
Amazonは2025年7月31日、2025年第2四半期(4〜6月)の決算を発表しました。売上高は前年同期比13%増の1,677億ドル、為替の影響を除くと12%の増加でした。営業利益は192億ドルと前年同期から31%の大幅増加、純利益は90.6億ドルに拡大しました。過去12か月間のフリーキャッシュフローは182億ドルに減少しました。前年同期の530億ドルから大きく落ち込み、積極的な設備投資の影響が表れています。
セグメント別業績
Amazonの事業は大きく「北米」「国際」「AWS」に分かれています。
- 北米事業
売上高は1,001億ドル(+11%)、営業利益は75億ドル(前年同期51億ドル)。米国・カナダを中心に堅調な成長を維持しました。営業利益率は7.5%と前年同期の5.6%から改善し、効率性の向上が示されました。
- 国際事業
売上高は368億ドル(+16%、為替除く+11%)。営業利益は15億ドルと、前年同期の3億ドルから大幅に改善しました。特に欧州やアジアでの利用拡大が寄与したとされています。
- AWS事業
売上高は309億ドル(+17.5%)、営業利益は102億ドルと前年同期の93億ドルから増加しました。ただし営業利益率は32.9%と、第1四半期の39.5%から低下しました。株式報酬の季節要因に加え、AI関連投資の拡大がコストを押し上げた格好です。
全世界の有料ユニット販売数は前年比12%増。第三者販売者(サードパーティセラー)の販売比率は62%と過去最高を記録しました。サードパーティセラーとはAmazonのプラットフォームを利用して販売を行う外部事業者のことで、手数料や物流サービス利用料がAmazonの収益源となっています。
コマース関連の取り組み
アンディ・ジャシーCEOは、Amazonは売上や利益といった数値的な成果よりも、顧客に価値を提供する施策に注力していると説明しています。
- 品揃え拡大
ナイキ製品の再開をはじめ、Away(スーツケース)、Aveda(化粧品)、Marc Jacobs Fragrances(香水)などプレミアムブランドの取り扱いを強化。消費者にとっての選択肢拡大を進めています。
- 生鮮食品プログラム
試験導入(パイロット)事業を拡大し、購入者の75%がAmazonで初めて生鮮品を購入した顧客で、そのうち20%が初月で複数回購入しました。これはAmazonが新規顧客層の開拓に成功していることを示しています。
- 価格競争力の維持
調査会社Profitoromeによれば、Amazonは米国の小売業者の中で8年連続「最も低価格」を維持。特に日用品は全販売ユニットの3分の1を占め、成長のけん引役となっています。
- Prime Day(会員向け大規模セールイベント)
2025年のPrime Dayは過去最大規模を記録。売上高・販売商品数・新規Prime会員登録数がいずれも過去最高となり、Amazonの会員基盤拡大に直結しました。
配送とロジスティクス
Amazonは米国内の物流網を地域別モデルに再編しました。
- 直通便の出荷量:前年同期比40%増
- 平均配送距離:12%短縮
- 1ユニットあたりの取り扱い回数:15%減少
この結果、配送コストの削減とスピード改善を同時に実現。第2四半期は「Amazon史上最速」の配送スピードとなり、米国では前年同期比30%増の商品が当日または翌日に届きました。年末までに、米国内の4,000以上の小都市や農村地域に当日・翌日配送を拡大する計画です。
また、ロボティクス導入も進展。Amazonは累計100万台のロボットを物流ネットワークに配備しました。AIモデル「Deep Fleet」により、ロボットの動きが最適化され、移動効率が10%向上しています。これは交通管理システムのようにロボットの経路を調整する技術で、業務効率と安全性向上につながっています。
広告事業
- 広告売上は157億ドル(+22%)。Amazonはオンライン広告に加え、コネクテッドTV(インターネット接続型テレビ)分野を拡大しています。
- Roku(米国のTVストリーミング機器大手)との連携により、広告主は8,000万世帯規模のリーチを確保可能。
- Disneyとの提携により、Disney+、ESPN、Huluといった配信サービス上で広告枠を販売。
これによりAmazon広告は「検索やECサイト内広告」から「映像広告」へ領域を広げています。サードパーティセラーの広告出稿増加も収益拡大の一因です。
AWSとAI投資
AWSの売上は309億ドルに達し、年間収益ランレートは1,230億ドルを突破しました。生成AI関連サービスは引き続き強い成長を示しており、企業向けの導入事例が拡大しています。
【主な取り組み】
- Trainium 2:Amazonが開発するAI学習専用の半導体チップ。AIモデルの学習を高速化し、コスト効率を改善。
- Amazon Bedrock:Anthropicの生成AI「Claude 4」を統合。企業が独自AIアプリケーションを容易に構築できる基盤。
- Strands / AgentCore:AIエージェント開発ツール。安全かつ大規模にAIを導入できる仕組み。
契約面では、PepsiCo、Airbnb、Appleなど世界的企業と新たな契約を締結。AWSは引き続き大規模顧客を取り込みつつ、AI分野での存在感を強めています。
オルソウスキCFOは、第2四半期の資本支出314億ドルの大部分がAIやデータセンター投資であり、今後もAWSを成長の柱に据える方針を示しました。
まとめ
Amazonは第2四半期、コマース事業とクラウド事業の双方で成長を維持しました。
- コマース:Prime Day、配送網改善、生鮮食品・ブランド強化で利用者基盤を拡大
- 広告:コネクテッドTVや外部提携を通じて22%成長
- AWS:AI投資を加速し、生成AI関連サービスを拡充
2025年第3四半期の見通しは以下の通りです。
- 売上高:1,740億〜1,795億ドル(前年同期比+10〜13%)
- 営業利益:155億〜205億ドル
- 為替によるプラス影響:約130ベーシスポイント
Amazonは「品揃え・低価格・配送スピード」の基本戦略を堅持しつつ、AIを軸にしたAWS事業を強化しており、両輪での成長路線を鮮明にしています。
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