ChatGPT・Google・Amazonが相次ぎ新機能――EC事業者が押さえたいAIニュース3選

自分の写真で服の着用イメージを確かめる。動画広告を見ながら、気になった商品についてAIに質問する。2026年9月から10月にかけて、OpenAI、Google、Amazonが発表した新機能には、買い物や店舗運営の具体的な場面でAIを使う動きが表れています。
変化は売り手の業務にも及びます。Amazonが発表したのは、店舗の状況を継続的に確認して対応を提案する機能と、Claudeなどから自社の販売データを扱うための連携機能です。
本記事では、3社の更新から、購入者の商品選びと店舗の仕事がどう変わるのかを紹介します。国内での活用を考える際に押さえたい、提供地域や利用条件も確認していきましょう。
ChatGPTで服の試着イメージを生成 気になる商品は保存して比較
ネットで服を選ぶときに気になるのが、「自分が着たらどう見えるか」。商品写真だけでは想像しにくい着用イメージを、自分の写真から生成できるようにしたのが、OpenAIが10月1日に発表したバーチャル試着です。
使い方は、ChatGPTに表示された衣服やアクセサリーの「Try on」を選び、自分の写真を撮影するかアップロードするだけ。その商品を身に着けたイメージが生成されます。試着用の写真は次回も使えるよう保存され、設定から変更・削除が可能です。

自分の写真で着用イメージを確認し、気になる商品は保存して比較できる。
あわせて加わったのが、気になる商品の保存機能です。お気に入りへの登録に加え、フォルダーに分けて残すこともできます。例えばコートを探しているなら、候補をいくつか保存しておき、後日見比べて選ぶ、といった使い方が考えられるでしょう。試着と保存はいずれも、モバイルとWebに対応しています。
商品を見つけたあとに、着た姿を確かめる、候補を残す、改めて比較する。今回の追加によって、ChatGPT上でできることが、購入前の検討にも広がりました。
確認できるのは着用イメージ サイズ選びには別の情報が必要
試着画像で確認できるのは、あくまで見た目のイメージです。OpenAIも、商品や本人の外見を正確に再現できない場合があると説明しており、実際の着心地やサイズの適合を保証するものではありません。購入前には、販売店の寸法や商品詳細、返品条件を確かめる必要があります。
そこでEC事業者が見直したいのが、「似合いそう」と感じた人が、安心してサイズを選べるかどうか。丈や身幅がわかるサイズ表、素材や伸縮性の説明など、試着画像だけでは判断できない情報が購入を支えます。
保存してから購入するまでの間に、価格や在庫が変わることもあるでしょう。ChatGPT上の表示への反映には時間がかかる場合があるため、最終的な条件を確かめる場として、販売ページの役割も引き続き重要です。
YouTube広告でAIに商品相談 Googleは検索での表示状況も可視化
YouTubeで商品の広告を見て、「別の商品と何が違うのか」「返品できるのか」と気になったら、その場で質問する。Googleが9月16日に発表した「Business Agent」のYouTube広告への拡張は、そんな商品選びを支える機能です。対象となる米国の小売事業者に、ベータ版への参加を呼びかけています。
Business Agentは、商品やブランドについて質問に答えるAIです。広告動画の下にチャットが開くため、視聴しながら商品の違いや店舗の方針を確かめられます。
回答の基になるのは、事業者が持つ商品カタログやWebサイトの情報。Googleによると、専用の会話シナリオを作ったり、広告素材を変更したりする必要はありません。9月24日の広告関連の発表でも、商品フィードを使った動画広告と会話機能の組み合わせが紹介されました。
動画で興味を持った瞬間に、購入を迷う理由を解消できる。広告主にとっても、商品の特徴を理解したうえでサイトを訪れてもらう接点になりそうです。
AIの回答に自社商品がどれだけ登場しているかを確認
もう一つ注目したいのが、AIを使った検索で、自社商品がどれだけ表示されているかを調べる機能です。Merchant Centerの「AI performance insights」では、AI ModeやAIによる概要での表示状況を競合と比較できます。
指標の一つである「share of voice」は、関連する検索で自社と比較対象の競合に発生したAI上の表示回数のうち、自社が占める割合を示すもの。売上シェアではなく、AIの回答の中でどの程度表示されているかを見る数字です。
例えば、関心の高い商品分野なのに自社商品があまり表示されていなければ、登録情報に不足がないかを調べるきっかけになります。よく使われる検索語や重視される商品属性、購入までの検討段階も確認できるため、商品情報を見直す際の手がかりになるでしょう。
対象は米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インドのMerchant Centerアカウントで、英語の検索に限定されています。広告の表示は集計に含まれず、日本は現時点で対象外です。
商品名と価格だけでなく 購入前の疑問に答える情報を渡す
「食洗機で洗えるか」「この部品はどの商品に対応するか」。AIがこうした疑問に答えるには、商品名や価格以外の情報も必要です。Googleは、商品に関する質問と回答、説明書へのリンク、関連商品などを追加できる「conversational attributes」という商品データの項目を案内しています。
家電であれば、購入前に知りたいのは仕様表の数値だけとは限りません。設置に必要なスペースや、別売り部品の有無なども選ぶ際の判断材料です。普段の問い合わせに含まれるこうした情報を整理することが、AIを通じた商品案内にも役立ちます。
追加項目は任意で、既存の商品情報を補う位置付けです。Googleは、説明文などですでに送信している内容を重複して登録する必要はないとしています。まずは問い合わせの多い商品から、今の説明では答えきれていない質問を拾うと、追加すべき情報を絞りやすいでしょう。
購入手続きの面では、Merchant Centerの「UCP integration hub」が更新されました。技術的な連携を通じて、Google上での購入や販売店サイトへのカートの引き継ぎ、購入手続きのテストなどを支援する仕組みです。追加機能は米国から順次展開され、カナダとオーストラリアへの拡大は2027年初頭を予定しています。
商品を見つけてもらうことに加え、購入前の疑問に答え、購入手続きを進められる仕組みも整える。今回の更新は、Google上での商品選びをこうした場面まで広げるものです。EC事業者には、検索や広告で目に留まるための情報だけでなく、「買うかどうか」を判断できる情報をそろえる視点が求められます。
AmazonのAIが店舗を継続的に確認 Claudeとの連携も開始
売れ筋商品の在庫、競合の価格、アカウントの警告。店舗運営では、変化がないか毎日確かめるだけでも手間がかかります。Amazonが9月23日に発表したSeller Assistantの新機能は、こうした確認作業をAIに任せるためのものです。
新たな「ワークフロー」では、確認したい内容と条件を文章で指定すると、Seller CentralからログアウトしたあともAIが店舗の状況を確認し続けます。Amazonが挙げたのは、「主力商品の評価が星4つを下回ったら知らせ、対応案を作る」といった使い方です。

