
本記事では最近の海外ニュースをご紹介していきます。今回は、中古ブランド品の提供を拡大するAmazonと中古衣料品の販売手数料を撤廃するeBay UKの2つのニュースに触れていきながら、最近のヨーロッパのファッション状況について見ていきます。
【欧州】中古ブランド品の提供を拡大するAmazon

Amazonが、ブランド品の中古販売を行う「Hardly Ever Worn It(HEWI)」との提携により、ヨーロッパの中古ファッション市場に参入することを発表しました。イギリス、スペイン、ドイツ、イタリアからは、すでにAmazonのLuxury Storesで中古のファッションアイテムを閲覧できるようになっています。
HEWIは、以前から中古品や再生品の販売を行っており、昨年にヨーロッパでの中古品売上は10億ユーロを超えました。そして今回、HEWIはヨーロッパのLuxury Stores at Amazonに、高級ファッションブランドの中古品を販売することになったのです。
HEWIが中古ブランド品のアイテム審査を設計することにより、Amazonで再販されるブランド品の品質が保証されます。現在、イギリス、スペイン、ドイツ、イタリアのユーザーを対象に提供されています。また、高級ブランドの女性向けプレタポルテ、靴、アクセサリー、ジュエリー、時計など幅広い商品が提供されているとのことです。
Amazon Fashion EuropeのVPであるルース・ディアスさんは、「今年はHEWIとの連携で高級品のラインナップを拡大し、お客様のお気に入りのブランドやスタイルをさらに多く取り入れられるようになった」と力説しました。 「私たちは常に新しい挑戦を続けて、さまざまなお客様と接点を持ちたいと考えています。中古品を取り扱うことにより、接点が増えると同時に、お客様がラグジュアリーブランドを手にする機会が増えるでしょう」。
HEWIのCEOであるタチアナ・ウォルター・ファーガソンさんは、「HEWIがAmazonのLuxury Storesで販売を開始することは、高級品の再販が一定の市民権を得られるレベルまで来たと言える」と述べました。「Amazonとの連携により、ハイエンドな循環型ファッションをより多くのお客様が利用できるようになります。世界で最も信頼されているマーケットプレイスの 1 つに参加することで、より多くの人が再販の喜びを体験できるようになるでしょう」と締めくくっています。
参照:Amazon expands luxury offering with pre-owned goods
【英国】eBay UK、中古衣料品の出品者手数料を撤廃
イギリスのeBayでは古着を売買する手数料が無料になりました。ただし、販売手数料の撤廃は、スニーカー、時計、ハンドバッグ、宝飾品には適用されません。
今回の手数料撤廃は、より多くの消費者が中古品の取引しやすい環境を整え、ファッション領域におけるサーキュラーエコノミーを推進することを目的としています。今回の撤廃に伴い、中古品を見つけやすくするための新機能も発表されています。
eBayの独自調査によると、英国に住む人々の70%が、日常的に着用する洋服はクローゼット内の50%以下だと発表しています。また、92%が過去1年間に着ていない服が1着以上あると回答しました。しかし、不要になった服を売っている消費者はわずか25%しかいないのです。
さらに、調査では平均的な消費者は466ユーロ(400英ポンド)以上の着ない服を持っていることがわかっています。合計すると、イギリスの人々は190億ユーロ(163億英ポンド)相当の着ていない服を所有していることになるのです。
eBayは着用済みの衣料品の売り手と買い手の手数料を撤廃することで、個人が頻繁に売り買いすることを促進したい考えを持っています。昨年の調査では、英国ではeBayのモバイルアプリのユーザー数が減少していると発表されました。今回のアップデートは、ユーザー数を増やすことも目的だと考えられています。
eBay UKに手数料撤廃以前から出品されている既存の中古ファッションアイテムも、手数料無料の恩恵を受けることが可能です。また、生成AIによる商品説明文の作成機能が搭載されており、出品者は商品リストに説明文を追加するのがより簡単かつ迅速にできるようになります。さらに、購入者は、カスタマイズされたフィードやビジュアル検索によって、パーソナライズされたショッピング体験が実現されるでしょう。
eBay UKはライブストリームショッピング体験も試験的に行っています。この機能により、ユーザーはライブオークションに参加し、限定商品を手に入れられるようになります。この機能は2022年にアメリカで開始され、よく利用されているとのことです。
「手数料の撤廃は、何十億ポンド分もの不要な服を抱えている英国民にとって、適切なタイミングで開始できました。私たちは、服を売ることがときには面倒に感じることがあると知っています。だから、無料の手数料や、AIを搭載した新しい出品などのアップデートにより、多くの人が服を売りやすく、簡単に収入を手にできるようになるでしょう」とeBayのグローバル・ファッション部門のジェネラル・マネージャーであるカースティ・キーガンは話します。更に次のように続けました。「より多くの人が中古の服を売買することで、より多くの服の廃棄を減らし、ファッションの循環型経済を実現します」。
eBayによると、2023年には、中古ファッションの販売を通じて、埋め立て処分される160万キログラム以上の廃棄物を削減することができたといいます。これは400万枚以上のシャツの重さに相当するそうです。
参照:eBay UK removes seller fees on pre-owned clothes
売れ残りを廃棄できなくなるEUの動きは日本まで波及するか
環境を配慮する動きは欧米を主として、その後日本へと波及することが考えられます。2025年にEUでは大手企業を対象に売れ残りの服や靴の廃棄を禁止する法案が大筋合意へと向かっており、フランスではすでに衣類廃棄禁止法が施行されています。
大量生産、大量廃棄の時代からSDGsへと時代の流れが変わり、その流れが更に環境配慮を推し進めています。日本においてはフリマアプリや高級ブランドを取り扱う二次流通市場のプレイヤーは多数存在するものの、事業者自身がリコマースのエコシステムを確立している事例はまだ少ないです。数年先に、日本においても導入の可能性がある衣類の廃棄禁止。早期にリコマースの導入を検討する選択肢を頭の片隅に入れても良いかもしれないですね。
合わせて読みたい