
大日本印刷株式会社(DNP)が展開する「DNP出版IPビジネスプロジェクト」は、海外進出を試みたものの撤退・中断を経験した海外事業担当者を対象とした「海外進出における撤退・中断」の実態調査を実施しました。
国内市場の成熟化や人口減少を背景として、成長機会を求めて海外進出に挑む企業は年々増加傾向にあります。しかし一方で、言語や商習慣の違い、各国の法規制への対応、人材確保など、多くのハードルに直面し、計画の中断や撤退を余儀なくされるケースも少なくありません。
海外進出が失敗に終わった理由や、その実態、意思決定の背景については、これまで十分に可視化されていないのが現状となっています。
そこで今回、食品・日用品・家電・小売・流通業界を対象に、年商10億円以上の企業で、海外進出を試みたが撤退・中断の経験を持つ海外事業担当者へ「海外進出における撤退・中断」の実態調査が行われました。
この記事の目次
調査概要「海外進出における撤退・中断」に関する実態調査
- 調査期間:2026年2月24日(火)~2026年2月25日(水)
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:年商10億以上の企業(食品・日用品・家電・小売・流通業界)の海外事業担当者、且つ、海外進出を試みたが撤退・中断の経験を持つ方
- 回答数:201人
- 調査機関:株式会社PRIZMA「サクリサ」
進出の決め手は「海外市場の成長性・将来性への期待」撤退・中断すると判断した理由とは
まず、「海外進出を検討・実施した主なきっかけ」について質問したところ、最も多かった回答が「海外市場の成長性・将来性への期待」(43.8%)、次いで「国内市場の縮小・先細りへの危機感」(27.4%)となりました。
「海外市場への期待と国内市場への危機感」を合わせると約7割を超えており、多くの企業が将来の成長確保と事業存続の両面を見据え、海外進出に前向きに取り組んでいることが明らかになりました。
このような海外進出ですが、企業はどの段階で壁に直面し、撤退を決断したのでしょうか。
「海外進出を検討・実施した際、どの段階で撤退・中断を決めたか」について質問したところ、「商品開発・ローカライズの段階」(25.4%)が最も多く、次いで「法規制や認証取得段階」(20.9%)、「現地調査や戦略づくりの段階」(20.4%)という結果となりました。
進出初期にあたる「商品開発」や「法規制対応」で撤退・中断を決めた方が多いことから、既存商品をそのまま海外市場へ展開することの難しさや、現地の嗜好・ルールに適応させるローカライズのハードルの高さが明らかになりました。また、「現地調査や戦略づくりの段階」での撤退も見られることから、事前の情報収集や市場理解の精度が、事業の継続を大きく左右していることがわかります。
では、具体的にどのような要因が撤退や中断の引き金となったのでしょうか。
「海外進出について、撤退・中断すると判断した理由」について質問したところ、「コスト面で継続が困難だった」(31.3%)が最も多く、次いで「ニーズや市場性が見込めなかった」(23.9%)、「現地の法制度・認証対応が難しかった」(22.4%)が続いています。
撤退理由として最も多く挙げられた「コスト」については、事前の試算だけでなく、現地の物価上昇や為替変動、法制対応に伴う追加費用など、複合的な要因がコスト負担に影響していることが推測されます。
また、「ニーズや市場性が見込めなかった」など、投下コストに対して十分な収益見通しを描けなくなった段階で、事業継続の再検討に至った企業担当者も多いようです。
現地法規制と競合のリアルな実態把握に苦戦 成功の鍵は「現地に強いパートナー」の存在
では、進出を進めるプロセスにおいて、どのような情報の取得に苦戦しているのでしょうか。
「海外進出を進める際に、取得が難しかった情報」について質問したところ、最も多かった回答は「法規制・認証取得の具体的なハードルと所要時間」(39.8%)でした。次いで「現地の競合他社の実情(シェア、販促手法、価格帯)」(31.3%)、「現地の商習慣や不文律(商談の進め方、接待、キックバックなど)」(30.9%)が続いています。
