
楽天グループ株式会社(以下、楽天)は2024年8月1日に、楽天オプティミズムで楽天市場の2024年下期戦略共有会を開催しました。常務執行役員の松村亮さんから事業戦略について、常務執行役員の小林悠輔さんからシステムについて、発表された内容を紹介していきます。
この記事の目次
楽天市場の事業戦略
前半は楽天市場の事業戦略を、松村さんにお話しいただきました。主に2024年上期戦略共有会で話された内容が多いため、新出の情報のみ割愛して紹介いたします。
ユーザーのロイヤル化
上半期に続き、下半期は楽天ユーザーのロイヤル化について力を入れてお話されていました。特に印象的だったのは楽天カードや楽天モバイルなどのグループサービスを併用しているユーザーとの購入金額の違いです。
2024年6月のスーパーSALEの実績から楽天カード・楽天モバイルをどちらも利用していないユーザーの購入金額を100とすると、楽天カードのみで141、楽天モバイルのみも同様に140、楽天カード・楽天モバイルをどちらも利用していると234と、サービスをまたいで利用している方ほど貢献度が大きいことがわかります。
現在は楽天モバイルユーザーが楽天市場内に占める流通シェアが約2割と発表されていましたが、この割合が大きくなることで楽天市場全体の流通が伸びていくだろうと松村さんは話されていました。
2024年9月のスーパーSALEでは楽天モバイルユーザーに限った先行セールを実施するとのことです。24時間先取りで、楽天スーパーSALEサーチに登録された商品の先行購入や買い回りの先行参加、楽天モバイル新規契約者ポイント+9倍進呈などの特典を予定しているようです。楽天スーパーSALEサーチなど在庫数が限られている商品は早期に売り切れになることが多いため、店舗さまにとっても楽天市場のヘビーユーザーを自店舗に誘引する良いきっかけになりそうですね。
新規・ライトユーザーへの再アタック
既存ユーザーの醸成に加え、新規・ライトなユーザーへの取り組みについても発表がありました。
オンラインの取り組みにおいてはジャンルやカテゴリを絞ったCMの作成・配信。オフラインではインフルエンサーとのマッチングイベント第4回を開催。ファッションジャンルで21名のアンバサダーが活動し、情報発信の強化を図っています。
InstagramやTikTokのような外部SNSからの流入は2年間で+50%に拡大。TikTokに絞ってみると流入数は4.3倍になっているとのことです。2025年上期にはROOMの投稿上でプロモーション用クーポンをユーザーが獲得できる機能をリリースする予定と発表しています。
SKUへの移行の状況
SKUへの移行は無事完了し、現在では85%以上の商品に属性が入力されていると松村さんは話します。ラベル表示商品のクリック率は表示のない商品と比べ2倍以上の効果が出ているようです。人気のある商品ほど、こういった対応は率先して適応しているため、クリック率は向上しやすい傾向にあるものの、検索面を見る限りでは商品の探しやすさが一目瞭然であるため、対応が進んでいない店舗さまは整理を進めていきたいですね。
SKU移行後に作成された商品ページで、シングルSKUとマルチSKUの商品の売上推移を比べたところ、半年でその差が約5倍に開く結果が出ました。マルチSKUの商品は、レビューや検索順位といった販売の実績が1商品ページに集約するため、売上が成長しやすい傾向にあるのでしょう。また、カラー展開やサイズ展開などを1ページで管理できることから、お客さまにとっても余計な遷移を減らして買い物をしやすくなっていることが数字から感じられます。
今後展開予定の広告について
TDA広告はAIを活用し、商品画像からクリエイティブの自動生成、配信結果からクリエイティブを自動改善する機能を2025年Q1目処に展開予定です。また、RPP広告は2025年Q3移行を目処に、楽天市場内の検索や広告に関するデータと商品情報をかけ合わせ、表示機会が多いキーワードをレコメンドする機能を提供すると発表しています。
楽天市場外から集客では、TDA Expansionのターゲティング機能が楽天・Metaのセグメントを設定して2024年Q4目処に配信可能になります。RPP Expansionも同時期に、入札戦略のオプションとして「ROAS重視」を追加予定。これによりコンバージョン数や流通最大化を狙えるようになるようです。
配送関係
2024年7月に「最強配送」ラベル(配送品質向上制度)が開始し、現在ラベルを獲得している商品が未獲得商品と比べ、15.0ptほど売上成長率が高い結果が出ていると発表がありました。
今後の展望として2024年12月移行、まずはRSL(楽天スーパーロジスティクス)をご利用の店舗さまから「RSLお届け日時表示サービス」をリリースし、2025年中に全店舗さま向けに3大キャリア対応版をリリース予定です。これにより、置き場所を選べる柔軟な置き配の依頼が可能になるそうです。
RSLの利用店舗数は10,000店舗を突破しています。店舗さまからの依頼を受けて、2024年4月にはメール便の翌日配送、5月にはAPI連携できる受注システムの拡大を実現してきました。現在は180サイズ以上の特大サイズの取り扱いができるようトライアル中で、今後対応できる商品が拡大できるようになりそうです。
楽天市場のシステム
後半は小林さんによるシステムパートです。上半期の発表や前述の事業戦略パートにて取り上げられていないトピックを中心に紹介していきます。
上半期にリリース済みの機能
RMS AIアシスタント β版
AIを活用して店舗運営の効率化を支援する機能として2024年3月にリリースされています。
