こんにちは!世界へボカンの徳田です。
英語圏向け越境ECや海外Webマーケティングを17年にわたって支援させていただいております。
近年、内需の減少や訪日外国人客の増加に伴い、越境ECに挑戦する企業が増えています。しかし、実際に越境ECで月商100万円を達成できている企業は一握りです。
これは越境ECで売上げを伸ばすポイントを把握せずに越境ECサイトをがむしゃらに運営していることが起因しています。そこで越境ECに挑戦する際に押さえるべきポイント10選をお伝えしていきます。
戦略の概論からかなり細かなポイントまで話すので自社サイトできちんとできているかどうかチェックしてみてください!
徳田 祐希
世界へボカン株式会社
代表取締役社長
「日本の魅力を世界へ届ける」というミッションの元、日本、アメリカ、オーストラリア、中国、マレーシアといった多国籍メンバーと共に17年以上にわたって日本企業の海外販路拡大を目的としたWebマーケティング支援を行う。年商34億円の越境ECサイトを1000億円に伸ばすなど、数多くの海外Webマーケティングプロジェクトで実績を残す。 支援の傍ら、チャンネル登録数1万人超えのYouTube「海外Webマーケティングch」で年間100本動画を配信する。JETRO講師、中小機構アドバイザー。
この記事の目次
越境EC戦略編
1.自社の持っている経営資源を確認する
海外展開をする上で最も重要なのは自社にどういった経営資源があり、それらを駆使し、どのように海外で勝っていくかを考えるということです。ひと言でShopifyで越境ECをはじめると言ってもさまざまなジャンルがあります。
中古ブランド品のように商品力が高く、基本をおさえさえすれば売上を伸ばせるジャンルもあれば、きちんと商品の特徴を伝えないと売れないD2Cブランドまでさまざまです。
またオンラインだけで販売している企業だけでなく、インバウンド(訪日外国人)が訪れる実店舗をお持ちの企業もおります。
実店舗があれば顧客接点がオフラインで持てるため、この資源を活かさない手はないです。
※実店舗の活かし方については後述していきます。
2.海外の顧客が貴社を選ぶ理由を言語化する
「日本からしか手に入らない」
「この商品だけが特定のお困りの人の課題を解決できる」
といったようにわざわざ海外のお客さまが日本から貴社の商品を購入する理由が何なのかを言語化する必要があります。

私たちが海外向けにWebマーケティングを行う際、お客さまがお困りだけど他社が提供できなくて自社が提供できるポイントであるバリュープロポジション(強み)を明確にするところからはじめます。
左利きの道具店の事例

岐阜県にある左利き専門の道具を取り扱うお店のHIDARIでは海外に打ち出すべき商品を模索されておりました。左利きの方向けのトランプからハサミ、包丁、文具といったさまざまなモノを取り扱っている中で、「わざわざ日本から購入する理由があるフロントエンド商品は何なのか?」という議論をさせていただきました。
海外の検索ニーズを見てみると商品群の中でも【Left handed scissors(左利きのはさみ)】関連の検索ニーズが多いことがわかったのです。

店主の加藤さんにお伺いすると、確かに左利きの方が最初に直面する苦労がハサミで、ほとんどの方が右利きのハサミを使わざるを得ず、矯正されてしまうようでした。
岐阜県には世界的に有名な関の刃物があり、左利きの道具店さまが刃物メーカーさまと協働開発した分解して洗える左利きキッチンハサミがあるとのことで私たちはその商品をフロントエンド商品として設定し、販売してくことにしました。

海外の人がわざわざ購入したいバリュープロポジションを見つける、作り出すことが越境ECで闘っていくためには不可欠です。逆に言えば、ここが見つかれば、あとは越境ECサイト、SNS、広告の訴求していくことで売上を伸ばしていけます。
3.売上を分解して考える
売上=①アクセス×②成約率×③客単価
によって構成されています。
よく「越境ECサイトを立ち上げたけど売上が伸び悩んでいる」といった相談を頂きます。このときに①、②、③のどの部分に伸びしろがあるかを見てみると、打ち手が見えてきます。
例えば、客単価5万円で100万円の売上目標を達成しようとし、ECの成約率を1%とすると…
100万円=A × 1% × 5万円
A=2,000件と必要なアクセス数が見えてきます。
2,000件のアクセスを海外から獲得しようとしたときにどのチャネルから流入が獲得できるのか?私たちは海外の競合調査ツールSimilarWebを活用して競合のチャネル別データを調査してみて、自分たちがどういったチャネルのポートフォリオで目標を達成できるか考えていきます。

