
JTBが発表した2025年の日本人旅行動向予測によれば、今回の調査は1泊以上の日本人旅行(ビジネスや帰省を含む)と、訪日外国人の旅行状況を分析したものです。この分析は、さまざまな経済指標、消費者行動調査、交通・観光関連データ、そしてJTBグループによるアンケート調査を基に実施されており、1981年以来継続されています。2025年に関する予測は以下の通りです。
●2025年の日本人旅行者の総数は3億1,910万人(前年対比102.9%)
●国内旅行者数は3億500万人(前年対比102.7%)、1人あたりの旅行支出は47,800円(同101.1%)、総旅行消費は14兆5,900億円(同103.8%)
●海外旅行者数は1,410万人(前年対比108.5%)、1人あたりの旅行費用は334,100円(同106.2%)、総旅行消費は4兆7,100億円(同115.2%)
●訪日外国人旅行者数は4,020万人(前年対比108.9%)
【日本人の国内旅行】
■雇用状況や賃金が改善され、生活水準も向上する見込みで、旅行需要を後押しする要因となります。
■物価の上昇が続く中、1人あたりの旅行支出は高止まりが続くでしょう。
【日本人の海外旅行】
■これまでの急激な円安により、海外旅行の一時的な減少が見られましたが、為替の安定が期待されることで、海外旅行の需要が回復する見込みです。
■近距離の東アジアだけでなく、ヨーロッパやオセアニアといった中・長距離旅行も増加傾向にあり、前年よりも1人あたりの旅行費用の増加が予想されます。
【訪日外国人旅行者】
■2025年は2024年の最高記録を上回る見込みです。
■新型コロナウイルス関連の需要が落ち着くことで、前年比での成長率は緩やかになるとされています。
旅行者の現状
国内旅行においては、2024年に前年の観光支援策の終了や物価上昇の影響を受けて宿泊者数が伸び悩むことが予想されています。2024年の宿泊者数は、1月から11月までの累計で4億4,858万人泊となり、2023年の同時期(4億5,975万人泊)と比較して97.6%、2019年同期(4億4,232万人泊)と比較して101.4%と予測されています。(図表2)
海外旅行においては、物価上昇や円安、さらには世界的な政情不安の影響により、回復が前年比よりも遅れています。2024年の日本人出国者数は1,182万人を見込んでおり、2023年の同時期(867万6千人)と比べて136.2%、2019年の同期間(1,836万8千人)と比較すると64.3%にとどまっています。(図表2)
訪日旅行に関しては、円安や物価安の影響により回復のペースが加速しています。2024年の訪日外国人数は3,338万人に達すると予想され、2023年同期(2,233万2千人)と比較して149.5%、2019年の同時期(2,935万6千人)と比較して113.7%の上昇を見せています(図表2)。国別で見ると、2024年の訪日客の中で、韓国が795万人(前年比128.7%、2019年比149.0%)、中国が637万7千人(前年比301.8%、2019年比71.8%)、台湾が555万3千人(前年比146.0%、2019年比122.3%)と続いています(図表3)。

旅行に関するアンケート調査によると、2024年1月から12月の期間に1泊以上旅行を行う意向のある人については、国内旅行において「1回」が22.9%、「2回」が16.5%、「3回」が8.9%、「4回以上」が12.3%であり、実に6割以上の人が国内旅行を行うことが示されています。性別・年齢別で見ると、国内旅行を行った人の割合は「女性29歳以下」が最も高く(80.7%)、次いで「女性30代(72.1%)」、「男性29歳以下(69.4%)」、「男性30代(67.2%)」が続いています。特に若い世代、特に女性の旅行実績が目立つ結果となっています(図表4)。居住地域別では「中国・四国地方」が63.9%で最も高く、次いで「近畿地方(62.2%)」、「東北地方(61.8%)」の順位となっています(図表6)。
一方、海外旅行を実施する人の割合は8.7%とやや少な目でした。性別・年齢別に見ると、「男性29歳以下」の割合が最も高く(17.1%)、続いて「女性29歳以下(14.6%)」、「男性30代(11.2%)」、「男性40代(8.0%)」と続きました(図表5)。国内旅行同様、若年層の実施率が高い傾向が見られましたが、海外の場合は女性よりも男性の割合が若干高くなっています。居住地域別では、「関東地方」が最も高く(11.9%)、「九州地方(沖縄含む)(9.1%)」、「近畿地方(8.6%)」が続いています(図表6)。
今回の調査結果を受け、旅行目的地選定の参考になる要素を聞いたところ、「自然が楽しめる場所」が31.4%と最も多くを占めました。観光施設(テーマパークなど)も顕著な人気を博していました。旅行計画の中で考えている行き先に関しては、「中部(33.8%)」が最も多く、次いで九州(31.7%)、関東(31.3%)と続き、地域による旅行傾向にも違いがあることが確認されました(図表12)。

国内旅行動向 ※訪日外国人旅行者は除外
2025年の国内旅行人数は3億500万人(前年対比102.7%、2019年対比104.7%)
一人あたりの旅行支出は47,800円(前年対比101.1%、2019年対比125.5%)
国内総旅行消費額は14兆5,900億円(前年対比103.8%、2019年対比131.2%)
2025年の国内旅行者数は3億500万人(前年比102.7%、2019年比104.7%)と推定されています。一人あたりの旅行支出は、物価上昇の余波を受けて47,800円(前年106.1%、2019年125.5%)となる見込みです。また、国内総旅行消費額は14兆5,900億円(前年103.8%、2019年131.2%)になると考えられます。
物価は上昇傾向にあるものの、雇用状況や給与に関しては改善の兆しがあり、生活水準も徐々に良化しており、旅行需要を後押しする要因となるでしょう。

海外旅行の動向
2025年の海外旅行者数は1,410万人(前年対比108.5%、2019年対比70.3%)
一人あたりの旅行支出は334,100円(前年対比106.2%、2019年対比140.9%)
海外総旅行消費額は4兆7,100億円(前年対比115.2%、2019年対比98.7%)
2025年の海外旅行者数は1,410万人(前年108.5%、2019年70.3%)と見込まれています。一人あたりの旅行費用は334,100円(前年106.2%、2019年140.9%)と予想されています。また、海外旅行の総消費額は4兆7,100億円(前年115.2%、2019年98.7%)になると考えられています。
これまでの急激な円安の影響で海外旅行を控える傾向が見られましたが、今後為替の安定が期待されることから、海外旅行の需要が回復する見込みです。近距離の東アジア旅行だけでなく、オセアニアやヨーロッパといった中・長距離旅行の旅行者数も増加傾向にあります。そのため、1人あたりの旅行費用も前年を上回ると予測されます。

旅行を取り巻く経済環境と暮らし向き
日本経済は一時的に日経平均株価が4万円を超える場面もありましたが、9月以降は3万円台後半での推移を見せており、景気の状況は不安定です。国内外の物価上昇、欧米における高金利、そして世界情勢の不安定さによって、経済の先行きは予測が困難な状況です。国際通貨基金(IMF)の2024年10月に発表された「世界経済見通し」では、2024年の成長率は0.3%、2025年には1.1%の回復が見込まれています。
調査結果によると、旅行の目的地選定の参考になる要素として、「自然が楽しめる場所」が31.4%と最も多く、観光施設(テーマパークなど)も人気を博しています。旅行計画において考慮される行き先は、「中部(33.8%)」が最も多く、次いで九州(31.7%)、関東(31.3%)と続き、地域による旅行傾向の違いが確認されました(図表12)。
株式会社JTB プレスリリース