
リスクモンスター株式会社は、独自調査による「2025年 倒産動向レポート」を発表しました。同社のレポートによると、2025年の倒産件数は前年比4.8%増の7,898件となり、直近10年間で最多を記録しています。
レポートの目的
リスクモンスター社は独自の収集情報に基づき、「どこよりも早い」2025年の倒産動向を速報として公開しています。このレポートは速報性を重視し、2025年の倒産件数を2024年12月から2025年11月までに発生した倒産に基づいて集計しており、過年度も同期間でのデータを比較対象としています。
なお、同社の調べによれば、この速報は2025年12月5日時点で業界最速の公開となっており、法的倒産(破産、特別清算、民事再生、会社更生)および私的倒産の件数を集計したものです。
「2025年 倒産動向レポート」の主要ポイント
2025年の倒産件数
2025年の倒産件数は、前年の7,538件から4.8%増加し、7,898件となりました。これは直近10年間で最も多い倒産件数となっています。
業種別の傾向
18業種中11業種で前年を上回る結果となりました。特に「卸売業、小売業」が前年比131件増、「不動産業、物品賃貸業」が46件増、「サービス業」が38件増、「製造業」が35件増と大きく増加しています。一方で「運輸業、郵便業」は47件減少しており、業種によって異なる傾向が見られました。
地域別の状況
9地域中5地域において前年を上回る倒産件数が記録されました。「関東」は前年比149件増(104.9%)、「関西」は121件増(109.5%)と100件以上の増加が見られます。また、増加率が最も高かったのは「北陸」で44件増(118.6%)となっています。
売上高規模別の分析
倒産企業の約95%は「10億円未満」の中小・零細企業が占めており、そのうち約半数が「1億円未満」の零細企業となっています。
業歴別の特徴
設立後10年未満の企業が24.4%を占め、倒産件数が最多となっています。特に設立5~9年の企業の倒産が顕著に見られました。
信用格付別の分析
リスクモンスター社が提供するRM格付別では、「低位格付」(倒産確率0.3%)の企業が全体の94.8%を占めています。上位格付(倒産確率0.002%)の企業と比較すると、約150倍の倒産リスクとなっていることが明らかになりました。
詳細調査結果
倒産件数推移 : 2016年以降で最多件数を更新
2025年の国内法人の倒産件数は7,898件となり、前年の7,538件から4.8%増加しました。コロナ禍におけるセーフティネット政策によって2021年に倒産件数が大幅に減少したものの、2022年以降は増加傾向が継続し、2025年は10年間で最多の件数となっています。
業種別 : 「運輸業、郵便業」は減少、「卸売業、小売業」「不動産業、物品賃貸業」などで増加
業種別の分析では、18業種中11業種で前年を上回る結果となりました。「その他」を除くと、「卸売業、小売業」(1,614件、前年比131件増)、「不動産業、物品賃貸業」(299件、同46件増)、「サービス業」(400件、同38件増)、「製造業」(1,095件、同35件増)において倒産件数の増加が顕著です。この要因としては、物価高騰とそれに対する価格転嫁の難しさが挙げられます。特に価格転嫁が顧客離れにつながりうる小売業において、収支が悪化して倒産に至る企業が増加したと考えられています。
一方、「運輸業、郵便業」(282件、前年比47件減)で最も減少している要因としては、高騰した燃料価格の運賃への転嫁が徐々に浸透したことや、2024年以降に実施された複数の法改正が業界全体の経営環境改善を後押ししたことが指摘されています。
図表B 業種別倒産件数
地域別 : 「関東」「関西」「北陸」で増加が目立つ
地域別の分析では、9地域中5地域において前年を上回る結果となりました。特に「関東」(3,174件、前年比149件増、104.9%)と「関西」(1,399件、同121件増、109.5%)では100件を超える増加が見られています。また、「北陸」(281件、同44件増、118.6%)は増加数としては40件台ながらも増加率が最も高く、これらの地域での倒産リスクの高さが浮き彫りになっています。
都道府県別では、29の都道府県で倒産件数が前年を上回りました。「愛知県」(498件、前年比65件増、115.0%)、「東京都」(1,561件、同60件増、103.8%)での件数増加や、「福井県」(52件、同18件増、152.9%)、「徳島県」(50件、同16件増、147.1%)の増加率の高さが特筆されています。
図表C 地域別倒産件数
倒産形態別 : 清算型倒産手続きが98%を占める
倒産形態別の分析によると、「法的倒産」がほとんどを占めています。手続きの種類としては「破産」(7,439件)が全体の94.2%を占めており、「特別清算」(303件)を含めた「清算型」倒産手続きは全体の98%に達しています。一方、「民事再生」や「会社更生」などの「再建型」倒産手続きは1%未満に留まっています。
