
「ECサイトを運営しているけど、競合と比べて売上が伸びない…」「競合との違いを打ち出せない…」そんな悩みをお持ちのEC事業者の皆様へ。
EC市場で成功を収めるためには、市場の現状を正確に把握し、自社の強みを活かした戦略を立てることが不可欠です。そのために重要なのが「市場分析」です。
本記事では、ECにおける市場分析に役立つフレームワークを、事例を交えながらわかりやすく解説します。それぞれの分析手法の特徴を理解し、効果的に活用することで、市場における競争優位性を築くことができます。
この記事を読み終える頃には、具体的な市場分析の手法が身についているはずです。ぜひ、最後までお読みいただき、今後のEC事業戦略にお役立てください。
山本 達巳
つきみ株式会社
静岡市出身、関西学院大学卒。地元医療系の企業で修行後、父親の経営する医療介護系企業に入社。経営とバックオフィス業務を学ぶ傍ら、留学がきっかけで以前から関心が高かった輸入品雑貨のネット販売事業を開始。令和元年に独立し、複数の海外メーカー取引きの経験を経て、自社アウトドアブランドを展開。
その後、自社ブランドを伸ばしていきたい事業者を応援したいという思いから、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。
つきみ株式会社
https://tsukimi.ne.jp
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【note:https://note.com/tatsumin_ec】
この記事の目次
市場分析の意義とフレームワークの活用
ECの市場分析に役立つフレームワークは数多く存在しますが、それぞれ目的や役割が異なります。
まずは、主要なフレームワークの簡易的な概要と利用するメリット、そして、それぞれの優先順位を整理してみましょう。


これらのフレームワークは、必ずしも全て実施する必要はありません。自社の状況や目的に合わせて、適切なフレームワークを選択し、組み合わせて活用することが重要です。
一般的には、市場の全体像を把握するための3C/5C分析や、自社の強みと弱みを分析するためのSWOT分析を優先的に実施し、必要に応じて他のフレームワークを活用していくことが推奨されます。
3C/5C分析:市場における自社の立ち位置を明確にする
3C分析は、市場を構成する3つの要素、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」を分析するフレームワークです。それぞれの頭文字をとって3C分析と呼ばれています。

さらに、近年では 3C分析に「Collaborator(協力者)」「Context(環境)」の2つの要素を加えた5C分析も頻繁に使用されます。
顧客分析 では、ターゲット顧客の属性、ニーズ、購買行動などを調査します。顧客の年齢層、性別、職業、ライフスタイル、購買頻度、平均購入単価などを分析することで、顧客像を具体的に把握することができるでしょう。
競合分析 では、競合他社の強みや弱み、戦略などを分析します。競合の製品ラインナップ、価格戦略、販売チャネル、プロモーション戦略などを分析することで、自社との差別化ポイントを明確にすることが可能です。
自社分析 では、自社の強みや弱み、経営資源などを分析します。自社の技術力、ブランド力、顧客基盤、財務状況などを分析することで、自社の競争力を客観的に評価することができます。

このように3C分析を行うことで、市場を多角的に捉え、ビジネスチャンスやリスクをより深く理解することができるのです。
SWOT分析:強みと弱みを把握し、機会を活かす
SWOT分析は、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素を分析するフレームワークです。

例えば、あるオーガニックコスメを販売するECサイトを運営している企業がSWOT分析を行った結果、以下のような要素が明らかになったとします。

強み
- 高品質なオーガニック原料を使用
- 顧客からの口コミ評価が高い
- 環境に配慮したパッケージを採用
弱み
- 競合ブランドと比較して価格が高い
- 商品ラインナップが少ない
- 広告宣伝費が少ないため、ブランド認知度が低い
機会
- サステナビリティに関心の高い消費者が増加
- インフルエンサーマーケティングが効果的
- 新規顧客獲得のためのオンライン広告の活用
脅威
- 大手化粧品メーカーがオーガニックコスメ市場に参入
- 原材料価格の高騰
- 消費者の購買行動の変化
この分析結果から、以下のような戦略を立てることができます。

- 強み である「高品質なオーガニック原料」と「環境に配慮したパッケージ」を機会である「サステナビリティに関心の高い消費者の増加」と結びつけ、ターゲット顧客層を明確にする
- 弱み である「ブランド認知度が低い」を克服するために、機会である「インフルエンサーマーケティング」を活用する
- 脅威 である「大手化粧品メーカーの参入」に対しては、顧客ロイヤリティを高めることで差別化を図る
PEST分析:マクロ環境の変化を捉える
PEST分析は、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つの要素から、マクロ環境がビジネスに与える影響を分析するフレームワークです。

