
株式会社帝国データバンクが、2026年5月における企業倒産件数に関する調査結果を発表しました。本調査では、負債額1000万円以上の法的整理を対象に集計と分析が実施されています。

この記事の目次
概要と主要な調査結果
2026年5月の倒産件数は771件となり、前年同月の835件と比較して7.7%の減少となりました。これは6カ月ぶりに前年を下回る結果となっています。ただし、2026年1月から5月までの累計は4307件に達しており、前年同期の4134件を173件、率にして4.2%上回っています。
負債総額については1112億4800万円で、前年同月の933億8800万円から19.1%増加し、3カ月連続で前年を上回る結果となりました。負債額で最も大きかったのは、東証スタンダード市場に上場している株式会社トーシンホールディングスの162億円でした。上場企業の倒産は、2025年7月の株式会社オルツが民事再生法を申請して以来、10カ月ぶりの発生となっています。
業種別の動向について
業種別で見ると、1年ぶりに主要7業種すべてにおいて前年を下回る結果となりました。最も件数が多かった『サービス業』は、前年同月の220件から196件へと10.9%減少し、6カ月ぶりに200件を下回りました。『小売業』は前年同月の185件から171件へと7.6%減少し、2カ月連続で前年を下回っています。また『運輸・通信業』は前年同月の36件から29件へと19.4%減少し、14カ月ぶりに30件を下回る結果となりました。

業種を詳細に分析すると、『サービス業』では労働者派遣や広告制作が大幅に減少し、「広告・調査・情報サービス」が前年同月の80件から56件へと減少しました。『小売業』では「飲食店」が前年同月の78件から67件へ、「自動車・自転車小売」が同16件から10件へと減少が顕著でした。一方で『建設業』では、大工工事や内装工事などの「職別工事」が前年同月の62件から82件へと増加が目立っています。
主因別の分析結果
倒産の主因別では、「販売不振」が627件で最も多く、前年同月の680件から7.8%減少しました。全体に占める割合は81.3%となり、前年同月と比較して0.1ポイント減少しています。「販売不振」に加えて、「売掛金回収難」が前年同月の1件から4件へと300.0%増加、「業界不振」が前年同月の2件から1件へと50.0%減少するなど、これらを含めた『不況型倒産』は632件となり、前年同月の684件から7.6%減少し、6カ月ぶりに前年を下回りました。

「設備投資の失敗」は前年同月の4件から2件へと50.0%減少し、前年から半減しました。「経営者の病気、死亡」は前年同月の35件から31件へと11.4%減少し、4カ月ぶりに前年を下回っています。一方、「その他の経営計画の失敗」は前年同月の13件から22件へと69.2%増加し、2カ月連続で前年を上回る結果となりました。
態様別の倒産状況
倒産の態様別では、『清算型』倒産が744件となり、前年同月の821件から9.4%減少し、全体の96.5%を占めました。『再生型』倒産は27件で、前年同月の14件から92.9%増加し、5月としては過去10年で最も多い件数となりました。

『清算型』の内訳を見ると、「破産」が719件で前年同月の783件から8.2%減少し、6カ月ぶりに前年を下回りました。「特別清算」は25件で前年同月の38件から34.2%減少し、5月としては4年ぶりに前年を下回っています。
『再生型』では、「民事再生法」が26件となり、前年同月の14件から85.7%の大幅増加となり、3カ月連続で前年を上回りました。このうち法人が8件、個人が18件でした。「会社更生法」は1件で、前年同月は0件でした。
負債規模別と資本金規模別の分析
負債額の規模別では、「5000万円未満」が496件となり、前年同月の527件から5.9%減少しました。全体の64.3%を占めており、構成比は5月として2000年以降で最も高い水準となっています。「5000万円以上1億円未満」は98件で、前年同月の113件から13.3%減少し、15カ月ぶりに100件を下回りました。

資本金の規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が566件となり、前年同月の606件から6.6%減少しました。全体の73.4%を占めており、5月としては2000年以降で3番目に多い件数となっています。
業歴別の倒産動向
業歴別で見ると、「30年以上」が249件で最も多く、前年同月の257件から3.1%減少し、4カ月ぶりに前年を下回りました。「15年未満」は123件で前年同月の97件から26.8%増加し、唯一前年から増加しており、10カ月連続で前年を上回っています。

