
日本ダイレクトマーケティング学会(所在地:東京都千代田区、会長:高瀬 浩氏)は、生成AIを利用した経験を持つ20代から60代までの男女を対象として、生成AIが消費者の購買行動に及ぼす影響についての調査を実施しました。
この調査の結果、生成AIの広がりに伴って、消費者による情報収集や商品・サービスの選択において、主に次の4つの変化が生じていることが判明しました。
・生成AIが検索エンジンを補う、あるいは代わりとなる情報収集の手段として利用され始めており、検索の回数やWebサイトでの閲覧時間が減少しています。
・生成AIはSNSを超える信頼性を獲得しており、商品・サービスを選択する際の新しい情報源として機能し始めています。
・生成AIによって比較や検討、情報の整理が効率化され、購入を決めるまでの消費者の時間的な負担が軽くなっています。
・生成AIは商品の検索だけにとどまらず、おすすめ商品の提示、比較、相談といった、購買の意思決定を支える新しい顧客との接点として活用されています。
これまで検索エンジンを出発点としていた消費者の情報収集の行動は、生成AIを経由する行動へと拡大しつつあります。生成AIは単に情報を集めるだけのツールではなく、商品やサービスの比較・検討から意思決定に至るまでを支援する、新しい購買の接点となり始めていると考えられます。
こうした変化を考慮すると、企業には従来のWebサイトやSNS、検索エンジンへの対策に加えて、生成AIからも自社の商品・サービスについての正確な情報が適切に参照・提示されるための情報発信やデータの整備が、今後さらに重要になると考えられます。
20代の約7割が購買時に生成AIを活用、50代〜60代でも約4割が活用
まず初めに、「日常的な購買行動における意思決定において、生成AIを活用したことがあるか」という質問をしたところ、以下のような回答結果が得られました。
若い世代ほど日常的な購買行動において生成AIを頻繁に活用していることが明らかになりました。20代では約7割が活用している一方、年代が上がるにつれて活用の頻度は低下する傾向にあり、世代間でテクノロジーへの適応性や情報収集のプロセスに違いがあると考えられます。
ChatGPTが利用のトップ、2位はGemini、3位にCopilotという結果
前の質問で「活用経験が全くない」と回答した方以外に、「使用経験のある生成AIの種類」について質問したところ、「ChatGPT (OpenAI)」が68.9%と最も多く、「Gemini (Google) ※旧Bard、Google検索のAI(AIOなど)も含む」が52.3%、「Copilot (Microsoft) ※EdgeやWindows搭載のもの」が24.7%と続きました。
「ChatGPT」は約7割と最も高い利用率を記録しており、生成AIサービスの中でも幅広く利用されていることが示されました。一方、「Gemini」も半数を超える利用率となっています。
なお、年代別の集計データを確認すると、ChatGPTはすべての年代で60%前後の利用率を維持しており、最も広く使われている生成AIであることがうかがえます。これに対し、Geminiの利用率は20代の44.4%に対して60代は66.0%と、年代が上がるにつれて高くなる傾向が見られました。同様に、スマートフォンに搭載されているAI機能(20代10.1%、60代16.7%)やCopilot(20代18.5%、60代33.3%)においても、高年代層のほうが高い利用率を示しています。
一方で、Claude(20代10.7%、60代7.3%)や画像生成AI(20代11.2%、60代1.3%)については、若い年代のほうが利用率が高い傾向が見られました。
このように、シニア層では身近なサービスに組み込まれた大手プラットフォーム系AIの活用が広がる一方で、若年層では多様な生成AIツールを選択・活用する傾向の違いが浮き彫りとなりました。
生成AIを活用するメリットは「時短」が最多、中には「店員などに相談せず検討できる」「客観的に検討できる」などの意見も
「購買行動で生成AIを活用するメリットは何か」と質問したところ、「商品を探したり比較したりする時間を短縮できる」が59.1%と最も多く、「自分の好みや条件に合った商品を選びやすい」が34.7%、「情報が整理されて提示されるため、判断しやすい」が31.5%と続きました。