政治分析 では、法律改正や政策変更などがビジネスに与える影響を分析します。ECにおける個人情報保護法の改正や、海外への販売における関税の変更などが挙げられるでしょう。
経済分析 では、景気動向や為替変動などがビジネスに与える影響を分析します。景気後退による消費の冷え込みや、円高による輸入コストの増加などが考えられます。
社会分析 では、人口動態やライフスタイルの変化などがビジネスに与える影響を分析します。少子高齢化による市場の縮小や、健康志向の高まりによる健康食品の需要増加などが該当するでしょう。
技術分析 では、技術革新やデジタル化などがビジネスに与える影響を分析します。AI技術を活用した顧客サービスの向上や、モバイル決済の普及などが挙げられます。

PEST分析を行うことで、外部環境の変化をいち早く察知し、将来のリスクや機会を予測することができるのです。
5F(ファイブフォース)分析:業界の競争構造を分析する
ファイブフォース分析は、マイケル・ポーターが提唱した、業界の競争構造を分析するためのフレームワークです。以下の5つの競争要因を分析することで、業界の魅力度を評価することができます。

- 新規参入の脅威:新規参入企業の出現による競争激化の可能性
- 買い手の交渉力:買い手が価格交渉やサービス要求などを行う力
- 売り手の交渉力:売り手が価格決定や販売条件などを有利に進める力
- 代替品の脅威:既存商品やサービスの代替となる商品やサービスの出現による競争激化の可能性
- 既存企業間の競争:既存企業同士の市場シェア争いによる競争激化の可能性
例えば、新規参入の脅威が高い業界では、参入障壁を高くすることで、新規参入を防ぐ戦略が必要となります。買い手の交渉力が高い業界では、顧客ロイヤリティを高めることで、価格競争を回避する戦略が必要でしょう。

ファイブフォース分析を行うことで、業界の競争状況を把握し、自社の競争戦略を立てることができます。
4P分析:マーケティング戦略を策定する
4P分析は、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」の4つの要素からマーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。

製品戦略 では、顧客ニーズを満たす商品やサービスを開発・提供するための戦略を検討します。例えば、顧客のニーズを捉えた新商品の開発、既存商品の改良、商品ラインナップの拡充などが挙げられます。
価格戦略 では、顧客が受け入れやすく、かつ収益を確保できる価格設定を検討します。競合との価格比較、コスト分析、値引き戦略、価格差別化などです。
流通戦略 では、顧客が商品やサービスを容易に購入できるよう、販売チャネルや物流システムを構築するための戦略を検討します。ECサイトの構築、実店舗との連携、モバイルアプリの開発、配送方法の改善などが当てはまるでしょう。
プロモーション戦略 では、広告やPR、販売促進などを通じて、顧客に商品やサービスを認知させ、購買を促進するための戦略を検討します。オンライン広告、SNSマーケティング、コンテンツマーケティング、イベント開催などが挙げられます。
4P分析を行うことで、マーケティング活動を効果的に行い、売上向上を図ることができるでしょう。
STP分析:ターゲット顧客を明確にする
STP分析は、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の3つのプロセスから、ターゲット顧客を明確化し、効果的なマーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。

セグメンテーション では、市場を顧客の属性やニーズ、購買行動などによって細分化します。例えば、年齢、性別、職業、居住地、ライフスタイル、価値観、購買履歴など、さまざまな基準で顧客をグループ分けします。
ターゲティング では、細分化された市場の中から、自社がターゲットとする顧客層を選択します。どの顧客層に自社の商品やサービスが最も受け入れられるのか、市場規模や成長性、競合状況などを考慮して決定します。
ポジショニング では、ターゲット顧客層に対して、自社の商品やサービスをどのように認知させたいかを決定します。競合との差別化ポイントを明確にし、顧客の心に響くようなメッセージやイメージを構築しましょう。
STP分析を行うことで、ターゲット顧客に焦点を当てたマーケティング戦略を展開し、効率的に成果を上げることが可能です。
ただし、近年では、エビデンスに基づいたマーケティング戦略を策定を行う観点から、STP分析の効果は限定的であるという意見も出ています。
これは、消費者の行動が多様化し、従来の属性やデモグラフィックでは顧客を正確にセグメントすることが難しくなっているためです。
まとめ
今回は、ECサイトにおける市場分析に役立つフレームワークを紹介しました。
市場の全体像を把握するための3C/5C分析や、自社の強みと弱みを分析するためのSWOT分析は、市場分析の基本となるフレームワークです。
さらに、外部環境の変化を捉えるPEST分析や、業界の競争構造を分析する5F分析を組み合わせることで、より多角的な視点から市場を分析することができます。
これらの分析結果を踏まえ、4P分析を用いてマーケティング戦略を策定することで、ECサイトの売上向上を図れるでしょう。
STP分析は、ターゲット顧客を明確にするためのフレームワークですが、近年ではその効果は限定的であるという意見も出ているため注意です。
市場分析は、ECサイト運営において、常に変化する市場の状況を把握し、適切な戦略を立てるために不可欠なプロセスです。これらのフレームワークを効果的に活用し、自社の強みを最大化させていきましょう。
次回は、顧客の課題解決について詳しく解説します。
つきみ株式会社 https://tsukimi.ne.jp/
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