業歴10年未満の『新興企業』は222件となり、前年同期の253件から12.3%減少し、4カ月ぶりに前年を下回りました。内訳を業種別で見ると、「サービス業」が前年同月の86件から78件へと9.3%減少し最も多く、「小売業」が同65件から57件へと12.3%減少、「建設業」が同50件から41件へと18.0%減少しました。主要7業種すべてで前年を下回る結果となっています。
地域別の倒産状況
地域別では、9地域中7地域で前年を下回る結果となりました。『近畿』は前年同月の212件から176件へと17.0%減少し、6カ月ぶりに前年を下回り、直近2年間で最も少ない件数となりました。特に「大阪」が前年同月の116件から75件へと減少し、4年ぶりに全国における構成比が10%を下回っています。『北海道』は前年同月の23件から21件へと8.7%減少し、7カ月ぶりに前年を下回りました。

増減率で見ると、『北陸』が前年同月の20件から39件へと95.0%増加し最も高く、構成比は5月として2000年以降で最も高い水準となりました。『四国』は前年同月の17件から22件へと29.4%増加し、5月としては過去10年で最多となっています。一方で『東北』は前年同月の61件から35件へと42.6%減少し、5カ月連続で前年を下回りました。47都道府県中25道府県が前年を下回る結果となっています。
特徴的な倒産傾向について
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は46件が判明し、3カ月連続で前年を下回りました。「人手不足倒産」は28件が判明し、1年ぶりに30件を下回っています。「後継者難倒産」は44件が判明し、6カ月ぶりに前年を下回りました。「物価高倒産」は97件が判明し、100件近い高水準で推移しています。
今後の見通しと展望
2026年5月の全国企業倒産は771件となり、前年同月から64件減少し6カ月ぶりに前年を下回りましたが、この減少は一時的なものと考えられています。2026年1月から5月までの累計件数では前年同期を173件上回っており、特に「建設業」では1月から5月の累計が844件と、前年同期の799件を45件上回るなど増加が目立っています。企業からは「材料価格を中心に物価上昇の高止まりを予想しているため、厳しい状況が続く」といった声が寄せられており、引き続き同業界の動向が注目されます。
負債総額は1112億4800万円となり、3カ月連続で前年を上回りました。負債トップは東証スタンダード市場に上場し、携帯電話ショップの運営などを手がけるグループの持ち株会社である株式会社トーシンホールディングスで、負債額は162億円でした。これは株式会社オルツが2025年7月に民事再生法を申請して以来、10カ月ぶりの上場企業倒産となります。負債規模別では「10億以上50億円未満」が18件発生し、1月から5月の累計では91件と前年同期の71件を上回っており、規模感のある倒産が増加している点が懸念されます。
日本銀行が発表した国内企業物価指数の4月速報では、ナフサをはじめとした石油製品のほか、エチレンなど化学製品の価格高騰を背景として132.8となり、前年比4.9%上昇しました。中東情勢を背景とした原材料費やエネルギー価格高騰の影響を強く受ける分野において、現状では企業から「価格転嫁が追い付かない」といった声が目立っています。今後、価格転嫁が進むことで消費者物価がさらに上昇することが見込まれています。帝国データバンクが発表した『「食品主要195社」価格改定動向調査(6月速報)』によると、2026年通年の飲食料品値上げ品目数の累計は1万1157品目が判明しており、食品フィルムやトレー類などで大幅な値上げや品薄状態といった影響が表面化しています。7月以降も引き続き価格改定の増加が見込まれる中、今春の賃上げ効果が吸収され、消費者の節約志向がさらに高まる可能性が高いと指摘されています。
従前からのコロナ禍の影響や物価高によって企業体力が弱っていた企業では、今回の中東情勢による先行き不安が追い打ちをかけて倒産したケースが見られますが、原油由来の製品の供給制約や急激な価格上昇が明確な要因となって倒産に至ったケースは5月末時点では発生していません。政府は急激な供給不足に対する過剰発注と過剰な在庫確保を背景とした流通の目詰まりを解消すべく、関係省庁に設置した情報提供窓口を通じてサプライチェーンの情報収集と情報共有に努めています。こうした取り組みによって先行きへの不安解消に向かうことが期待されますが、調達ルートの確保とコスト上昇への対応力、価格転嫁という面において、大手企業と中小企業では今後さらに格差が拡大する可能性があります。
加えて、長引く円安や人件費高騰などによるコスト上昇、長期金利上昇による資金繰りや設備投資への影響と消費マインドの低下など、倒産を押し上げるリスク要因は多く存在しています。AI、半導体関連分野が株価や国内景気をけん引している一面はありますが、内需型産業を中心に企業間格差は広がっており、引き続き倒産は増加傾向を辿るものと見られています。
出典元:株式会社帝国データバンク












