総合オリコミ社・西村ジョイ・Re Data Science、購買履歴とチラシ情報活用の1to1販促実証実験を開始

株式会社総合オリコミ社は、西村ジョイ株式会社およびRe Data Science株式会社と協力し、購買履歴とチラシ情報を組み合わせた1to1販促の実証実験をスタートしたことを発表しました。同社は広島県廿日市市に本社を構えており、西村ジョイは香川県を拠点にホームセンターを展開しています。

購買履歴・チラシ情報を活用した1to1販促の仕組み

1to1販促による顧客エンゲージメント向上の取り組み

近年の人口減少により市場の大幅な成長が期待しにくい状況下において、小売業の販促活動では顧客との持続的な関係構築が重視されています。LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるためには、単発の購買促進だけでなく、顧客が継続的に店舗やブランドとの接点を持ちたいと感じられる関係性、つまり顧客エンゲージメントの強化が不可欠となっています。顧客エンゲージメントを高めるには、企業が販売したい商品情報を一方的に送るのではなく、個々の顧客にとって価値ある情報を自然な形で提供することが重要です。

チラシが生み出すセレンディピティの価値

現在でもチラシは小売店にとって極めて重要なメディアとしての地位を保っています。新聞折り込みによる紙媒体のチラシ配布は年々減少傾向にありますが、電子チラシなどに代表されるチラシ形式のメディアは消費者から変わらぬ支持を得ており、優れた受動メディアとしても注目を集めています。チラシは顧客が能動的に検索した商品だけでなく、「顧客が現時点では興味を持っていない商品」も含めた幅広い情報との接触を可能にするメディアです。そのため、チラシには顧客が当初探していたものとは異なる価値ある商品や情報に偶然出会う、いわゆるセレンディピティを創出する機能があると言えます。

顧客の興味を起点とした導線設計

チラシは多くの消費者に支持されるメディアですが、どれほど優れたメディアであっても顧客に届かなければその価値を十分に発揮できません。そこで本取り組みでは、顧客が「すでに興味を持っている商品」の情報を活用し、電子チラシへの導線を構築します。具体的には顧客の購買履歴から、すでに顕在化している興味を把握します。その上で個々の顧客が持つそれぞれの文脈に基づいて一人ずつメッセージを作成し、LINEで配信します。メッセージでは顧客の興味と関連性のあるチラシの一部に触れることで、自然な流れで電子チラシ全体へのリンクに誘導します。

実証実験の概要とフロー

01. 各種情報の加工・統合による適切な文脈付与

会員情報、購買履歴、商品マスタなど分散している各種データソースを単一のデータベースに統合し、異常値や欠損値に対してクレンジング処理を実施します。さらにAI機構に適切な文脈を与えるため、独自の加工処理を行います。

02. 購買履歴の文脈に沿ったお役立ち情報の生成

統合・加工したデータをAI機構に入力し、購買履歴の文脈から顧客の興味を捉え、それに関連する「お役立ち情報」を一人ひとり個別に生成します。「お役立ち情報」とは特定商品への言及を一切含まない「顧客の役に立つ純粋な豆知識」のような情報を指します。

03. お役立ち情報と関連性の高いチラシ情報の取得

同様にAI機構において、購買履歴の文脈に沿った「チラシの記事」を探索します。購買履歴の文脈とチラシ記事との関連性の強さを定量化し、その値が最も高いものを選出します。その際一定の閾値を設定し、閾値を下回る記事しかない場合は最も汎用的な記事を選択します。

04. お役立ち情報とチラシ情報を統合したメッセージの生成

生成したお役立ち情報とチラシ記事の情報を統合し、配信時点の季節感を示す要素などを追加して、一続きのメッセージとして再生成します。その際複数レイヤーに多くのガードレール機構を組み込むことで、文章の品質を担保します。

05. LINEメッセージから電子チラシへのリンク

これまでのプロセスで作成されたメッセージの末尾にリンクを追加し、LINEで配信します。顧客は末尾のリンクをクリックすることで電子化されたチラシ全体ページに遷移します。この過程ではクリック率や滞在時間などの計測が可能です。

AI機構への適切な文脈付与のための独自加工技術

近年異なるデータソースの項目や値を、共通の語彙や意味体系のもとで理解可能にするアプローチへの関心が高まっています。オントロジー技術に関する議論にも見られるように、異なるシステムに分散するデータを単に集約するだけでなく、それぞれのデータが持つ「意味」が相互に接続可能な状態になっていることが重要です。本施策においても質の異なるデータをそのまま扱うだけではAI機構が「意味」を適切に理解できない場合があります。そのため購買行動の背後にある用途や文脈を、AI機構が解釈可能な形に事前加工することが必要となります。

