タナベコンサルティングのブランディング調査2024、企業の多くが戦略未策定も意識向上

経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティングは、異なる業界で活躍する企業の経営者や役員、経営幹部、経営企画部門の責任者、ブランディング及びマーケティングの責任者や担当者を対象に実施した「2024年度 ブランディングに関するアンケート」の結果を発表しました。

1. 調査結果サマリー

(1) 成長市場において、ブランド投資を「増加」と回答した企業は54.7%に達しており、企業が成長市場に積極的に資金を投じていることが示唆されます。対照的に、停滞市場では「横ばい」と回答した企業が66.7%に達しており、多くの企業が現状維持の方針を採っています。

(2) ブランディング戦略を策定している企業は46.7%で、前年より約7ポイント増加しています。しかし、依然として53.3%の企業は戦略未策定のままです。このことから、企業におけるブランドの重要性に対する意識は高まっていますが、半数以上の企業でブランディング活動が進展していない現状が浮き彫りとなっています。

(3) 広報活動において、「自社サイトでの情報発信」が59.8%と最も多く、この手段が企業の広報活動で重視されていることが明らかです。一方で、「海外向けのプレス・ニュースリリースの作成・配信」はわずか4.7%であり、グローバル展開に課題を抱えていることが示されています。

2. 各データ詳細

(1) 成長市場のブランド投資方針は「増加」が半数以上、横ばいが約7割。

自身の市場を成長市場と考える企業において、ブランド投資方針として「増加」と回答した企業は54.7%に達し、企業が成長市場に対して積極的な投資を行っていることが示されています。逆に「横ばい」と漏らした企業も35.8%おり、安定した投資戦略を維持したい意向が感じられます。また、停滞市場を考慮する企業の66.7%が「横ばい」と選択し、多くの企業が現状維持を選んでいます。

(2) ブランディング戦略の策定は半数以上の企業が未実施。

ブランディング戦略を策定した企業の割合は46.7%で、昨年より約7ポイントの改善が見られましたが、それでも53.3%の企業は未策定です。この結果から、ブランドの重要性への認識は増していますが、過半数の企業では戦略の策定が不十分であることがわかります。

(3) ブランディング戦略を策定している企業の約60%は「戦略が順調に進行中」と回答。

戦略を策定している企業の中で、57.0%が戦略の進行状況は順調だと報告し、39.2%が遅延を認めています。さらに3.8%の企業は進行が完全に停止しているとしています。これは、戦略の策定があっても、計画通りに進めるには解決すべき課題が残されていることを示しています。したがって、策定だけでなく、実施や進捗管理の強化が不可欠です。

(4) 売上の増加に寄与する施策として、約半数が「インターネット広告」と「展示会・イベント出展」と選択。

アウターブランディング施策において、売上が増加した施策に関して「インターネット広告」は48.8%、また「展示会・イベント出展」は50.4%との結果が示されました。市場シェアの拡大に対しても、両施策は57.4%と高い評価を得ています。これらの施策は市場との接点を増やす効果があり、即効性があると評価されています。

ブランド価値の向上に寄与する施策としては、広報・PR活動が61.3%で最も多く、特に顧客満足度向上においては広報・PR活動が50.0%、コーポレートサイト運営が47.8%、インターネット広告が46.7%を記録し、顧客との信頼関係を強化する重要な役割を果たしています。

(5) インナーブランディング施策は「企業文化の強化」に寄与した企業のうち、6割以上が「PMVVの策定」を実施。

インナーブランディングに関して、実施した施策の影響について尋ねたところ、パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー(PMVV)の策定が61.8%に達し、企業文化の強化に寄与していることが明らかになりました。加えて、社員向けイベントや表彰制度は、離職率の低下(47.2%)及び生産性の向上(45.6%)に貢献しています。また、社内報やイントラネットを用いた情報発信も、離職率低下(46.5%)および生産性向上(42.9%)に安定した効果を示し、定期的なコミュニケーションの重要性が裏付けされています。

これらの結果から、インナーブランディングは単なる社内のコミュニケーション戦略に留まらず、経営戦略の中心的要素であることが示唆されています。

(6) 約20%がブランディング活動の評価指標を持たないと回答。

ブランディング活動の評価方法について調査した結果、定性的および定量的指標のバランスが重要であると認識されていることが確認されました。具体的には、顧客や社員からのフィードバック(43.2%)や認知度調査、社員エンゲージメント調査(42.3%)が上位を占めており、顧客や社員の声の重要性が顕著でした。また、売上の増加(39.3%)も評価指標として挙げられ、ブランディング活動の成果が経済的観点からも測定されていることがわかります。一方で、ウェブサイトのトラフィック(20.4%)やSNSのエンゲージメント(14.5%)は比較的低く、デジタルマーケティングの評価指標として限られた影響力が示されています。

特に注目すべきは、評価指標を持たない企業が20.7%にのぼり、ブランディング活動の効果測定に課題を抱える企業が数多く存在することが示されました。

(7) 広報活動は「自社サイトでの情報発信」が約6割を占め、海外向けは1割以下と限定的。

広報活動の調査結果、「自社サイトでの情報発信」が59.8%という回答が得られ,企業において広報活動の主要な手段であることが明らかになりました。「SNSでの情報発信」は39.6%に達し、デジタルコミュニケーション戦略の重要性が示されています。

「自社サイトでのプレス・ニュースリリースの作成・配信」は48.8%の企業で行われており、外部ツールを介したプレス・ニュースリリースの作成・配信は33.1%に及びます。その中で「海外に向けたプレス・ニュースリリースの作成・配信」はわずか4.7%で、企業の広報活動が国内市場に偏っている状況が浮き彫りとなっています。

3. 専門コンサルタントによる総括・提言

(1) 戦略から実行、評価まで一貫したブランディングの重要性

ブランド力の強化が求められる中、50%以上の企業がブランディング戦略を欠いている現状が明らかになりました。また、戦略を策定している企業でも約40%は進行の遅れが見受けられ、評価指標を持たない企業も約20%存在します。これにより、多くの企業がブランディングに関する課題を抱えており、競争力向上には、現状の分析に基づいた戦略立案、社内外への浸透施策の実施、定性・定量による評価体制の構築が求められます。

(2) ブランドによるエンゲージメント向上と組織強化

本調査から、従業員が企業のビジョンや価値観を共にし、感じる施策を継続して行うことが組織全体のパフォーマンス向上に寄与することが示されました。社員参画型のワークショップや定期的な対話セッション、表彰制度の見直しを通じて組織の一体感を高め、社員のモチベーション向上に寄与する施策が重要です。これにより、離職率の売上健康や生産性向上が期待され、企業の持続的成長と安定した組織基盤の構築に寄与します。

(3) 海外PRを通じてグローバル市場をビジネスチャンスにする

国内において自社サイトやSNSを活用する企業が多い一方で、海外向けプレス・ニュースリリースの利用は4.7%に留まり、企業の広報活動が国内市場に偏っていることが明らかになりました。持続的成長を求めるうえで、海外市場からの需要喚起のための広報活動は不可欠です。国際的な視点でのブランディング戦略と共に、ローカルな文化やトレンドに適したプレスリリースの作成と配信が重要であると考えられます。これらの取り組みが新たなビジネス機会の創出や、企業の成長を期待させます。

4. 調査概要

【調査対象】 全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者、ブランディング及びマーケティング責任者や担当者など

【調査期間】 2024年10月15日~2024年11月1日

【調査エリア】 全国

【有効回答数】 計338件

※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならないことがあります。

出典元: 株式会社タナベコンサルティング プレスリリース

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