ECサイトのその"キャッチーな商品説明"、AIにはどう伝わってる?

AIは優秀なコンシェルジュ。 でも、サボる。 だから、伝えよう!

この記事の執筆者

吉田 清登
株式会社FID
CMO

GEO(AI検索最適化)対策「Genview」を手掛ける。再春館製薬所など通販・CRMの現場に約20年携わり、お客様第一の哲学を大切にしてきた。「AIは優秀なコンシェルジュ。でも、サボる。だから、伝えよう」を掲げ、AIでのお客様接客にはAIに自社情報を正しく伝えることの重要性を説く。JECCICA(ジャパンEコマースコンサルタント協会)客員講師。
Genview:https://genview.io/
NOTE:https://note.com/genview_yoshida

企業の接客対象は、もう人間だけじゃない

「おすすめの美白美容液は?」「敏感肌向けの化粧水で、コスパがいいのはどれ?」

こういう質問を、検索エンジンではなくChatGPTやGeminiに直接投げる人が、確実に増えています。これまで企業が「接客」する相手はエンドユーザーだけでした。ですが今は、その手前に、もう一人の"聞き手"が増えています。AIです。

ECサイトの商品説明文は、長年、人の心をつかむために磨かれてきました。キャッチーなコピー、感覚に訴える比喩、思わず手に取りたくなる言葉選び。これはこれで、間違ったやり方ではありません。ただ、この文章を今、AIも同時に読んでいる、という前提が抜けていることが多いように感じます。

今回は、実際にAIへ質問して確認した、「人には伝わるけれど、AIにはそのままでは伝わりにくい」表現について、実例を交えてお伝えします。

なぜ、AIを「接客」する必要があるのか

「AIに接客する」と言われても、少しピンとこないかもしれません。ですが、AIに質問した人が最終的に何を買うかは、AIがどう答えたかに強く左右されます。ユーザーは自分で全ブランドを比較検討するのではなく、AIが提示した数社の中から選ぶ、という行動に変わってきています。

つまり、AIは単なる検索結果の一覧ではなく、エンドユーザーに商品を「取り次ぐ」役割を担うようになっているということです。だとすれば、エンドユーザーに向けて接客していたのと同じように、AIに向けても「自社の強みを、正しく理解してもらう」という働きかけが必要になります。これが、AIを接客対象として捉える、ということの意味です。

その「盛った説明文」、AIはどう受け取っているのか

通販の商品ページでよく見かける表現を、いくつか思い浮かべてみてください。感覚的な比喩表現を見てみましょう。

  • 「うるっとツヤめく、生っぽい肌」
  • 「まるで、肌が水を飲むようにぐんぐん吸い込む」
  • 「がんばる私にご褒美、お疲れ肌をリセット」

どれも、日本の化粧品広告ではおなじみの言い回しです。人がこれを読むと、みずみずしさや浸透感、日々の疲れへの共感といった感覚が、すっと伝わってきます。ここに気持ちを動かされて手に取る人も多いはずです。

ただ、AI側にこれをそのまま聞いてみると、少し違う受け取り方をしていることがわかります。「肌が水を飲むように」という表現について聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。

「肌が水を飲むようにぐんぐん吸い込む」は、日本の化粧品広告でよく使われる比喩表現です。人間なら、すぐになじむ・浸透感がある・ベタつかない・乾燥した肌がうるおう感じがする、というイメージを持ちます。

一方で、AIはこの表現をそのまま事実とは捉えず、「浸透感が高い」「保湿感がある」という主観的な使用感を表すマーケティング表現として解釈する傾向があります。

つまり、AIはこの比喩を「意味不明なもの」として切り捨てているわけではありません。ただ、比喩だけだと、そこから読み取れる情報がかなり曖昧なまま、という状態になっているようです。

実際にAIに聞いてみた:「透明感のある化粧品」のおすすめは

実際に「透明感のある肌になりたい。おすすめの化粧品は?」とAIに質問してみました。

最初に返ってきた回答は、こんな内容でした。

「透明感」は、美白成分だけではなく、保湿・紫外線対策・くすみケアの3つがそろって初めて出やすくなります。乾燥や古い角質があると、どんな美白美容液を使っても透明感は出にくいです。

おすすめは次の組み合わせです。まず、コスパ重視なら、ちふれ 美白美容液 TA 30mL。トラネキサム酸配合で、透明感を目指す人の定番です。価格も手頃で続けやすいです。

正直、この回答を見たとき「あれ?」と思いました。「透明感」というキーワードだけで考えると、真っ先に名前が挙がりそうなのは、SK-IIやHAKU、DECORTÉといった、透明感・美白ケアで評価の高いブランドのはずです。なぜ最初に出てきたのが、コスパ重視のちふれだったのか。そのまま聞いてみました。