もし今、貴社の売上が達成されていない場合、
売上=①アクセス×②成約率×③客単価
のどの部分に改善の余地があるでしょうか?
越境EC戦術編
4.カートはShopifyを活用する
私たちは越境ECに強いカートとしてShopifyを推奨しています。スクラッチで作られている会社さまや他のカートを使用した企業の支援もさせていただいておりますが、標準機能でCDN(Contents Delivery Network)が搭載されており、どの国から閲覧しても最適なスピードでサイトを閲覧することができるなど、海外販売をするという分野において一歩秀でているカートです。

Shopifyは日本語サイトを他言語化できる機能やターゲットエリアごとにサイトのレイアウトや表示価格を変えられるMarkets機能、商品詳細ページごとにコンテンツの出し入れができるメタオブジェクトなど独自の機能を有しており、コンテンツを通してユーザーに価値を感じてもらったり、信頼していただくプロセスが不可欠な越境ECの強い味方になるでしょう。
5.必ず階段設計を実施する
越境ECサイトでは初回訪問ではほとんどのユーザーは購入に至りません。そのため、初回はマイクロコンバージョンポイントを用意して会員登録を促す施策を実施します。初回のステップを購入にするのではなく、会員登録のステップを設け、徐々に情報を提供していきながら購買に導く施策を階段設計と言います。
初回訪問時に下の図のように会員登録したらクーポンをプレゼントするオファーを表示させます。ここで会員登録してくれたユーザーに対してかご落ちメールやウェルカムメールを配信していきます。

階段設計の事例でいうとアパレルブランドTaylor Stitchがとてもわかりやすいです。このサイトに訪問すると訪れてすぐにポップアップのバナーを表示させ、会員登録を促しています。

6.インバウンド客を一見客にしない
ポイント1で経営資源の話に触れましたが、貴社が実店舗をお持ちの場合は大きなチャンスです。実店舗を持っていることのメリットを3つほどピックアップしてお伝えします。

⑴ 実店舗の存在をサイト上で伝えることで来店促進に繋がる
インバウンドのお客さまはかなりマニアックなエリアに旅をします。後述の岡山デニムブランドThe Strike Goldは週末しかオープンしていませんが、海外から現物を見たいと連絡が来て、わざわざ訪問してくれるお客さまもいらっしゃいます。
⑵ 実店舗の存在をサイト上で伝えることでCVRが増す
海外のお客さまとしては本当に存在するかどうかわからず購入に踏み切れないことが多いです。サイト上で実店舗の存在をAbout Usページやストアロケーターページで伝えることでブランドの信頼は大幅に増し、CVRの向上にも繋がります。
⑶ 実店舗からの引き上げが可能
実店舗で商品に触れていただいたことがきっかけでブランドのファンになってくださる方もいらっしゃいます。その方たちにデジタルサイネージやポップやショップカードにQRコードを載せ、越境ECに誘導するようにしてください。
ポイント5で解説させていただいた階段設計との合わせ技で会員登録していただければ、来店がきっかけでオンラインに引き上げられる可能性があります。
7.認知未購買顧客を引き上げる
The Srike Gold 岡山デニム事例
弊社で支援させていただいているThe Strike GoldはInstagramアカウントのフォロワーが1万人近くおり、海外のデニムフリークの方は知る人ぞ知るメーカーでした。しかし、ブランドを認知しているものの越境ECサイトを通して購入するお客さまの数はInstagramのフォロワー数ほど多くありませんでした。
そこで認知未購買顧客が購入する場所としてShopifyを確立するためにユーザーインタビューやサイト改善、SNS運用を弊社で実施させていただきました。

インタビューをした結果、The Strike Goldは経年変化で有名なブランドなのですが、「どのデニムがどのようなエイジングをするのかわからず、どれを最終的に選べば良いかわからないという」声が多かったです。
そこでサイト上にエイジング別の選び方コンテンツを用意し、購入直後のデニムと3年履き込んだデニムのイメージを掲載しました。これによりユーザーが理想とする経年変化のデニムを選ぶことができるようになり、売上を施策前の5倍に伸ばすことに成功しました。

