出しています。
  • 地域ごとの需要に対応:SHEINは、販売地域ごとの顧客データを基に商品を調整。たとえば、日本市場ではミニマルで機能的なアイテムが人気です。

このように、広範な商品カテゴリーと地域適応型の戦略を組み合わせることで、SHEINは顧客満足度を高めています。

SHEINの商品が安い理由

直接販売モデル(D2C)で流通コストを削減

SHEINは、製造元から顧客に直接商品を届けるD2Cモデルを採用しています。このモデルは、中間業者や卸売業者を排除することで、以下のようなコスト削減を可能にしています。

  • 物流の効率化:商品の流通にかかる手数料やマージンを削減。
  • 迅速な配送:SHEIN独自の物流ネットワークを活用し、商品のスピーディーな配送を実現。
  • 透明な価格設定:不要なコストを省いたことで、顧客に対して明確で手頃な価格を提供。

D2Cモデルは、コスト削減だけでなく、顧客との直接的な関係を築く上でも効果的です。

規模の経済を活用した低コスト運営

SHEINのような大規模な企業は、大量生産によるスケールメリットを活用することで、製品コストを大幅に削減しています。

  • 大量発注:サプライヤーと長期契約を結び、大量生産による調達コストの低減。
  • グローバル市場の活用:世界中に広がる顧客基盤が安定した売上を確保し、コスト分散を可能に。

この規模の経済によって、SHEINは競争力のある価格を維持しています。

効率的なサプライチェーンで低コスト運営を実現

SHEINのサプライチェーン管理は、効率性に優れた仕組みが特徴です。

  • 広州を中心としたサプライヤーネットワーク:SHEINは、信頼性の高いサプライヤーと密接に連携し、安定した供給を実現。
  • リアルタイムのデータ活用:商品の需要予測に基づき、生産量や配送計画を迅速に調整。
  • 配送コストの最適化:複数の配送ルートを活用し、地域ごとの配送コストを最小化。

この効率的な管理体制が、SHEINの商品価格を低く保つ重要な要因となっています。

SHEINはマーケットプレイス事業も展開中!SHEIN Marketplaceとは?

SHEINは、ファストファッションブランドとして広く知られていますが、実は「SHEIN Marketplace」というマーケットプレイス事業も展開しています。この事業は、SHEINが従来築いてきた顧客基盤と物流ネットワークを活用し、事業の多角化を進める重要な柱となっているのです。

SHEIN Marketplaceは、SHEINのグローバルな顧客基盤を活用し、外部の企業やショップが自分たちの商品を販売できるプラットフォームです。これにより、SHEINの顧客は同社のブランド商品だけでなく、多種多様な商品の選択肢を得ることができます。ファッションカテゴリーに加え、美容、ホーム、家電、ペット用品など、幅広いジャンルの商品が展開されています。

SHEIN Marketplaceに出店するメリット

SHEINが展開するSHEIN Marketplaceは、単なるファッション販売プラットフォームを超え、出店者にとって大きなビジネスチャンスを提供しています。このマーケットプレイスに出店することで、以下のようなメリットを享受することが可能です。

グローバルな顧客基盤へのアクセス

SHEIN Marketplaceの最大の強みは、その広範な顧客基盤にあります。SHEINは、世界220以上の国と地域で展開しており、特にZ世代やミレニアル世代の若年層を中心に圧倒的な支持を得ています。

  • 莫大な月間アクティブユーザー数:世界中の消費者がSHEINを利用しており、出店者の商品がより多くの顧客にリーチできる環境が整っています。
  • 新規顧客の獲得チャンス:自社だけではリーチできない地域や市場へのアクセスが可能になります。
  • 購買データの活用:購入頻度、閲覧履歴、地域ごとの人気商品などのデータを活用し、商品ラインナップの最適化が可能です。

プロモーション機能で売上拡大

SHEIN Marketplaceでは、出店者が売上を拡大するために活用できる多彩なプロモーションツールが提供されています。さらに、SHEINのSNSネットワークを活用した広告掲載により、商品露出を向上させることも可能です。