前述の「概要・フロー 03」で説明したように、本施策では「購買履歴」と「チラシのトピック」という異なるシステム間の情報を関連づける必要があります。例えば「ペットフェスタ開催 大型ドッグラン完備」というチラシの特集記事の中に「犬用ペットフード」への直接的な言及がないとします。その場合チラシの文言とフードの購買履歴を直接的に紐付けることはできません。しかし過去に犬用ペットフードを購入した顧客がペットフェスタの特集記事に興味を持つ可能性は高いと考えられます。

実際のチラシ記事(西村ジョイ屋島店 2026年5月21日号)

また別の例として、ビニタイ(株式会社共和の商標登録品)という樹脂製の帯の中心にワイヤーを通した結束材があります。同社のホームページでは「パンの袋の口止めによく使われている、くるっとひねるワイヤー入りのヒモ。あれがビニタイです」と説明されており、お菓子のラッピングの写真も添えられています。そのためLLM(Large Language Model)に「ビニタイを購入した顧客」が興味を持ちそうなチラシの特集記事を見つけるよう指示した場合、パンやお菓子、ラッピングの文脈に関連づけた探索がなされてしまう可能性があります。しかしホームセンターで販売されるビニタイは園芸用であることも多く(注1)、その場合パンやお菓子とは関係がありません。

PhotoACより一部加工

注1:実際に西村ジョイにおける同時購買状況をConfidenceで確認すると、上位に並ぶ商品は培養土、肥料、植物用支柱、ポット苗など殆どが園芸用品となっています。

AI機構にデータを入力する前に独自の加工を施すことで、「犬用のペットフードを購入した顧客」に対しては「ペットフェスタ開催」の特集記事を、「(園芸用)ビニタイを購入した顧客」に対しては「園芸用品に関する記事」をマッチングすることが可能となります。

実証実験の詳細

盲検化されたRCT(Randomized Controlled Trial)の実施

施策の効果を検証するためRCT(Randomized Controlled Trial:ランダム化比較試験)が実施されます。まず購買履歴のある顧客から実験参加者を募集し、参加者をランダムに2つのグループに分割します。その上でそれぞれのグループにLINEでメッセージを配信します。一方のグループには前述のAI機構を用いて一人ずつ個別に生成したメッセージを配信し、もう一方のグループには販促担当者が人手で作成したグループ共通のメッセージを配信します。最後にアンケート結果やリンク先への遷移率などを比較し、施策の効果を検証します。

ここで重要なのは顧客本人は自分が受け取ったメッセージが個別に生成されたものなのか、グループ共通のものなのかを知ることができないという点です(盲検化)。これにより「購買履歴が利用されている」「AIが文章を書いている」といった先入観の影響をコントロールし、メッセージの内容そのものが顧客の行動に与える効果を切り出して測定することが可能となります。実験は西村ジョイの8店舗を対象に、1人あたり約3ヶ月にわたって実施されます。

顧客の不快感に対する丁寧な検証

本施策は顧客の購買履歴を活用し、生成AIによってメッセージを自動生成するという新たな取り組みです。こうした仕組みは顧客にとって有益な情報を届けられる可能性がある一方で、「自分の購買行動が分析されている」と感じることへの心理的な抵抗感や、受け取った文章に対する違和感を生じさせるおそれもあります。

前述の通り本施策が目指すのは顧客エンゲージメントの強化です。顧客に不快感を与えるコミュニケーションはエンゲージメントの強化とは正反対の結果を招きかねません。そのため本実証実験では施策の効果検証と並行して、顧客が受け取るメッセージに対してどのような印象を持ったかをアンケートを通じて丁寧に確認し、顧客の率直な受け止めを把握したうえで施策の改善に反映していくとのことです。なお本実証実験における購買履歴の利用およびLINEメッセージの配信は、個人情報保護法その他関連法令に基づき、適切な利用目的の通知および顧客の同意取得を行ったうえで実施されています。

株式会社総合オリコミ社は今後も西村ジョイおよびRe Data Scienceとの連携を通じてデータサイエンスおよびAI技術を活用したマーケティング活動を推進していくとしています。

株式会社総合オリコミ社について

本社所在地:広島県廿日市市大野1876
創業:1975年1月
設立:1978年4月
代表:中島 良之
事業内容:チラシ制作、各種店舗販促物制作、Web広告運用、SNS・LINE運用、各種デジタルクリエイティブ制作、デジタルチラシ制作投稿、予約アプリ、人流分析、Googleビジネスプロフィール、デジタルサイネージ、オウンドメディア運用、インハウス支援、イベント支援

出典元:株式会社総合オリコミ社

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