【海外ニュース】TikTok Shop、独・仏・伊で一斉展開し欧州6か国へ拡大/ドイツ中小ECショップの平均CVRは2.01%/Mirakl、GMV前年比30%増を達成

本記事では、「TikTok Shopによる欧州6か国への拡大」「ドイツの中小企業ECにおけるコンバージョン率の実態」、さらに「仏Miraklが牽引するマーケットプレイス型事業の成長」という3つの注目トピックを取り上げます。

TikTok Shop、独・仏・伊で一斉展開し欧州6か国へ拡大

TikTok Shopは2025年3月末、ドイツ・フランス・イタリアにて新たにサービスを開始しました。これにより、すでに展開中だった英国・スペイン・アイルランドと合わせ、欧州の主要6か国でTikTok Shopが利用可能となり、総計7,200万人超のユーザーが対象に。TikTokはこの展開に向け、2025年2月末からセラー登録受付を開始。ローンチ当初から、NiveaやAbout Youといった有力ブランドが参入し、地域密着型のローカルブランドも加わる形で、多様な事業者が販売を開始しました。欧州市場におけるTikTok Shopの影響力は、今後さらに高まると見られています。

“発見型EC”としてのTikTok Shopがもたらす新たな購買体験

TikTok Shopは、動画視聴中に商品を「発見」し、そのままアプリ内で購入できる“Discovery Commerce(発見型EC)”の仕組みを持ちます。従来の検索型ECとは異なり、ユーザーの興味や関心に応じて、自然な文脈で商品が提示されるのが特徴です。ユーザーは商品フィードやライブ配信を通じて、興味を持った商品に即時アクセス・購入が可能。各ブランドは専用ストアページを持ち、TikTok内で完結する購買体験を提供します。Cabaia(仏)やGoovi(伊)などのローカルブランドも参入し、D2Cモデルとの親和性が高まっています。

まとめ:日本における展開と企業の先行事例

日本ではTikTok Shopの正式展開は未実施ですが、TikTokを活用したライブコマースやショート動画による販促はすでに浸透し始めています。例えば化粧品ブランド「Benefit Cosmetics」は、TikTokのライブ配信を活用し、視聴者数62万人超、フォロワー数2.5万人増を達成しました。こうした事例は、ライブ配信や動画起点のショッピング体験が、すでに日本でも強い影響力を持ちつつあることを示しています。欧州のTikTok Shopの成功は、日本企業にとっても将来の販路多様化のヒントとなり、SNSを活用した“見せて売る”戦略の必要性を示唆しています。

参照:72 million Europeans gain access to TikTok Shop

ドイツ中小ECショップの平均CVRは2.01%、PCがモバイルを上回る

ドイツにおける中小規模のECショップでは、平均コンバージョン率(CVR)が2.01%に達しているとUptain社が報告しています。これは、約50人の訪問者のうち1人が購入に至っている水準で、ドイツ市場のEC成熟度を示すデータとして注目されています。デバイス別に見ると、PC経由のCVRが2.17%、モバイル経由は1.91%と、PCがわずかに上回る結果となりました。特にモバイル経由の流入が主流であるにもかかわらず、購入にはPCが選ばれている現状から、UI改善や決済導線の最適化が今後の課題として浮き彫りになっています。

業種ごとの差と短時間購買の傾向が浮き彫りに

Uptain社の調査によれば、ドイツの中小ECショップでは、業種ごとに明確なCVRの差が存在します。中でも特に高いCVRを示したのはタバコ・電子タバコ関連の7.3%。ほかにも塗料、健康食品、ペット用品、ソフトウェア、車両部品などのカテゴリが高水準を記録しました。加えて、1回の買い物にかかる平均セッション時間は8分52秒と、以前より50秒短縮されており、購入までの意思決定が加速しています。

まとめ:ドイツの事例から見る日本の状況

日本の中小EC事業者においても、UI改善やデバイス別戦略によるCVR向上の取り組みが進んでいます。たとえば、地方の伝統工芸品を扱う事業者が、スマートフォン向けに購入導線を再設計した結果、CVRが1.2%から2.4%に倍増した事例があります。PCよりもスマホが主流の日本市場では、モバイル最適化が重要なカギとなります。また、商品ページにチャットボットやクーポンポップアップを組み込むなど、購入直前の離脱防止施策も有効です。こうした対策により、平均セッション時間の短縮と合わせて、迅速かつ直感的な購入体験を提供する動きが強まっています。ドイツの事例と同様に、日本でもEC利用者の“迷わず買う”傾向は強まりつつあるといえるでしょう。

参照:Average conversion rate of German SME shops: 2.01%

Mirakl、GMV前年比30%増を達成し103億ユーロ規模に拡大

フランスのマーケットプレイス構築ソリューションを提供するMiraklは、2024年にGMV(流通取引総額)を前年比30%増の103億ユーロ(約1兆6,000億円)に拡大したと発表しました。さらに、年間経常収益(ARR)は1億6,200万ユーロを超え、SaaS型ビジネスモデルとして着実に成長を遂げています。MiraklはBtoCおよびBtoB企業向けにオンラインマーケットプレイスの立ち上げ・運用支援を提供しており、2024年には52社のグローバル企業が新たに顧客として加わりました。収益性は2023年末に黒字化を果たして以降、2024年通年でも維持。安定した顧客獲得とコスト管理の両立が、同社の成長基盤を支えています。

AI投資の倍増と新機能の導入で競争力を強化

Miraklは2024年、AI関連機能の開発・導入に注力し、AI分野への投資を前年比で倍増させました。特に注目されるのは、カタログ管理プロセスを自動化する「Catalog Transformer」の導入です。これにより、出品情報の整備や更新が効率化され、出品者・運営側双方の負荷を大幅に軽減しています。Miraklは2025年に向けて、過去3年間分に相当するAI投資を実施する計画も明らかにしており、今後もテクノロジー主導の成長が見込まれます。また、マーケットプレイス運営に必要な決済・メディア連携・分析機能も強化されており、企業の“自社モール構築”ニーズに応える包括的なソリューションを構築しつつあります。

まとめ:Miraklの日本における導入状況は?

日本でもMiraklを活用する企業が徐々に増加しています。例えばニトリは、Miraklを通じて外部ブランドの出品を可能にし、自社ECモール内での品揃え拡充と在庫リスクの分散を両立させています。また、アスクルは、BtoB向けの取引環境を拡張する手段として、マーケットプレイス型運営へのシフトを加速させています。さらに、BtoB領域では、モノタロウやミスミなどが独自のマーケットプレイス戦略を推進し、取引の幅と顧客接点を広げています。Miraklのような基盤型SaaSは、日本市場においても「自社でプラットフォームを持つ」企業が増える中で有効性を増しており、今後のBtoB・D2C双方のEC展開における鍵を握る存在となるでしょう。

参照:Mirakl: ‘GMV increased 30 percent’

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