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キーワードでもデモグラフィックでもない。「会話を指定する」ChatGPT広告の新しいターゲティングを検証する

キーワードでもデモグラフィックでもない。「会話を指定する」ChatGPT広告の新しいターゲティングを検証する

2026年6月28日、ChatGPT広告のセルフサーブ版がローンチしました。

検索広告やSNS広告におけるCPA高騰に頭を悩ませるEC事業者やWebマーケターにとって、この新たなチャネルの登場は1つの突破口になるかもしれません。

ローンチ直後から、広告業界でこれだけ注目度が高い理由は単純です。ChatGPTという、検索エンジンやSNSとは異なる性質のユーザー接点に、新たな広告在庫が生まれたからです。そして、注目されているのは規模の話だけではありません。むしろ業界内で話題になっているのは、ターゲティングの手法そのものが、これまでのどの広告プラットフォームとも異なる、という点です。

検索広告はキーワードに対して広告を出します。Meta広告のようなSNS広告はデモグラフィック(属性情報)や興味関心のセグメントに対して広告を出します。ChatGPT広告はそのどちらでもありません。「どんな会話が行われているか」という文脈そのものを指定する、「コンテキストヒント」という仕組みを採用しています。

これがどういった意味を持つのか、そしてどう設計すれば効果があるのか。ローンチから日が浅く、世の中にまだ正解と呼べるものは存在しません。各社が手探りで試している段階です。本記事では、そのなかで筆者が個人的に試した検証を紹介します。

なお本記事のデータは、筆者が個人で運営するウェディング関連事業(結婚式の手紙をテーマにしたサービス)における実績です。所属する株式会社オプトの公式な見解やクライアント実績を示すものではありません。また、商材やカテゴリによって傾向は変わりうるため、あくまで一つの参考事例としてお読みいただけますと幸いです。

この記事の執筆者

野嶋 友博
株式会社オプト


2015年新卒でオプトへ入社。SNSを中心とした広告運用に携わり、幅広い業種のクライアントを担当した後、2021年よりEC・教育・人材業界を専門とするアカウントプランニング組織に異動し、十社十色のマーケティング施策創出に向け日々邁進中。LINEマーケティングサービスの認定講師「LINE Frontliner」資格を保持。


株式会社オプト
https://www.opt.ne.jp/

コンテキストヒントとは何か

コンテキストヒントとは、「ユーザーが今どんな状況で、何を求めているのか」を文章でAIに伝え、適切な広告を出してもらうためのターゲティング機能です。実際の管理画面では、広告グループの設定画面にある自由記述欄となっています。文字数の制約はゆるく、「商品やサービスに関連する可能性がある会話、トピック、またはキーワードを説明してください」という案内とともに、自然言語で入力します。

ここで重要なのは、これは検索広告でおなじみの完全一致・部分一致といったマッチタイプの概念を持たないということです。入力したテキストはあくまで「指針」として扱われ、ChatGPTはユーザーとの会話の流れを踏まえて、関連性が高いと判断した会話(文脈)で広告を差し込みます。

具体例を挙げてみます。検索広告であれば「格安スマホ」という語句1つで完結しますが、コンテキストヒントでは次のような書き方が可能になります。

「大手3キャリアをなんとなく使い続けているなかで、速度の問題が気になっている。安いとわかっているもののなかなか格安スマホに乗り換えられていない。普段YouTubeをよく見るので通信速度が不安。それでも乗り換えた方がいいか比較検討している会話」

このように、単語ではなく、会話の状況そのものを描写する。これが新しいターゲティングの正体です。

検証の前に押さえておくべき、致命的な制約

ここからが本題ですが、その前にもう1つ、検証方法そのものに関わる重要な前提を共有しておく必要があります。

現状のChatGPT広告の管理画面では、コンテキストヒントごとに「実際にユーザーが何を会話として打ち込んだのか」「ChatGPTが何を応答したのか」「どの枠に広告が表示されたのか」という粒度の実績を見ることができません。わかるのは、広告グループ単位のインプレッション・クリック・コンバージョンといった集計値だけです。

これは「どの文脈が成果につながったのか」検証をする上で致命的な制約です。もし1つのキャンペーンの中に、複数のコンテキストヒントを設定した広告グループを混在させてしまうと、「どのヒントが良かったのか」が原理的にわからなくなってしまいます。

そのため、ここで紹介する検証は全て、1つのコンテキストヒントに対して1つの広告グループ(または1キャンペーン)を割り当て、予算条件をできるだけ揃えた上で並走させるという構成を前提にしています。これは「検証のための不自然な構成」ではなく、「この媒体で検証を成立させるために必要な、アプローチの1つ」だとご理解ください。

検証①:単語だけのクエリ vs 文脈を書き込んだクエリ

まず最初に試したのは、最もシンプルな比較です。

  • 単体クエリ:「結婚式」「結婚式の手紙」「結婚式の動画」といった、単語のみのヒント
  • 文脈クエリ:ユーザーの悩みや検討状況を1〜2文で記述したヒント(今回は3パターン:課題解決の意図を書いたもの、比較検討の意図を書いたもの、感謝を伝えたい気持ちを書いたもの)

単体クエリが最もインプレッション単価(CPM)が安く、コンバージョン率(CVR)も最も高いという結果になりました。さらに、情緒的な文脈に寄った「感謝の気持ちを書いたヒント」に至っては、コンバージョンが1件も発生しませんでした。