約6割の方が「時間の短縮」をメリットとして挙げており、購買に必要な情報収集を効率化できる点が、生成AIを利用する大きな利点として認識されていることがうかがえます。
一方、「店員に相談せずに検討できる」「広告や売り込みに左右されず客観的に判断できる」という意見も見られ、合理的な判断を行うために生成AIを主体的に活用している層も一定数存在しています。
具体的な活用では「Googleの検索結果での表示」がトップ、一方でレビュー要約や商品比較など主体的な分析に利用している消費者も存在
「購買行動で具体的にどのように生成AIを活用したか」と質問したところ、「Googleの検索結果に表示される『AIによる概要』を参考にする」が46.1%と最も多く、「特定の商品について相談する」が28.6%、「おすすめの商品・ブランドを相談する」が26.8%と続きました。
約半数の方が「Googleの検索結果に表示される『AIによる概要』を参考にする」と回答しており、従来の検索行動の中に生成AIが自然と溶け込んでいることがうかがえます。また、「特定の商品について相談する」や「おすすめの商品・ブランドを相談する」といった利用も上位に挙がっており、AIは検索結果を得るだけでなく、商品選びや情報整理をサポートするツールとしても活用されていると考えられます。
カテゴリー別では食料品、旅行、家電など幅広く消費者は生成AIを活用、年代別で使用カテゴリーに変化も見られる
「購買行動で生成AIを活用したことがある商品カテゴリー」について質問したところ、「食料品(一般的な食料品、お取り寄せなど)」が29.0%と最も多く、「旅行・宿泊(ホテル、航空券、ツアーなど)」が19.7%、「家電製品(冷蔵庫、洗濯機、テレビなど)」が18.7%と続きました。全体的な傾向として、生成AIは日常的な購買行動における情報収集や商品選びの場面で活用されていることがうかがえるとともに、比較検討や情報整理が必要な商品・サービスの選択においても生成AIが活用されていることが示されています。
一方で、世代別に見ると、20代では「化粧品」、30〜50代では「家電製品」、60代では「旅行・宿泊」が上位に入るなど、年代によって利用されるカテゴリーに違いが見られました。このことから、生成AIは日常的な商品選びに加え、年代ごとの関心や購買ニーズに応じた情報収集・比較検討の場面でも活用されていると考えられます。
減少したのは「検索エンジンの検索回数」、生成AIに対する不満点は「価格や仕様などの情報の間違い」
では、生成AIの活用によって情報収集が効率化される中、購買に至るまでの情報収集プロセスにはどのような変化が生じているのでしょうか。
「生成AIを活用するようになってから、購買行動において以前と比べて『減少した』と感じるものは何か」と質問したところ、「検索エンジンでの検索回数」が34.2%と最も多く、「Webサイトの回遊・閲覧時間」が28.6%、「どれを買うべきか悩んだり、迷ったりする時間」が27.0%と続きました。
「検索エンジンでの検索回数」や「Webサイトの回遊・閲覧時間」が減少したという回答が上位に挙がっており、生成AIの活用によって情報収集にかける時間や手順が短縮されていることがうかがえます。また、「どれを買うべきか悩んだり、迷ったりする時間」も約3割が減少したと回答しており、AIから得られる情報や提案が、商品選択時の比較・判断をサポートしていると考えられます。
これらの消費者の行動変化は、裏を返せば、従来マーケターが取り組んでいた情報提供のあり方を変える必要がある変化であり、生成AI時代の情報提供のあり方が求められます。
「購買行動において生成AIを活用した際、どのような提供情報と実際の内容のズレや不正確さを感じたことがあるか」と質問したところ、「価格情報が実際と異なっていた(セール・割引などを含む)」が24.5%と最も多く、「商品の仕様・機能・特典などの内容が実際と異なっていた」が20.5%、「情報が古かった(最新情報が反映されていなかった)」が15.5%と続きました。
