
SEOを中心にデジタル領域全般のマーケティング支援を行う株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ(東京都品川区、代表取締役:鳥居本 真徳)は、生成AIを通じた情報収集が実際の購買にどのように結びついているかを検証するため、「生成AIとの対話による購買行動調査」を実施し、その結果を公開しました。同社の調査によると、生成AI利用者の約4割が実際の購買行動に至っていることが明らかになっています。
この記事の目次
調査背景
近年、ChatGPTなどの生成AIが私たちの生活において身近なツールとなってきています。日常的な情報検索にAIを活用する人が増加している一方で、その対話の裏側でユーザーがどのような行動を取っているのかは企業からは見えにくい状況となっています。
特に「AIにどのような質問をしているのか」「その回答をきっかけに、どのような行動プロセスをたどっているのか」といったユーザーの実際の行動については、体系的に可視化されていないのが現状です。
このような背景から、PLAN-Bマーケティングパートナーズは生成AIが日常でどのように活用され、その結果どのような行動に繋がっているのかを明らかにするためのアンケート調査を実施しました。同社は企業のマーケティング担当者やWeb担当者向けに、生成AIの登場によるユーザー行動の変化にどう対応すべきかという視点から、調査結果と考察をまとめています。
調査概要
生成AIとの対話による購買行動調査 2025
調査期間:2025年6月13日~18日
調査対象:生成AIを使った検索を日常的に行っているユーザー 150名
調査方法:インターネットアンケート調査
調査委託先:アイブリッジ株式会社
※グラフの数値は小数点第1位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
調査対象者について
この調査は、「生成AIを使って日常的に(週に数回程度以上)調べものをしている」と回答した方々を対象に実施されました。
PLAN-Bマーケティングパートナーズが実施した全国10~70代の男女1,000人を対象とした別のアンケートでは、生成AI検索ツールを「使ったことがない」「知らない」と答えた人が約6割を占め、今回のアンケート対象となった「常に使っている(ほぼ毎日)」「よく使っている(週に数回程度)」という日常的ユーザーは、全体でみるとまだ2割に満たないことが明らかになっています。
※ ここでいう「生成AI検索ツール」とは、ChatGPTのように、検索ワードに対してAIが回答や要約を提示するサービスを指します。
調査結果
約4割が生成AIをきっかけに「購買」や「行き先の決定」を経験
「Q1. 生成AIとの対話をきっかけに、商品の購入や行き先を決定したことがありますか?」という質問に対し、「商品の購入」を決定したことがある人は42.7%、「行き先(旅行先、レストランなど)」を決定したことがある人は43.3%という結果になりました。

生成AI利用者のうち4割以上が、単なる情報収集だけでなく、実際の消費行動(購入・場所の決定)にまで至っていることが明らかになりました。これは、生成AIがユーザーの意思決定をサポートするツールとして機能し始めていることを示しています。
特に、商品購入と行き先決定の経験率がほぼ同水準であることから、物(モノ)と体験(コト)の両方の消費において、生成AIが幅広く活用されていることが見てとれます。
商品購入は「化粧品」「食品」「本」が上位に
生成AIをきっかけに購入経験がある人を対象に「Q2. 生成AIとの対話を通じて購入したことがある商品」を複数選択形式で質問したところ、「化粧品・スキンケア・ヘアケア」が最多で40.6%、次いで「食品・飲料(サプリメント含む)」が39.1%、「本・雑誌・電子書籍」が35.9%となりました。

行き先の決定は「飲食店」「旅行先」が2トップ
また、生成AIをきっかけに行き先を決定したことがある人を対象に「Q3. 決定したことがある行き先」を複数選択形式で質問したところ、「飲食店(レストラン・カフェ・居酒屋など)」が56.9%、「旅行・宿泊先」が55.4%と、この2項目が半数を超える結果となりました。次いで「病院・クリニック」が29.2%でした。

これらの結果から、生成AIが持つ「Web上にあるスペックや口コミの情報を瞬時に整理・要約する能力」や「状況やニーズに合わせて具体的な提案を行う能力」が、「自分の条件に合うものを効率的に見つけたい」という消費者ニーズに応えていることがわかります。
特に、条件が多岐にわたり、口コミ・レビューを参考に決定することが多い商品や行き先探しでは、比較検討にかかる手間を大幅に削減できるだけでなく、ユーザーが気付いていなかった新たな選択肢の発見にもつながっていると考えられます。
約9割がAIの回答を「Googleなどの検索エンジン」で検証。 AIを鵜呑みにしない慎重な姿勢が明らかに
生成AIをきっかけに購買・行き先決定の経験がある人を対象に「Q4. 生成AIが推奨する商品やサービスを購買する前に、何を用いて情報を検証しましたか?」と質問したところ、「Googleなどの検索エンジン」が86.8%で圧倒的多数となりました。次いで「Amazonなどのモール型EC」(39.5%)、「InstagramなどのSNS」(31.6%)と続きました。一方で、「生成AIを完全に信頼しているため、検証しない」と回答した人はわずか2.6%でした。

