楽天新春カンファレンス2025 ~「楽天市場」2025年上期戦略共有会~【参加レポート】
ニュースの概要

楽天グループ株式会社(以下、楽天)は2025年1月31日に、楽天新春カンファレンスで楽天市場の2025年上期戦略共有会を開催しました。常務執行役員の松村亮さんから事業戦略について、常務執行役員の小林悠輔さんからシステムについて、発表された内容を紹介していきます。

事業戦略

「楽天市場」購入者数の成長

楽天は2023年に国内EC流通総額が6兆円を超えました。目標の10兆円を目指し、2024年も堅調に成長を続けているとのこと。大型セールにおける流通額は、24/Q4が23/Q4に対して+14.5%成長。新規・復活ユーザー獲得数は24/Q4が23/Q4に対して+10.4%成長しました。

松村さんは「楽天市場」の成長戦略を4つに分けてお話しされていました。

マーケティング改革とロイヤルユーザーの拡大

2024年12月の楽天スーパーSALEでは、顧客の購入金額が楽天カード・楽天モバイルをクロスユースしているかで大きな違いが出ました。いずれも利用していない顧客と比べると、楽天カード利用のみで+18.3%、楽天モバイル契約のみで+30.1%、どちらも利用している場合で+71.9%まで一人当たりの購買金額が向上するのです。

現在会員数が830万人を超えた楽天モバイルユーザーは楽天市場の流通額シェアの21%、購入者数シェアでは15.1%まで高まっています。また、若年層の利用者も多く、「楽天市場の顧客基盤を拡大していくにあたって、若年層を強化していくことは非常に重要なテーマ」だと松村さんは話されました。

楽天モバイルユーザーが増加すると楽天市場での購買が増える要因としてデータの活用を挙げていました。精度の高いデータ活用により、ターゲティング効率が向上し、商品レコメンデーションを通して広告掲載期間中のCTVRは+93%向上したようです。

試験的に運用されていた買い回りイベントの月2回から3回への増加はライトユーザーを中心に成果を上げていたとのことです。SNS活用においては、今年はクリエイター(アフィリエイター)に成果報酬を支払うことでTikTokを介した集客最大化を図る動きを検討していると発表していました。

売り場改革

定期購入の全面リニューアル

UI改善(2025年3月末)
通常・定期購入商品を1ページで表示し、定期購入を見つけやすいUIへ。

出品ハードル軽減(2025年3月末)
定期購入の機能活用に必要な固定費を廃止。通常購入商品の編集画面から定期購入の設定が可能に。

価格(割引率)(2025年3月末)
定期購入で商品を販売する際は、通常購入価格から5%以上の値引きが必要に。

ポイントキャンペーン(2025年4月)
定期購入の商品購入をSPU対象化するなど、楽天原資でのポイントキャンペーンを予定。

店舗運営Naviにて変更点や対応方法を案内(2025年2月)

楽天大学にて学習コンテンツをリリース(2025年3月~)

ギフト機能改善

既存ギフト機能の改善
サーチ上における検索性の向上や商品ページ内のギフトUXの統一、RMSの機能拡充における店舗の出品/受注の負担軽減を挙げられていました。

ソーシャルギフト機能の新規導入
住所を知らない相手への気軽なギフト機能の導入も検討しているとのこと。

AI活用

顧客体験の向上(2025年1月~順次)
商品レビューなどをAIがまとめ・要約して表示。

サーチの進化(2025年下期~)
現在、サーチに異なるユーザーが同じキーワードを入れると基本的には同じ検索結果が表示されます。ユーザーによってニーズが異なるため、それぞれのニーズに合った表示ができるよう、今後はサーチ結果がパーソナライズされていくと話されていました。

フィード画面リニューアル(2025年下期~)
検索しなくてもさまざまな店舗・商品・コンテンツと出会えるフィードを実装していきます。商品情報や商品動画、コンテンツページにライブショッピングなど、ユーザーごとに最適な賑わい・人けがあるコンテンツを表示させる予定。

