
最近の調査により、ビールを好む若者の割合が減少していることが明らかになりました。調査によるとその理由には「多様性の時代で『とりあえず生』の文化が減少」、「健康志向の高まり」、「ビールの味に魅力を感じない」という意見が多様に挙げられています。
このたび、レシート買取アプリ「ONE」が国内で集めた10億枚以上の購買データを基に、若者のアルコール飲料の購買傾向に関する新たな調査が行われました。
本調査では、ビールを消費しない若者の購買傾向と、ビールを好む若者の共通点に焦点を当てています。
調査概要
集計期間:①2024年1月1日〜2024年9月30日、②2023年10月1日〜2024年9月30日
調査対象:①指定された性別・年齢の全ユーザー、②上記期間内に毎月20枚以上のレシートを投稿したONEのユーザー
調査実施会社:WED株式会社
調査方法:ONEのユーザーが投稿したレシート画像を基に解析
若者の定義:20歳〜34歳
各グループ定義:F1 女性20〜34歳、F2 女性35〜49歳、F3 女性50歳以上、M1 男性20〜34歳、M2 男性35〜49歳、M3 男性50歳以上

2024年のアルコール飲料の購入傾向を年代別に調査
2024年9月30日までのアルコール飲料における年間の購買トレンドを分析します。本記事では、レシート買取アプリ「ONE」で収集した1,000枚のレシートから、該当するカテゴリの出現回数(出現率)を示します。
アルコール飲料の中で最も購入頻度が高いのは「ビール類*1」で、次に「チューハイ・サワー*2」が人気です。これらは「ウイスキー・ハイボール」や「焼酎」、「ワイン」と比較して非常に高い出現率を示しており、ビール類とチューハイ・サワーはアルコール飲料の定番とされています。
特にビール類は、2024年7月から9月の期間中に出現率が20‰を超え、夏季に特に好まれる傾向が分かりました。
※1.ビール類には「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(発泡酒②)」を含む。
※2.ここでのチューハイ・サワーは缶入りのRTD(ハイボールを除く)を指す。

次に、アルコール飲料全体の購買傾向を年代と性別の6つの属性でグループ化した結果、最も出現率が高かったのはM3で、次にM2、そしてF3の順となりました。全体的に若者は性別問わず中高年層よりもアルコール飲料を飲む機会が少ないという傾向が確認されます。

アルコール飲料全体における若者(M1/F1)のデモグラフィックを、購入頻度に基づいて「ヘビー」「ミドル」「ライト」「非購買」の4つのセグメントに分けて観察します。
若者の年齢が上がるごとに、ヘビー層の割合が増加することが確認されました。地域別にも違いがあり、ヘビー層が最も少ない「中部(28.3%)」と最も多い「東北(39.7%)」との比較では、10%以上の差が見受けられます。
さらに、未婚と既婚の若者を比較した結果、ヘビー層は「既婚者(34.9%)」が「未婚者(30.1%)」を上回っており、ライト層は「未婚者(32.8%)」が「既婚者(29.3%)」より多いという結果が出ました。これを受けて、既婚者の方がビール消費が多いことが示唆されます。
※グループ定義:ヘビー - 昨年に21回以上購入、ミドル - 昨年に7回〜20回購入、ライト - 昨年に1〜6回購入、非購買 - 昨年に0回

アルコールを選ばない若者の購買動向は健康にシフト?
この調査によると、若者が中高年層に比べてアルコール飲料を摂取する頻度が少ないことが分かりました。では、アルコールを飲まない若者はどのような商品を選んでいるのでしょうか。
アルコール購入者と非購入者を比較してリフト値分析を行ったところ、特に「健康食品(1.50)」、「ボディケア化粧品(1.44)」、「ヘアメイク(1.42)」、「基礎化粧品(1.40)」など、女性に人気のカテゴリでリフト値が高いことが分かりました。これにより、アルコール飲料のヘビー層が少ないことも影響していると思われます。

また、「デザート・ヨーグルト(1.22)」、「菓子(1.13)」、「パン・シリアル類(1.13)」、「アイスクリーム類(1.09)」もリフト値が高く、アルコールを飲まない若者がデザートやお菓子を好んで楽しんでいることが伺えます。

店舗別で比較すると、「道路料金所(2.03)」、「空港・航空業(1.67)」、「理容・美容関連(1.38)」などのリフト値が高く、健康や美容、趣味への投資傾向が顕著です。
これにより、アルコールを消費しない若者は、飲酒する若者に比べて健康や美容、趣味に対する関心が高いことが示唆されています。

若者のビール離れは本当!ビールの購入頻度は中高年の2分の1
ビール類の出現率を年代と性別の6つのグループ別に分析した結果、中高年男性(M3、M2)は多く見られる一方で、若者(F1/M1)の出現率は最も低く、F1とM3を比較すると約2倍の差が開いていることが確認されました。
さらに、若者層においてもビール類とチューハイ・サワーの出現率に大きな差は見られないものの、中高年層では年中を通じてチューハイ・サワーに比べビール類の方が出現率が高いことが分かりました。
年齢を重ねるごとにチューハイ・サワーよりもビールを好む傾向が顕著であり、「若者のビール離れ」が進行していることが示唆されます。アルコール選択時に「絶対にビールが飲みたい」という意識が薄れている可能性も考えられます。