この結果は、生成AIが購買のきっかけとして有用であると認識されつつも、情報の正確性や信憑性については、多くのユーザーがまだ全幅の信頼を置いていない現状を明確に示しています。
多くのユーザーは、AIから得た提案をあくまで「第一案」と捉え、使い慣れた検索エンジンで裏付けを取ったり、ECサイトやSNSで実際の口コミ・評判を確認したりする行動が定着しているようです。
この結果から、生成AIは消費者にとってファーストタッチのきっかけを与える存在として機能しており、商品・サービスの選択肢を広げる初期段階で有効な役割を果たしていることがわかります。さらに、ユーザーが生成AIと検索エンジンを行き来するように情報を照合・検証していることから、企業にとって生成AIへの情報最適化を進めると同時に、検索エンジン(SEO)やECサイト、SNS上での情報発信と連携したマーケティング戦略設計が必要であることが示唆されています。
購買ジャーニーの起点となる、AIとのリアルな対話例
本アンケートでは「Q5. 生成AIとどのような対話を通して商品・サービスの購入、または行き先の決定に至りましたか。」という質問も行われました。ユーザーと生成AIとの対話について、回答の中から一部抜粋された内容は以下の通りです。
【食品・飲料(サプリメント含む)】
・栄養バランスを整えるために不足しているものは何かを聞き、受け取った回答からマルチビタミン・ミネラルが必要だと判断し、購入した(30代女性)
【衣類・アパレル(ファッション小物含む)】
・自分の体型データを入力し、サイズが合う中から自分のファッションの傾向を伝えそこから選択肢を絞ってもらう(50代男性)
【金融商品(クレジットカード・証券など)】
・投資するための商品を調べることを目的として検索した。「インフレに強い投資商品を教えて」と入力。株式、投資信託、金、不動産等の表示がされたため、その中から金の積立を始めた。(40代男性)
【飲食店(レストラン・カフェ・居酒屋など)】
・今ここにいるけど、この周辺でおすすめの飲食店をおしえてほしいとAIに入力。
いくつか紹介してもらい、それをさらにGoogleでリサーチ。そのうち、よさそうな1か所に訪れてみた。(40代女性)
【旅行・宿泊先】
・スタートとエンドを伝え、その道中の観光地、土産物屋の指示(60代男性)
・「今の時期どこかお勧めの行楽スポットってあるかな?」と聞く。
それに対し色々提案してくれるので、その中から好みのスポットを選択した。(50代男性)
これらの回答から、生成AIでの商品探索は、ユーザーが持つ漠然とした「要望」や「悩み」が商品探索の起点となることが多いことが読み取れます。
また、PLAN-Bマーケティングパートナーズが社内で同様に行った調査からは、購入に至った際の実際のAIとのチャット履歴も一部公開されています。


総括
この調査で特に注目すべきは、生成AIとの対話を通じて、実際に購買というアクションに至った生成AIユーザーが4割を超えたという点です。ChatGPTなどのAIとの対話が、単なる情報収集を超えて、具体的な商品選定やサービス検討に深く関与していることが明らかになりました。
また、購買に至るまでのプロセスにおいては、ユーザー自身が条件を整理し、生成AIに逐次質問を重ねることで、比較検討や意思決定の判断軸をAIとの対話の中で構築している様子も見受けられます。これは、従来の検索エンジン起点の行動とは異なる"生成AI主導のジャーニー"が浸透しつつある兆候といえるでしょう。
とはいえ、すべての企業にとって"生成AIに引用されること"が即ビジネス成果に結びつくとは限りません。重要なのは、生成AIが起点となる意思決定のプロセスに、自社が「どのような文脈で」「どのような形で」関与しているのかをまず可視化し、現実を起点に方針を定めることです。生成AIとの対話がマーケティング接点となり得る時代において、企業は「AIに引用されること」だけでなく、「引用の先で、ユーザーの行動にどうつながるか」を見据えた戦略的対応が求められています。
出典元: 株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ プレスリリース