広告の進化

RPP(2025年Q2)
AIの活用によりRPP(検索連動型広告)の効果を最適化させる機能を導入予定。広告掲載面/日時/ユーザーなどに応じて予算配分やCPCを最適化し、RPPトータルのコンバージョン数やROASを改善。

TDA-Expansion(2025年Q3)
InstagramやFacebookに加えて、SmartNewsやCRITEOなど配信メディアを拡大予定。

TDA/TDA-Expansion(2025年Q1)
商品画像・ロゴ・テキスト・背景を含めた入稿バナークリエイティブをAIが自動生成。

継続的な物流改善

2024年7月に「最強翌日配送」をリリース。ラベルの未獲得商品と比べ、獲得商品の売上成長率は+18.6ptとのこと。2025年3月からは今まで未対応だったふるさと納税領域においても対象となります。

商品受け取りのユーザー満足度を引き上げるべく、置き配対応も拡大しています。RSL(楽天スーパーロジスティクス)から始まった「お届け日時表示サービス」は2025年下期には全店舗向け3大キャリア対応版を公開予定とのこと。

2025年、RSLは40サイズや厚さ5cmまでのメール便サイズといった小サイズ帯の新設、メール便などの出荷リードタイムの見直し、夜間注文の翌日配送対応などの取り組みを強化していく予定です。

一方で、昨今のコスト高を受け、2025年6月より出荷作業料・配送料の変更、他サイト対応料金の導入を行うと発表していました。

店舗コミュニケーションの強化

「RMS AIアシスタント β版」は2024年3月のローンチから3万以上の店舗が活用。ただし、まだ課題は山積みのため店舗からのフィードバックが必要とのこと。約90%のECCがAIを活用し、4人に1人のECCが自ら生成AIを作り、コンサルティングに活かしています。

他、全体的にAIを活用していくお話に加え、Nationsやタウンミーティングなどオフラインにおける接点についても言及されていました。

システム開発の戦略

続いて、担当役員の小林さんからシステム開発に関する戦略の発表がありました。

2024年の下期振り返りについては生成AIの導入による機能アップデートや「最強翌日配送」ラベル、コンテンツページについて触れています。

2025年の上期注力施策として、次の5つを挙げていました。

RMS AI アシスタントβ版・AIの進化

2025年は作業の効率化のみならず、店舗の流通が増加するようなアクションを提案するような機能を推進していくとのこと。

R-Messe:問い合わせ回答作成支援AI(2025年Q2)
過去の問い合わせ回答文を参照することで、店舗ごとの特色を残した回答文をAIが作成するようになります。

R-Storefront:画像加工支援AIギフト背景以外にもテーマを拡大(2025年3月)

R-Storefront:画像加工支援AI画像生成の指示を入力できる機能の提供(2025年6月)
用意された利用シーンのみでしか生成できなかった画像が、店舗が想定するイメージを入力し、画像生成が可能に。

みんなのレビュー:レビュー返信作成支援AI(2025年Q3)
レビュー本文をもとに簡単に返信を作成。指示は手動で出すことも可能。

RMS チャットボットの統合 AIチャット統合・精度向上(2025年Q2)
別々になっている店舗運営NaviとEC相談AIを一つに集約。一つのチャットで悩みが解決できる仕様に。

電話対応:ユーザー問い合わせを自然な受け答えで解決(2025年Q1)
ユーザーからの電話をAI自動音声が24時間対応。簡易的な問い合わせを自動化し、自己解決率の向上を目指します。Q1から試験的に運用を開始。

店舗サポート:マーケティングデータ分析とAI活用で店舗ごとの最適化提案(2025年Q4)
マーケティングデータをもとにAIが店舗ごとの最適な流通増加提案を作成。AIの提案とECCのノウハウをかけ合わせ、より最適な提案を実現。

不正監視・不正審査:AIがなりすまし購入防止及び不正取引審査を効率化(2025年Q2)
生成AI導入以前のAIを活用し、ブラッシュアップを続けているが、生成AIの導入により、さらに不正の検知から漏れを減らすような取り組みを推進。