ここで浮かぶ問いは1つです。これは検索広告と同様に、結局「単体=ビッグキーワード的な設計」が一番強いということなのか。それとも、文脈クエリの「書き方」そのものが甘かった(=AIに伝える解像度が低かった)だけなのか。この二択を確かめるために、次の検証に進みました。

検証②:文脈クエリを、長文化・具体化してみる

文脈クエリの書き方を、大幅につくり込んでみることにしました。ユーザーの状態・相談の具体例・サービス定義・掲出条件までを盛り込んだ、4段落構成の長文のコンテキストヒントを新たに設定しました。

結果、この長文クエリはコンバージョン単価(CPA)が¥1,243と、単体クエリ(¥1,105)にほぼ並ぶ水準まで改善しました。CVRに至っては5.88%と、単体クエリ(5.16%)を上回っています。

これはつまり、「ChatGPT広告では単体クエリが成果につながる」という話ではなく、「文脈クエリも、書き方次第で単体クエリに匹敵する、あるいは上回る成果を出せる」ということを意味します。検証①の文脈クエリの成果が及ばなかったのは、コンテキストヒントという仕組みそのものの限界ではなく、1〜2文という短く曖昧な書き方に原因があった可能性が高いということです。

検証③:AIが読み取りやすい構成(AIO)に効果はあるのか

検証②で長文化のアプローチが成果につながったことを受けて、次はもう一段アプローチを変えてみました。AI検索や生成AIに情報を読み取らせる際、Markdownの見出し構造を使うと内容を理解させやすくなる、という一般的なAIO(AI検索最適化)の定石があります。この定石が、コンテキストヒントの設計にもそのまま応用できるのではないか、という仮説です。

そこで、検証②の長文クエリと同じ内容を、「# 対象会話」「# ユーザーの状態」「# トリガーとなる相談例」といったMarkdownの見出し形式に構造化し直し、比較しました。

結果は、事前の期待とは逆でした。構造化した版はクリック率(CTR)こそ最も高い数値を記録しましたが、CVRが大きく落ち込み、CPAは長文版の約1.7倍まで悪化しました。

一般的なAIOの定石がそのまま通用しなかった、というのがこの検証の結論です。仮説として、コンテキストヒントはあくまで「会話」の文脈として読み込まれる欄であり、見出しで情報を分割する構造化は、会話としての文章の連続性を壊してしまったのではないか、と捉えています。ここはまだ仮説の域を出ておらず、引き続き検証が必要な部分です。

検証④:会話の文脈ではなく、プロンプトそのものを指定する

ここまでは「どんな会話が行われているか」を記述するアプローチでした。最後に試したのは、発想を変えて、ユーザーが実際にChatGPTへ打ち込むであろうプロンプトの文面そのものを複数想定し、コンテキストヒントに落とし込むという設計です。

この検証では、第三者のAIOの知見を借りて新たに5パターンのヒントを設計し、それぞれが購買行動のどの段階に位置するプロンプトを想定しているかによって、S(顕在ニーズ)・A(準顕在ニーズ)・B(潜在ニーズ)という3つのフェーズ(階層)に分類しました。

顕在ニーズに近いプロンプトほどCVRが高く、CPAも安くなるという、きれいな相関が出ました。「発注したい」「依頼先を探している」といった具体的なアクション(実行段階)に近いプロンプトを想定したヒントは、CPMが最も安いにもかかわらずCVRが最も高いという結果になっています。逆に、潜在的な情報収集段階のプロンプトを想定したヒントは、CPMが高いのにCVRが最も低い、最も効率の悪い組み合わせになりました。

この結果から、プロンプトそのものを指定する設計は、ある程度の購買意欲がすでにあることを前提にしたアプローチである、という理解が必要だと考えています。

ここまでの検証を、検索広告に置き換えて整理する

単体クエリ、長文クエリ、プロンプトクエリ。3つの検証結果を並べると、検索広告における「指名検索」と「非指名検索」の関係に近い構造が見えてきます。

単体クエリは、この媒体における「指名検索」のような立ち位置になります。広く揺れる分CPMは安いですが、商材との整合性さえ取れていれば、安定したCVRを出しやすい設計です。

長文クエリやプロンプトクエリは、非指名検索への拡張に相当します。対象を広げたい、あるいはより具体的なニーズ層を狙いたいときに使う、揺れを小さくした設計です。CPMが上がっても、質でCVRを担保しにいくアプローチと言えます。

単体クエリからまず着手し、拡張が必要になったら、長文クエリ・プロンプトクエリへ進む。この設計順序が、現時点でのコンテキストヒント設計における基本方針だと考えています。

まとめ

コンテキストヒントは、キーワードでもデモグラフィックでもない、「会話を指定する」という前例のない設計変数です。その分、検証の仕方そのものにも注意が必要で、コンテキストヒントごとの実績を見るには「1ヒント1キャンペーン」という構成で予算を揃えることが前提になります。

その上で見えてきたのは、「単体クエリが効果的である」のではなく「書き方次第でどちらも成果につながる」ということ、そして「AIが読みやすい構造化」という一般論が、必ずしもそのまま通用するわけではないということでした。

ベータ版として生まれたばかりの機能だからこそ、正解はまだ誰も持っていません。だからこそ、自社の商材でコンテキストヒントを設計・検証していくこと自体が、今はまだ競争優位になり得る段階だと考えています。

株式会社オプト
https://www.opt.ne.jp/

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