【ゲストスピーカー】
河元 智行さん
まくら株式会社 代表取締役
枕の専門店「枕と眠りのおやすみショップ!」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
枕のニーズとまくら株式会社の成り立ち
河元さん:弊社は枕をネット通販で販売しています。楽天市場やYahoo!ショッピングなどで約800商品を取り扱っています。
柳田さん:母の日や父の日だけで相当な量の枕を販売していると伺いました。
河元さん:楽天市場の1店舗だけで母の日と父の日でそれぞれ1億円は販売しています。
柳田さん:コロナ禍のご時世(2020年7月末配信)でも、好調な理由は何でしょうか。
河元さん:コロナ禍による巣ごもりの影響で、寝る時間や大掃除の機会が増え、買い替え特需が生まれました。加えて、母の日や父の日のギフト商戦に枕はギフトとして選ばれやすいのですが、その需要をしっかりと押さえたことが理由に挙げられます。
柳田さん:枕がギフトに選ばれるというのを私はあまり想像できないのですが……。
河元さん:ギフトは感謝の気持ちだけでなく、思いやりやいたわりの気持ちを伝えたいという想いもあります。枕がギフトに選ばれるのは、感謝の気持ちに加え、健康になってもらいたい、よく寝て、仕事を頑張ってくださいというメッセージを伝えられるからではないかと思います。
柳田さん:約800商品の枕を月間1億円で販売するとなると、相当な量の在庫を抱えているのではないでしょうか?
河元さん:実はそんなに在庫は抱えておらず、倉庫も借りてもいないです。このような運営方法で回している背景としては、会社の立ち上げに至るまでの経緯が大きく影響しています。
前職は今とは全く関係ない、家電量販店で携帯電話を販売する仕事をしていました。当時、枕を買い替えた際に身体に合わなくて、首筋を痛めてしまいます。合わない枕に腹を立てて、いろいろな枕を見てみたのですが、なかなか自分に合う枕がわかりませんでした。そして、「自分に合うかどうかは、実際に枕は使ってみないとわからない」という結論に至ったのです。
枕を選ぶ上で好みや感覚は非常に重要になってきます。企業の売り文句だけで枕を選んでしまっている人が多いことに気づき、枕の選び方を消費者視点まとめるポータルサイト「ぴろコレ!」を2003年頃に作りました。
枕に悩む人がポータルサイトに集まるようになると、今度はメーカーから枕に関するプレスリリースを頂くようになります。それを無料で配信しているうちに、今で言う枕のインフルエンサーのような立ち位置になっていきました。そのタイミングで、当時お付き合いがあった有名メーカーの方から枕を売ってみないかと言われたのが会社を立ち上げるきっかけです。
無在庫の受発注対応をシステムで自動化
河元さん:会社を始めたときは貯金8万円、資本金1円からでした。お金がなかったので、在庫は持てず、保管場所もありません。そのため、1個売れたら1個仕入れて発送するという運営方法でやるしかなかったのです。
1日1個しか売れないところから、だんだんと販売量を増やしながら、最近では1日で1,000~2,000個売れるときもあります。ただ、無在庫の受発注で対応する部分は立ち上げ当初と変わっていません。売れた商品をメーカーに発注して、届いたら荷造り梱包して出荷するというスタイルでやっています。
それでは納期がかかるというデメリットがあったため、社内でシステム開発を行うなどITを駆使することで、いかに納期を短縮するかを自分たちなりに編み出していきました。単純な話、納期を短縮するには入荷を早めればいいわけです。今日入荷できれば今日出荷できます。今日入荷するためには、商品を注文の1週間ほど前に発注することが必要です。そのための売上を予測し、自動的に発注をかけています。
柳田さん:なるほど、と言いたいところですが、発注に誤差はないんですか?
