
企業が安定的に成長を続けていくためには、経営者のカリスマ性や属人的なリーダーシップだけに頼るわけにはいきません。特に事業規模が拡大する過程では、現場を担う管理職や幹部層の育成が急務となります。とはいえ、「人を育てるのが一番難しい」と頭を悩ませる経営者は少なくありません。
本稿では、再現性のある“幹部育成”のアプローチを整理し、「なぜあの組織は成長し続けるのか?」という問いに対して、一つの実践的な答えを提示します。
株式会社識学
識学は「意識構造学」からとった造語であり、人が物事を認識してから行動に至るまでの思考を構造的に理解し、体系化したメソッドです。
株式会社識学は、このメソッドを応用し、いかなる組織でも生産性向上を実現するための方法を追究しています。
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この記事の目次
なぜ幹部が育たないのか?
幹部候補がなかなか育たない、任せたいのに任せられない──。そう感じている経営者や管理職は多いはずです。その原因の多くは、「期待」と「現実」の間にあるズレ、すなわち“あいまいな関係性”にあります。
たとえば、「もっと自分で考えて動ける人材が欲しい」と言いつつ、現場では上司がつねに答えを与えていたり、「裁量を与えている」と口では言いながらも、ミスを恐れて細かく指示を出してしまっていたり。このような状況では、部下は“正解を探すこと”にエネルギーを使い、自分の頭で考えて行動する経験が積めません。
育たないのではなく、育つ環境が整っていないのです。
育成の第一歩は「立場」を明確にすること
幹部育成において最初に整えるべきなのは、「この人はどういう役割を担い、何を最終的に判断・実行すべき立場にあるのか」という線引きです。
部下にとって最も迷いを生むのは、「自分がどこまで決めていいのかわからない」という状態です。役職の名前や職務記述だけでなく、実際の行動範囲を具体的に示し、判断・責任の所在をはっきりさせることが大切です。
たとえば、事業部長であれば、「この数字を期日までに達成する」「人員配置の最終決定はこの人が行う」など、責任の範囲を明文化することで、本人にも周囲にも納得感が生まれます。曖昧さが排除されれば、結果に対しても正当に評価・対話ができるようになります。
“教える”より“見せる”スタイルへ
管理職や経営者がやりがちな失敗に、「細かく手取り足取り教えすぎる」というものがあります。しかし、幹部育成においては、知識やスキルよりも、「どう判断し、どう動くべきか」という“姿勢”の継承がより重要です。
そのためには、言葉より行動で示すことが効果的です。
たとえば、上司がどのように意思決定しているのか、会議での発言、部下への指示の出し方、数字に対するこだわり──そうした日々の行動そのものが、部下にとっては“教材”です。「あの人ならこう動くはず」と思わせることができれば、自立した幹部は自然と育っていきます。
重要なのは、見られている自覚を持つことです。幹部候補が本当に吸収しているのは、上司の“言っていること”ではなく、“やっていること”なのです。
感情ではなく、基準で語る
人材育成において避けたいのは、「なんとなく期待はずれ」「どうも頼りない」といった感情的な判断です。こうした曖昧な評価は、受け手にとって不信感や混乱を生み、成長を止めてしまいます。
そこで必要なのが、事実と基準に基づいた対話です。
評価やフィードバックを行う際には、「なぜこの結果が良いのか/悪いのか」「期待していた行動とどう違っていたのか」を、事実に基づいて説明できるようにしましょう。「もっと頑張って」ではなく、「次回の会議では資料を●日前までに提出し、議論を●分以内でまとめるように」といった、具体的かつ測定可能な表現が有効です。
部下は“評価されている”と感じるより、“成長の材料を与えられている”と感じたときに、本気で行動を変えます。
成果を出すまで「やり切らせる」
育成とは、“任せて、やり切らせる”プロセスでもあります。
途中でつい口を出したくなる、結果が出なければ「やっぱりまだ早かった」と結論づけてしまう──そうした介入が続けば、本人は「失敗できない環境」に萎縮し、本来のポテンシャルを発揮できません。
重要なのは、明確なゴールを与え、期限まで見守ることです。失敗も含めて経験値と捉え、その中で自ら学ぶ機会を設計すること。任せたなら、最後まで責任を取らせることでしか“幹部の自覚”は生まれません。
失敗したとしても、それがルール違反でなければ、むしろ“挑戦した証拠”です。問題は、「何を学び、次にどう活かすか」。この対話を継続することこそ、幹部育成の真骨頂です。
幹部を育てるという“覚悟”
最後に、育成は「時間のかかる投資」であることを忘れてはなりません。短期的な成果だけを求めすぎると、“すぐ動く人”ばかりを重宝し、結果として組織は疲弊します。長期的に見れば、思考し、判断し、責任を持つ人材こそが、組織の成長を支える柱になります。
そして何より、幹部候補に本気で向き合うには、経営者自身にも育成に対する覚悟が求められます。「人は変わる」「時間をかければ育つ」と信じられるかどうか。その信念がなければ、いくらノウハウがあっても、幹部は育ちません。
おわりに
幹部を育てることは、「組織を未来に託すこと」と言えます。
あいまいさを排し、立場を明確にし、やり切らせる。そのうえで、事実に基づいて対話し、必要な経験を積ませる。シンプルでありながら、再現性のあるこの育成法は、多くの現場で実践され、成果を上げています。
人が変われば、組織が変わる。組織が変われば、社会が変わる──。そんな変化を一歩ずつ形にしていくために、まずは自社の“育成のスタンス”を見直してみてはいかがでしょうか。
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