メルカリ、サーキュラーエコノミー総研を新設 - 循環型経済の社会実装へ研究活動を統合・発展

株式会社メルカリが、調査・研究機能を持つメディア「サーキュラーエコノミー総研 by mercari」を2025年6月27日に公開したことが発表されました。このメディアは、これまでの「メルカリ総合研究所」と「リコマース総合研究所」の活動を統合・発展させるもので、多様なステークホルダーとの連携を通じてサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を加速させることを目指しています。

背景

現在、日本政府はサーキュラーエコノミー推進を国家戦略として位置付け、関連ビジネスの市場規模を2030年に80兆円以上とする目標を掲げています。また、日本の家庭に眠る不要品、いわゆる"かくれ資産"は推計約66兆円にのぼり、その活用には大きな可能性があるとされています。

このような社会的背景の中、メルカリは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションのもと、誰もが参加できるマーケットプレイスを通じて、限りある資源が大切に使われる社会を目指してきました。これまでメルカリは、二次流通市場の可能性を探る「メルカリ総合研究所」(2019年公開)や、リユース・リペアなどを含む「リコマース」市場に特化した「リコマース総合研究所」(2023年公開)を通じて、調査研究や情報発信を続けてきました。

しかし、サーキュラーエコノミーを社会全体で本格的に推進するためには、より多様な視点からの調査や研究、社会全体の意識・行動変容を促す客観的な情報発信、そして分野を超えた「協創」が不可欠です。「サーキュラーエコノミー総研 by mercari」(以下、CE総研)は、これまでの研究所を発展的に統合し、事業者、行政、研究者とともに、持続可能な社会の実現に向けた知見を発信していくとのことです。

「サーキュラーエコノミー総研 by mercari」について

  • ミッション:「サーキュラーエコノミー(循環型経済)の促進を通じて、持続可能な社会を実現する」
  • 活動内容:サーキュラーエコノミーに関する調査・研究を行い、ウェブサイトでの記事コンテンツや、専門家やプロジェクト推進者の生の声をお届けするPodcast番組などを通じて、事業者、行政・研究者、メディア関係者、そして生活者の皆さまへ新たな発見や示唆を提供します。
    • 公式Podcast:サーキュラーエコノミー総研ラジオ (Spotifyなどで配信予定)
  • 主な調査・研究テーマ:「社会(Society)」「経済(Economy)」「環境(Environment)」の3つの視点から、情報発信を行います。
  • 初期掲載コンテンツ
    • 「エシカルな選択を促す条件とは〜メルカリはサーキュラーエコノミーの好事例となるか」(慶應義塾大学商学部 教授 山本 晶 氏)
    • 「ヤクルトレディが繋ぐサーキュラーエコノミー 〜ヤクルト山陽の地域に根差したリユース事業〜」(ヤクルト山陽 サステナ推進部 課長 長田宗一郎 氏、リユースチーム 主任 天野貴美子 氏)

共同調査・研究パートナーについて

CE総研では、客観的かつ多角的な調査・研究を推進するため、外部の専門家や機関との連携を重視しています。初期のパートナーとして、以下の有識者との共同調査・研究を予定しているとのことです。

  • 近藤 尚己 氏
    • 京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野 教授
    • 京都大学 成長戦略本部Beyond 2050社会的共通資本研究部門 部門長
    • 一般社団法人 安寧社会競争イニシアチブ(AnCo) 代表理事
  • 山本 晶 氏
    • 慶應義塾大学商学部 教授

今後、サーキュラーエコノミーやサステナビリティなどを専門とする学術機関、企業、自治体など、共同調査や研究に関心のあるパートナーを広く募集していく予定だということです。

「サーキュラーエコノミー総研 by mercari」共同調査・研究パートナー山本晶教授のコメント

CE総研の共同調査・研究パートナーである山本晶教授は、次のようにコメントしています。

「メルカリのサービスは、消費者に処分の選択肢を増やし、生活を豊かにしただけでなく、個人が手軽に参加できるサーキュラーエコノミーの具体的な事例として、その推進に貢献していると言えます。

しかしながら、大量生産・大量販売は大量廃棄にも繋がっており、例えばアパレルの場合、約7割の洋服が焼却または埋め立て処分されているという現状があります。リサイクルショップやメルカリのようなサービスが増えているにもかかわらず、リユースやリサイクルされているのはわずか3割程度と言われており、この値を高めることが、サーキュラーエコノミー移行への課題の一つです。

研究者が一人で、あるいは一企業が単独で取り組むよりも、チームを組んで進めた方がより良い答えに到達できると信じているため、例えば、メーカーや自治体などと共に実証実験のようなことができればと期待しています。

私自身はマーケティングや消費者行動を専門としていますが、例えば、行動経済学の先生やテクノロジーによる不正特定に関してはコンピューターサイエンスの専門家が必要です。さらにはウェルビーイングのような文脈を研究している研究者など、異分野の専門家がサーキュラーエコノミーに関心を持ち、共に研究できることを期待しています。」

メルカリによるサーキュラーエコノミー推進の意義

CE総研の設立は、メルカリがこれまで進めてきたサーキュラーエコノミーへの取り組みをさらに発展させる重要なステップと言えるでしょう。フリマアプリという誰もが参加できるプラットフォームを通じて、個人レベルでの循環型経済への参加を促進してきた同社が、より学術的・専門的な知見を集約し発信していくことで、社会全体のサーキュラーエコノミーへの移行が加速することが期待されます。

特に、日本の家庭に眠る約66兆円の"かくれ資産"を活用するための具体的な方策や、リユース・リサイクル率の向上に向けた社会的な仕組みづくりなど、個人の行動変容から社会システムの変革まで、幅広い視点からの調査研究が行われることで、実効性のある施策につながる可能性があります。

また、CE総研が目指す「協創」の考え方は、企業、学術機関、行政、そして生活者がそれぞれの立場から循環型経済の実現に貢献できる体制づくりを促進するものであり、サステナビリティに関する課題解決に向けた新たなアプローチとして注目されます。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」の一方通行型の経済モデルから脱却し、資源の循環利用を前提とした経済システムを指します。製品やサービスの設計段階から廃棄物の発生を最小化し、使用済み製品や素材を可能な限り長期間使用・再利用・再生利用することで、経済成長と環境負荷の低減を両立させることを目指しています。

具体的には、シェアリング、リユース(再使用)、リペア(修理)、リサイクル(再生利用)などの取り組みが含まれ、メルカリのようなプラットフォームは、個人間での物品の循環を促進する重要な役割を担っています。日本政府が推進する循環経済戦略においても、2030年までに関連ビジネスの市場規模を80兆円以上にするという具体的な目標が掲げられており、今後ますます社会的な注目と取り組みが加速することが予想されます。

CE総研は、こうした社会的背景のもと、サーキュラーエコノミーに関する信頼できる情報を提供し、社会全体の意識改革と行動変容を促進することで、持続可能な社会の実現と新たな経済価値の創出に貢献していくとしています。

出典元:株式会社メルカリ プレスリリース

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