中高年よりも、「本物のビール」にこだわる若者
ビール離れが指摘される中、ビールを選ぶ若者(M1/F1)の購買傾向を分析します。まず、ビール類の購入頻度を基に「ヘビー」「ミドル」「ライト」「非購買」「離脱」の5つのグループに分類して検証しました。
※グループ定義:ヘビー - ビール類を過去1年で10回以上、直近3ヶ月内で購入、ミドル - ビール類を過去1年で3〜9回購入、ライト - ビール類を過去1年で1〜2回購入、非購買 - ビール類を過去1年で0回購入。
結果的に、ビール類の購入層のデモグラフィックは、アルコール飲料全体の傾向と大きな違いが見られませんでしたが、ビールについてはヘビー層と「世帯年収」にも関連がありました。
アルコール飲料全体のヘビー層は最低「a.〜300万円(30.1%)」、最高「f.1,501〜2,000万円(37.2%)」ですが、ビール類に関してはヘビー層が最も少ない「a.〜300万円(25.6%)」、最も多い「f.1,001〜1,500万円(37.0%)」となり、10%以上の差が見られました。
ビールは若者にとって比較的高価な嗜好品である可能性が高いです。

ビール類消費者の他のアルコール飲料について
次に、ビールを選ぶ若者がどのような他のアルコール飲料を注目しているかを調査しました。若者のビール購入者を「ヘビー」「ミドル」「ライト」の3つの分類に分けて検証した結果が得られています。
ビール類のヘビー層が最も多く購入する他のアルコールは「チューハイ・サワー」であり、ミドル層やライト層も同様の結果が得られました。ライト層では「ウイスキー・ハイボール」「焼酎」「ワイン」の購入出現率は低いが、「チューハイ・サワー」についてはミドル層並みの購入が観測されています。
この結果から、ビールをあまり消費しない若者は、チューハイ・サワーを好む傾向にあることが浮き彫りとなります。また、ビールを好む若者は、他のアルコール飲料(チューハイ・サワーを含む)を高頻度で選んでいることも分かりました。


ビールをより細分化した際(ビール、発泡酒、新ジャンル(発泡酒②))には、若者においてビールと新ジャンルの購入トレンドに4倍以上の差が見られました。対して、F3/M3層の中高年では顕著な差は見られませんでした。
この分析結果から、ビールを好む若者の中で、本物のビールに強いこだわりがあることが明らかになりました。

N1分析による若者のビール消費者像
統計データから若者の購買傾向を把握することができる一方で、個々の行動や思考については難解な面があります。そこで、レシート買取アプリ「ONE」の利用者から、実際にビールを購入している若者Aさんに注目し、N1分析を実施しました。

Aさんの平日と休日の購買行動を分析したところ、午前中に行動することが多い朝型の生活様式がうかがえました。さらには、休日には外食が多く活発に活動している様子も確認できました。
朝 | 昼 | 夕方 | |
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平日 | 10時台に仕事前に食料品を購入 | 昼前にハンバーガーや弁当等で食事を済ませることが多い | 昼間に買い物が多く、夕方の買い物は不定期 |
休日 | 複数のスーパーやホームセンターを利用 | 時折外食や遠出を楽しむ | 外出先での食事が多い |
Aさんの年間購買行動を分析したところ、季節に応じた変動が見られました。また特定のアルコール飲料にこだわらず、年末年始には様々な商品を試し買いしている姿が確認されました。
購買傾向 | |
---|---|
10月〜12月 | 年末年始のイベントで、ビールやワイン、ウイスキーを多く購入。特にビールは主要メーカーの製品に多く見られます。 |
1月〜3月 | ビール中心に購入し、クラフトビールにも関心を示す多様性が見られます。 |
4月〜6月 | アルコール飲料の購入量が著しく減少 |
7月〜9月 | 低アルコール飲料のニーズが増加 |
Aさんの購買条件について以下の要点が考えられます。
特徴 | 詳細 | ライフスタイルの仮説 |
---|---|---|
手軽さを重視 | 毎日の買い物を行い、まとめて購入することは少ない | 時間の確保が難しく、手軽に入手できる商品を好む傾向 |
自炊志向 | 生鮮食品を多く購入し、コンビニエンスストアの利用は少ない | 自炊を主な生活スタイルとしている |
ライフイベント重視 | 特定イベントに合わせた購入行動が顕著 | 家族や友人との関係を大切に考えている |
アクティブなライフスタイル | 外出や旅行が盛ん | 旅行やレジャーを楽しむための活動に積極的 |
趣味を大切にしつつ、倹約志向 | 複数のスーパーを利用している | 自炊や日々の買い物に工夫を施すことで節約を図り、趣味には投資している |
若者のビール離れを解消するためには?
調査結果から、若者のビール離れが実際であること、並びにアルコール飲料全体の消費が中高年に比べ少ないことが明らかになりました。
また、低所得者の若者はヘビー層になりにくく、ビールを好む若者は中高年に比較して本物のビールを選ぶ傾向が強いことも確認されました。
ビールの製造・販売者は、若者にとって魅力的なビールを提供し、趣味と関連付けたビール体験を創出することが迅速に求められるかもしれません。