アカウントの状態確認、注文の要約、価格動向の分析などには、用意されたテンプレートを利用できます。独自の条件を指定することも可能。質問するたびに答えを得るだけでなく、変化が起きたタイミングで対応を提案してもらえる点が特徴です。
提案までを任せるか、操作も任せるかは事業者が選択します。操作する場合も実行前に人が確認・承認し、履歴が残る仕組みのため、担当者は提案の妥当性を判断する役割を担います。
Claudeから自社の売上や在庫を確認できる
外部のAIサービスとの連携も始まります。「Amazon Selling Partner」プラグインは、AIと出店アカウントをつなぐ追加機能です。これを使うと、Amazon QuickやClaudeから、自社のAmazon販売データを扱えるようになります。

Claudeの公式案内では、Seller Centralのアカウントを接続し、売上、在庫、商品情報の実績について質問できると説明されています。自社のデータに基づく提案を受け、操作の確認と承認もClaude側で行う仕組みです。
活用が考えられるのは、Amazonの販売状況と、社内の仕入れ・生産情報を合わせた判断でしょう。販売数が伸びていても、原価が上がれば利益は増えないかもしれません。追加発注が必要だとわかっても、納品が間に合わなければ別の対応を考える必要があります。
そのたびに売上データと仕入れ資料を集め直し、AIに渡すのは手間のかかる作業です。普段使うAIから販売データにアクセスできれば、情報を集める負担を減らし、対応の検討に時間を使いやすくなると考えられます。
販売データと仕入れ情報を合わせた実演も
Amazonのイベントでは、スニーカーケアブランド「Proof Culture」を使ったデモが紹介されました。AIが新しいスニーカーの発売予定と仕入れコストの上昇を把握し、Amazonの販売ペースや在庫数と照らして、利益や欠品の可能性を検討する内容です。
需要が高まる時期の在庫不足を予測し、一部商品の価格調整と補充を提案する。実演で示されたのは、需要、在庫、原価を合わせて次の対応を考える使い方でした。売れている商品を確認するだけでなく、補充や価格を判断するための材料をそろえる場面に、AIの活用が広がっています。
外部連携のプラグインは、米国ストアの出店者向けベータ版から始まります。他国への展開は今後の予定で、Seller Assistant自体とは提供範囲が異なる点に留意が必要です。
EC事業者は何から見直すとよいか
今回の3社の発表から見えてくるのは、購入者の商品選びと、店舗の判断を支える情報の重要性です。ChatGPTやGoogleでは、商品ページを訪れる前にも比較や相談が進み、Amazonでは販売データを使って対応案を考える機能が広がっています。
購入者向けの情報で、まず見直したいのは、購入前によく聞かれる質問。サイズ、使い方、対応する付属品など、今の商品説明だけでは答えが見つからない内容を補いましょう。画像で見せることと文章で説明することを整理し、価格や在庫、配送・返品条件もそろえる。こうした改善は、AIを介さずに訪れる購入者にも役立ちます。
店舗運営では、毎日繰り返している確認作業を一つ選ぶところから始められます。何のデータを見て、どの条件で動き、誰が承認するのか。その手順を整理すれば、AIに任せたい範囲と、人が判断すべき点も明確になるはずです。
国内で使える機能はまだ限られますが、商品情報や業務の手順を見直すことは今からでも可能です。購入者が迷う点と、担当者が判断に時間をかけている点を洗い出す。そこから着手することが、新しいAI機能を自社で活用するための準備になります。
出典
・ OpenAI:ChatGPTの試着・商品保存機能の発表(10月1日)
・ OpenAI:ChatGPTのショッピング機能と利用上の注意
・ Google:年末商戦に向けたAIコマース機能の更新
・ Google:YouTube広告で商品相談ができる「Business Agent」
・ Google:Demand Genの新機能発表(9月24日)
・ Google:AI検索での表示状況を確認する「AI performance insights」
・ Google:AIとの会話に対応する商品情報の追加項目
・ Google:Merchant CenterのUCP連携機能
・ Amazon:Seller Assistantの新機能とAmazon Quick・Claudeとの連携
・ Anthropic:Amazon Selling Partnerコネクターの紹介
・ Amazon:販売事業者向けAI機能の発表とイベントでの実演
あわせて読みたい