購入判断に関わる「価格情報」や「商品の仕様・機能・特典」といった項目で、実際の情報との違いを感じた経験が多いことがうかがえます。また、「情報が古かった」という回答も見られ、セール情報や商品情報など更新頻度の高い内容については、生成AIを利用する際にその正確性に対して注意が必要であることが示されました。
生成AIの信頼性はSNSより高く、口コミ・検索より低い
では、他の情報源と比較して生成AIはどの程度信頼されているのでしょうか。
引き続き、前問で「活用経験が全くない」と回答した方以外に質問しました。
「購買行動において以下の情報源をどの程度信頼できるか、5段階評価でお答えください」と質問したところ、以下のような回答結果が得られました。
購買行動における情報源の信頼度について比較したところ、生成AIの情報に対して「信頼できる(4・5を選択した方)」と回答した人は33.4%に上り、SNSの19.1%を大きく上回る結果となりました。
特に最高評価である「とても信頼できる」を選択した割合においても、生成AI(5.7%)はSNS(3.2%)を上回っており、さらに「信頼できない(1・2を選択した方)」と感じている人の割合はSNS(31.5%)の半分以下(13.2%)にとどまっています。
検索エンジンや知人からの紹介が依然として高い信頼を得ている一方で、「生成AIの情報は、SNSよりも信頼性が高い」と捉えている消費者が一定数存在することが読み取れます。
全世代で生成AIの「誤情報」を懸念、20代では「意思決定能力の低下」への不安も
全年代で「誤った情報(AIの出力ミス)の可能性」が最も多く、生成AIの回答内容の正確性に対する不安が共通して見られました。また、20代では「自分の意思決定能力の低下」が上位に挙がっており、AIを活用する中で自身の思考・判断能力への影響についても懸念していることがうかがえます。一方、20代以外の世代では「偏った情報(広告・誘導)の可能性」や「古い情報の可能性」も上位に入り、情報の公平性や最新性への不安が見られました。
生成AIへの期待は誤情報がない信頼できる情報源への変化を望む声
「今後、生成AIにどのような存在になってほしいか」と質問したところ、「誤情報がなく、信頼できる『正確な情報源』」が32.4%と最も多く、「情報収集や比較を代わりに行ってくれる『リサーチャー』」が24.8%、「自分の好みを理解した『専属アドバイザー』」が23.1%と続きました。
「正確な情報源」としての役割が最も求められていることから、生成AIの利用においては、情報の正確性が最重要視されていることがうかがえます。また、「リサーチャー」や「専属アドバイザー」といった回答も上位に挙がっており、情報の探索だけでなく、商品選びや比較検討をサポートしてくれる存在に生成AIが期待されていると考えられます。
まとめ:生成AIが消費者行動に与える影響と今後の展望
今回の調査により、生成AIが消費者の購買行動における新たな情報収集手段として浸透しつつある実態が明らかになりました。
購買行動における活用は若年層ほど進んでおり、20代では約7割が利用する一方、年代が上がるにつれて頻度は低下する傾向にあります。利用する生成AIとしては「ChatGPT」が約7割と最も高く、「Gemini」も半数を超えており、日常的なWeb検索サービスとの接点が利用拡大につながっていると考えられます。
生成AIを活用する商品カテゴリーは、全年代で「食料品」が上位に入ったほか、20代の「化粧品」、30〜50代の「家電製品」、60代の「旅行・宿泊」など、年代ごとの関心に応じて違いが見られました。具体的な活用方法としては、約半数が「検索結果の『AIによる概要』を参考にする」と回答し、商品選びの相談など意思決定のサポートにも利用されています。生成AIを活用するメリットとして約6割が「比較検討の時短」を挙げており、結果として「検索エンジンでの検索回数」や「Webサイトの閲覧時間」、さらには「購入時に悩む時間」の減少につながっていると考えられます。
一方で、生成AIの普及に伴う課題も浮き彫りになりました。
