
この記事の目次
サーチ登録の可否判断基準とは?
前回までのコラムではスーパーSALEのサーチ登録を減らして、在庫をきちんと確保して販売金額を上げたらきちんと利益が上がった、というお話でした。
では、10%OFF以上の値引きが必要なスーパーSALEのサーチ登録はやはり行わないほうが良いのでしょうか?
そう単純なお話ではありません。
あくまで粗利総額というのは「単品粗利×販売個数」で導き出されますから、要はこの粗利総額が最大化するのであればサーチ登録するべきかもしれません。
私が個人的にサーチ登録する際の可否の判断基準はいくつかあります。
A.値下げしても利益が増える場合
実際のところスーパーSALEサーチに登録することで販売個数は一気に増えます。
ジャンルや商材によってもちろん異なりますが、当店の場合は同時期のお買いものマラソンと比較しても販売個数が平均で約3倍になります。
例えば…
通常は「売価3,000円、仕入れ2,000円、粗利1,000円、送料500円、各種手数料など300円(10%計算)」で販売している粗利33%の商品を10%値引きしてサーチ登録した場合。
「売価2,700円、仕入れ2,000円、粗利700円、送料500円、各種手数料270円」となります。
お気づきでしょうか?
「粗利33%だから10%ぐらい引いてもいっぱいうれるからいいや」と値引きした場合、1個当たり70円の赤字が出ます。これにポイント10倍なんて付けた日にはさらに243円の赤字が加算されます。
わかりやすく言うならば「販売個数が3倍になっても利益が減るのならばサーチ登録なんてしてはいけない」のです。
逆に…
通常「売価4,000円、仕入れ1,200円、粗利2,800円、送料500円、各種手数料400円」で販売している商品があったとします。
計算するとわかりますが1個当たりの限界利益は1,900円です。
この商品を同様に10%値引きしてサーチ登録して普段の3倍の個数が売れたとしましょう。
「売価3,600円、仕入れ1200円、粗利2,400円、送料500円、各種手数料360円」で1個当たり限界利益は1,540円まで下がりますが3倍売れるわけですから限界利益は4,620円となります。
日頃からしっかり利益を残せる価格で販売している商品はむしろ積極的にサーチ登録してもいいかもしれません。
B.とにかく在庫をなくしたい、減らしたい場合
こちらはあまり推奨しませんが、明らかに現在庫が不良在庫化していて動きが悪い場合は、在庫処分的な意味で登録するのは一つの手ではあります。
ただ、基本的に売れていない商品をただ安くしても売れることはあまりありません。経験上の話ですが笑
数年前に社内在庫が400個以上あるにも関わらず、1年間で16個しか売れていない自転車の鍵がありました。単純計算で25年分の在庫です。
これはマズイ!と年4回のスーパーSALEで赤字を覚悟で半額にして販売したところ、翌年は1年間で38個売れました。残りあと10年ですね笑
ところが翌年にふと思いついて「売り方」を変えたところ、販売価格は1.5倍にしたにもかかわらず1年間で1,344個が売れました。
単純に価格を下げてサーチ登録するよりも「お客さんが買ってくれるかもしれない売り方」をしっかり考えて商品ページをしっかり作りこんだ方が遥かに効果的だったわけです。
今回のスーパーSALEにおける自転車グッズのキアーロの戦略
間もなく9/4(日)から9月のスーパーSALEが始まりますが、当店では今回は珍しく積極的にサーチ登録を行います。
3月、6月のスーパーSALEは、ちょうど上海ロックダウンなどの影響で国内に製品が入ってこなくてメーカーさんの欠品が相次ぎ、どこも販売在庫を切らしがちな状態でした。
当店は例えメーカー欠品であっても、卸問屋としてお客さんに対してはとにかく欠品を出したくないので、早めに事態に対応し先行発注してしっかり在庫を持っておりました。
おかげで他店が欠品する中でも販売機会損失がなく、逆にしばらく独占販売のような状態になりました。
今回のスーパーSALEは既に事態も落ち着いて、市場在庫も各社に回っているので当店の在庫の優位性はまったくありません。
ただ前回までと大きく違うのは「原価の大幅アップ」。
この半年の間にどこのメーカーさんも値上げで仕入れ価格が10%、20%アップくらいは当たり前の状況。
価格転嫁できなければ一気に赤字に陥りかねません。
ただ、当店にはまだ「旧価格の時期に仕入れた在庫」がそれなりの数量であり、現状の価格で仕入れている他店さんと比べても実は小さくない価格優位性があります。
私は基本的に価格競争以外の売り方の好きなのですが、在庫回転率や交叉比率、移動平均などをチェックしていると、やや在庫過多でダブつき気味になってきている商品もありますので、そろそろ在庫の適正化を図る必要があります。
「値上げをしたら売れなくなる!」と販売価格を我慢して上げずにいる他店さんも多いようですので、今回は在庫を軽くしつつある程度の価格競争も行います。
さて、どんな結果になることでしょうか。
これまでのコラムのまとめ
これまでの3回のコラムでお話ししたかったことをまとめますと…
- 闇雲に値下げをすればいいというものではない
- 頑なにサーチ登録をしないのももったいない
- 自社と周囲の環境や状況をしっかり把握して判断しましょう
- 値下げ以外にできることがあるのではないでしょうか
といったところでしょうか。
そしてお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は私はこのコラムの中で「売上」についてはほぼ言及していません。
「スーパーSALEでいっぱい売れたねー!」
なのに実は全然儲かっていなかった、あんなに忙しく大変な思いをしたのに。
それが一番不幸なことなんじゃないかなと思います。
何も考えずにただ他店より安くしてウチが売るんだ!というのは自社のみならず業界も不幸にしてしまうことが多いんじゃないかと思っています。
もちろん、商いにおいての「正解」は一つではありませんし、局面によっても変わります。
まずは各商品の単品管理から始めて、自店舗の商売を数字でしっかり把握し、本当に変化が激しい社会情勢の中で自らが判断を下せることが必要なのではないでしょうか。
このコラムはあくまでも私個人の事例の共有ですが、皆様のご商売の何らかの参考になれば幸いです。
合わせて読みたい