
株式会社LIFULL(ライフル)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊東祐司、東証プライム:2120)が運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」は、賃貸マンションでの「置き配」に関連する設備の設置状況について調査を実施し、その結果を発表しました。
この記事の目次
宅配便の再配達率削減に向け「置き配」が標準化?賃貸マンションの配達に関わる設備状況を調査
国土交通省が宅配便の再配達を減らすため、対面での受け取りだけでなく、玄関前や宅配ボックスなど指定した場所に荷物を届ける「置き配」も標準的な受け取り方法に加える検討を開始したという報道がありました。
しかし、宅配ボックスが設置されていない住宅もまだまだ多く存在するほか、オートロックがある住宅では、配達員が玄関前まで行くことができないため、荷物の盗難リスク等に不安を感じる人もいると考えられます。
そこでLIFULL HOME'Sでは、直近2025年6月に同サイトに掲載されていた賃貸マンションにおける宅配ボックスとオートロックの設置状況について調査が行われました。
【調査ポイント】
・約7割の賃貸マンションが「宅配ボックスなし」 宅配ボックスなし且つオートロックありの物件も約2割
・築10年超の物件では約半数、築30年超の物件では9割が宅配ボックスなし
約7割の賃貸マンションが「宅配ボックスなし」 宅配ボックスなし且つオートロックありの物件も約2割
全国の賃貸マンションでの宅配ボックスの設置状況を調査したところ、宅配ボックスが設置されていない物件が66.3%と過半数を占めていることが判明しました。
また、宅配ボックスがない場合でも、配達員が建物内に入り各部屋のドア前に荷物を届けることで置き配が可能となりますが、オートロックが設置されている物件では、住人が不在の時に配達員が各部屋まで行くことが困難です。オートロックの設置状況の調査では、47.6%と約半数の物件に設置されていることが分かりました。

同調査によると、宅配ボックス未設置かつオートロックが設置されている物件の割合は19.5%となっています。つまり、約2割の物件では宅配ボックスがない上に、配達員が玄関前まで行くことができず、エントランスなど共有部への配達になってしまう可能性があり、置き配による荷物の受け取りがかなり困難になることが予想されます。

築10年超の物件では約半数、築30年超の物件では9割が宅配ボックスなし
宅配ボックスが設置されていない物件の割合を築年数別に調査すると、築11~15年の物件では48.4%、築16~20年の物件では49.9%と約半数となり、築21年~25年の物件では58.5%と半数を超える結果となったそうです。特に築30年を超える物件では、宅配ボックスが設置されていない割合が90.0%にも達しており、これらの物件では置き配によるスムーズな荷物受け取りが困難となる可能性が高いことが示されています。

一方、オートロックが設置されているマンションの割合も築年数別に調査されており、宅配ボックスと同様に基本的には築年数の若い物件ほど設置率が高い傾向にあり、築15年以下の物件では8割以上がオートロック付きとなっていることが判明しました。

宅配ボックスが無く且つオートロックありの物件の割合を築年数別に調査すると、築5年超~30年の物件ではおよそ2~3割がこのカテゴリーに該当する結果となったとのことです。築年数が若いほど宅配ボックスの設置率は高くなりますが、同時にオートロックの設置率も高くなるため、宅配ボックスの設置率が約半数となる築11~25年程度の物件では特に置き配への対応が可能かどうかの確認が必要になると考えられます。一方で築30年超の物件は宅配ボックスの設置率が低いものの、オートロックの設置率も低いため、宅配ボックスが無く且つオートロックありの物件の割合は14.6%にとどまっているとのことです。

オートロックが普及し始めたのは1980年代 一方宅配ボックスは2000年以降に設置開始
LIFULL HOME'S総研 チーフアナリスト中山登志朗(なかやま としあき)氏のコメント
コロナ禍で利用者が急増した宅配便は、コロナ後の人流回復によって留守や何らかの不都合で荷物を受け取ることができず、最近では再配達の増加が配送業務のロスに繋がるとして問題視されています。国も再配達はCO2排出量の増加やドライバー不足を深刻化させるとして、再配達削減に向けた対策を打ち出しています。
再配達は経済効率が悪くなってしまうほか、配達終了をもって契約が完了するドライバーの成績にも影響します。一方で、荷物を受け取る消費者にも何らか受け取れない理由があり、それが完全になくなることはないため、再配達を少なくするための方法として、置き配や最寄りのコンビニ受取、駅の宅配ロッカーの利用が推奨されるようになりました。
特に置き配については、オートロックで宅配業者が戸別訪問できず置き配ができないケース、および宅配ボックス未設置の賃貸マンションも少なくないとの指摘があることから、今回LIFULL HOME'Sでは賃貸マンションのオートロック&宅配ボックスの設置率について調査が行われました。
その結果、全国の33.7%、現状でも約3件に1件の割合でしか宅配ボックスが設置されていないことが判明したとのことです。一方、オートロックは47.6%に設置されていることから、単純計算をした場合全国の13.9%の賃貸マンションがオートロック&宅配ボックスなし物件=玄関先への置き配不可物件となりますが、実際にはそれを上回る19.5%、約2割の賃貸マンションが置き配不可物件であることが分かったそうです。
これは、オートロックがセキュリティの要として1980年代から導入が本格化したのに対し、宅配ボックスは2000年代に設置が開始され、本格普及したのはリーマンショック後という約30年のタイムラグがあることによるものです。データの通り、築年別設置率を比較するとその違いが明確です。
中山氏によると、宅配便の再配達削減には宅配ボックスの普及率を上げることが最も効果があるものの、賃貸マンション用の宅配ボックスを追加設置するには30~100万円のコストが見込まれるため、設置率の拡大は容易には期待できません。現実的には"置き配不可物件"に居住しているユーザーには、コンビニ受取や駅の宅配ロッカーの利用が求められることになるとしています。
調査概要
集計対象:LIFULL HOME'S に掲載された賃貸マンション
集計期間:2025年6月
本調査の内容はLIFULL HOME'S 不動産データソリューションが保有する不動産データを元に分析・掲載されています。
出典元:株式会社LIFULL プレスリリース