  • フラッシュセール:短期間での割引イベントを開催することで、消費者の購買意欲を刺激。在庫整理や売上増加を同時に実現できます。
  • クーポン配布:出店者は特定の商品や全商品に適用可能なクーポンを設定でき、新規顧客の獲得やリピーターの育成を促進します。
  • ホリデーキャンペーン:クリスマスやブラックフライデーなどの特別イベントに合わせたプロモーションを展開。季節ごとの需要を最大限に活用できるでしょう。

柔軟な物流サポートで効率的な運営を実現

SHEIN独自のFulfillment Service(SFS)は、出店者の物流業務を全面的にサポートします。これにより、運営効率を大幅に上げるだけでなく、顧客満足度も向上するでしょう。自社配送を選択する柔軟性もあるため、ビジネスモデルに応じた運営が可能です。

  • 商品保管:SHEINの倉庫に商品を保管することで、自社でのスペース確保や管理の負担を軽減。
  • 迅速な配送:顧客からの注文を基に、SHEINが商品をピッキング、梱包し、3日以内に配送。
  • 返品対応:顧客からの返品や交換にも対応し、出店者の負担を軽減。

SHEIN Marketplaceへの出店方法

出店可能な国

現在、以下の国と地域でSHEIN Marketplaceが展開されています。これらの国では、地元のブランドやセラーがSHEIN Marketplaceを通じて商品を販売できます。

  • ブラジル
  • アメリカ
  • メキシコ
  • スペイン
  • ドイツ
  • フランス
  • イタリア

出店条件

SHEIN Marketplaceに出店するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 年間売上5百万ドル以上:出店者は一定のビジネス規模を持つ企業が対象となります。この基準により、SHEINはマーケットプレイスの品質を維持しています。
  • ローカル拠点と配送能力:各国で顧客に直接配送する能力が求められます。これには、自社配送またはSHEINの物流サービスのいずれかを利用する柔軟性が含まれます。
  • 法人設立証明書やその他必要書類:各国のローカルページを通じて、法人設立証明書、税務関連書類、商標登録証明書などを提出する必要があります。

出店プロセス

  1. 申請
    SHEIN Marketplaceのローカルページから必要情報を入力して申請を行います。審査は迅速に行われ、通常1営業日以内に結果が通知されます。
  2. オンボーディング
    専任のSeller Success Managerと連携し、システム統合や商品登録を進めます。トレーニングやスキルアップセッションも提供されます。
  3. 販売開始
    商品をSHEIN Seller Hubにリスト化し、注文管理や配送業務、顧客対応を開始します。

まとめ:ファストファッションからマーケットプレイスへと進化するSHEIN

SHEINは、手頃な価格とトレンド性で急成長を遂げたファストファッションブランドとして知られていますが、近年は「マーケットプレイス事業」に注力しています。この事業は、外部ブランドやショップがSHEINの強大なプラットフォームを活用して商品を販売できる仕組みであり、グローバル市場でのさらなる多様化と拡大を目指しているのです。

「安さ」を実現するビジネスモデルを基盤に、ファストファッションからマーケットプレイスへと事業領域を広げるSHEIN。その進化は、単なるファッションブランドの枠を超え、さまざまなカテゴリーで顧客のニーズを満たす「総合ECプラットフォーム」へと変貌を遂げつつあります。

現在、マーケットプレイス事業はアメリカやヨーロッパを中心に展開されていますが、この流れはやがて日本市場にも波及する可能性があるでしょう。SHEINがこれまでに日本で実施してきたポップアップストアやショールーム展開は、その地盤を固めるための重要なステップと考えられます。

日本市場での知名度が高まり、利用率が増加する中、SHEINが日本でもマーケットプレイス事業を本格展開する日はそう遠くないのではないでしょうか。SHEINの次なる一手から目が離せません。

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