ファンづくり〜Makuakeでコアなファンと出会う〜:新商品販売を加速させるMakuake活用【第3回】

本連載では、Makuake=クラウドファンディング=資金調達ではない、新商品やサービスを戦略的に市場に投入するという視点で、4回に渡り効果的なMakuake活用について深掘りしていきます。それぞれテストマーケティング、商品企画、ファンづくり、販促ツールという4つのテーマを通じて、具体的な戦略と、実際の成功事例を紹介します。3回目の今回は「Makuakeを通じたコアなファンづくり」をテーマにお話させていただきます。

0次流通のビジネスポテンシャル

Makuakeは自身の市場を、1次流通市場の前に新商品・サービスのお披露目を消費者に直接行う「0次流通市場」と規定しています。その中で事業者にとって、Makuakeを利用したテストマーケティングは、新商品やサービスを一般販売市場に投入する前に、消費者の反応を探ることができる効果的なマーケティング手法です。連載の第3回となる本記事では、Makuakeで行われている、売り手と買い手を超えたコアファンとの出会い、そして関係構築について解説させていただきます。

0~2次流通市場への流通フェーズ

新商品・サービスにおけるコアファン(初期顧客)の重要性

みなさんは「イノベーター理論」をご存じでしょうか。一度は耳にしたことがあるのではないかと思うこの理論は、1962年にアメリカ・スタンフォード大学の社会学者 エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)によって提唱された「新たな製品(商品・サービス)などの市場における普及率を示すマーケティング理論」のことです。

イノベーター理論では、新たな製品の普及の過程を、順番に5つのタイプ「イノベーター(革新者)・アーリーアダプター(初期採用者)・アーリーマジョリティ(前期追随者)・レイトマジョリティ(後期追随者)・ラガード(遅滞者)」に分類しており、これに基づきターゲット選定やマーケティング戦略、市場のライフサイクルなどに関する検討を行うことが一般的に望ましいと考えられています。Makuakeは「アタラシイものや体験の応援購入サービス」であるため、なかでもイノベーターやアーリーアダプターにあたる生活者が多く訪れていることが特徴です。

イノベーターやアーリーアダプターは、ただ商品・サービスを購入するだけでなく、発見したことを他者に伝えたり、積極的に口コミなどの発信を行ってくれたりします。そういった特徴から、新商品・サービスの普及には、イノベーターやアーリーアダプターへのコミュニケーションが重要だと考えられています。

第1回でも記載しましたが、Makuake上の購入者(以下、サポーター)がイノベーターやアーリーアダプターが多いということは、「新しいもの、こだわりが詰まったものが欲しい」「商品スペックだけでなく、開発のストーリーに共感できるものを購入したい」というインサイトを持つサポーターが多くいるということを示しています。

つまりMakuakeは、新商品や新サービスを持つ挑戦心のある事業者と非常に相性が良いプラットフォームなのです。

Makuakeを活用したコアファンの発見と交流

ここからは、月間650件以上の新商品・サービスがデビューするプラットフォーム「Makuake」で、みなさんの商品・サービスにどのようにコアファンが生まれているか解説します。

① 応援コメントによるコアファンの発見

① 応援コメントによるコアファンの発見

Makuakeは応援購入を行なった後に、サポーターが実行者への応援コメントを投稿することが可能です。応援コメント欄には、実行者自身への応援メッセージはもちろん、どういった機能や性能・実行者の想いに惹かれて応援購入することを決めたのかなど、多種多様なコメントが投稿されます。

購入直後にコメントしていることもあり、応援コメント欄を見ることで熱量の高いコアファンの発見に繋がります。

② サポーターとのコミュニケーションによるコアファンとの交流

Makuakeはサービスの性質上、応援購入いただいてから商品・サービスをお届けするまでに数か月の時間が空きます。それまでにMakuake上で投稿できる活動レポートや個別メッセージを活用しながら、応援購入してくださったサポーターとの交流を図ることが重要です。

実行者からの投稿に積極的に反応してくれるサポーターはコアファンである可能性が高いため、丁寧なコミュニケーションを取ることで、単なる事業者と購入者という関係を超えた交流が生まれることにも繋がります。

