パーソルキャリア株式会社が運営する、転職サービス「doda(デューダ)」(編集長:大浦 征也)は、2022年12月の小売・流通業界の転職求人倍率をまとめた「業界版doda転職求人倍率」を発表いたします。

doda転職求人倍率は、中途採用市場における需給バランスを表すもので、dodaの会員登録者(転職希望者)1人に対して、中途採用の求人が何件あるかを算出した数値です。
<算出式※:求人数(採用予定人員)÷ 転職希望者数>※分子・分母はdoda独自の定義により算出したものです。


■2022年12月の概況
人手不足と季節性要因から、小売・流通業界の転職求人倍率は過去最高に。採用難易度は依然高い状態。

求人数(採用予定人員、以下求人数)とは、転職求人倍率を算出する月に新たに掲載された求人に加え、算出月の前月末時点、かつ算出月に掲載があった求人に記載されている採用予定人員のことを指します。

2022年12月の小売・流通業界の転職求人倍率は、全体の2.54倍※1に対し、 0.54倍となり前月比+0.07ポイントで、2019年1月の調査開始以来、過去最高を更新しました(図①、表①)。前月に引き続き、人手不足から企業の採用意欲は高く、求人数は前月比105.9%、前年同月比137.3%でした(表②)。転職希望者数は、例年年末に落ち着く傾向から、前月比91.3%と減少、前年同月比では116.0%でした。12月はこうした季節要因もあり、転職求人倍率は先月からさらに上昇しました。

2023年1月以降は、4月入社を目指して転職活動を始める人が多いため、転職希望者数は回復し、求人倍率は下降する見込みです。しかし、小売・流通業界では他業種を視野に入れて転職活動する人も多いことから、依然として企業の採用難易度が高い状態は続くでしょう。
※1:全体版は、doda転職求人倍率レポート< https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/ >を参照ください。

■2022年12月の動向(解説:doda編集長 大浦征也)
高まり続けるSDGsへの社会的関心や物価高を背景に好調のリユース業界。出張査定をする買取営業は採用が急務に。
2022年12月は、先月に引き続き「自動車ディーラー」の買取営業や接客スタッフのニーズが高かったことに加え、リユース系企業で採用が活発化したことが、小売・流通業界の求人増加を後押ししました。
現在、世界レベルでSDGsの取り組みが推進されていることもあり、人々のサステナビリティや、環境に対する意識は高まり続けています。さらに物価上昇や新品不足なども背景に、割安な中古品に注目が集まっています。これにより、「売りたい」と「買いたい」両方のニーズが高まり、リユース業界は拡大傾向にあります。12月は、年末年始の大掃除といった季節的要因も重なり、こうしたニーズがより高まる時期です。これに伴い、リユース業界では、大きく4つの職種で求人増加がみられました。

最も求人が増加したのは「営業」です。自宅にあるものを気軽に査定してもらえることから、出張査定のニーズは高まっています。しかし、個人からの問い合わせの量に対して出張査定を行う「営業」が不足しており、各社採用が急務となっています。査定はデータベースをもとに容易に行える企業もあり、早急な人員確保に向け職種未経験歓迎の求人も多くみられます。

また、「企画・管理」「接客・販売」「エンジニア」求人の増加も目立ちます。市場好調により、各社M&Aや新規店舗出店を通じ成長を加速させる狙いから、新規事業計画の策定を担う「企画」のニーズが増加。また、組織体制の強化に向け、経理や法務など「管理」の求人も増えています。また、店舗で商品の買い取り、販売などを行う「接客・販売」は、外出制限の緩和により、店舗に客足が戻ってきたことから人員確保が急がれています。さらに、EC化が進む状況下で各社、オークションサイトや自社アプリといったオンラインサービスの拡充にも力を入れているため、「エンジニア」の求人も増加傾向にあります。


■2022年12月の求人案件数の動向(解説:doda編集長 大浦征也)

求人案件数とは、採用予定人数に関係なく、その月のうちに1度でも「doda」に掲載された求人票の数を指します。(新規、繰り越しを含む)

全小売・流通業種で求人案件数は減少トレンド。最も減少幅が大きかった「ホームセンター」は、繁忙期に向け採用難易度の高い求人を整理。
2022年12月の求人案件数をみてみると、すべての小売・流通業種において、前月から減少しました(表③、図②)。これは、年末年始が小売・流通業界の繁忙期であるためそれまでに採用を完了させた企業、一部求人をクローズした企業があったことなどが要因として考えられます。

最も求人案件数が減少したのは、「ホームセンター」でした。「ホームセンター」はこれまで、水やトイレットペーパーをはじめとした生活関連商品、感染防止用のアクリル板やビニールシート、さらには外出自粛を受け園芸品やDIY用品といった、家ナカ時間を楽しむための商品の売り上げが伸びていました。しかし、こうしたコロナ需要は頭打ち状態にあります。そこで各社、M&Aを通じて利益拡大を狙うだけでなく、品揃えやサービスを拡充する、仕入れルートを最適化するといった工夫を凝らしています。それに伴い、バイヤーや購買、商品開発といった「企画」の求人が数多く出ていました。また、ネット販売が好調であるため、ECサイト運用担当など「マーケティング」の求人も増加。
しかし、これらポジションは基本的に経験者を対象とするため、採用難易度は高く、求人を出しても簡単に採れるわけではありません。そこで、繁忙期に差し掛かる前に採用難易度の高い求人を、優先順位を付けて整理したと考えられます。ただし「企画」や「マーケティング」の採用ニーズは依然高いことから、来年度に向けてこれら求人は復活するでしょう。

解説者 doda編集長 大浦 征也(おおうら せいや)
2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。
その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年より約3年間、doda編集長を務め、2019年11月には執行役員に。2022年7月、doda編集長に再就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC) 理事、一般社団法人日本人材紹介事業協会 理事にも名を連ねる。

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