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導入:自社での作業に限界を感じたら
ECで注文された商品の発送を自社で行うべきか、それとも外部にアウトソースするべきか。これは多くのEC事業者が抱える悩みの1つで規模が大きくなるにあたって避けては通れない検討課題です。特に物流知識のない企業の担当者が直面するこの選択のジレンマは、EC事業の今後を決定する上で重大な決断となります。このコラムでは、その悩みに真摯に向き合い、物流業務の内製と外製の選択肢を探っていきます。
内製 vs 外製:自社事業の特性を整理してみる
物流を自社事業のコアコンピタンスと感じているか
受注後の発送作業や在庫の管理を自分たちで行うか、それとも物流代行企業などのパートナー企業に任せるかを決める上ではまず、それら物流業務を自社事業のコアコンピタンスと捉えているかが問われます。自社の商品やサービスにおいて、物流が競争力の源であると感じているのであれば、内製のほうが適しているかもしれません。一方で、事業の中核にあたらない場合は外部委託を検討する余地があります。
昨今では物流で差別化を図る企業も増えてきており、梱包箱や同梱物に工夫を凝らすようになってきています。そうしたきめ細やかな対応でブランディングをしていきたい企業は自社でしっかり設計することがおすすめです。
物流業務の設計・運営をできる担当者や頼れるパートナーがいるか
自社で物流業務を行うためには、物流の設計や運営に必要なスキルや知識を有する担当者が不可欠です。あるいは、信頼できる外部パートナーを見つけることも重要です。そうした存在がいないと自社で物流業務を行うのはかなり大変になります。何をどの程度やれば良いのか、正しいのかといった基準もなければ必要な機材や資材、システムはどれを選べば良いのかといった勘所もないために非常に苦戦します。外部に委託する場合は物流の業務設計や各種必要なものの、手配はプロの事業者が行ってくれるので安心です。
人的リソースは確保できるか
内製を選択する際には、物流業務に従事するのに必要な人的リソースを確保することが求められます。今後の自社の物流をどうするかを考えたり、物流現場業務を計画・管理するような仕事を行ったりする社員と、現場の作業を行ってくれるスタッフの確保を行っていく必要があります。このあたりの人的リソースの確保に目処が立てば内製化を検討しても良いでしょう。一方で社員も現場の作業スタッフも確保するのが難しい、あるいは変動費として対応したいということであればアウトソースするのが望ましい選択肢となります。
発送作業はこだわりを持ってやりたいか・コストを下げたいか
発送作業に対する姿勢やスタンスも考慮すべきポイントです。上記物流がコアコンピタンスかどうか、のパートでも触れましたが商品の品質や梱包にこだわりを持ち、それがブランド価値やお客様への信頼に直結する場合、手間とコストを掛けてでも内製が適しています。逆に、梱包は一般的なものでよく、とにかく安くやって欲しい、というコストを最優先に考えるならば外部委託が標準化や自動化が進んでいることが多いためコストを節約できる可能性があります。
物量波動や荷扱の特殊性はあるか
物流業務には常に変動がつきものです。注文数の変動や商品の特殊性に柔軟に対応できるかどうかも選択の材料になるでしょう。波動とは夏場に良く売れて出荷が多くなる、冬場に売れなくなる、といったような繁忙と閑散の山谷のことです。
固定的に人を採用して内製で波動に対応しようとすると作業スタッフの確保やマネジメントの難易度が高くなるため、自社だけでその波動を吸収するのは困難になります。そのため、波動が大きい場合にはアウトソースするほうが得策と言えますので委託先にその柔軟性が期待できるかを確認することが必要です。また温度管理や危険物といった取り扱いや保管環境に専門性が求められるようなものである場合はアウトソースが適していると考えて良いでしょう。
内製と外製、両者のメリットとデメリット
上記で自社が物流業務を内製で対応するのか外製するのかの整理ができたら、続いてはそれぞれのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
内製のメリットとデメリット
まず内製のメリットを挙げてみましょう。内製の最大の利点は、自社で物流業務を自在にコントロールできることです。そして現場に対する施策実行のスピード感も上げることが可能です。発送作業や在庫管理などが企業内で完結するため、細部までこだわりを持って作業を進めることが可能で、独自のサービスやブランド価値を強化する手段ともなります。
しかし、内製にはいくつかのデメリットも存在します。まず初期投資や運用コストが高くつくことがあります。人材の確保やトレーニングにもリソースを割かなければなりません。また、急激な需要変動に対応するのが難しく、余剰人員の発生や不足の際の対処が課題となります。
外製のメリットとデメリット
外製の場合もメリットとデメリットが存在します。まず、外部の物流パートナーに業務を委託することで、企業は専門的なノウハウを得られるという利点があります。特に大手の物流企業ならば、効率的な物流ネットワークや技術を利用できるでしょう。これにより、迅速かつ効果的な物流運営が期待できます。
しかし、外製にもいくつかのリスクが潜んでいます。まず、企業は外部のパートナーに業務を預けることで、一部のコントロールが難しくなります。細部へのこだわりや独自性を維持することが難しくなることがあります。また、外部のパートナーが提供するサービスの品質や納期に対する不確実性も考慮すべき点です。
結び:餅は餅屋に。でもその前にしっかりと見極めることが重要
ECでの物流業務をどのように構築していくかを考えることは決して容易なことではありません。在庫管理や発送作業の内製・外製それぞれにメリットとデメリットがあります。適切な選択をするためには、企業のビジョンや価値観、将来の成長戦略を踏まえた上で判断することが欠かせません。自社で行うことでコントロールが利く一方で、それには膨大なコストや人的リソースの確保が求められます。一方で外部にアウトソースすることで、専門的なノウハウを取り入れつつも、コントロールの難しさやリスクも伴います。
最終的な選択は、企業が自らのビジョンや状況に合わせて検討し、将来を見据えた最善の決断を下すことが肝要です。未知の未来に向けて、物流業務をより効果的に進化させるための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
▼株式会社CAPES
https://capes.jp/
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