多くの消費者が「価格」や「仕様」など重要な部分で、AIの提供情報と実際の内容とのズレを経験しています。情報源としての信頼度も「どちらとも言えない」と様子見の姿勢をとる層が約半数見られました。誤った情報や偏った情報への不安は全年代に共通しており、消費者はAIの利便性を評価しつつも、最終的な情報の真偽判断には慎重になっている心理が読み取れます。
消費者は今後の生成AIに対して、単なる情報の要約ではなく、誤情報が少なく信頼できる「正確な情報源」や、自分のニーズに合った提案を行う「専属アドバイザー」としての役割を求めています。企業がAI時代に消費者との接点を広げるためには、自社の最新かつ正確な情報を整備し、生成AIを通じても適切に情報が届けられる環境づくりが重要になると考えられます。今後は、従来のWebマーケティングに加え、AI時代に対応した情報発信やマーケティング施策への取り組みが今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。
有識者コメント
生成AIは消費者の購買意思決定をサポートしている
今回の調査で、特に注目すべきはWebサイトの検索回数や回遊時間の減少からも、消費者の「タイパ志向」と「思考負荷の低減」が顕著になってきたことです。従来の購買意思決定プロセスでは、消費者が複数のサイトから有用な情報を探索し、それらを比較・検討する負担を強いられていました。しかし、生成AIの普及により、スクリーニング作業はAIに委ね、購買行動に直接繋がる「ショートカット型の情報探索とカスタマイズされた提案」が可能になったのです。生成AIは、ビジネスにおいてはその活用が急速に進んでいますが、今後は消費者の購買行動に関しても、意思決定を支援し、加速させる強力な「補助脳」として不可欠な存在になっていくことでしょう。
高瀬 浩氏 西武文理大学 特任教授(日本ダイレクトマーケティング学会 会長)
生成AIには客観的な情報整理への期待がある
今回の調査で、生成AIへの信頼度がSNSを大きく上回っていた点には注目すべきです。消費者の情報メディアに対する視線の変化を如実に示しているのではないでしょうか。近年SNSはインフルエンサーマーケティングやPR投稿が溢れ、個人の主観や過剰な演出といった「情報のノイズ」に消費者が疲れや警戒感を抱くようになりました。一方で生成AIは、誤情報の不安や精度の課題を抱えつつも、特定企業の利害関係を感じさせず、客観的・構造的に情報を要約してくれる点が高く評価されています。消費者はAIを単なる検索ツールではなく、中立的な情報整理役として期待し始めていると言えるでしょう。
鈴木 秀男氏 慶應義塾大学教授(日本ダイレクトマーケティング学会 副会長)
AI時代だからこそ信頼できる情報発信が必要
検索減少とAI信頼度の高まりは、企業のマーケティング現場にも戦略転換を迫っています。AIの推奨を経てダイレクトにサイトに訪れる顧客を増やす導線設計は不可欠となり、Web上の一次情報や構造化データを整える「LLM最適化」を進めることは優先課題となっています。一方で、生成AIが参照するのも企業発の情報データであると共に、人々は口コミなどの信頼できる情報源を頼りにしている構造は今も変わっていません。AI時代だからこそ、商品価値を基軸にした、本質的で信頼できる情報発信が各企業に求められています。
的場 一成氏 株式会社ターゲットマーケティング代表取締役(日本ダイレクトマーケティング学会 副会長)
マーケティングに関する企業との知見を繋いで業界の発展に寄与する「日本ダイレクトマーケティング学会」
日本ダイレクトマーケティング学会について
日本ダイレクトマーケティング学会は、2001年に設立されたダイレクトマーケティングに関する社会事象の学術的な研究を行い、大学などの研究機関と企業のマーケティング知見を繋ぐことで、業界全体の発展に寄与していくことを目指す団体です。
調査概要
調査名:「生成AIが消費者行動に与える影響」に関する調査
調査期間:2026年7月15日(水)〜2026年7月16日(木)
調査方法:PRIZMAによるインターネット調査
調査人数:1,009人
調査対象:調査回答時に生成AIの活用経験がある20〜60代の男女と回答したモニター
調査元:日本ダイレクトマーケティング学会
モニター提供元:サクリサ
出典元: 日本ダイレクトマーケティング学会


















