
創業20周年を迎えたファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOが、サービス開始から現在までの膨大な購買データを分析した「ファッション通販白書 by ZOZOTOWN」を公開しました。
本白書では、2004年のZOZOTOWNサービス開始から2025年までの購買データをもとに、物価上昇や気候変動、ライフスタイルの多様化、景気の変動といった社会環境の変化に伴い、日本人のファッション購買行動がどのように変化してきたかを詳細に分析しています。ZOZOは、この膨大なデータから読み取れる傾向を基に、ファッションが「時代の気分を映す鏡」としてどのように変遷してきたかを明らかにしています。
同社は今後も企業理念「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」の実現に向け、ファッションとテクノロジーの力で時代の変化や価値観の多様化を捉えた取り組みを続けていくとのことです。

この記事の目次
白書から見えてきたファッション変化のサマリー
白書では特に以下の5つの観点から、日本人のファッション消費動向の変化を分析しています。
- 気候変動によるシーズンレス化
Tシャツが夏だけのアイテムではなくなり、季節を越えて着用される傾向 - Tシャツの価格帯変化
物価高の時代にもかかわらず、3,000円未満のTシャツが定番となった現象 - バッグやシューズのカジュアル化
働き方やライフスタイルの多様化に伴う快適さ重視の傾向 - 景気とファッションカラーの関係
景気が良い時期に黒色のアイテムが売れる傾向 - 都道府県別のファッション特性
47都道府県それぞれの特徴的なファッション傾向

気候変動によるシーズンレス化の進行
気象庁の観測データによると、過去20年間で日本の平均気温は約1℃上昇しています。夏日や真夏日の増加に伴い、ファッションの季節感にも顕著な変化が見られるようになりました。
2000年代前半では、Tシャツやカットソーの販売ピークは5月から7月に集中していましたが、2020年代に入ると4月から8月へと拡大し、販売ピーク期間が平均で2ヶ月以上延びています。これはファッションのシーズンレス化が進んでいることを示しています。
一方で、アウターの販売ピークについては、2000年代前半の10月〜1月から、2020年代では11月〜1月へと約1ヶ月短縮しています。これらのデータは、気候変動が消費者のファッション購買行動に直接的な影響を与えていることを示しています。

物価高時代でもTシャツは3,000円未満が定番に
この20年間で日本の物価は全体的に上昇傾向にありますが、ファッション分野、特にTシャツについては異なる傾向が見られます。ZOZOTOWNで最も人気のあるカテゴリーであるTシャツの購買価格帯は、2000年代後半の5,000円未満から、近年では3,000円未満が主流となっています。
物価上昇の中でも、Tシャツが比較的手頃な価格を維持しながら「定番アイテム」として定着している背景には、ZOZOTOWNの成長と共に取扱いブランド数が増加し、ユーザー層が拡大したことが影響しているようです。デザイン性と価格のバランスに優れたアイテムが豊富になったことで、消費者はさまざまな場面や気分に合わせてTシャツを選べるようになっています。


バッグやシューズにも広がるカジュアル化と快適さ重視の傾向
過去20年間で働き方やライフスタイルの多様化が進む中、バッグやシューズの購買傾向にも大きな変化が見られています。バッグのカテゴリーでは、2010年代以降、トートバッグの販売構成比が約15ポイント減少した一方で、ショルダーバッグが約20ポイント増加しました。
両手が自由に使える「肩掛けスタイル」が選ばれる背景には、スマートフォン操作の普及や移動中の利便性を重視する行動様式の変化があると考えられます。
また、シューズカテゴリーでは、スニーカーやサンダルの販売構成比が20年前から約30ポイント増加しています。特に2020年代には、コロナ禍を経て通勤スタイルのカジュアル化が進み、ビジネスシーンでもスニーカーを履くことが一般的になってきています。さらに、リカバリーサンダルの人気も後押しし、ファッションにおいて「快適さ」を重視する傾向が定着しつつあるようです。



景気が良いと黒色アイテムが売れる傾向
内閣府の景気動向指数(CI一致指数)とZOZOTOWNの購買データを比較分析したところ、興味深い相関関係が見出されました。景気が上向くと「黒」色のアイテムが多く購入される傾向があるのです。
リーマンショック(2008年)後の景気低迷期以降、景気動向指数の低下に緩やかに連動して、黒アイテムの販売構成比も31.6%(2005年〜2007年)から17.6%(2011年〜2013年)まで低下しました。その後、景気回復期(2014〜2019年)には、景気動向指数の上昇に伴い黒アイテムの販売比率も26.8%まで回復。コロナ禍(2020年〜)後も再び増加傾向を示しており、経済動向と「黒を選ぶ消費者」の増減に相関性があることが明らかになっています。
黒はフォーマルやモードなど、シンプルで落ち着いた印象を与える色で、トレンドに左右されにくい「安心して選べる定番色」として支持されています。景気が好調な時期に黒を選ぶ人が増えるのは、経済的な不安ではなく「落ち着いた印象」や「安定感」を求める心理が影響していると考えられるとのことです。
「景気が良いと黒が売れる」というこの発見は、商品配送に使用する黒色の箱「ZOZO箱」をはじめ、黒をシンボルカラーとするZOZOTOWNにとっても非常に興味深い結果となっているようです。


47都道府県のファッション県民性
ZOZOTOWNの購買データを都道府県別に分析した結果、地域ごとに特色のある、興味深いファッション特性が浮かび上がってきました。


白書の分析からは、以下のような地域ごとの特徴的なファッション傾向が明らかになっています(一部抜粋):
- 北海道:最北端ながらお家ファッションの最先端を行く傾向。長く厳しい冬と広大な大地という環境から、家の中でのファッションが独自の進化を遂げている可能性があります。
- 宮城:東北の都市ならではの特性として、コートへのこだわりが強い地域です。モッズコート、トレンチコート、ステンカラーコートなど、コート文化の独自進化が見られます。
- 東京:サステナブルでファッショナブルな消費傾向があり、アイテムの買い替えと古着の活用を両立させる「買い物最先端」の地域です。
- 富山:堅実な県民性が眉毛へのこだわりにも表れており、眉毛のケアに注力する人が多い傾向にあります。
- 大阪:女性のサンバイザー愛が特徴的で、自転車移動とサンバイザーの組み合わせが多く見られます。
- 徳島:阿波踊りのDNAが反映されているのか、踊り文化が進化している地域です。パーティーやコスプレ関連アイテムの購入が多い傾向があります。
- 沖縄:太陽の輝きに負けない陽気なファッション傾向があり、赤、金、シルバーなどカラフルな色使いがアイデンティティになっています。
ファッション通販白書の概要
「ファッション通販白書 by ZOZOTOWN」は、ZOZOTOWNのサービス開始の2004年から2025年までの購買データをもとに、ファッションを通じて社会・地域・サービス・ユーザーなどの観点から購買行動の変化を読み解いた報告書です。
対象期間:2004年12月15日〜2025年7月31日
出典元:株式会社ZOZO プレスリリース












