
株式会社ブランド総合研究所がインターネットを活用し、年代や性別が均等になるよう全国3万人から回答を集めた「第6回企業版SDGs調査」を実施し、その結果を発表しました。この調査では国内の主要企業300社のSDGsへの取り組みについて消費者がどのように評価しているかを分析しています。今回で6回目となるこの調査の結果についてご紹介します。
この記事の目次
調査結果概要
調査によると、最も高い評価を獲得したのはトヨタ自動車とのことです。同社は調査開始以来6年連続で首位を維持し、常に高い評価を得続けているようです。しかし詳細を見ると、トヨタ自動車に対して「本格的に取り組んでいる」と回答した消費者の割合は15.0%で、前年調査の17.9%から減少しています。一方で「少し取り組んでいる」という回答は18.6%から20.1%へと増加しました。この結果、同社のSDGs評価点は21.5点となり、前年の23.6点から2.1点減少したことが報告されています。

この傾向は300社平均でも同様の結果が見られたようです。「本格的に取り組んでいる」との回答は7.0%で前年の7.9%より減少し、「少し取り組んでいる」は11.9%から12.7%へと増加しています。これらの合計でも2割に達していないことが明らかになりました。
一方で「全く取り組んでいない」との回答は1.7%で、前年の2.3%より減少しています。これらの結果から、企業のSDGsへの取り組みに対する消費者の期待はより高まっており、各企業がそれに十分に応えられていない状況が浮き彫りになっているようです。
SDGs評価が高い企業ランキング
1位のトヨタ自動車に続いて、2位にはサントリーが入りました。サントリーの評価点は21.0点で、前年の16.9点から4.1点も増加し、順位も7位から大きく上昇しています。同社は「本格的に取り組んでいる」との回答率が15.6%で、これはトヨタ自動車を上回り、調査対象300社の中で最も高い回答率となったとのことです。
3位にはユニクロ(本調査では社名ではなく、消費者になじみのあるブランド名で調査が実施されたとのこと)が入り、評価点は18.4点となりました。前年の17.4点から1.0点増加し、順位も5位から上昇しています。
上位20位のランキングを見ると、5位のセブン-イレブンから10位の住友林業まで、前年結果と比較して評価が大幅に向上した企業が並んでいます。また、18位にはEPSONとスズキがランクインしており、それぞれ前年の118位と132位から大きく順位を上げる結果となりました。

ゴール別の評価

調査ではSDGsで設定されている17のゴールの中から、各企業が取り組んでいると思われるものを選択してもらったとのことです(複数回答可能)。ただし、「名前も知らない」と回答した企業については評価対象から除外されています。以下の数字は300社平均で、カッコ内は前年の結果となっています。
17ゴールの中で最も高い評価を得たのは「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」で、300社平均は5.7%でした。これは前年の5.5%から0.2ポイント増加しています。このゴールで最も高い評価を得た企業は本田技研工業で、回答者の15.4%が「取り組んでいる」と答えたそうです。
次いで高い評価を得たのは「8.働きがいも、経済成長も」で5.6%となりました。このゴールではトヨタ自動車が10.7%で最も高い評価を獲得しています。
3番目に高い評価を得たのは「12.作る責任、使う責任」の5.3%で、前年の4.8%より0.5ポイント上昇しています。
SDGsゴール別に最も評価が高い企業

17ゴールそれぞれにおいて最も評価が高い企業をまとめた結果、2つ以上のゴールで最高評価を獲得したのはヤフー1社のみだったとのことです。それ以外のゴールでは、最高評価の企業がすべて異なる結果となりました。
また、前年の調査と同じ企業が最高評価を維持したのはわずか3社(ゴール)のみで、残りの14ゴールではリーディング企業が入れ替わりました。これは各企業のSDGsへの取り組みが進展する中で、消費者からの評価も変化していることを示しているようです。
SDGs評価に影響が強いのは「気候変動に具体的な対策」
調査ではSDGs評価への影響度を分析するため、300社の結果から、SDGs評価を目的変数、SDGsゴール別評価を説明変数として重回帰分析を実施したとのことです。その結果から、SDGs評価に最も影響力の強いゴールを順に並べたものが公表されています(数値=重回帰係数が大きいほど影響力が高い)。
分析の結果、最も影響度が大きいのは「気候変動に具体的な対策を」で、他のゴールと比較して特に影響度が強いことが明らかになりました。しかし、このゴールの評価は300社平均でわずか2.7%に留まっており、影響度が大きいにもかかわらず、消費者に具体的な取り組みが十分に伝わっていない状況が示されています。
次に影響度が大きいのは「陸の豊かさも守ろう」、「作る責任、使う責任」の順となりました。これらの項目への具体的な取り組みを消費者に効果的に伝えることで、SDGs評価を効果的に高められる可能性があるとされています。

SDGs評価は好感度や投資意欲度を高める効果あり
さらに、調査では17ゴール別に企業の好感度や就職意欲、投資意欲への影響度を分析し、その結果をまとめています。影響度(重回帰係数)が0.5以上を◎、0.3以上は〇、0.3未満は△で表示されているとのことです。
分析結果から、「5.ジェンダー平等を実現しよう」は好感度および投資意欲に大きな影響があり、就職意欲にも影響を与えていることがわかりました。
「2.飢餓をゼロに」は好感度に大きな影響を与え、投資意欲にも影響があることが示されました。また、「8.働きがいも、経済成長も」は投資意欲に大きな影響を与え、好感度にも影響を与えるという結果が得られたようです。
一方で「1.貧困をなくす」など、一部のゴールについては有意な影響が確認できなかったとのことです。これらの結果から、SDGsへの取り組みは内容によって企業評価に異なる効果をもたらすことが明らかになっています。

調査概要
企業版SDGs調査2025の調査対象は、業界別に売上規模の大きな企業とSDGsやESGに積極的に取り組んでいる企業を中心に、ブランド総合研究所が独自に300社を選出したとのことです。
回答者は20代から60代以上までの年代別(5区分)で同数ずつ回収し、世代ごとに男女均等となるように設計され、合計3万人の回答を収集したそうです。1人の回答者は10社に対して評価を行ったため、300社を30グループに分けて調査を実施しています。つまり、各社の評価対象人数は1000人となっています。
ただし、集計にあたり回答内容の信頼性の低いレコードを除外(クリーニング)することで調査精度を高めた結果、有効回答数は25,165人(1社あたり839人)となったとのことです。
調査方法は企業版SDGs調査(第6回)として、インターネット調査で実施されました。調査対象は登録調査モニター(20歳以上)から年代・性別に均等に回収し、300社を10社ずつ30の調査票に分けて作成されたそうです。総回収数は30,000人(各社1,000人となるように回収)で、有効回答数は25,165人(不完全回答および信頼性の低い回答は集計対象外)となっています。
調査時期は2025年5月29日~6月2日で、調査項目には以下が含まれているとのことです。
- SDGs意識:購入・利用時のSDGs意識
- SDGs評価:SDGs取組評価、ゴール別評価、情報入手経路、ESG活動
- 企業評価:企業認知度、好感度、利用経験、就職意欲、投資意欲
- 回答者属性:年齢、性別、婚姻、子供の有無、世帯年収、居住形態など
出典元:ブランド総合研究所 プレスリリース