サーチの進化(2025年Q4)
パーソナライズ以外にも時間やシーンなど、さまざまなパターンでABテストを実施し、最適解を探す模様。

その他
よりリッチな画像の生成や、商品画像をもとにモデルが着用して動いているイメージ動画が作成可能が搭載予定。

定期購入の改善

商品ページUI、サーチ検索結果改善(2025年3月)
通常購入と比較し、お得さをアピール可能なUIに。定期購入品もSPUの対象になります。

申込履歴の改善(2025年3月)
スマホでの確認やお届けサイクル変更が可能になり、ユーザビリティが向上します。

商品登録機能の改善(2025年3月)
申込みや固定費不要で全店舗利用可能に。通常商品ページを定期購入の併売に切り替えて定期購入価格を入力するだけのカンタン登録。

申込済み注文への最新価格反映(2025年3月)
従来一度注文を受けた定期購入商品は解約されるまで価格の変更ができませんでした。価格が頻繁に変わる商材の定期購入向けの販売が容易になります。

店舗カルテでの詳細分析が可能に(2025年3月)

今後のスケジュール
定期購入のみの定期商品ページは2025年3月に廃止を予定。それ以降は通常商品ページの中で併売を行うようになります。2025年6月末までにレビュー、申込済みのデータ移行申請を受け付けるとのこと。

店舗トップページ

PC版店舗トップページ機能改善(2025年Q2)
カレンダー表示や画像レイアウトを複数列配置できる設定、PC版コンテンツの横幅を1280pxまで拡大が可能になります。なお、従来RMSのPC版店舗トップページは2025年9月、GOLDのPC版店舗トップページは12月終了予定です。

置き配

全店舗に向けた拡大(2025年下期)
現在RSLのみの置き配対応を日本郵便・ヤマト運輸・佐川急便に拡大。高級品や生鮮品など商品ジャンルによる制御や店舗ごとに置き配除外商品を設定できるようにするなど柔軟性を取り入れる予定。

VOM対応

R-Karte:店舗カルテ 転換率・客単価ページUI改善(2025年2月)

R-Karte:リアルタイム売上の改善(商品別・SKU別)(2025年3月)

R-Backoffice:注文検索 指定可能検索条件追加(2025年Q2)

R-Storefront:ポイント変倍 期間・倍率改善(2025年Q2)
店舗別・商品別の期間設定に「期間を指定しない」を追加可能に。現在は60日ごとにポイント変倍の設定が必要なため、登録作業の不可を軽減し、長期でポイント付与の設定が可能。また、商品別ポイント変倍に「1倍」が追加され、店舗別ポイント変倍時に特定商品を除外することができるようになります。

R-Storefront:商品一括編集改善 全件ダウンロード機能他(2025年Q2)
CSVによる商品オプションやSKUなどを削除する際に、安全に削除ができるようなCSVの設定が可能に。さらに、50,000件を超える商品データを1度の操作でダウンロードができるようになります。

商品ページ:SKU画像並び順改善(2025年Q2)

まとめ:大まかな機能の情報は本レポートでキャッチアップ

2025年は定期購入と生成AIの活用が特に重要なポイントになりそうです。定期購入については事業者によっては関係ないと思われますが、機能が充実することで楽天市場全体が活気づき、回り回って自社の売り上げにつながることも考えられます。

かねてから取り上げられていた最強翌日配送についてはふるさと納税が加わるなど、いよいよ検索アルゴリズムの非常が高まることを示唆しているようにも感じられました。対応が難しいジャンルの商品も多くあるかとは思いますが、自社で対応する術はないのか思考を巡らせることも大切かもしれません。

他のECモールと比べ、事業者の創意工夫によりUXを統一することが難しかったギフト機能にもメスが入ります。ギフト需要が特に大きな楽天市場だからこそ、ソーシャルギフトをはじめ、今後のギフト機能の拡充が鍵を握るでしょう。

より詳細な情報を確認したい方は動画をご覧ください。

▼楽天新春カンファレンスの動画(RMSへのログインが必要です)
前半:事業戦略
https://daigaku.rms.rakuten.co.jp/rmsapp/watch/60195

後半:システム
https://daigaku.rms.rakuten.co.jp/rmsapp/watch/60196

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