・R-Storefront
商品説明文作成支援AI:商品名や商品画像をもとに商品説明文を提案
商品画像加工支援AI:商品画像の背景を加工し、異なるパターンの商品画像を提案
・R-Messe
問い合わせ回答作成支援AI:問い合わせ内容と店舗さまが記入した回答概要をもとに、回答文を作成
・RMSチャットボット
AIチャットで質問:該当の店舗運営Naviページの提案制度の向上、店舗運営の疑問点も質問可能
・R-Karte
店舗カルテ分析支援AI:店舗カルテトップのデータより売上傾向や特徴を解説
いずれの機能も取り入れることで業務の効率化につながるはずです。各機能の詳細は動画になることをおすすめします。
URL:https://daigaku.rms.rakuten.co.jp/rmsapp/watch/60191
※RMSへのログインが必要です。
上記以外に、商品レビューの要約機能や画像検索などAIの活用によりユーザーの利便性が向上し、流通が伸びているようです。
最強配送
営業日カレンダーのリニューアルを2024年7月に実施。問い合わせ・発送・受注それぞれの対応時間を詳細設定ができるようになっています。また、4月に問い合わせ対応可能な日時、回答期限、臨時休病日や備考についても自動で回答できる自動応答機能がリリースされるようになりました。
お届け可能日設定については一律14日間だった配送可能期間が「RSLお届け日時表示サービス」対象の商品に限り、7月から柔軟に設定できるようになっています。8月には出荷リードタイムの設定可能日が最大30日から90日に拡張され、数か月先のお届け希望日も指定可能になっています。
コンテンツページ
2024年7月に商品ページパーツがリリースされ、コンテンツページではアプリ/スマホ/PCに対応した自由編集ページが作成可能になっています。また、新規パーツが続々と提供されており、活用の幅は随時拡大しているようです。
下期の注力施策
・AIエンジンの進化(2024年9月)
生成速度の向上と自然な日本語の文章作成
・AIアシスタントへのフィードバック機能(2024年11月)
AIに関連する要望のフィードバックが可能になりAIの改善に役立てる
・R-Messe:問い合わせ回答添削AI(2024年10月)
お客さまに返信する前に、スペルや文法の誤りをチェック
・R-Messe:問い合わせ回答作成支援AIの品質向上(2024年Q4)
楽天が蓄積しているデータを学習し、回答精度を改善
・R-Storefront:商品説明文作成支援AIの機能追加(2024年11月)
新商品登録時のAI利用が可能に。景表法や薬機法などにアラートを表示
・R-Storefront:商品画像加工支援AIの機能追加(2024年11月)
白背景画像の作成や室内背景の生成バリエーションを追加
・AIのよる商品レビューの要約の対象商品拡大(2024年Q4)
スマホ・アプリからでも対応可能に
・レビュー返信作成支援AIの提供(2025年上期)
簡単な指示を選択肢、返信分の候補を生成
・コンテンツページの改善(2024年11月)
新規やリピーターに絞った画像表示が可能なターゲティング画像パーツを追加
セールや季節のテーマに合わせたコンテンツページがキュレートされる「探す」タブをアプリに露出
TDAなどの広告のLPとして入稿が可能に
・置き配:RSL店舗向け「RSLお届け日時表示サービス」(2024年12月)
RSL利用店舗さまを対象に日本郵便の置き場所が選択可能
・置き配:全店舗さま向けに3大キャリア対応(2025年上期)
日本郵便・ヤマト運輸・佐川急便で拡大予定
配送方法による置き配可否の制御
商品ジャンルによる置き配の制御
SKU単位での置き配NG商品の制御
・定期購入:商品ページUI・サーチ検索結果改善(2025年3月)
定期購入のお得さをアピールできるUIに変更
検索結果に定期購入の表示が加わる
・定期購入:申込履歴の改善(2025年3月)
ユーザーが柔軟にお届けサイクルを変更可能に
UIのスマホ対応化
・定期購入:商品登録機能の改善(2025年Q1)
申込・固定費が廃止され、全店舗さまで利用可能に
通常購入商品のページ内で定期購入の併売に切り替え
定期購入販売価格を入力するだけで簡単に登録可能
・定期購入:申込済み注文への最新価格反映(2025年Q1)
月ごとのお届け価格を変更可能に
・定期購入:店舗別・商品別ポイント変倍を初回のみに適用(2025年Q1)
初回お届け分でポイント10倍の際に2回目移行は1倍に
・店舗トップページ:PC画像レイアウト設定(2025年Q2)
画像を複数列配置できるPC用の画像パーツ設定を追加
・店舗トップページ:PCコンテンツ幅の拡大(2025年Q2)
PC版コンテンツの横幅を1280pxまで拡大
・R-Backoffice:絞り込み条件保存(2024年8月)
・R-Backoffice:伝票印刷機能にゆうパケットを追加(2024年10月)
・R-Karte:リアルタイム売上の改善(店舗別)(2024年Q4)
・R-Karte:リアルタイム売上の改善(商品別・SKU別)(2025年)
・R-Storefront:ポイント変倍 期間・倍率改善(2025年Q1)
・楽天市場サーチ:検索精度ガイドラインの公開(2024年9月)
9月末に「店舗運営Navi」にて検索精度に対する考え方を公開予定
検索エンジンの中にどのような要素が組み込まれているのか確認可能に
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