Makuakeでファンづくりを実践している実行者2選

ここまで、新商品・サービスにおけるファンの重要性とMakuakeでのプロセスについて解説してきました。本章では具体的なMakuakeでの事例をご紹介します。

① 内田縫製【UCHIDA HOUSEI】

有限会社内田縫製は、1960年代から続く、岡山県津山市にあるジーンズ縫製工場です。従業員数は36名ほどの会社ですが、確かな技術力でデニムを中心に大手メーカーや有力セレクトショップのOEMを行う縫製業者です。ファクトリーブランドとして、もともと経年変化により生地が虹色に変わっていくレインボーデニムがあったのですが、豪雨災害により被害を受けました。この『レインボー』生地の復活を目的としたプロジェクトを、2022年にMakuakeで実施。最終的に5,000万円を超える応援購入金額を集めました。

① 内田縫製【UCHIDA HOUSEI】
豪雨災害で途絶えた幻のデニム生地『レインボー』を復活させたい!

本プロジェクトページには、デニムの特徴だけでなく「なぜ途絶えてしまったのか」「このタイミングでなぜ復活させたいという想いが生まれたのか」を1人のお客様とのストーリーを軸に丁寧に書き記されています。品質はもちろん、この商品へのこだわり・想いに共感したサポーターが多数集まり、なんと378件もの応援コメントが集まりました。

さらにこのプロジェクトを通して内田縫製のファンになったサポーターが、実際に2名も内田縫製に転職をし、働く仲間になったという話も伺っています。うち1名の方は東京から岡山まで移住したということで、商品への共感が会社への共感にまで発展した事例といえます。

想いを真っ直ぐに伝えられ、その想いに共感するサポーターが多く集まるMakuakeでは、このようにファンとの繋がりが日々生まれているのです。

② クラフトサケブリュワリー協会

クラフトサケとは、お米を原料としながら、従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒です。プロジェクト実施前にも、全国各地にいわゆるクラフトサケに該当する醸造所はあり、各醸造所にファンはついていました。一方で「クラフトサケ」が新しいジャンルであるがゆえに、カテゴリー全体の認知度の低さに課題がありました。

そこで「クラフトサケの醸造所を増やす」「クラフトサケの知名度を高める」「日本酒とクラフトサケが共存できる未来をつくる」ことを目的に、クラフトサケブリュワリー協会設立のプロジェクトを実施。各醸造所の飲み比べセットなどを販売するリターンをつけ、最終的に1,000万円を超える応援購入金額を集めました。

6つのクラフトサケ醸造所が挑む、日本酒とクラフトサケの未来を造るプロジェクト
6つのクラフトサケ醸造所が挑む、日本酒とクラフトサケの未来を造るプロジェクト

本プロジェクトのポイントは「カテゴリーのファンを増やした」ことです。社会性のある取り組みでもあったため、メディアを中心に話題になり、「クラフトサケ」というカテゴリー全体の認知度が非常に上がりました。結果、新たなファンを獲得しただけでなく、クラフトサケの醸造所を立ち上げるプレイヤーを増やすことにも繋がっており、クラフトサケを「楽しむ人」と「作る人」を同時に増やす好循環を生み出しています。

さらにクラフトサケブリュワリー協会は、リアルイベントを継続的に実施したり、日本酒イベントにも出店したりするなどファンとの交流の場を設け続けています。

このように1社単体ではなく、カテゴリー全体でファンを増やしていくことも今後重要な動きとなってくると考えられます。

最後に

今回は「ファンづくり」の観点からMakuakeを紐解きました。世の中に新商品・サービスを広めようとする中で、「ファンづくり」「ファンを通して商品・サービスを広めていく」ことの重要性が高まっています。より自社の商品・サービスを求めている方に届けるために、ファンづくり、そしてファンとのコミュニケーションを大切にしていただきたいです。 次回は、Makuakeを活用する理由として挙がることも多い「実績づくりによる販路拡大」の観点から、Makuakeを通した消費者に限らないステークホルダーの関心を引きつけるかに焦点を当てて解説していきます。

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