前問でも「法制度・認証対応の難しさ」が撤退理由として上位に挙がっていましたが、本設問からは、制度を理解するのに実際にどのくらいの期間がかかるか、どのような追加対応が求められるかといった具体的な見通しが立ちにくいことが、事業計画を立てる上での不安要素になっている可能性も示されています。さらに、「競合他社の実情」や「現地の商習慣・不文律」など、公開情報だけではつかみにくい現地のリアルな実態に苦戦している様子もうかがえます。
容易ではない海外での事業推進ですが、撤退という経験を踏まえたとき、成功を収めている企業との間にはどのような違いがあると考えられているのでしょうか。
「海外進出に成功した企業と自社の違いは何だと思うか」と質問したところ、「現地に強いパートナーや支援者の有無」(36.8%)が最も多く、次いで「中長期視点での投資判断ができていた」(24.4%)、「事前の市場調査・検証の精度」(23.9%)となりました。
自社単独で進めることに限界を感じ、外部のパートナーや支援者をいかに巻き込めたかが結果に影響したと捉えられているようです。
また、短期的な収益性だけにとらわれず、現地市場に根づくまで中長期的な視点で投資判断ができていたかどうかも、成否を分けるポイントとして認識されていました。
こうした認識の背景には、社内リソースや体制そのものの課題も影響しているのかもしれません。
「海外進出を進めるうえで、社内の人材リソースは十分に足りていたと思うか」と質問したところ、半数以上が「あまり足りていなかった」(41.3%)、「まったく足りていなかった」(10.5%)と回答しています。
前問で「現地に強い外部パートナーの存在」が成功要因として挙げられていた点と照らし合わせると、語学力や専門知識・現地での交渉力を備えた人材を、自社内だけで揃えることの難しさが背景にあるのではないでしょうか。
海外進出には、6割強の企業が外部の支援会社を利用
そのような中、外部の力を借りるという選択をした企業担当者はどの程度いたのでしょうか。
「海外進出の検討・実施時に外部の支援会社を利用したか」について質問したところ、約6割が「利用した」(64.7%)と回答しました。
自社内のリソースや情報だけでは対応しきれない領域が多く、専門的な知見や現地ネットワークを補う手段として、外部の支援会社を活用した企業担当者が多くいるようです。
一方で、外部支援を利用せず、自社単独で海外進出を進めた企業は、どのような壁に直面したのでしょうか。
前問で「利用していない」と回答した方に、「自社だけで海外進出を進めた際、どのような点に難しさを感じたか」と質問したところ、「現地ネットワーク(販路・パートナー)の不足」(46.5%)が最も多く、次いで「事前調査・市場理解の不足」(26.8%)、「事業計画・戦略設計の甘さ」(26.8%)、「現地文化・商習慣の理解不足」(23.9%)が挙げられました。
外部支援を利用しなかった企業担当者からは、販路やパートナーといった現地ネットワークの構築をはじめ、市場理解や戦略設計など幅広い課題が挙がり、海外展開には多面的な準備と支援が求められていることがわかります。
一方で、外部支援を活用した企業は、その支援内容をどのように感じているのでしょうか。
支援会社を「利用した」と回答した方に、「海外進出のために外部の支援会社を利用して、物足りなかったことや困ったことはあるか」と質問したところ、「費用対効果が見合わなかった」(39.2%)が最も多く、次いで「領域ごとに担当がわかれていて連携が取れていなかった」(33.1%)、「自社の事情の理解が浅かった」(28.5%)という結果となりました。
特に「費用対効果」への不満が約4割に上り、投下したコストに見合うだけの成果が得られなかったと感じている企業担当者が少なくないことがわかります。
また、「担当間の連携不足」や「自社事情への理解不足」といった声も見られ、支援が部分最適にとどまり、各フェーズを横断した一貫性のあるサポートや、自社の状況に即した具体的な支援が十分に行き届いていなかったと感じた企業担当者もいたことが読み取れます。
最後に、「今後、海外進出支援サービスを利用するとしたら、どのようなことを重視するか」について質問しました。その結果、「実行フェーズまで伴走してくれること」(33.3%)と「進出したい国とのコネクション」(33.3%)が同率で最も多く挙げられました。次いで「調査から営業・販路構築まで一貫して任せられること」(28.9%)、「社内人材の育成まで対応してくれること」(27.4%)が続いています。
