食品輸出企業の課題、物流コスト高が36.1%で最多 - スタンデージの海外販路開拓実態調査2025

デジタル貿易プラットフォームを提供する株式会社STANDAGE(スタンデージ)は、食品業界の海外販路開拓に関する実態調査を実施しました。この調査では、国内で食品を海外輸出している企業や輸出経験がある企業で海外販路開拓業務に携わる108名を対象に、輸出の実態や課題を明らかにしています。

調査結果によると、海外販路開拓における最大の課題は「輸送・物流コストの高さ」(36.1%)であり、次いで「輸出先国の食品規制・輸入規制への対応」(32.4%)が挙げられています。また、企業の7割以上が公的支援を活用しており、その中でもJETRO(日本貿易振興機構)の支援プログラムが34.3%と最も多く利用されていることが明らかになりました。

  • 海外販路開拓における課題、第1位「輸送・物流コストの高さ」(36.1%)、第2位「輸出先国の食品規制・輸入規制への対応」(32.4%)
  • 7割超が公的支援を活用、JETRO支援プログラムが34.3%で最多
  • 現地パートナーとの信頼関係構築に48.1%が注力、今後の物流コスト削減支援を34.3%が要望

調査概要

今回実施された「食品業界の海外販路開拓実態調査2025」は、IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®︎」を通じたインターネット調査として行われました。調査期間は2025年10月16日~17日で、日本国内で食品を海外に輸出している企業、または過去に輸出経験がある企業の海外販路開拓担当者108名から有効回答を得ています。

現在または過去において輸出していた先、「東南アジア」が50.9%で最多

「あなたのお勤め先が現在輸出している、または過去に輸出していた国・地域を教えてください。(複数回答)」(n=108)という質問に対し、「東南アジア(シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア等)」が50.9%と最も高い回答率となりました。次いで「中国(香港・マカオを含む)」が47.2%、「台湾」が38.9%という結果でした。

  • 東南アジア(シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア等):50.9%
  • 中国(香港・マカオを含む):47.2%
  • 台湾:38.9%
  • 北米(アメリカ、カナダ):38.9%
  • 韓国:34.3%
  • 欧州(EU加盟国、イギリス等):21.3%
  • オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド):14.8%
  • 南米(ブラジル、チリ等):8.3%
  • 中東(UAE、サウジアラビア等):7.4%
  • その他:1.9%
  • わからない/答えられない:2.8%

約半数が、海外販路開拓のために「商社・貿易会社を経由した輸出」を活用

「あなたのお勤め先が海外販路開拓のために活用している、または活用していた方法を教えてください。(複数回答)」(n=108)という質問に対しては、「商社・貿易会社を経由した輸出」が47.2%で最も多く、次いで「海外の展示会・商談会への出展」が41.7%、「国内の展示会・商談会での海外バイヤーとの商談」が40.7%という結果になりました。

  • 商社・貿易会社を経由した輸出:47.2%
  • 海外の展示会・商談会への出展:41.7%
  • 国内の展示会・商談会での海外バイヤーとの商談:40.7%
  • 現地代理店・ディストリビューターとの契約:29.6%
  • 越境EC(Amazon Global、Shopify等)への出品:20.4%
  • 現地法人・支社を通じた販売:18.5%
  • 海外の小売店・スーパーへの直接営業:10.2%
  • 自社ECサイトでの海外向け販売:9.3%
  • 海外の飲食店・レストランへの直接営業:6.5%
  • その他:0.9%(親会社)
  • 特にない:4.6%
  • わからない/答えられない:0.9%

輸出している、または輸出していた食品カテゴリー、第1位「加工食品」、第2位「飲料」

「あなたのお勤め先が海外に輸出している、または輸出していた食品カテゴリーを教えてください。(複数回答)」(n=108)という質問には、「加工食品(レトルト、冷凍食品、インスタント食品等)」が33.3%で最多となりました。続いて「飲料(清涼飲料、茶、コーヒー等 ※酒類を除く)」が30.6%、「酒類(日本酒、焼酎、ビール、ウイスキー等)」が26.9%という結果でした。

  • 加工食品(レトルト、冷凍食品、インスタント食品等):33.3%
  • 飲料(清涼飲料、茶、コーヒー等 ※酒類を除く):30.6%
  • 酒類(日本酒、焼酎、ビール、ウイスキー等):26.9%
  • 調味料(醤油、味噌、だし、ソース等):25.9%
  • 菓子類(スナック、チョコレート、和菓子等):24.1%
  • 農産物・水産物(生鮮・加工):16.7%
  • 健康食品・サプリメント:11.1%
  • 米・穀物類:4.6%
  • 乳製品(チーズ、バター等):4.6%
  • その他:3.7%(食品添加物、海苔、電機機器、工具)

