
前回は、事業計画の中でスケジュールを精緻に組むための知識として、OEMの流れをご紹介しました。
今回は、どんな商品を作るのか、その前提として考えておきたい「機能的ベネフィット」について解説します。
松崎 淳
Double Clutch 代表
2014年に医薬部外品、化粧品OEMを展開する株式会社天真堂にジョイン。スタートアップや異業種から参入する企業に対し、商品企画、事業立ち上げを包括的にサポート。2019年10月に代表取締役社長に就任した。その後、化粧品D2Cメーカーの取締役を歴任し、現在は事業戦略、商品企画を支援するコンサルタントとして活動している。
機能的ベネフィットと陥りがちな失敗例
機能的ベネフィットとは、商品が持つ機能によって、顧客に提供する便益を指します。
ここを検討する際の大前提として、化粧品には薬機法という法律があり、そこを逸脱した機能を標榜することはできないということです。厚生労働省から56の効能効果が公開されていますので、下記の参考を必ずご確認ください。(例えば、美白や育毛は、医薬部外品の承認を得ていないとパッケージや広告で訴求することはできません。)
基本中の基本ですが、ここを押さえておかないと「製品を作ったものの、広告考査が通らないリスク」や、「薬機法違反のリスク」を抱えたままビジネスを始めることになってしまいます。
機能的ベネフィットから発想を展開する
決められた56の効能効果の中で、いかに発想を展開し、差別化ポイントを見出すかが重要です。そこで企画段階でトライしたいのが「5W1H」との掛け合わせです。
・保湿するためのクリーム
このベーシックな機能的ベネフィットに、「When(いつ)」、「Where(どこで)」、「Who(誰が)」、「What(何を)」、「Why(なぜ)」、「How(どのように)」を掛け合わせるだけで、これまでと違った切り口が見えてくるでしょう。
例えば、
Who:朝起きた時の乾燥が気になる方が
Why:朝から日中まで潤いを逃がさない肌のために
When:眠りの10分前に
Where:(寝る直前なので)ベッドの上で
What:全顔×ピンポイント用の2剤クリームを
How:全顔×乾燥が気になる箇所へ塗布をする
といった具合に企画を検討することが可能です。
※上記は「ニーズ」「再現性」を無視して、思いつくまま記載した案です。
より差別化するために大切なのは、「今、市場にあるもので満たされていないニーズ」を探し、「プロダクトとして再現できるか」「広告として再現できるか(法律上、訴求して良いか)」を、何度も繰り返し反芻して検討することです。
最も大事なのはWho
この中で最も重要なのが、起点となる「Who」です。上では簡易的に「起床時の乾燥が気になる方」と書きましたが、対象を詳細に設定することで、提供すべきベネフィットは異なります。
- 起床時に乾燥している(どのくらい?)
- 乾燥により感じている悩みはどんなものか
- その原因はどこにあるか(肌質、年齢、生活習慣)
この3つを考えるだけでも、「起床時の乾燥」が多岐にわたることがおわかりいただけるかと思います。
別の記事で後述しますが、この「ターゲット設定」がきちんとできていないと、「浅い」、あるいは「そもそも存在しない」といったことが起こります。
テクニカルな部分ばかりに目を向けることなく、「誰の」「何の悩みを解決するのか」という視点を大切にしましょう。
(参考)検討するのは中身だけではない
使用するパッケージについても検討しましょう。例えば、見た目だけで容器を選ぶのではなく、「高齢者が髪の毛に使用するので、軽量化されているもの」や、「お風呂で片手が塞がっていてもプッシュできるポンプボトル」などがそれに当たります。
いかがだったでしょうか。
今回は、決められた56の効能効果から、いかにして発想を展開するか、またその中でWho(ターゲット設定)の重要性について解説しました。
これから化粧品ビジネスを始めたい、という企業、ご担当者様にとって、少しでもお役に立てば幸いです。
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