調査や戦略立案にとどまらず、営業や販路構築といった実行フェーズまで一貫して支援してもらえる体制を重視する企業担当者が多いことがわかります。
また、「進出したい国とのコネクション」や「社内人材の育成まで対応してくれること」も上位に挙がっていることから、実務に直結する具体的なネットワークを求めている姿や、外部の支援を活用しながらも、自社内にノウハウを蓄積し、体制を整えたいと考える企業担当者のニーズがうかがえます。
まとめ 海外進出の失敗から見えた、支援会社とのミスマッチと「伴走支援」の必要性
今回の調査により、企業が直面するグローバル展開の厳しい現実と、そこから浮かび上がる支援への新たなニーズが明らかになりました。
①海外進出の多くが「進出初期」でつまずいている
海外市場の成長性への期待や国内市場縮小への危機感を背景として、戦略的に海外進出を検討する企業は少なくありません。しかし実際には、「商品開発・ローカライズ」や「法規制・認証対応」といった初期フェーズで撤退・中断を決断するケースが多く見られました。現地の嗜好やルール、制度を十分に把握しきれないまま進めてしまうことが、早期撤退につながっている実態がうかがえます。
②撤退理由1位「コスト」の背景に現地のリアルな情報不足
撤退理由としては「コスト面での継続困難」や「ニーズ・市場性が見込めなかった」、「法制度・認証対応の難しさ」が上位に挙がりましたが、その背景には、現地のリアルな情報不足がありました。現地事情を踏まえた現実的な見通しが持てず、結果として投下コストと成果の見通しが合わずに投資判断の継続を断念せざるを得ない状況が生まれています。
③外部支援を活用しても「支援の分断」が成果を阻む要因に
社内リソース不足を補うため、約6割の企業が外部の支援会社を利用している一方で、「費用対効果が見合わなかった」、「担当間の連携不足」、「自社事情への理解不足」といったミスマッチも多く指摘されました。自社単独で進めた場合は「現地ネットワーク不足」に直面し、外部支援を利用した場合も「実行フェーズまで踏み込まない支援」に課題を感じているなど、支援が部分最適にとどまっている構造的な問題が浮き彫りになりました。
こうした失敗の経験を踏まえ、今後、企業が外部支援に求めるものは、進出国との強固なコネクションを持ち、調査・戦略設計から販路構築、そして実行フェーズに至るまでを一貫して伴走できる支援体制です。単なる業務委託ではなく、自社の戦略を深く理解し、現地でともに手を動かしながら事業を推進できる「実務的なパートナー」の存在が、今後ますます重要になると考えられます。
支援の「分断」を解消する、DNPの海外進出一気通貫支援サービス
DNPでは、こうした調査結果から見えてきた課題に対応するため、進出先選定・市場調査といった初期検討から、商品開発、法規制対応、販路構築、現地での実行支援、人材育成に至るまで、海外進出の全プロセスを一貫してサポートしています。
「調査で終わらせない」、「現地で成果が出るまで伴走する」支援を通じて、海外事業の成功確率を高めたい企業を支援するサービスです。
支援の「分断」を解消する一気通貫サポート
市場調査から商品企画、販路開拓、プロモーション、営業支援、人財育成まで、海外進出の全プロセスを伴走します。従来のように調査会社やコンサルティング会社などで支援が分断される情報ロスを防ぎ、実行フェーズまで責任を持ってサポートします。
AIだけでは得られない「生きた現地の情報」を獲得
表面的なデスクリサーチだけでなく、文化的背景や商習慣といった「なぜ」の部分に迫るリサーチを実施します。独自のネットワークを活かして最適な現地リサーチャーをアサインし、コストを抑えつつ質の高いリアルな一次情報を取得し、勝てる市場を特定します。
「施策化」の壁を突破する実行・人財育成支援
現地でのテストマーケティング(展示会やポップアップ出展)や、具体的な協業先への商談同席など、現地の売り上げ創出に直結する営業代行を行います。さらに、語学力だけでなく実践的な商談スキルを備えたグローバル人財の育成も内包し、将来的に自社で海外事業を自走できる体制づくりを支援します。
出典元:PR TIMES