海外販路開拓のために活用した支援、JETROの支援プログラムが最多

「あなたのお勤め先が海外販路開拓のために活用している、または活用していた支援施策を教えてください。(複数回答)」(n=108)という問いに対しては、「JETRO(日本貿易振興機構)の支援プログラム」が34.3%と最も高い回答率で、次いで「商工会議所・商工会の支援」が28.7%となりました。一方、17.6%の企業は「特に支援施策は活用していない」と回答しています。

  • JETRO(日本貿易振興機構)の支援プログラム:34.3%
  • 商工会議所・商工会の支援:28.7%
  • 自治体(都道府県・市区町村)の補助金・助成金:22.2%
  • 中小機構(中小企業基盤整備機構)の支援:22.2%
  • 農林水産省の輸出促進事業(GFP等):21.3%
  • 民間コンサルタント・支援会社のサービス:12.0%
  • 金融機関(銀行・信用金庫等)の支援:9.3%
  • 業界団体・組合の支援:7.4%
  • その他:0.0%
  • 特に支援施策は活用していない:17.6%
  • わからない/答えられない:8.3%

海外販路開拓における課題、「輸送・物流コストの高さ」や「輸出先国の規制対応」が上位

「あなたのお勤め先が海外販路開拓において直面している、または直面していた課題を教えてください。(複数回答)」(n=108)という質問では、「輸送・物流コストが高い」が36.1%で最も多く、次いで「輸出先国の食品規制・輸入規制への対応が難しい」が32.4%、「関税が高く、価格競争力を保てない」が28.7%という結果でした。

  • 輸送・物流コストが高い:36.1%
  • 輸出先国の食品規制・輸入規制への対応が難しい:32.4%
  • 関税が高く、価格競争力を保てない:28.7%
  • 輸送中の品質劣化(温度管理、鮮度維持等)への対応が難しい:27.8%
  • 現地の食品認証・ハラル認証等の取得に時間とコストがかかる:25.0%
  • パッケージやラベル表示などの現地の言語対応が負担である:17.6%
  • 為替変動のリスクが大きい:15.7%
  • 信頼できる現地パートナー(代理店・ディストリビューター)が見つからない:14.8%
  • 海外輸出に関する社内のノウハウ・人材が不足している:14.8%
  • 販売チャネル(小売店、EC、飲食店等)の開拓が難しい:12.0%
  • 現地でのマーケティング・プロモーション費用が高い:10.2%
  • 現地消費者の嗜好や食文化の違いに対応できない:9.3%
  • その他:0.0%
  • 特に課題はない:4.6%
  • わからない/答えられない:4.6%

約半数が、現地パートナーとの信頼関係構築を重視

「あなたのお勤め先が海外販路開拓において工夫している点、または工夫していた点を教えてください。(複数回答)」(n=108)という質問には、「現地パートナーとの信頼関係を重視し、長期的な関係構築を図っている」が48.1%と約半数の回答を得ました。続いて「展示会・商談会に継続的に参加し、認知度向上に努めている」が27.8%、「SNSやデジタルマーケティングを活用し、現地消費者に直接アプローチしている」が25.9%という結果でした。

  • 現地パートナーとの信頼関係を重視し、長期的な関係構築を図っている:48.1%
  • 展示会・商談会に継続的に参加し、認知度向上に努めている:27.8%
  • SNSやデジタルマーケティングを活用し、現地消費者に直接アプローチしている:25.9%
  • 品質管理を徹底し、日本製品の信頼性を武器にしている:25.9%
  • 現地の嗜好に合わせた商品開発・味の調整を行っている:21.3%
  • 商社や貿易会社を活用し、自社の負担を軽減している:18.5%
  • 現地の規制・認証に早期から対応し、参入障壁をクリアしている:13.0%
  • 越境ECを活用し、初期投資を抑えながら市場を開拓している:6.5%
  • 少量から始めてテストマーケティングを行い、リスクを抑えている:5.6%
  • 支援施策(補助金、JETRO等)を積極的に活用している:4.6%
  • その他:0.0%
  • 特に工夫している点はない:7.4%
  • わからない/答えられない:7.4%

「現地の人の活用」や「相手先の要望に応える」などの工夫も

上記質問で「特に工夫している点はない」「わからない/答えられない」以外を回答した方に対し、「Q6で回答した以外で、あなたのお勤め先が海外販路開拓において工夫している点、または工夫していた点があれば、自由に教えてください。」(n=92)と質問したところ、「現地の人の活用」や「相手先の要望にできるだけこたえる」など59の回答が寄せられました。

自由回答・一部抜粋

  • 現地の人の活用。
  • 相手先の要望にできるだけこたえる。
  • なるべく地元の商社や企業に依頼している。
  • 現地担当との密な連絡。
  • 直前まで日光に当たらないようにする。冷蔵庫保管
  • 現地のライバル企業や国内の同業他社などの市況動向を調査する。