8.商品詳細ページのコンテンツを作り込みむ
商品詳細ページはユーザーが購買の意思決定をする上でとても最も重要なページです。どんなに魅力的な商品を取り扱っていても、きちんとその魅力を海外の顧客に伝えていなければ価値は伝わりません。
しかし、他言語ということもあり、ほとんどの他言語サイトのページは商品に関する情報がなかったり、サイズやスペック表記のみしか掲載されていなかったりすることも少なくありません。
⑴ 商品に関する情報を追加する
商品に関する情報が少ないと海外からわざわざ購入してくれる可能性が低くなってしまいます。在庫が豊富にあるアイテムなのであればレビューを載せ、実際に購入してくれた顧客の声を載せるのも有効な手段です。
私たちは海外Webマーケティングに特化しているチームで商品特性についてヒアリングし、クライアントから頂いた情報を英文で用意させていただき、優先度を決めて商品の価値を伝えていっています。
最近では商品詳細ページにTolstoyなどのShopifyで使用できるショート動画ツールを活用し、ショート動画コンテンツを載せているケースも増えています。
⑵ メタオブジェクトを使用し、商品詳細にカテゴリ共通コンテンツを反映する
メタオブジェクトを使用することで商品詳細ページに共通コンテンツや特定のカテゴリに特化した説明コンテンツを用意することが可能です。
商品詳細ページの共通コンテンツではAbout Usの簡易版など自分たちが何者なのかを伝えることで不安を払拭することが可能です。ブランド共通コンテンツを設けることでブランドへの基本的な理解が進み、購買意欲が高まります。
岡山デニムを海外に販売するThe Strike Goldはメタオブジェクトを使用し、該当ブランドの商品詳細ページにのみ、ブランドの特徴がわかるようなコンテンツが表示されるようにしています。

9.他言語ページは検索エンジンがインデックスできる状態にする
少しマニアックな話ですが重要なポイントですので触れておきますと、他言語ページの持ち方によって越境ECがきちんと検索エンジンに認識されるかどうかが変わってきます。
たまに日本語サイトをルートドメインで展開しているサイトで、他言語ページも同一URLで言語のみ差し変わる形で表示させているサイトがあります。これでは検索エンジンに他言語ページを認識させることができません。
検索エンジンに認識させるためには他言語ページを別ドメインで展開するか、ページを切り出してサブドメインまたはサブディレクトリで展開する必要があります。
例)他言語展開の例
同一URL
例)日本語:aaa.com
英語 :aaa.com
サブディレクトリで展開
例)日本語:aaa.com
英語 :aaa.com/en
サブドメインで展開
例)日本語:aaa.com
英語 :en.aaa.com
別ドメインで展開
例)日本語:aaa.com
英語 :bbb.com
10.Google Search Consoleを登録する
Google Search Consoleは英語でどういった検索クエリが取れているかを確認したり、サイトの健康状態を確認するのに有益なツールです。
ここで大事なのが日本語の下層(サブディレクトリ)に英語ページがある場合、きちんと下層の英語ページのみのプロパティを作成してデータを取得するようにしてください。
これにより英語ページでどういった検索クエリが取得できているか、検索エンジンが英語ページ群をどのように見ているかを把握することが可能です。
例)サブディレクトリに英語ページが格納されている場合
日本語:aaa.com
英語 :aaa.com/en
例)サブドメインで英語ページが格納されている場合
日本語:aaa.com
英語 :en.aaa.com
と言語ごとにGoogle Search Consoleに登録します。
結び
ここでご紹介させていただいたポイントをおさえて越境ECサイトを運営していたら越境ECで100万円も夢ではありません。私たちが支援させていただいた会社さまも、はじめは月商10万円からスタートしていました。その会社もコツコツコンテンツとSNS、広告を運用し、サイト改善を繰り返していたら月商3,000万円に伸びております。
正直、越境ECは簡単ではありません。Shopifyのような越境ECに挑戦できるツールの台頭など、海外に販路拡大する上ではとても環境が整ってきています。本記事が内需の減少や円安を機に越境ECをはじめてみようか考えている方の背中を押すきっかけになりましたら幸いです。
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