
ドイツ発祥の老舗グラスブランド「ツヴィーゼル」は2021年9月にECサイトをリニューアルしました。デザインや導線が変わったことに加え、Shopifyにカートシステムを乗り換えたことで運用効率が上がったようです。それまで、ECサイトの運用に専任者はおらず、ほとんどの業務を外部の制作会社に依頼していました。株式会社ツヴィーゼル・ジャパンにECの専任者として中途で入社された青山さんは、足元の課題を解決するためECサイトのリニューアルを決意します。今回は、青山さんに入社当時から、リニューアル以降の現在に至るまで、どのような変化があったのか伺いました。
この記事の目次
リニューアル前の状況と課題
――青山さんがECの専任担当者として入社する前まで、日々のECサイト運営はどのようにして行われていたのか教えていただけますか?
青山さん:入社前までは社内にEC専任の担当者がいなかったため、ほとんどの業務を外部の制作会社に依頼していました。その制作会社にはサイト内のクリエイティブ制作だけではなく、受注業務やお客様からの問い合わせ対応といった日々の運用にかかわる業務まで依頼していたのです。
サイト更新のタイミングは母の日やクリスマスのような季節ごとのイベントがほとんどでした。年間のスケジュールがおおよそ決まっていたので、兼務の担当者がたたき台を作り、制作会社に依頼することでサイトの更新を行う流れです。
――そのような環境下で、青山さんが入社して感じた課題や改善したいと思うポイントはどのような点だったのでしょうか。
青山さん:当時利用していたECサイトはシステム的にも運用体制的にも簡単に更新できる状態ではありませんでした。そのため、サイトのちょっとしたことを変えるのも、都度制作会社に依頼が必要になります。しかし、コミュニケーションロスによって思っていたアウトプットと違う結果になることもあり、自社で更新できればもっと時間を短縮できると感じていたのです。
加えて、お客様対応を含めて制作会社にお願いしていたため、お客様の声が入りづらい環境となっていました。お客様の声を聞く意味でも、運用を効率化する意味でも、まずは自社で運用できる体制になることが大事だと思ったのです。
リニューアルで大切にした2つのポイント
――この課題を解決するために、どのようなアクションを取りましたか。
青山さん:ゼロベースで体制を整えられるように、ECサイトをリニューアルすることにしました。このとき、大切にしたポイントが2つあります。
最も大切にしたのはノーコードでサイトの更新ができることです。日々の運用を簡単にできるようにすることがスピード感を高め、施策の幅を広げます。イベントや特集ページを簡単に増やしたり、在庫が切れたときに掲載商品を差し替えたり、当時は時間がかかっていたことをスピーディにできるようにしたい気持ちが強くありました。
もう一点は、運用しやすいメルマガの配信機能を搭載することです。当時利用していたメルマガのシステムはカートシステムとは連動していなかったため、URLにパラメータを付与してGoogle Analyticsで効果を確認しなければいけませんでした。また、そのシステムはHTMLを書かないと画像などビジュアルを活用したメールが送れないこともネックでした。ノーコードでメールを作成できること、効果測定や分析を簡単にできることを実現したかったのです。

制作会社選びの注意点とリニューアルの苦労
――どちらも非常に大切なポイントですね。今回、サイトのリニューアルに伴い、制作会社の選定でどのような点を意識しましたか。
青山さん:特に意識したのは何が得意な会社なのかを見極めることです。入社時に依頼していた会社はWebの制作に強い一方で、ECに関しては専門ではなかったのです。Web制作に強い会社でもECの仕組みをあまり知らないということもあるので、実績をよく確認せずに依頼するのは注意が必要かと思います。
弊社では事前の下調べでカートシステムをShopifyに変更する方針で進んでいたため、Shopifyの制作に関して強みを持っている会社を探し、3社とお話をしました。最終的にR6Bという制作会社に依頼することに。有名企業から小さい会社まで幅広い実績を持ち、担当者の方とお話した際に安心できると思ったため、そこに決めました。また、制作いただいた後も提携会社が多いため、広告運用やInstagramの運用など、それぞれプロフェッショナルの方をご紹介いただき、とても助かっています。
――順調にサイトのリニューアルが進行したようで安心しました。リニューアルの際に苦労したことはありましたか?
青山さん:全体的にリニューアルはスムーズに進行しましたが、強いて言うなら商品ページを作り変えるのに思っていた以上の時間がかかりました。リニューアル前のカートシステムでは昔から利用している画像が古い規格のまま入っていたため、新しい画像にすべて手作業で差し替えたためです。
移行したデータはお客様のお名前やメールアドレスなど、メルマガの配信に必要な情報に絞り、購買データを移行しませんでした。制作会社の方とお話し、新しいシステムに移行する負荷の割に、利用頻度は多くないことを伺ったためです。Shopifyの中には移行していませんが、データ自体は保管しているので必要なタイミングで活用できれば良いと考えています。

リニューアル後の状況とこれから
――2021年9月にリニューアルを終え、1年以上経過しましたが、その後の状況はいかがですか。
青山さん:外注していた運用の業務は、人員を追加せずに社内で対応できるようになりました。外注費が浮いたため、その分でリニューアルを対応していただいた制作会社にほぼ毎月新しい機能追加を依頼しています。リニューアル時は実現したいポイントを絞り、最低限の機能のみのローンチとしたため、その後は、在庫表示機能やお気に入り機能、チャット機能、eギフトなどできる範囲で着実に機能を増やしてお客様がお買い物をしやすい環境づくりをしています。
運用の負荷が高かったことから月に1回メールを送るくらいしかできていなかった情報発信も変わりました。メール、チャット、LINE、Instagramなどを通じて、弊社からの発信を週に1回は送ることで、認知いただけるようになったと感じます。やはり、お客様は思った以上に(メールやSNSの内容を)見ていないので、少し多いかなと思うくらいにコミュニケーションを取ることが大切ですね。

ヴィヴィッド・センス
青山さん:ECの市場全体が過渡期となっている中で、リニューアルから1年が経ち、売上は昨年比で120%超となっています。リニューアル移行、着実に実践してきたことの成果が出ていて嬉しく思います。
「ツヴィーゼル」はドイツを中心にヨーロッパでは知名度が高いですが、日本ではまだまだ発展途上のブランドです。現在直営店がないため、ECサイトのコンテンツをより拡充させていきながら、お客様に知ってもらえるブランドになれるように努力していきたいです。
インタビューを通して:課題を整理し、最短距離で成果を出す行動力
ノーコードで、効果測定を行いやすいメールの配信機能を、ということから逆算し、Shopifyを選んだ青山さん。将来的な機能な拡張性を念頭に入れながら、ご自身が実現したいポイントを確実に抑えて、スピーディにリニューアルを完了させます。
購買データなど、リニューアルの際に「もしかしたら後で使うかも」と手間をかけて移行しようとする事業者がいる一方で、現時点で利用するかどうか判断し、スピードを優先する姿勢が着実に売上を伸ばしている結果に結びついているように感じられました。
用途に合わせてカテゴライズされた特集ページはお酒が好きな人がついつい使ってみたくなるような魅力が綴られています。ここまで記事をご覧いただいた方は、ぜひツヴィーゼルのサイトを訪れてみてはいかがでしょうか。
■ツヴィーゼル・ジャパンのECサイト
https://zwiesel-glas.co.jp/
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