図表D 倒産形態別倒産件数
売上規模別 : 中小・零細企業の倒産が95%
売上高規模別の分析では、「10億円未満」(構成比94.8%)の中小・零細企業が約95%を占めており、そのうちの約半数を「1億円未満」(同52.3%)の零細企業が占めています。全倒産企業7,898社を対象とした場合でも、情報開示姿勢の観点から売上高が不明の企業の多くは中小・零細企業であると考えられるため、この分布と大きく乖離しないと推察されています。
図表E 売上規模別倒産件数
業歴別 : 設立後10年に向かう中で企業淘汰が増加傾向に
業歴別の分析では、設立から10年単位での倒産件数を比較した場合、「0年~9年」(構成比24.4%)が最多となっています。「10年~19年」(同22.8%)と合わせると、業歴19年以内で全体の約半数を占める結果となりました。
「0年~9年」の内訳を詳細に見ると、「0~2年」(構成比0.7%)、「3年~4年」(同19.5%)、「5年~9年」(同19.5%)の順で徐々に構成比が高くなっており、設立10年に向かう過程で淘汰される企業が増加していく傾向が示されています。また、「50年以上」(同11.0%)の老舗企業は10年単位での比較では最も倒産割合が低く、経営が安定している様子がうかがえます。
図表F 業歴別倒産件数
RM格付別 : 低位格付の倒産構成比は95%、上位格付の150倍の倒産リスクを示す
リスクモンスター社が提供する企業の信用力を示すRM格付別(6段階の格付を3区分に分類)で見た倒産件数では、「低位格付」(3,851件、構成比94.8%)が約95%を占めています。倒産確率を見ると、低位格付先(倒産確率0.30%)は上位格付先(同0.002%)の150倍以上の高い値となっており、低位格付先は特に倒産リスクに注意が必要であることが示されています。
図表G RM格付別倒産件数
信用不安情報別 : 不安情報入手企業の倒産は45.7%を占める
信用不安情報の有無別の分析では、倒産企業の約半数(構成比45.7%)において過去に信用不安情報が入手されていたことが明らかになりました。
1年以内に信用不安情報を入手した倒産企業を、入手から倒産に至る期間および情報種類別で集計すると、期間では「6か月超1年以内」(構成比36.0%)が最も多く、次いで「1か月以内」(同26.1%)となっています。情報種類別では、資金繰り難が表面化している「支払関連」や連鎖倒産のリスクが生じる「貸倒れ」において、「1か月以内」に倒産する割合が高く表れています。そのため、これらの情報を入手した際には速やかな警戒対応が必要であると指摘されています。
図表H 信用不安有無別倒産件数
図表I 信用不安情報別倒産件数/倒産期間
総評
2022年以降続いていた倒産の増勢は2025年も継続し、過去10年間で最多の倒産件数を更新する結果となりました。
これまではコロナ禍の中小企業支援策である「ゼロゼロ融資」を受けた企業の返済難による倒産が目立っていましたが、2025年は物価高騰によって売上高や利益の維持が困難となり、資金繰り破綻に至る企業の増加が見られます。
今回の動向レポートからは、財政面が脆弱になりやすい中小・零細企業や、設立後10年に向かう途上の企業などで倒産が発生しやすいこと、また「支払関連」や「貸倒れ」などの信用不安情報が発生している企業が短期間で倒産に至る傾向が読み取れました。
リスクモンスター社は、これらのポイントを企業審査に活かし、与信管理業務の一助となることを期待しているとのことです。
リスモン調べとは
「リスモン調べ」とは、リスクモンスター社が独自に調査するレポートのことです。同社ではこれまでも企業活動関連の調査として、「100年後も生き残ると思う日本企業調査」「環境への配慮が感じられる企業調査」や「この企業に勤める人と結婚したいアンケート調査」などを発表してきました。
今後も同社は「企業活動」に関するさまざまな切り口の調査を実施することで企業格付の更新に役立てるとともに、情報発信を通じて新しい調査ターゲットの創出や新サービスの開発などに取り組んでいく方針です。
リスクモンスター株式会社について

リスクモンスター株式会社は、2000年9月に設立され、同年12月よりインターネットを活用した与信管理業務のアウトソーシングサービス、ASPクラウドサービス事業を開始しました。以来、法人会員向けビジネスを要として、教育関連事業(定額制の社員研修サービス「サイバックスUniv.」)やビジネスポータルサイト事業(グループウェアサービス等)、BPOサービス事業、海外事業(利墨(上海)商務信息咨詢有限公司)にサービス分野を拡大し、包括的な戦略で事業を展開しています。
リスモングループ会員数は、2025年9月末時点で14,710(内、与信管理サービス等8,072、ビジネスポータルサイト等3,034、教育事業等3,079、その他525)となっています。
出典元:リスクモンスター株式会社 プレスリリース