4割以上が、今後「東南アジア」への輸出を強化したいと回答

「あなたのお勤め先は、今後どの国・地域への輸出を強化したい、または新規に開拓したいと考えていますか。(上位3つまで回答可)」(n=108)という質問では、「東南アジア(シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア等)」が42.6%と最も高い回答率となりました。次いで「台湾」が32.4%、「中国(香港・マカオを含む)」が30.6%という結果でした。

  • 東南アジア(シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア等):42.6%
  • 台湾:32.4%
  • 中国(香港・マカオを含む):30.6%
  • 韓国:23.1%
  • 北米(アメリカ、カナダ):22.2%
  • 欧州(EU加盟国、イギリス等):15.7%
  • オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド):9.3%
  • 中東(UAE、サウジアラビア等):9.3%
  • 南米(ブラジル、チリ等):1.9%
  • その他:0.9%(インド)
  • 特に強化・開拓したい地域はない:1.9%
  • わからない/答えられない:7.4%

34.3%が、海外販路開拓のために「輸送・物流コストの削減支援」を要望

「あなたのお勤め先が今後、海外販路開拓のために求めている支援内容を教えてください。(上位3つまで回答可)」(n=108)という質問では、「輸送・物流コストの削減支援」が34.3%で最も多く、次いで「現地パートナー(代理店・ディストリビューター)の紹介」が31.5%という結果となりました。

  • 輸送・物流コストの削減支援:34.3%
  • 現地パートナー(代理店・ディストリビューター)の紹介:31.5%
  • 補助金・助成金の拡充:29.6%
  • 海外展示会・商談会への出展支援:26.9%
  • 輸出先国の規制・認証取得の支援:18.5%
  • 現地市場調査・消費者ニーズ分析の提供:11.1%
  • 現地でのマーケティング・プロモーション支援:7.4%
  • 海外輸出に関する社内人材育成・研修プログラム:5.6%
  • 越境ECプラットフォームの活用支援:4.6%
  • 為替リスクヘッジの支援:3.7%
  • パッケージ・ラベル表示の翻訳・デザイン支援:2.8%
  • その他:0.0%
  • 特に求めている支援はない:5.6%
  • わからない/答えられない:10.2%

海外販路開拓において、約半数が「市場規模(販売数量の拡大)」を重視

「あなたのお勤め先が海外販路開拓において特に重視している要素を教えてください。(上位3つまで回答可)」(n=108)という質問には、「市場規模(販売数量の拡大)」が46.3%と最も高い回答率となりました。続いて「収益性(利益率の確保)」が33.3%、「長期的な関係構築(現地パートナーや顧客との信頼関係)」が27.8%という結果でした。

  • 市場規模(販売数量の拡大):46.3%
  • 収益性(利益率の確保):33.3%
  • 長期的な関係構築(現地パートナーや顧客との信頼関係):27.8%
  • リスク管理(為替、規制変更、カントリーリスク等):26.9%
  • ブランド価値の向上(認知度・イメージ向上):25.9%
  • スピード(早期の市場参入・販路確立):12.0%
  • 品質維持(日本国内と同等の品質管理):9.3%
  • 現地ニーズへの適応(商品のローカライズ):7.4%
  • 持続可能性(環境配慮、SDGs対応等):6.5%
  • その他:0.0%
  • 特にない:2.8%
  • わからない/答えられない:5.6%

まとめ

今回の調査では、日本の食品輸出企業が直面している現状と課題が明らかになりました。輸出先としては東南アジアが最も多く、次いで中国、台湾という結果でした。海外販路開拓の方法としては、約半数の企業が商社・貿易会社を経由した輸出を行っており、展示会や商談会も重要な販路開拓ツールとなっています。

輸出食品のカテゴリーでは加工食品や飲料、酒類が上位を占め、7割以上の企業がJETROや商工会議所などの公的支援を活用していることも分かりました。しかし、海外販路開拓における最大の課題は輸送・物流コストの高さ(36.1%)や輸出先国の規制対応の難しさ(32.4%)であり、これらの課題解決が今後の輸出拡大のカギとなるでしょう。

また、約半数の企業が現地パートナーとの信頼関係構築を重視しており、持続可能な海外展開のためには長期的な関係構築が重要視されています。今後の海外輸出強化先としても東南アジアが最も高い関心を集めており、この地域への輸出支援策の充実が期待されます。

企業からの支援要望としては、輸送・物流コストの削減支援が最も多く、次いで現地パートナーの紹介が求められています。これらの課題解決と支援強化により、日本の食品輸出がさらに拡大する可能性が示唆されています。

出典元: 株式会社STANDAGE プレスリリース

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