Q. 透明感というキーワードで何故ちふれが選ばれた?

A. いい視点です。実は、「透明感」というキーワードだけであれば、ちふれが真っ先に選ばれるブランドではありません。私が挙げた理由は「価格と続けやすさ」を重視したためで、「透明感」という観点では優先順位がややずれていました。

さらに聞くと、こんな説明もありました。

あなたは「透明感のある肌になりたい。おすすめの化粧品は?」と聞いただけで、「安く済ませたい」「コスパ重視」とは一言も言っていません。にもかかわらず、私が「価格と続けやすさ」を重視したのは、多くのユーザーが受け入れやすい無難な提案をしようとする傾向が働いたためです。

AIは「おすすめ」を聞かれると、単純な性能ランキングではなく、効果・安全性・入手しやすさ・価格・継続性といった複数の軸を暗黙に混ぜて回答を作る傾向があります。そのため、ユーザーが重視する軸を明示しないと、AI側が「一般的に役立つだろう」と判断した軸を補ってしまうことがあります。

この説明は、AI自身に「なぜその回答をしたのか」と聞いたときの返答です。こうした自己説明は、そのモデルが内部で実際にどう判断したかの確証にはなりません。ただ、観測できた事実として言えるのは、今回の回答では、質問文に「コスパ重視」と書いていなかったにもかかわらず、価格や続けやすさが選定理由に入っていた、ということです。つまり、ユーザーが指定していない評価軸が、回答に入り込むことがあります。

EC事業者として気になるのは、この回答で質問文になかった「価格」「続けやすさ」が判断軸に入っていた点です。自社が「透明感で評価されたい」と思っていても、価格や続けやすさといった別の軸が判断材料に使われた瞬間、想定していないブランドと並んで紹介される可能性がある、ということになります。

キャッチーな説明文だけでは、AIがどの評価軸を使って商品を比較するかまでは指定できません。透明感を訴求するなら、価格や継続性についても、ある程度の情報を用意しておく必要がある、ということになります。

AIは比喩を「理解できない」わけではない

ここまでの話を、「AIには比喩や感覚的な表現が一切伝わらない」と受け取ってしまうと、少し早合点です。実際にもう一段聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

GEO(生成エンジン最適化)を意識するなら、比喩は残しつつ、その意味を説明する文章を添えるのが適しています。

例えば、「肌が水を飲むようにぐんぐん吸い込む化粧水です。」よりも、「みずみずしいテクスチャで角質層まで素早くなじみ、乾燥した肌にうるおいを与えます。まるで肌が水を飲むような浸透感を目指しました。」のように、比喩+具体的な説明を組み合わせた方が、人にもAIにも伝わりやすくなります。

つまり、比喩表現そのものが悪いわけではなく、比喩だけで説明を完結させてしまうことが弱点になっている、ということです。少なくとも今回のやり取りでは、比喩自体は解釈されていました。ただ、比喩だけでは商品の具体的な特徴までは特定できません。比喩だけでなく、成分や対象、使用感などを具体的に説明しておけば、少なくとも商品について読み取れる情報は増えます。

余談ですが、これは実は、AIが企業やブランドを「何者で、何と関係する存在なのか」と認識するエンティティ理解、つまり、商品について具体的な情報を示すことで、AIがその商品の特徴や位置づけを理解しやすくなることにも関わってくる話です。今回は触りだけにしますが、また別の機会に詳しくお伝えできればと思います。

まとめ:今日からできること

今回の内容を、実務的な2つのアクションに落とし込むと、こうなります。

  • 比喩表現を使うなら、その後ろに具体的な説明を添える:「うるっとツヤめく」だけで終わらせず、「角質層まで浸透し、保湿することで」といった、具体的な裏付けをセットで書く
  • 訴求したい軸を、こちらから明示する:「透明感」を訴求したいなら、価格・成分・継続性についても情報を用意し、AIが勝手に別の軸を補って判断する余地を減らす

キャッチーな説明文は、これからも人の心を動かす力を持ち続けると思います。ただ、その隣に、AIにもきちんと伝わる具体的な情報を置いておく。これが、これからのECサイトの商品ページに必要な視点なのではないかと感じています。

まずは自社の主力商品を1つ選び、ChatGPTやGeminiに「〇〇(カテゴリ名)おすすめは?」と聞いてみてください。自社の商品名が出てくるか、出てくる場合はどんな理由で紹介されているか、価格や成分など、質問文にはなかったどの軸で語られているかを確認してみましょう。もし自社が想定していない軸(価格や口コミなど)で紹介されていたら、まずはなぜその軸で語られているのかを、AIの回答や参照元、自社・競合ページの内容を見ながら確認します。そのうえで、自社に不足している情報があれば商品ページなどに補っていく、という進め方ができます。

ちなみに、今回の「透明感 化粧品」というキーワード、Google検索ではどんな結果が出てくるのでしょうか。同じ言葉でも、検索エンジンとAIとでは、見えてくる景色がまったく違うかもしれません。実際にはどうなのか…?

次回、この続きをお伝えします。

Genview:https://genview.io/

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