ECにおけるAIを活用した実務に役立つ手法、プロンプト、活用手順

みなさんこんにちは。AIトレーニングとマネジメントのエキスパート、MMOL 代表の河野です。前回に引き続き、今回もAIを活用した実務に役立つ手法、プロンプト、活用手順についてお伝えしていきたいと思います。

世の中ではAIに関する話題が尽きることがありませんが、「実際にビジネスで役立つのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。今回は実際の業務でAIをどのように利用すればよいのか、その方法を探ります。

さて、最初に「実務」で使えるAIとは何なのかについて説明していきたいと思います。

河野さんのトークイベントレポート

2024年5月17日(金)に、コマースピック主催のEC・D2C交流会を開催しました。当日はShopify 日本初代エバンジェリストの河野貴伸さんをお招きし、これまでさまざまなEC・D2C企業を支援された中で、感じたことや思ったことをぶっちゃけていただきました。その内容の一部をまとめています。

AIを活用するにはまずは「目的」から

最初にAIをどのように活用したいかを決めます。

  1. ビジネス全般やEC全般、特定のサービス、技術などについていろいろ教えてほしい。
  2. 自社の膨大な情報(ノウハウ、ルール、商品・サービスについて)を受け答えしてほしい。
  3. 作業(画像制作、プログラミング、データ処理、商品情報のライティング)を代行してほしい。

それぞれの実現方法を見ていきましょう。

1については、ChatGPTやGemini、Claudeをそのまま活用できます。特にWeb上に情報が多く存在しているサービスやビジネスノウハウについてはほぼ網羅されているといっても過言ではありません。例えばShopify のようにパブリックな情報が膨大にある場合、ほとんどの質問に適切に答えてくれます。

もちろん、AIにはハルシネーションと呼ばれる「嘘」を言ってしまう現象があります。また、細かい部分が本当に正しいのか?という疑問が生まれることもあります。そういった場合は同じ質問を別のモデルのAIに投げかけて答えを比較してみましょう。例えばChatGPTで行った質問をGeminiでも行ってみるなどです。

例:Shopifyのレビューアプリについておすすめを聞いてみる。

ChatGPT の場合

ChatGPTの場合

Geminiの場合

*Gemini の場合は表をGoogle スプレッドシート形式で出してくれました。

また、出てきた回答が明らかに間違っているようだなという場合は「この答えは正しいですか?」と別のモデルで確認してみましょう。

このように複数のモデルを組み合わせることでより精度の高い回答が得られます。パブリックになっている情報の回答はこの手法で大体の結果は得られます。ぜひ試してください。

2の社内の情報については、あらかじめデータをAIに「覚えさせる」必要があります。これを最も簡単に実現するには、ChatGPT PlusのGPT Builderを使います。GPT Builderは自社の独自のデータをCSVやPDFで読み込ませて回答させることが可能です。チュートリアルがあり、非常にわかりやすく簡単に進めることが可能ですので、最初のお試しに最適です。

これらはより複雑な手法を活用すれば、Shopifyの日々の売り上げデータを読み込ませて分析させることもできます。自社の情報を受け答えするAIの活用で必要なことは、どれだけ価値あるデータを入れられるかです。企業ならではのデータを投入し、適切に回答させることができれば、関連業務の生産性は大幅に向上します。また優秀な社員のスキルや強みを分解し、そこで活用されている知識やデータをAIに積極的に導入することで、新入社員や若手社員をサポートし、業務レベル向上や成功体験を醸成する支援AIの構築も可能です。

3の作業代行に関しては、すでにリリースされているさまざまな特化AIを活用するのが良いでしょう。例えば

  • Adobe PhotoshopのAI画像生成・生成塗りつぶし
  • CanvaのオンラインAI画像生成機能
  • GitHub Copilot
  • Shopify MagicとSidekick
  • BotikcaWeShopAI(モデル画像生成AI)
  • チャネルトーク(All-in-one AIメッセンジャー)

などです。これらは特定領域に特化したAIで、人間が行う作業を代行します。人間がある程度介在し、作業を「依頼」する必要がありますが、かなり優秀で十分に人間の代わりを務めてくれます。ぜひ活用してみましょう。

このように一言でAIを活用するといってもさまざまな用途があり、最適なソリューションを選択、配置する必要があります。とりあえずMicrosoft Copilotを契約してみんなで使いましょうでは本当の意味での有効活用には及びません。本当の意味でAIを活用するには「AIの役割と人の関係性」を設計することと「意味のあるデータ投入」が重要になります。すなわち「AIのマネジメント」が必要になります。

適切な指示=プロンプトチューニング

どんなに優秀な社員でも適切なアサインと業務指示を行わなければ全て無駄になるように、AIも適切なアサインと意味のあるデータ及び適切な指示(プロンプト)が必要不可欠です。

適切な指示(プロンプト)のテクニック(プロンプトチューニング)もいくつかご紹介しましょう。AIによる回答の精度を高めるためには、プロンプトチューニングが有効です。この技術は、AIに質問する際の言い回しやコンテキストを調整し、より正確な答えを引き出すことを目指します。

プロンプティング手法
思考の連鎖(CoT:Chain-of-Thought): AIに複数ステップの問題解決プロセスを考慮させることで、より理解しやすい回答を促します。
Few-shot Prompting: 少数の例を示すことで、AIに特定のタスクの解決方法を学習させます。

参考URL
各種Prompt Engineeringの日本語実例集(Zero-CoT、mock、ReAct、ToT、Metacog、Step Back、IEPなど)
https://qiita.com/YutaroOgawa2/items/aca32f8fd7d551596cf8

今後AIが発展し、それぞれのAI同士で連携できるようになると、さらにできることが広がっていきます。

ECのシステムがAPIで可能性を広げたように、AI同士が繋がるようになれば、ほとんどの業務は人が介在せずに実現できるようになるでしょう。

次回はAI同士を組み合わせ、ECに関わる業務を自動化するテクニックと実例についてご紹介させていただきます。

河野さんのトークイベントレポート

2024年5月17日(金)に、コマースピック主催のEC・D2C交流会を開催しました。当日はShopify 日本初代エバンジェリストの河野貴伸さんをお招きし、これまでさまざまなEC・D2C企業を支援された中で、感じたことや思ったことをぶっちゃけていただきました。その内容の一部をまとめています。

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