河元さん:最初の頃は誤差もたくさんありました。自動であるため、商品番号の登録が間違っても発注されるので、夏の暑いときに間違えて羽毛布団を800枚発注することも……。8年以上運用していく中で、改善を重ねて今では誤差が出づらいようにシステム化されています。
柳田さん:8年もやっていれば誤差は相当少なくなってくると。
河元さん:改善を重ねることでしか誤差を減らすことではできません。お金がない状態で始めたことが結果としては良い方向に向いていると思います。
柳田さん:代わりに頭を使って仕組みを整えたのですね。
河元さん:この仕組みがうまく機能し、在庫を持たずとも取扱商品数を大きく増やせました。ピーク時は、枕以外の寝具も合わせて5万商品販売していたこともあります。
柳田さん:ドロップシッピングではなく、先に発注をすることで無在庫による販売をされていたのですね。
未来を見据えた経営が成長の肝
河元さん:とはいえ、型番商品だと価格競争にさらされてしまうため、受発注だけではうまくいかなくなってしまいます。そこで、型番で売れている商品から弊社限定のカラーを展開していくところから始め、徐々にオリジナル商品の開発をしていきました。今では取り扱っている商品の100%がオリジナルになり、価格競争にさらされない世界で戦えるようになっています。
柳田さん:現在はメーカー工場から直接商品が入ってくるようになったんですね。
河元さん:はい。弊社は枕に特化した製造小売業、SPAを目指しています。
柳田さん:簡単にお話されていますが、誰にでもできることではないですよね。
河元さん:簡単にできる方法はないかと模索した結果が今の形です。売上が2倍になったときに人手も2倍になってしまう時期がありました。そのときに要件・設計から開発まで広くやれるエンジニアを私よりも高い給料で採用したところ、時間を短縮するツールをいろいろと作ってくれて、業務の効率化につながっていきます。機械に任せられることを機械に、人間がやるべきことを人間がやるようになり、クリエイティブな仕事の時間が増えていきました。
柳田さん:自分より給料が高いエンジニアを採用したのは何年前ですか?
河元さん:2008年頃です。ベンダーにシステム開発を依頼した場合、少し変えたい箇所が出たときに、その度に見積もりを取って開発を進めなければならないため、スピード感が遅くなってしまいます。そこで、社内でシステム開発をやるべきだと思い、内製化を選びました。
当時、10年ぐらい先の未来をよく妄想していました。まくらの世界もどうなるのか考えたときに、エンジニアが必要だと思ったんですよね。
枕は毎日使うものでさらに触れる時間も長く、顔の近くに常にあり続けています。日本では縄文時代、世界を見ると古代エジプトから枕がありました。これだけ昔から枕が存在していることを考えると、1,000年後であっても枕はなくならないでしょう。
その枕にITやIoTが融合すれば、枕が生活のインフラになるかもしれません。寝たきりの方でも、枕を使ってTVをつけたりカーテンを開けたりできるようになるかもしれません。枕カバーが古くなったら新しいものを注文してくれる。枕がECをはじめ、あらゆるプラットフォームの代わりになる。そういう世界が来るかもしれない。それを妄想で終わらせるのではなく、実現させるためにはエンジニアが必要だと考え、採用活動を始めました。
枕を中心にワクワクした世界をまくら株式会社が作る。自分たちの想いを形にするためには、今やるべきことを具体的にし、一個一個着実にやっていかないといけません。
柳田さん:日常生活で枕の重要性に気づいていない方も多いのではないかと思います。
河元さん:枕は陰ながら人を支え続けてくれています。家に帰って枕がなかったらびっくりしますよね。いなくなった瞬間に大切さがわかる関係性といえます。良い枕を探すには結婚前にお付き合いをするのと同じように、いろいろと試してから一生付き合っていく相手を見つけることが必要です。弊社は枕と人の出会いをマッチングさせるのをテーマとしています。
柳田さん:そういったテーマが今の成長に通じているのかもしれませんね。
おわりに:成長し続ける企業であるために
在庫をほとんど持たずに機械的に受発注を行う仕組みや、型番商品の仕入れ販売からオリジナル商品へと移行する動きなど、事業の成長に合わせて未来を見据えながら新しい取り組みをする動きは参考になるのではないでしょうか。自分たちの想いや成し遂げたいことを実現するにあたってのヒントが河元さんの話にはたくさん詰まっているように感じられました。
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